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2026年08月31日

【オススメ】『人文知は武器になる』山口周,深井龍之介


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人文知は武器になる (文春新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「Kindle本 50%ポイント還元フェア」からのビジネススキル本。

……と言いつつも、当ブログ向きな作品なのに、実はご紹介した記事の分を含め、どのカテゴリーにも入っていなかったので、直接とりあげることにした次第です。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
世界のビジネスエリートはなぜ歴史を学ぶのか?
「意思決定の質」が変わる
人類社会の「傾向」を知ろう
日本の強みはセンスにあり
ベストセラー『人生の経営戦略』などの著者と「歴史を面白く学ぶコテンラジオ」MCの初対談
人文知は、思考や判断、行動を変える。

4月発売とあって、中古がまだほぼ値下がりしていませんから、Kindle版が500円以上お買い得です!







【ポイント】

■1.日本の経営者はエキスパートの活用が苦手
山口  僕が日本と欧米の経営者を比較して感じるのは、日本の経営者は「人文知」のエキスパートの活用がうまくできていないということです。
深井  そうですよね。日本の経営者は人文知でもITでも、エキスパートを活用するのが正直、苦手ですね。その根本的な理由は、彼らが専門知を単なる「実務処理のための道具(How)」としてしか見ていないからだと思っています。欧米の経営理論の土台には、そもそも神学や哲学といった「思想」のレイヤーが分厚く存在していて、その上にMBAのような「実践」が成り立っている構造なんです。でも、日本の多くの組織は、その土台を飛ばして、表面的な手法だけを輸入してインストールしてしまっているんです。だから、日本企業は「答え(手法)」を教えてくれるコンサルタントは使えても、「問い(哲学)」を一緒に立ててくれる歴史家や思想家をどう扱っていいか、わからないんだと思います。ここが、欧米のエリート層との違いなんじゃないかな、と僕は見ています。


■2.人文知を活かした家康
深井  秀吉は、生まれや身分という制約がほどけていく時代の流れをうまくつかみ、その瞬間ごとの機会を逃さずに積み重ねていった。
 一方で家康は、織田政権と豊臣政権が目の前で崩れていったのを見て、個人の力量に依存する政権は必ず不安定になる、というパターンを理解していた人物だったと思います。だからこそ家康は、拙速に覇権を握ろうとせず、社会が安定を求めるタイミングを見極めながら、制度や慣行を通じて権力を分散・固定化していった。
 出身地や領地、生まれたタイミングといった環境要素が大きかったのは2人とも同じですが、秀吉が環境の波に乗る達人だったとすれば、家康は歴史を通じて環境そのものを読み解いていたタイプだったと言えるでしょう。最終的に家康が天下を取ることができたのは、いまで言う人文知を積極的に学び、活かしていたからと言えるかもしれません。


■3.希少なものが何かで勝利条件は決まる
山口  おっしゃるような勝利条件は、その社会における「希少なもの」が何なのかによって変わるものと言えるかもしれないですね。希少なものを生み出せる人が、常に優位な立場に立つ。狩猟採集社会ではタンパク質が希少だったので、魚や動物をたくさん捕れる人が優秀とされたわけですけど、いまは多くの人にとってタンパク質は安価に調達できるようになったから、別の力が尊ばれる。20世紀と21世紀で言うと、20世紀は問題が多くて正解が希少だったから、正解を出せる人が評価されたけれど、いまはAIが社会に浸透してむしろ正解があふれているので、問いを立てられる人が評価される。他にもいろいろなパターンがあるのかもしれませんが、時代や社会によって希少なもの、価値あるものが変化するから、勝利条件が変わるという理解でいいでしょうか。
深井  はい。そのとおりですね。僕は、その「何が希少か」を決めているのが技術革新だと考えています。


