2026年01月08日
【オススメ】『自分で選んでいるつもり―行動科学に学ぶ驚異の心理バイアス』リチャード・ショットン

自分で選んでいるつもり―行動科学に学ぶ驚異の心理バイアス
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、すでに終了していてもおかしくない「Kindle本 50%ポイント還元セール」における人気マーケティング本。セール期限が延長されているので読んでみたところ、ハイライトを引きまくるハメになりました。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
「心の癖」を知れば、人の行動は変えられる。
行動科学をマーケティングに応用する専門家が解き明かす、16と1/2の強力な心理バイアスと、ビジネスにおける実践例。
無意識のバイアスが「欲しい」を導く。
「産出効果」や「レッドスニーカー効果」、「ピーク・エンドの法則」など、行動科学や心理学を応用し、メッセージやデザイン、見せ方を変えれば、購買行動は大きく変わる。
ビジネスの成功の鍵を握る知見が満載!
いつまで続くのかわかりませんが、送料を加味した中古と比較すると、このKindle版が900円強お得な計算です!

【ポイント】
■1.選択肢は必ずしも少ない方が良いとは限らないアイエンガーらの論文では、「選択肢が多いほうが好ましく見えるが、モチベーションを低めることもあるようだ」と考察している。
意味するところは明らかだ──客に提示する選択肢は減らしたほうがいい。
いや、その結論に飛びつくのは待ってほしい。フォローアップ研究の内容も考慮に入れる必要がある。実のところ、真実はそれほどわかりやすいものではなかったらしい。2015年、ノースウェスタン大学の心理学者アレクサンダー・チェルネフが行ったメタ分析では、決定麻痺は必ず起きるわけではないことが確認された。チェルネフは先行研究の実験53件を分析し、選択肢が少ないほうが好まれるのは次に挙げる4種類のシチュエーションであることをつきとめた。1 本人に特別はっきりした好みがない
2 選択肢の中身になじみがない
3 選択肢がどれも似通っていて、突出したものがない
4 並べ方や見せ方が下手であるなどの理由で、選択肢の評価がそもそも難しい
■2.問いかけは説得力を高める
エビデンスは2004年、ミネソタ大学のロヒニ・アルワリアとオハイオ州立大学のロバート・バーンクラントの研究で示されている。実験では135人の被験者を集め、何枚かの広告を見せた。どの広告も同じ内容を伝えているが、問いかける形式と、宣言する形式に分かれている。たとえば前者は「アヴァンティのシューズを履くと、関節炎の発症リスクが下がることを知っていましたか?」、後者は「アヴァンティのシューズは関節症の発症リスクを下げます」という具合だ。
被験者は最後に広告に対する感想を9ポイント制で評価する。優れているか下手だったか。好ましかったか、好ましくなかったか。良質だったか、悪質だったか。
結果を見ると、問いかけを読んだほうの被験者は、説明文を読んだ被験者よりも、ブランドに対する好意的な評価が14%高いことがわかった。
しかし、なぜ問いかけがそんなに説得力を発揮するのだろう?
心理学では、問いかけが効果的になる理由として、聞き手に「自分が主体的にかかわっている」という気持ちにさせるからだと考える。
■3.極端回避バイアスに順序効果バイアスを組み合わせる
これをきわめてわかりやすく説明した実験がある。2012年、コロラド大学のドナルド・リヒテンシュタインの研究チームが、アメリカのバーで8週間にわたって実施した実験だ。
酒を飲みに来店した客たちに、13種類のビールを掲載したメニューを渡す。ただし、あるときはメニューリストの一番トップが一番安い4ドルのビールで、そのあとも安い順に商品を並べた。別のときには、同じ内容ではあるものの、高い順にビールを並べた。すると、安い順のメニューを配ったときの平均支払額は5.78ドルだったが、高い順のメニューを配ったときの平均支払額はそれよりも24セント多く、6.02ドルだった。4%の上昇だ。これは統計的に有意な差であると言える。
