2026年08月10日
【経営】『起業家になる前に知っておいてほしいこと 経営の難問を乗り越えるたった一つの考え方』岩田彰一郎

起業家になる前に知っておいてほしいこと 経営の難問を乗り越えるたった一つの考え方
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「Kindle本 サマーセール第2弾」からの経営本。実は版元であるPHP研究所さんは、まだ記事として取り上げていないのですが、この本は以前土井英司さんがメルマガでプッシュしているのを見て、読みたいと思っていたのでした。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
アスクル創業者・岩田彰一郎、初の著書。社内ベンチャーから大企業を創り上げた唯一無二の経営哲学を語る。「あの時、なぜその道を選んだのか?」大企業を創り上げたリーダーの経験と葛藤をQ&A形式で公開。新規事業の立ち上げ、組織の壁、そして訪れる決断の瞬間。次世代のビジネスリーダーたちが直面する難問を突破するための「思考のフレームワーク」が詰まった1冊です。
中古がほとんど値下がりしていないため、送料を考えるとこのKindle版が1200円以上お得な計算です!

【ポイント】
■1.社会最適を追求することが、社会課題の解決につながる社会最適の実現に取り組んだことは、社会課題の解決にもつながりました。
たとえば、さまざまな企業の商品をアスクルの物流センターに集約して、お客様に直接お届けすることで、バラバラに運んでいた時よりも物流を効率化することができました。配送ルートを工夫して 空荷 で走るトラックを減らし、ドライバーの労働環境の改善を図る、といったこともしました。
社会最適の視点から物事を考えると、おのずと社会課題の解決にもつながってくるのです。(中略)
社会課題を解決するビジネスをしたいけれども、それで利益を出せるビジネスモデルがつくれないという方は、まずは社会最適になっていないビジネスや社会システムを、身近なところで探してみてはいかがでしょうか。それを社会最適に変えることができれば、社会課題の解決と利益をあげることの両立に近づけるはずです。
■2.間違ったKPIを設定しない
アスクルの価値や魅力が失われていくような指標は何かを考え、KPIに設定しないようにしていました。
たとえば、魅力のひとつである「品揃えが豊富なこと」は、言い換えると、「さまざまな分野の商品があること」「売れ筋ではない商品も扱っていること」ということになります。
この魅力を失わせる指標は、利益率や在庫回転率です。
もし、これらをKPIに設定すれば、どうなるか。「利益率や在庫回転率をあげるために、商品数を増やさないようにしよう」という判断をすることになるでしょう。また、在庫や廃棄になる商品が増えるリスクを避けるため、「売れ筋だけを扱うほうがいい」「売れるかどうかわからない商品は仕入れないほうがいい」という判断をしかねません。
こうして「お客様への価値提供につながる指標」と「価値が失われる指標」の両面から考えることで、KPIが明確になりました。その結果、経営陣も従業員も、お客様の価値に直結した行動を取れるようになったのです。
■3.取引先のコストダウンも一緒に取り組む
エージェントさんと同様、私はすべての取引先も対等なパートナーだと考えています。ですから、力ずくの交渉をするのが好きではありませんでした。(中略)
その代わりに実践したのが、取引先と一緒になって、コストダウンのアイデアを考えることです。取引先のコストダウンができれば、取引価格を下げることができ、アスクルのコストダウンにもなります。
たとえば、商品を納入していただくメーカーさんと一緒にトイレットペーパーの3倍巻きを開発したり、トラックの積載効率が高くなる商品の積み込み方を研究して配送コストを下げたりしました。その分、仕入価格を下げてほしいと交渉することで、お互いにメリットがある形でのコストダウンができました。
商品の製造コストを下げる方法を、メーカーさんと一緒に探したこともありました。
■4.「小さな真面目」より「大きな真面目」
私がアスクルの経営をしていた時、判断基準にしていたのは、「大きな真面目」と「小さな真面目」という考え方です。(中略)
利益をあげる方法は、売上をあげるか、コストを抑えるかです。
短期的には、そのどちらが簡単かといえば、後者です。社内のあらゆる固定費や変動費にメスを入れ、ムダだと思われる出費を 削れば、利益を増やすことができます。
しかし、私から見ると、これは「小さな真面目」です。もちろん必要なことですし、先述したようにアスクルでも取り組んでいましたが、中長期的な成長につながるかというと、その効果は大きくありません。
それなら、短期的にはムダに思えることをしてでも、中長期的に大きな成長を勝ち取ることを意識したほうがいい。これが「大きな真面目」の考え方です。
■5.企業理念に立ち戻る
会社組織を存続させるために、利益はもちろん重要です。しかし、利益にこだわりすぎると、「お客様のために進化する」という企業理念と齟齬が生じ、企業理念と異なる行動を取ることがあります。
ひとつの例が、「コピー用紙」事件です。「コピー用紙を扱うのをやめよう」という提案が出たことがあったのです。
コピー用紙は差別化がしにくく、安売り競争になってしまって、利益が確保しづらい商品です。利益を増やすことを考えたら、ここにメスを入れたほうがいいのではないか、という意見でした。
しかし、「お客様のために進化する」という企業理念に立ち戻れば、コピー用紙の取り扱いをやめることが、お客様のためになるとは思えません。オフィスで最も多く使われる商品が、コピー用紙だからです。
【感想】
◆なかなか納得感が高い1冊でした。冒頭で触れたように、土井英司さんのお墨付き以外にも、このようなお二人の推薦の言葉が。
楠木建氏(経営学者)「リスクを伴う意思決定こそが経営者の仕事。決断の基準がここにある」確かに読了後に思ったのが、楠木建さんのこの本に似たテイストでもあるかな、ということ。
入山章栄氏(経営学者)「尊敬する岩田さんによる、最高の経営の教科書! これは必読」