■4.抽象的な問いを立てて、抽象的な答えを探す
山口 「若手が辞めてしまう」というのは具体的な問題ですが、これを抽象的に表現すれば「雇用関係を維持することに合理性を見出せなくなる」ということです。平たく言えば「居続けるのは損、転職した方が得だ」と考えてしまうということです。ですから本質的にこの問題を解こうとすれば「合理性を超えて居続ける組織を作るにはどうすればいいか」という問題に答えなければなりません。(中略)
 ここで「歴史の知識のあるなし」が影響してくる。「どう考えても居続けるのは損なのに、居続けてしまう」ような組織というのは過去になかったのか? と考えてみると、歴史的にはいわゆる「カルト教団」がそうだ、ということに思い至るわけです。カルト教団は経済合理性を考えたら絶対に抜けたほうがいいのに、エンゲージメントが高く、居続けさせることに成功している組織なわけですね。じゃあ「その手法ってどんなものなのか」ということになり、ビジネス書でなく宗教の棚へ行って、実際にカルトの歴史やルポルタージュをざっと並べてみる。5冊も読めば共通項が見えてくるから、それを今度は自社の組織づくりに応用できないかを考えてみる。
   

■5.日本の強みはセンスにあり
深井  僕は最近、日本人の特性を調査研究しているんですけど、先ほど挙げた「嫌いな人とも一緒にいられるスキル」以外にも、「中長期的な合理性」に対するセンスのよさもあると思っています。日本人って実はめっちゃセンスいい。長い目で見て「いいね」と思うことを、言語化しない、言語化できないんだけど、判断できてしまうし、実践もできる。言語化しなくていい領域のなかで、そういう判断がばんばん簡単にできちゃう性質があるなと思っていて。ただ、経営の現場になると、そのセンスを言語化することが求められて、かえってセンスを発揮できなくなっていると感じています。  
 僕が、日本の人たちに、人文知の必要性を説くときも、そういう身体感覚としての中長期的合理性に訴えると、「完全には理解できていないけれど応援するよ」という態度をとってくれます。欧米人はやっぱり言語化しないと判断もできないという側面が強いので、理解もしてないことを応援するという態度はとらないだろうと思うんです。それはすごく特殊な性質じゃないかと感じています。


【感想】

◆とにかく大量にハイライトを引いた作品でした。

上記のポイントでは、いつものように5つしか選んでませんが、実際のところは、いつもの感覚で抜き出していたら、10は楽勝、15個でもおかしくないくらい。

何がそんなにピンときたかというと、やはり普段と違うモノの見方や考え方をしているから、という結論になると思います。

……逆に言うと私は、人文知をまったく活用できていない、ということになるのですが。

ちなみに一般的な意味での人文知とは「哲学・歴史・文学・宗教・芸術などの学問から得られる、人間や社会を理解するための知識と思考様式の総称」とのこと。

まさに、今まで当ブログでレビューしてきた本が、ほとんどカバーできてない分野なワケです。


◆そんな私にとって、第1章の「ビジネスパーソンに人文知は必須である」は、グサグサと刺さりまくり。

特に歴史に対する理解が非常に大事なことを、改めて痛感しました。

たとえば、著者のおひとりである山口さんいわく、欧州では「リーダーは幅広い知識を身につけておくべきだということで、帝王学として人文知を若いときから学ぶ」のだそう。

というのも
過去からの流れを知らなければ、いま起きていることを深く理解することはできないし、未来について考えることもできない
から。

逆に日本では、上記ポイントの1番目にもあるように、人文知のベースができていないため、経営者層でもエキスパートの活用が苦手なのだとか。

まぁ確かに、経営にコンサルを入れる話は聞いても、歴史家や思想家が関与する、という話は耳にしませんものね。


◆続く第2章の「すべての出来事は過去に起きている」では、具体的な事例も登場しています。

上記ポイントの2番目の秀吉と家康の話もその1つ。

秀吉が人文知に無縁だったわけではないでしょうが、家康の方が、より歴史に学んだ感が強いといいますか。

またこの章では、ウクライナ問題についても触れられており、たとえばブッシュJr.はかつてNATOの首脳会議で「ウクライナをNATOに加盟させるべきだ」という提案を行ったのだそうです。

これに対して、当時のドイツのメルケル首相は明確に反対し、「そんなことをすれば、ロシアとの戦争になる」と警告したのだとか。

山口さんいわく
この発言は、感情論ではなく、冷徹な地政学的判断に基づくものでした。メルケルさんは旧東ドイツの出身ですから、旧共産圏のメンタリティをわかっているし、ヨーロッパのエリートとしての歴史感覚に根差して反対したんだと思います。
とのことで、なるほど納得。

