2026年06月01日
【作家指南】『作家で食っていく方法』今村翔吾

作家で食っていく方法 (SB新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「Kindle本 (電子書籍) 499セール」からの「作家実現マニュアル」。セール記事を3本も書いているのに、カテゴリー的にどれもあてはまらなかったようで、今回初登場となりました(アマゾンのセールのトップページには載っているのですが)。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
ここまで書くか!
アニメ化も始動したデビュー以来の人気シリーズ『羽州ぼろ鳶組』
直木賞を受賞し転機となった『塞王の楯』
Netflixで実写化された圧倒的活劇『イクサガミ』 etc.
いま話題の直木賞作家が、小説家稼業の裏側を大公開。
作家の仕事の理想と現実。
そして、人気作家であり続けるために考え、実践していることとは?
送料を加味した中古価格が1000円近いため、このKindle版が500円弱お買い得となります!

【ポイント】
■1.作家になるのに必要なたった1つのこと必要なことはたった1つ。読書量です。多読、乱読、とにかく数を読む。浴びるほど読んでください。
小説を書くためには、構成にしてもキャラクターにしても文章にしても、引き出しの蓄積が必要です。このためには、とにかく数を摂取するしかありません。たくさんの本を読みましょう。
読んで得られるものがゼロの本はありません。どんな本でも構いません。「良書を読め」と諭す自称教養人や「良書を読まなければ」とプレッシャーに感じる真面目な人もいるようですが、良書かどうかはあまり気にせずに読んでよいと思います。
むしろ、「自分は良書を見極められる」と思うのは傲慢かもしれません。ゲームと同じで、そりゃあ倒した時に入る経験値の大きいボスキャラもいますが、その辺に湧いてくるモンスターを片っ端から倒していても経験値は溜まります。
■2.オファーがない作家の復活方法
プロットと完成原稿を作り、出版社に持ち込みます。プロットと完成原稿のセットは、1つではなく、最低4つ。目録のようにします。どの出版社が何を求めているかは、蓋を開けるまでわかりません。カタログを携えて売り込もうという、普通の営業感覚です。(中略)
「こんなもの、お求めではありませんか。他にこれとこれとこれもあります。比較検討して、よかったら、どれか1つでも買っていただけると。しかも今なら即日発送できます(原稿が完成済)し、ご購入を検討いただくにあたって、今ここでお試しできます(原稿が手元にある)」の方が、まだ買う気になりますよね。
ここまでしても、売り込みは失敗する確率の方が高いです。しかし、諦めてはいけません。
ビラを見た顧客が店舗に来店する確率は、0.1パーセントとよく言われます。1000枚配って1人が来れば御の字というわけです。一般企業や、そこで働く会社員がテレアポやDM(ダイレクトメール)にどれだけ苦労しているかを考えてください。
日本の出版社、全部に当たる覚悟で挑みましょう。そこまでしないで諦めるなら、別にあなたは作家がやりたいわけではないのです。
■3.テーマはどこから得るか?
では、どこからテーマを得るのか。
拙作を例に、紹介します。
『八本目の槍』は、地元の同窓会が着想の出発点です。小学生の時は同じ教室でじゃれ合っていた同級生が、同窓会に行くと今は様々な人生を歩んでいることを知ります。若くしてリストラに遭った人もいれば、霞が関で働くエリート官僚もいる。同窓会では同じ話ができるようで、嚙み合わない部分も出てきます。
同じことが戦国時代にもあったのではと考えていく内に辿り着いたのが、秀吉の小姓でした。一所で少年時代を過ごした者の内、ある者は大名になる一方で、ある者は大名になれず終い。大名になった者でも禄高が違う。役職が違う。立場が違う。同じ主君の元で育った8人の「同窓」を描いたのが『八本目の槍』です。
八本目の槍(新潮文庫)
■4.何がキャラクターを魅力的にするのか?
どうすれば、キャラクターは魅力的になるのか。
私が心がけていることとしては、強さの反対側に、弱さを設定することです。アンパンマンもウルトラマンもルフィも、強い。しかし、アンパンマンは顔が濡れたら力が出ないし、ウルトラマンは時間制限があるし、ルフィは泳げない。ドラえもんはひみつ道具で万能のようですが、ネズミが苦手。
ある面では強いのに、他の面では弱いというのが、人間の幅になります。強いだけだと共感も生まれず、物語がドライブしません。
逆に、ただ強いキャラクターは悪役に向いています。弱みが見当たらないのは、結構不気味です。
エンタメの場合、主人公たちに熱狂し、物語に熱狂してもらうには、それぞれの得意分野では最強だが、誰も完璧な人間はいないというグループを描くのが、よいのではないでしょうか。『羽州ぼろ鳶組』シリーズはそのようになっています。
火喰鳥――羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫)
■5.最初と最後に魂を込める
始めと終わりが50点、中央が80点の山型の小説があるとします。一方、真ん中は50点だが、始めと終わりが70点の谷型があります。この2つなら、谷型の小説の方が、よい小説、売れる小説です。最高値は低くても、最初と最後の質が高いものを、私は評価します。
それくらい、最初と最後は重要です。最初と最後によって、全体から受ける質の印象は様変わりします。
最初で重要なのは、物語の世界へ引き込む速度、いわゆる「引き」です。書店で、小説を立ち読みして、最初が面白くなければ、買われません。実物だとパラパラとめくってみて途中を立ち読みする人もいますが、Amazon等のWEB書店では冒頭しか試し読みできません。
最後は、最初と逆で、読者を物語から抜いていく役割があります。余韻、読後感、カタルシスといった言葉で表現されます。「あ、終わった!」とハッとさせられる、目覚めるような最後もあれば、「もっとこの世界にいたい」と思わせる、じわっとした最後もあります。私が聞いて嬉しかった感想は「今日はもう他の本を読みたくない」というものでした。
【感想】
◆私は作家志望ではないのですが、大変楽しめました。また、この手の本を普段読まない分、知らないことだらけ。
当然、ハイライトも引きまくっているため、正直選ぶのに苦労しました。
……ホントは、「SNSで出版社と喧嘩するな」みたいな話の方が、ウケはいいのかもしれませんけど、一応、作品を仕上げて、売れるようになるになるまでの話を中心に拾っております。
中でも改めて「そうだよね」と思ったのが、上記ポイントの1番目の「読書量」のお話。
私は基本的に、社会人になってから文芸作品を読んだことがほぼないのですが、作家志望の方は今からでもしっかりお読みください。
◆また、本書における登場順に拾っているため、いきなり上記ポイントの2番目に登場しているのが、作家としてのリカバリーのお話。
これは1度何らかの形でデビューした作家が、オファーがなくなってしまった場合のお話なのですが、ここまで用意して営業するのだとは!?
ちなみに今村先生、上記引用部分の直後に、
日本の出版社、全部に当たる覚悟で挑みましょう。そこまでしないで諦めるなら、別にあなたは作家がやりたいわけではないのです。と、厳しいお言葉を続けられています。
まぁこれも、1度はデビューしている人なら、それなりの実力があるからでしょうし、まったくの素人が同じことをやるのはリスキーかと。
ただ、私の知り合いの著者さんで、デビュー前の時点で1冊書き上げており、それを常時カバンに入れていて、たまたま出会った編集者に見せたところ、デビューが決まった、という人もいますから、作品を書き上げること自体は無駄ではないでしょう。
◆一方、上記ポイントの3番目では、今村先生の着想例をご紹介しています。
逆に、ヒット作のネタを真似たりパクったりするのは、正しい「売れ線研究」ではない、とのこと。
たとえば、『豊臣兄弟!』がヒットしたなら、豊臣兄弟という題材を得るのではなく、なぜ『豊臣兄弟!』が求められたのかというニーズ(≒真理)を分析するのだそうです。
その例の1つがこの上記ポイントの3番目のお話なのですが、本書では他にも今村先生の作品群が、どういうテーマをもって書かれているのかをそれぞれ解説していますから、ぜひご覧ください。
先日ネトフリでもヒットした『イクサガミ』にも、そんな裏があったとは……。
◆さらに上記ポイントの4番目で触れられているのが、キャラクターのお話。
「強さの反対側の弱さ」というのは、人気キャラの王道ではありますが、やはりそれがキャラクターの奥深さを出しているのですね。
また、グループでの設定についても、キャラクターが複数登場するのが一般的ですから、グループとして見ていくのが良いのでしょう。
ちなみにこの後に、キャラクターの名前の話にも触れられているのですが、今村先生いわく、「キャラクターで絶対こだわった方がいいのは、名前」とのこと。
特に重視しているのが「響き」らしくて、先生の作品に登場するキャラクターの名前についても、その命名の意図が語られています。
なお、上記『イクサガミ』では、デスゲームの参加者だけでも292人いて、そのすべての名前にこだわっているのだとか(スゲー!?)。
◆そして、上記ポイントの5番目では、作品全体におけるクオリティのお話に触れられています。
「最初と最後が大事」いうのは、いわゆる「初頭効果と終末効果(親近効果)」にも通じるものがあるかと。
ただ、その「70点以上の最初と最後を、どうやって書くのか?」については、結論としては「とにかく時間を費やして」とのお言葉がありました。
そういえば、本書の巻末の「おわりに」の最後のフレーズがこうなんですよ。
最後に1つ。ちなみに私は今、これを旅行先で書いている。時刻は午前2時53分。もう今日くらいはいいかとも過った。が、他の締め切りに追われていることもあり、これくらいは夜のうちに済ませておこうと決めた。私もまた小説家として食っていくため、多くの「まあ、いいか」を振り払いながら抗い続けている。なるほど、作家になり、食べていくにはそれなりの覚悟が必要なのだと良く分かりました!
作家を目指す方なら必読の1冊!

