2026年09月09日
【健康】『科学でわかった疲労の正体 最新科学が解き明かす疲れのしくみと正しい回復法』古賀智裕

科学でわかった疲労の正体 最新科学が解き明かす疲れのしくみと正しい回復法 (SB新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、個人的に気になっていた疲労対処本。先日の未読本記事で取り上げそこなったので、別途レビューしてみた次第です。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
なぜ疲れるのか。
疲れの正体がわかれば、対処法もみえてくる。
科学的アプローチから疲れの原因と正しい回復法がわかる!
なお、若干ですがKindle版がお求めやすくなっています!

【ポイント】
■1.超危険な「マスキング」という行為コーヒーやエナジードリンクで眠気や疲労感が抑えられるのは、主にカフェインの働きによるものです。喫煙者ならタバコに頼ることもあるでしょう。それは、ニコチンの神経刺激が作用する疲労感抑制によるマスキングです。ほかにもお菓子などの甘いものを食べて元気が出たように感じるのも、血糖値が一時的に上がることによる感覚です。どれも残念ながら疲れそのものが回復したわけではありません。一時的に元気になった感覚にはなりますが、これは体の警報装置の音を小さくするようなもので、疲れ自体が解消されたわけではありません。
また、マスキングは外から取り込む成分によるものだけではありません。緊張・興奮・緊急性がある場面では、体内でアドレナリンが分泌され、疲労シグナルが自動的に遮断されます。これを「内的マスキング」といいます。なお、エナジードリンクなど飲食によるマスキングは「外的マスキング」です。
■2.慢性疲労の原因、睡眠不足
私たちが眠っているあいだ、体の中では重要な作業が行われています。傷んだ細胞の修復、脳内の老廃物の洗い流し、そして「免疫システムのメンテナンス」です。特にノンレム睡眠という深い眠りの時間帯には、免疫バランスを整えるTregが活発に働きます。
もし睡眠がしっかりとれないと、このメンテナンスが途中で終わってしまいます。Tregの機能が落ちて炎症を抑える力がゆるんでしまい、炎症性サイトカインの産生が増え、ウイルスを退治するNK細胞の動きも低下します。米国で行われた研究では、1日7時間未満の睡眠を2週間続けると、風邪ウイルスへの感染率が約3倍になる、という結果が出ています。
「睡眠不足が続いても、週末にまとめて寝れば大丈夫」と思っている方も多いですが、免疫への影響はそう簡単に取り戻せません。慢性的な睡眠不足は、体の表面に症状が出ないまま、静かに免疫バランスを崩し続けています。
■3.エネルギー量を管理する「ペーシング」
ペーシングとは、1日のエネルギー消費を自分のエネルギーの大きさの範囲内に収め、クラッシュ(PEM)を予防しながら少しずつ「エネルギー水槽」を大きくしていく管理法です。(中略)
ちなみに「ペーシング」とは、もともとマラソンなどで使われる「ペース配分」を意味する言葉です。最後まで走りきれるように力の配分を整えるのと同じように、1日のエネルギーを上手に配分しながら使う。その発想が、そのまま名前になっています。
ペーシングを行ううえでの核心は「良い日も8割で止める」こと。調子の良い日に活動量を増やしすぎると、翌日以降にそのダメージがやってきて、数日だるさを引きずります。そして1週間単位で見てみると、結果的に動ける日が減ってしまうことにもなるのです。「今日は調子が良い」と感じた日こそ、意識的にブレーキを踏む。これが最初は非常に難しいのですが、最も効果的な習慣です。良い日ほど少し抑えるというペーシングの発想は、すべての人に役立ちます。
■4.心拍数で「自分の限界」を測る
自分のエネルギー許容量をより客観的に把握するツールが「心拍数モニタリング」です。運動の強さがある一線を超えると、体はそれまでの「酸素を使う燃費の良いエネルギー作り(有酸素代謝)」から、「酸素を使わない燃費の悪いエネルギー作り(解糖系代謝)」へと切り替わります。切り替わるタイミングは、心拍数(bpm)の変化で知ることができ、この心拍数の境目を「無酸素性作業閾値(AT)」と呼びます。このラインを超えると筋肉のだるさや体の重さの一因となる乳酸などの物質がたまりやすくなり、疲れの悪化を招きやすいことが慢性疲労症候群の研究でわかっています。
目安は「220−年齢」で計算した最大心拍数の約60〜65%。たとえば40歳の場合、1分間の最大心拍数は220−40=180拍、その60%で108拍ということになります。日常活動中にこの数値を超えないように管理することが目標です。
■5.「4-7-8呼吸法」で「安全スイッチ」を入れる
疲れが取れない人は慢性的に交感神経が優位な「緊急モード」が続いています。そこで、リラックスさせる副交感神経への切り替えを促すことが回復の鍵になります。緊急モードを「回復モード」に切り替える「安全スイッチ」を入れましょう。日常的に実践できる方法をご紹介します。
「4-7-8呼吸法」は、ゆっくり長く息を吐くことで、心と体を落ち着かせる役割を持つ迷走神経を刺激すると考えられており、副交感神経を活性化させる効果があるとされる呼吸法です。やり方はシンプルです。�”,�ら4秒かけて息を吸い込む。これを1セットとして、1回4セットを1日2〜3回行います。実践するタイミングとしては、朝の起床後と就寝前が最も効果的です。