ストーリーとしての競争戦略: 優れた戦略の条件 Hitotsubashi Business Review Books
参考記事:【スゴ本】『ストーリーとしての競争戦略』楠木 建(2010年10月20日)
もっとも、著者の岩田さんが創業した「アスクル株式会社」が、もとは事務機器メーカーのプラスの子会社だったことは、本書を読んで初めて知りましたし、そういう意味では純粋な意味での「起業家」とは、若干異なることはご留意ください。
……それとは別に、今はアスクルがLINEヤフーの連結子会社だということも、今ググって初めて知ったのですが。
◆とはいえ、第1章から抜き出した上記ポイントの1番目のお話は、起業家を目指す方なら、考えたことがあるテーマかもしれません。
要は「社会課題の解決と収益性を両立できるビジネスモデルをつくるには、どうすればいいのか?」ということですね。
個人的に「誰かの『不快』を『快』にする」というのも、ビジネスモデル探しのヒントになる、と聞いた記憶がありますが、この「社会最適を追求することが、社会課題の解決につながる」という指摘は目からウロコ。
一石二鳥と言いますか、結果的にあることをすることが、当初の目的を果たせる……というビジネスモデルのスマートさが、上記の楠木さんの本に通じる気がしました。
◆続く第2章からの上記ポイントの2番目のKPIのお話も、「何をKPIにするか」以上に、「何をKPIにしてはいけないか」という考え方が腑に落ちたワタクシ。
実際、利益率や在庫回転率をKPIにしている会社はいくらでもあるでしょうし、会社によってはそれが間違いではありませんが、自社の魅力を損なわないかは、注意した方が良いでしょう。
同じく第2章から引用した上記ポイントの3番目のコストダウンのお話も、「力ずくの交渉をするのが好きではない」というアスクルのスタンスを、あるメーカーの人に「交渉が甘い」と言われたこともあるのだとか。
それでもWin‐Winを目指すスタイルゆえ、実はさまざまなメーカーと協力して、PB商品やNPB(ナショナルプライベートブランド)商品を開発してきたのだそうです。
たとえばこちらは、花王さんと共同開発した介護施設用の洗濯洗剤とのこと。