もちろん、その後のロシアの侵攻は許されるものではないですが、「過去の歴史を考慮すべき」という指摘も当然だと思います。


◆一方第3章の「歴史はどう動くのか」においては、過去からの変化についての言及が中心でした。

例を挙げると、グーテンベルクの活版印刷や、殺傷能力の高い近代兵器が、時代をどう変えていったのか等々。

さらには上記ポイントの3番目にあるように、「希少なものが何か」も時代によって変わります。

ここにある「いまはAIが社会に浸透してむしろ正解があふれているので、問いを立てられる人が評価される」というお話は、実は同じようなニュアンスで本書内でも何度か登場するもの。

結局「問を立てられる」ようになるには、人文知を学ばねばならないので、当然ですね。


◆そこで第4章では「歴史を武器にする独学の技法」と銘打って、実際の考え方についてのアドバイスが登場します。

その1つが、上記ポイントの4番目で引用した「抽象的な問いを立てて、抽象的な答えを探す」。

確かに具体的な問題のままだと、解決ができないものが、いったん抽象的にすることで、解決が導き出されるわけです。

ただこの、「具体⇔抽象」の行き来については、当ブログでは細谷功さんの作品のおかげで、比較的多めに取り上げている方かも。

とはいえ、抽象化できたとしても、ここにあるように「過去の事例」を知っているか否かも、大きく影響してきますから、そういった事例を歴史に学ぶのも大事でしょう。

結局「カルト教団の話は、ビジネスには関係ない」と切り捨てていたら、答えにたどり着けなかったハズですし。


◆そして最後のポイントの5番目は、1つ飛んだ第6章「日本の未来」からのもの。

「嫌いな人とも一緒にいられるスキル」については、本書をお読みいただくとして、正直、日本人の「『中長期的な合理性』に対するセンスのよさ」という表現には当初ピンときませんでした。

ただ、もう1人の著者である深井さんいわく、「欧米人はロジックだけで動いていて、ロジックでできること、説明可能性と再現性があることしかできない」のだそう。
僕が思うに、中長期合理性って説明可能じゃないことのほうが多いんです。だからそこは日本人が自分たちのよさを認めて活かしたほうがいいと思っています。
確かに短期ならまだしも、中長期的になると、合理的な説明が難しいから、かえって日本人には向いているわけですか。

「経営判断でも、欧米のやり方だと説明可能性が求められるから、『中長期的に見てこれをやったほうがいいけれど、説明できないからやれない』みたいなことがあるのは、すごくもったいない」という指摘には、目からウロコ。

と言いますか、この部分に限らず本書全体を通して、ウロコが落ちまくりましたよ。


これからのビジネスパーソンの必読書です!

B0GWQNGRH9
人文知は武器になる (文春新書)
はじめに 山口周
第1章 ビジネスパーソンに人文知は必須である
第2章 すべての出来事は過去に起きている
第3章 歴史はどう動くのか
第4章 歴史を武器にする独学の技法
第5章 これからの世界
第6章 日本の未来
おわりに 深井龍之介


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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」におけるお買い得本をご紹介!

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モテる構造 ──男と女の社会学 (ちくま新書)

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世界のインコ

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はじめての暗渠散歩 ──水のない水辺をあるく (ちくま文庫)

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思いつきで世界は進む ──「遠い地平、低い視点」で考えた50のこと (ちくま新書)

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コウケンテツのだけ弁 (別冊ESSE)

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しぐさで読む美術史 (ちくま文庫)

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「ひきこもり」から考える ──〈聴く〉から始める支援論 (ちくま新書)

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オンガクハ、セイジデアル MUSIC IS POLITICS (ちくま文庫)

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鳥のしぐさ・行動よみとき図鑑 おもしろふしぎ鳥類学の世界

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鳥の食べもの&とり方・食べ方図鑑 おもしろふしぎ鳥類学の世界

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鳥の落としもの&足あと図鑑

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時系列×テーマ別だから一冊でわかる アメリカ史

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しあわせをはかるものさし ぬくもりのことば

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マンガ 認知症の取扱説明書 (SB新書)

今日はまた、Kindle Unlimited作品が非常に多かったんですが、『モテる構造』と、今日レビューした本の絡みで『時系列×テーマ別だから一冊でわかる アメリカ史』を推しておきます!


【編集後記2】

◆一昨日の講談社さんの「実用書ALL半額セール」の記事で人気が高かったのは、この辺の作品でした(順不同)

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ご参考になりましたら!


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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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