�△修里泙�7秒間息を止める(つらい場合は無理をしない)。
�8�から8秒かけてゆっくりと息を吐ききる。
【感想】
◆「疲労」という問題について、正面から取り組んだ本としては、以前ご紹介したこちらが挙げられると思います。
疲労とはなにか すべてはウイルスが知っていた (ブルーバックス B 2248)
参考記事:【疲労?】『疲労とはなにか すべてはウイルスが知っていた』近藤一博(2025年08月07日)
ただし上記レビューは、その内容でも明らかにしていますが、必ずしも本の内容を適切に紹介したと言えず、言及しやすい部分についてのみ触れているに過ぎません。
その理由は、コンテンツとして難解だったから。
個別の用語の説明から始めないとワケが分からない部分を迂回した結果、本丸的な内容にはついぞや触れられませんでした。
この辺は「さすがブルーバックス」と言わざるを得ず。
◆一方本書はSB新書ですから、ブルーバックスのようなことにはならない……と思ってたのですが、正直今回も結構難解な部分があり、その辺は丸ごと割愛しています(すいません)。
結局「疲労」という、皆にとってなじみのあるテーマではあるものの、その仕組みについては、そこそこ難解である、ということかと。
さらに本書は、第2章の「その疲れは病気です」において、「慢性疲労症候群」という「病気」について掘り下げています。
こちら、言葉だけだとそこまで大ごとには感じませんが、重症患者の25%はほぼ常時ベッドから離れられない状態にあるのだとか。
ちなみに、コロナ後遺症の1つに「感染後の大きな疲労」があるのですが、これも「慢性疲労症候群」なのだそうです。
私も顧問先の経理担当者が、初期コロナに感染後に後遺症に苦しみ、「家から駅まで歩いたら、もう疲れて何もできない」と言ってたのを思い出した次第。
ただ、本書のタイトルを見て、手に取った人のどれくらいの割合が、ここまで重い症状に苦しんでいるかと言ったら、結構微妙ではないでしょうか(もちろん逆に、そういう方にとっては、本書は救いとなると思いますが)。
◆ですから今回のレビューでは、「ごく一般的な疲労対策を知りたい」という方向けとなっています。
たとえば、上記ポイントの1番目の「マスキング」は、「疲労」ではなく「疲労感」に効果があるもの。
エナジードリンクに頼っている人は、「体の警報装置の音を小さくするようなもので、疲れ自体が解消されたわけではありません」という一節をよく読んでご留意ください。
なお、このマスキングのお話は、前述の『疲労とはなにか』でも登場していましたが、「内的」「外的」という区別については、初めて知りました。
仕事で徹夜明けのときなど、異様にハイになっていることがありますが、これが「内的マスキング」なんでしょうね。
また、上記ポイントの2番目の「睡眠」の件は、もう何度も言われ過ぎて耳にタコができています。
もっとも「1日7時間」なんて、病気にでもならない限り、絶対無理なんですが(現在夜中の3時10分前)。
私は1日に何度か15分程度の仮眠をとって何とかやっているものの、このスタイルだと「ノンレム睡眠という深い眠り」には程遠いと思います。
◆一方、上記ポイントの3番目の「ペーシング」という考え方は、当ブログ初登場のハズ(相手の話し方に合わせる方の「ペーシング」なら多々)。
実はこの「ペーシング」こそが、疲労回復のもっとも基本になるものらしいです。
ただ、調子のいい日にぶんぶん飛ばして、仕事を片づけるのって、気持ちいいんですよねw
若い世代の方なら、そもそも「数日だるさを引きずる」ことすらなさそうですけど。
逆に、ご自身が疲れやすいと思っている方は、まずこの考え方を意識してみてください。
◆また、上記ポイントの4番目の「心拍数モニタリング」は、息が上がりやすい方なら要チェック!
普段からこの算出した心拍数を超えないようにすることが、疲労軽減につながりそうです。
……私なんぞは、先日のFUJI ROCKに参加すると決めた日から、自宅マンションのある7階まで、毎晩1回、全力で駆け上がって負荷をかけてたんですが(ダメじゃん)。
さらには上記ポイントの5番目の「4-7-8呼吸法」は、類書でもご紹介していたハズ。
ただし、あくまで「心を整える」ためだったり「安眠」のためだったりで、疲労とは結びついていませんでした。
「慢性的に交感神経が優勢」だと疲れが取れませんから、こちらも試す価値はありそうです。
正しく疲労と付き合うために読むべし!

科学でわかった疲労の正体 最新科学が解き明かす疲れのしくみと正しい回復法 (SB新書)
第1章 疲労とは何か〜疲れの地図〜
第2章 その疲れは病気です
第3章 免疫が疲労を生む
第4章 回復のメカニズム
第5章 自分でできる疲れのセルフコントロール術
第6章 遺伝子と疲労――最前線の研究現場から
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【疲労回復?】『なぜ、一流の人は「疲れ」を翌日に持ち越さないのか』裴 英洙(2014年08月01日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から、お買い得本をセレクト!
荘子 内篇 (講談社学術文庫)

紫禁城の栄光 明・清全史 (講談社学術文庫)

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