2026年08月28日
【ヒットの秘訣】『届かせる技術 ヒットを「狙って生み出す」思考と仕組み』早川敬之

届かせる技術 ヒットを「狙って生み出す」思考と仕組み (文春e-book)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「Kindle本 50%ポイント還元フェア」の中でも人気のマーケティング本。著者の早川さんが、いくつかのヒット作に関わってらしただけあって、なかなか興味深く読むことができました。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
あの配信ドラマ、なぜ一気見してしまう?
ネットフリックス、Amazon Prime Video、ディズニープラス――。
配信プラットフォームによって次々と生み出されるメガヒット作品がいま、世界を席巻しています。
彼らは一体どうやって、人々の心に届き、ヒットに届くエンタメを世に送り出せるのか?
思わず全話一気見してしまうドラマはどのようにして生み出されているのか?
その秘密は、配信プラットフォーム各社が駆使する思考と仕組み=「届かせる技術」にありました。
NHK、フジテレビを経て、Amazon Prime Video日本オリジナルコンテンツ製作責任者を務め、Amazon時代には『沈黙の艦隊』や『Broken Rage』などに携わった著者が、その豊富な体験と知見をもとに、ハリウッド流や韓国流の「届かせる技術」を惜しみなく披露します。
ビジネスに応用できるヒント満載の一冊です!
送料を加味した中古よりも、このKindle版が700円以上お買い得となります!