作家で食っていく方法 (SB新書)
第1章 作家になる方法
第2章 作家で食っていく方法
第3章 売れる小説を書く方法
第4章 これから生き残る方法
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【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から、お買い得作品をご紹介……なんですけど、今日からいきなり掲載冊数が倍増しております!?
憂鬱でなければ、仕事じゃない (講談社+α文庫)
参考記事:【熱狂?】『絶望しきって死ぬために、今を熱狂して生きろ』見城 徹,藤田 晋(2013年06月25日)

絶望しきって死ぬために、今を熱狂して生きろ (講談社+α文庫)
参考記事:【35の言葉】『憂鬱でなければ、仕事じゃない』見城 徹, 藤田 晋(2011年06月15日)

デジタルオリジナル合本『憂鬱でなければ、仕事じゃない』 『絶望しきって死ぬために、今を熱狂して生きろ』 (講談社+α文庫)

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さすがにこれだけあると、注目作が多すぎて困惑していると言いますか、最初の見城さんたちのは、まぁ未読の方は超お得な合本版を読んで頂くとして、それ以外にも『リアル人生ゲーム完全攻略本』『映画を早送りで観る人たち』『10着で十分』『できるGoogle NotebookLM』『リカバリー解体新書』辺りは、全部読みたいですね!
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