【大容量】アタック消臭ストロングジェル 洗濯洗剤 介護の洗たく悩みを強力洗浄 つめかえ用 1100g
元はといえば、介護施設のお客さんの「いくらシーツを洗濯しても尿のにおいが取れずに困っている」という悩みをヒアリングしたところから生まれたのだそうです。
◆一方、上記ポイントの4番目は、第3章から抜き出したもの。
ここではボリュームの関係で「大きな真面目」の具体例を割愛してしまいましたが、本書にはしっかり載っています。
たとえば、心地よいデザインのオリジナル商品をつくるための、海外視察等。
また、カタログに載せる写真も、その出来栄えいかんで購入に影響するので、お金も時間も注ぎ込んだのだそうです。
さらには、2001年に辰巳に作った「アスクルe-tailing center」という新オフィスは、2001年にグッドデザイン賞、2003年に日経ニューオフィス賞を受賞したとのこと。
アスクルe-tailing center|日経ニューオフィス賞|一般社団法人ニューオフィス推進協会
もちろんこれは、岩田さんが考えたアスクルにとっての「大きな真面目」であって、皆さんそれぞれ自分に当てはめて考える必要はあるのですが。
◆そして第4章から引用した引用したのが、上記ポイントの5番目の「コピー用紙事件」。
確かに「コピー用紙は利益が出ない」という点で、なるほど、言ってること自体は正しいです。
ただし、お客さんにしてみたら、さまざまな事務用品(だけではなくてコーヒーや食品もありますが)を扱っているのに、コピー用紙がないのは、不便ですよね?
この「短絡的に考えたら正しそうだけど、実は違う」という関係は、上記ポイントの2番目とも同じかと。
しかも、その後のデータ分析で、「コピー用紙を購入したお客さんは、それがきっかけになって他の商品も購入していることが明らかになった」のだそうです。
結局、論理的にも、コピー用紙を安く売り続けることは正しかった次第。
賢者の「思考のフレームワーク」がここに!

起業家になる前に知っておいてほしいこと 経営の難問を乗り越えるたった一つの考え方
第1章 ビジネスモデルの難問
第2章 事業活動の難問
第3章 お金の難問
第4章 組織・人事の難問
第5章 起業家・企業としてのあり方の難問
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【スゴ本】『ストーリーとしての競争戦略』楠木 建(2010年10月20日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」における、お買い得本はこちら!
もうすぐ絶滅するという紙の書物について

図解・わかる電気と電子 : 具体例から原理を語る (ブルーバックス)

書きたいのに書けない人のための文章教室

時計の科学 人と時間の5000年の歴史 (ブルーバックス)

完璧という領域

休み時間の分子生物学 (休み時間シリーズ)

君は君の人生の主役になれ (ちくまプリマー新書)

全国温泉大全 湯めぐりをもっと楽しむ極意

稲盛和夫 明日からすぐ役立つ15の言葉――一言、一言が効く!

「死にたい」と言われたら ――自殺の心理学 (ちくまプリマー新書)

おとなになるってどんなこと? (ちくまプリマー新書)

進歩した文明と進化しない心 進化心理学で読み解く、私たちの心の本性

IT'S ELEMENTAL さぁ、化学に目覚めよう 世界の見え方が変わる特別講義

パリの歴史散歩ノート:2000年の歴史と美食を旅する7日間

頭がよくなるめいろ どこでもドリル

名医がやっている 脳が老けない最強の腸活 今日からできる腸もれ対策で「脳の毒出し」

18歳までに知っておきたい言葉1750

自分軸リーダーシップ〜迷いを突破する40 代からのキャリア再構築〜

1週間でFP3級に合格できるテキスト&問題集 2026-2027年版

眠れないほどおもしろい葉隠 「武士道といふは、死ぬ事と見つけたり」……はホントなのか? (王様文庫)
今日はかなりの豊作だったので、絞りに絞って『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』『稲盛和夫 明日からすぐ役立つ15の言葉』『さぁ、化学に目覚めよう』『自分軸リーダーシップ』の4冊をオススメしておきます!
【編集後記2】
◆一昨日の「Kindle本 サマーセール第2弾」の早川書房分の記事で人気が高かったのは、この辺の作品でした(順不同)。
「沈黙」は最強の戦略である

自由と国家 上 繁栄する国 衰退する国 (ハヤカワ文庫NF)

プロジェクト・ヘイル・メアリー 上 (ハヤカワ文庫SF)

言語が違えば、世界も違って見えるわけ (ハヤカワ文庫NF)
ご参考になりましたら!
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