【ポイント】
■1.5分に1度の山場をつくる作品づくりのベースは、なんといっても脚本です。面白い話を考える。ワクワクする物語をゼロから構築する。優れた脚本という土台なしに、ヒットにはまず届きません。
つまり、脚本の強化こそが、ビンジウォッチングのための基礎なのです。視聴者が飽きないように小さなヤマ場、大きなヤマ場をがんがん作って入れていく。いわば刺激を脚本に注入していくのです。
理想をいえば、5分に1度。そのくらいの頻度でストーリー的に「一撃」=見せ場を出していかなければならないとされています。脚本はそれを意識して練られ、構成されます。
これはあくまで一般的なハリウッドの脚本術の目安ですが、配信ドラマの場合、1話はだいたい45分前後ですから、つまり、そのなかに9度は視聴者を揺さぶる「一撃」を仕込んでおき、間歇的に爆発させる。全8話だったら、合計で72のヤマ場を配置していくわけです。
■2.韓国映画界不況の理由
ネットフリックスなどの配信プラットフォームが韓国に進出したことで、制作現場の環境は改善されましたが、同時に俳優の出演料の急上昇を招きました。主演クラスの俳優のギャラが跳ね上がり、一本あたりの製作費が急騰。その結果、製作費が上がれば、劇場で回収しなければならない観客数(損益分岐点) も上がります。しかし、国内の人口・劇場市場規模には限界があるため、ヒットしても利益が出にくい、少しでもコケれば大赤字という「ハイリスク・ローリターン」な構造になってしまいました。さらに、コロナ禍に値上げした映画館のチケット代が劇場離れに拍車をかけます。作る側は、コスト高で劇場映画が作れない。観る側は、高いチケット代を払う価値を感じない。さらに配信の普及によって、お客さんの側の「少し待てばすぐ配信」という認識が抜けない。この三重苦が、長らく続いた映画文化の危機を招いています。
■3.『テラスハウス』の真のターゲットとは?
「お昼休みってことは、高校生が見るのかな?」と思っていましたが、アナリストは「もっと低い世代かもしれません」という見方をしていました。驚きましたね。こうした意見はテレビ局内部では聞けないもので、アプローチの違いが私にとっては新鮮でした。
「Googleの人たちって、こういう発想で仕事を進めているんだな」と感じたものです。
この新しく想定した視聴者像のもと、チームでは次の手を打ちます。尺を長めにして、これまでよりもややセンセーショナルな映像を月曜のランチ前に投稿してみるか、という話になりました。タイミングとしては2クール目が終わる直前でした。
すると──。
数字がバーンとハネたんです。これは面白い結果が出たということで、視聴者の動向データを調査してみると、やはり中学生女子がコアターゲットだったことが明確になりました。
■4.企画は突然目覚める
監督にお会いしに行った日のことは、よく覚えています。たいへん緊張しました。面会の目的は別件でしたが、その件について話し終えた後、映画の話題になり、その時、私の記憶の中から目を覚ましたのが、キネ旬ムックの監督のインタビューだったのです。
「監督、こういう企画を以前お話しされていたと思うんですが……」と水を向けると、「本は出来てるんだよ」と言って、直筆のノートを棚から取り出して見せてくださいました。
それが『Broken Rage』の脚本でした。
驚いたというか、こんなことが起きるのかとびっくりするしかない。
世界のキタノもまた、自らの企画を温め、誰に頼まれるでもなく、ノートに直筆で脚本を書きため、アイデアの発酵を行っていたのです。私が、ムックの記事で監督のアイデアを見てから、実に30年以上もの時間が経過していました。
この日をきっかけに、この作品の企画書を作成し始め、無事グリーンライトが出て製作、2025年に配信される運びとなったのです。
■5.ローカルだから届く
私はこれから、日本の地方から発信される物語が世界に届くと思っています。『ルックバック』の成功が、それを確信させてくれました。
日本だけではありません。韓国から配信されている『イカゲーム』(2021)が世界的なヒットとなったのは、スーパーローカルな内容だったからだと見ています。(中略)
都会って、表現にすると、噓くさくなってしまうんです。仕事もダメ、家族ともダメ、借金をしてヤクザに追われて逃げ場がないという設定が噓っぽくなる。虚構に見える。ところが、それを田舎に持って行くと成立しちゃうんです。たとえば、相撲を題材にとった『サンクチュアリ─聖域─』。主人公の実家は北九州の設定でしたが、田舎のどん詰まり感、行き場のない閉塞感がビンビン伝わってきました。だからこそ、相撲の世界に飛び込むことに強い動機が見えてくる。『イカゲーム』にしても、『サンクチュアリ』にしても、舞台を田舎にしたことがストーリーアークに膨らみをもたせているんです。
【感想】
◆マーケティング好き、コンテンツ好きの方にとっては、非常に楽しめる作品だと思います。そもそも冒頭の内容紹介にもあったように、著者の早川さんの経歴が振るっていて、「NHK、フジテレビを経て、Amazon Prime Video日本オリジナルコンテンツ製作責任者」を務めていたワケですから、それぞれの企業におけるやり方を学ばれていた次第。
また、所属会社以外でも欧米流のスタンダードなやり方が紹介されており、たとえば上記ポイントの1番目は、ハリウッド流のスタイルを紹介した、第3章から抜き出しています。
いや、あちらの脚本は、こんなにヤマ場を詰め込んでいたのだとは。
しかもその脚本も、1人が執筆するのではなくチーム制。
さらには、その脚本家を束ねる「司令塔」ともいうべき「ショーランナー」なる肩書の人がいるのだそうです(詳細は本書を)。
◆一方、日本映画界を凌駕していたのが、韓国映画界。
かつてはかの国のドラマ制作会社も、日本同様、放送局より力が弱く「制作費を低額で受注する請負会社の意味合いが強かった」のだそうです。
ところが国際的な配信会社の出現により、企画を生み出せる優良制作会社が力を持ち始めたのだとか。
……と、ここまでは景気のいい話だったのですが、現在では逆に苦境に陥っている、とのこと。
実際、2025年の韓国映画界は「過去20年で最悪の不況」だったらしく、その原因については第4章から抜き出した、上記ポイントの2番目に詳しいです。
ネトフリで映画製作が増えている日本でも、近い将来、似たような状態になる可能性があるのかは気になりますが……。
◆また第6章では、フジテレビ在職時代の『テラスハウス』の立ち上げについても言及アリ。
この番組、当初フジテレビ側がターゲットとして考えていたのが、放送時間が金曜の夜ということもあって、大学生をはじめとした20代の女性でした。
ところが金曜夜に放送した番組を翌日にYouTubeにアップしているのに、最もコンテンツが見られていた時間帯が月曜のお昼ということで、ターゲットがズレていることが判明。
上記ポイントの3番目にあるように、女子中学生がコアターゲットと判明してからは、編集する内容にも変化が出てきたのだそうです。
私はお恥ずかしながら、まったく観たことがなかったので、情報も追ってなかったのですが、その後は映画化もされたとのこと(早川さんが番組に携わったのは初期だけとのことですが)。
さらにはネトフリでも配信された2017年12月からの軽井沢編『TERRACE HOUSE OPENING NEW DOORS』は、アメリカのタイム誌が発表した『2018年のベストテレビ番組 10(The 10 Best TV Shows of 2018)』で6位に選出されたのだそうです。
もっとも、番組自体がその後、不幸な形で終了したのは、皆さんご存じのとおりですが。
◆また、第7章から抜き出した、上記ポイントの4番目に登場する「世界のキタノ」とは、もちろん、北野誠監督。
30年近く前(ムック発売は1998年らしいので、30年は経ってません)にその企画を読んだ際、早川さんは「この企画を自分で手掛けたい」と思ったのだそうです。
その後職場を変わる等、色々あって忘れていたものが、上記にあるように不意に蘇り、その後話はとんとん拍子に。
それを踏まえて、早川さんは「憧れの人物については徹底的に情報を得ていくのが大切なことだと思います」と言われています。
特にエンターテインメント界では、監督や俳優が公開に合わせて作品の意図を話す機会があります。日本の記事ですと少し短い気がしますが、アメリカの新聞などではロング・インタビューが行われ、企画の背景、撮影中のエピソードなどが満載です。それを読んでおくだけで、まったく違う世界が待っているかもしれない。北野監督との一件は、まさにそのとおりでしたね。
◆そして最後のポイントの5番目は、第8章からのもの。
都会ではなく田舎から、という視点は言われてみたら、なるほどそうかもしれません。
これももしかしたら、昔と違って田舎にいる人でも、ネットによって発信できるようになったことが関係しているのかも、と思ってみたり。
日本はアニメを中心に、強いIPがいくつもありますから、今後海外でより大きなヒットが望める可能性も大。
ちなみに早川さんの目標は「2035年までにアカデミー賞を獲る」ことだそうですから、今後にも期待したいです。
ヒットを生み出したい方なら要チェックな1冊!

届かせる技術 ヒットを「狙って生み出す」思考と仕組み (文春e-book)
第1章 “配信戦国時代”の「届かせ方」
第2章 ハリウッド流の「届かせ方」1
第3章 ハリウッド流の「届かせ方」2
第4章 韓国ドラマの「届かせ方」
第5章 シカゴ大学で痛感した「数字こそ命」
第6章 フジテレビ時代に学んだ「届かせ方」
第7章 配信事業者時代に知った「届かせ方」
第8章 私の大事な「届かせ方」
第9章 エンタメは日本の有望産業だ!
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【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から、お買い得作品をご紹介!
漂流するソニーのDNA プレイステーションで世界と戦った男たち

政治学の名著30 (ちくま新書)

今度こそわかるゲーデル不完全性定理 (今度こそわかるシリーズ)

「謝り方」の技術―――「誤解を招く」「好感度をあげる」謝り方の違い 三笠書房 電子書籍

世界史をつくった海賊 (ちくま新書)

ギャンブル依存症から抜け出す本 (健康ライブラリーイラスト版)

コミュニティと都市の未来 ──新しい共生の作法 (ちくま新書)

依存症がわかる本 防ぐ、回復を促すためにできること (健康ライブラリーイラスト版)

インド宗教興亡史 (ちくま新書)

こどもバイアス事典 「思い込み」「決めつけ」「先入観」に気づける本 こどもシリーズ

やるべきことがすぐわかる 今さら聞けないSDGsの超基本

そのまま仕事で使える英語表現189 (ちくま新書)

名医が答える! 嚥下障害 治療大全 (健康ライブラリー)

Tokyo guide 24H

Hawaii guide 24H

空・雲・雨・風のしくみがわかる 今さら聞けない 気象の超基本
今日のラインナップからは、『漂流するソニーのDNA』『「謝り方」の技術』『そのまま仕事で使える英語表現189』の3冊を推しておきます!
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