なぜこうした結果になるのだろうか。研究チームの主張によると、人はメニューリストを上から下へ読む傾向があり、自分にとって合理的な金額を判断するにあたり、最初に目に入った金額から過大な影響を受けるのだという。最初に高額なビールを目にしていると、そのあとで見た中価格帯のビールがお得に感じられる。ところが最初に安いビールを目にしていると、中価格帯のビールは贅沢すぎると思えてくる。
■4.「100の法則」を検討する
ゴンザレスは2016年に被験者75人を集め、通常は48ペソの値がついている風船詰め合わせパックの割引情報を見せた。12ペソ割引と示した場合と、25%割引と示した場合があった。
数字に強い読者ならおわかりのように、この割引は同じだ。ところが被験者の反応は違っていた。パーセンテージで割引を見た被験者のほうが、その取引の価値を高く評価したのだ。彼らのスコアは3.73。一方、絶対額で割引を見た被験者は3.46と評価した。約7%下がっている。
ゴンザレスはさらに実験の続きとして、別の被験者グループに、通常は480ペソの値がつくジャケットを見せた。そして半分の被験者には120ペソ割引、残りの半分の被験者には25%割引だと教えた。これも引かれる額は同じだ。
すると今回は絶対額を見た被験者のほうが、その取引の価値を高く評価した。スコアは4.16だ。パーセンテージで見た被験者の評価は3.7だった。統計的に有意な11%ほどの差が出ている。
論文によれば、この被験者たちは数字の意味に注意せず、ただただ目立つ数字ばかりに気を取られていた。12と25なら25のほうが大きいので、25%割引のほうが12ペソ割引よりもお得に感じる。ゼリービーンの実験と同じで、分母を無視したというわけだ。
■5.「あなたの自由」の法則を利用する
最初に紹介したいのは、南ブルターニュ大学のニコラ・ゲガンとボルドー大学のアレクサンドル・パスクァルが2000年に発表した実験だ。
通りすがりの80人に、バス代をもらえないだろうか、と声をかける。頼み方は2通りあり、「すみません、バスに乗るための小銭をいくらかいただけませんか」と言う場合と、「すみません、バスに乗るための小銭をいくらかいただけませんか。もちろん、出すかどうかのご判断はお任せします」と言う場合があった。
ただ小銭を求められた被験者が要求を受け入れる率は10%だった。ところが、相手には拒否する権利があることを強調したときには、その数字が48%に跳ね上がった。
この差の大きさに注目してほしい。お金は戻ってこないのに、差し出す人の割合が5倍近くに伸びている。行動科学の実験はたいてい10%から15%の差が出る程度なので、これほど大きな差が出るのはめずらしい。
【感想】
◆装丁が地味めなこともあって、正直、本書を舐めていました。行動経済学の本なら、既に何冊もレビューしていますし、今さらネタがかぶりまくってもな、と当初の予想セール期限内にも読んでおらず。
……ちなみに「行動科学」と「行動経済学」は、重なる部分が多くて行動経済学自体が行動科学の1つとみなされることもあるようですが、一応別の概念という理解ではおります。
また、従来の行動経済学本が、基本的に定義とその事例(研究・実験等)だったのに対して、本書はマーケティング要素が大。
実際、各章の多くの部分を占めるのが「行動科学を応用するには」と題された、実践へのアドバイスであり、そういう意味では、同じチャルディーニ関連でも『影響力の武器』に対するこちらの本に近い位置づけだと感じました。

影響力の武器 実践編[第二版]「イエス!」を引き出す60の秘訣
参考記事:【スゴ本】「影響力の武器 実践編」がやっぱりスゴかった件(2009年06月10日)
◆また既読本とネタがかぶっていたとしても、本書を読んで新たに知ったことが多々。
たとえば第2章から引用した上記ポイントの1番目の選択肢の件は、いわゆる「24種類のジャムより6種類のジャムを並べた方が良く売れた」という、シーナ・アイエンガー教授のこの本で有名なお話の続きになります。

選択の科学 コロンビア大学ビジネススクール特別講義 (文春文庫 S 13-1)
このチェルネフの分析によると、「この4条件のいずれかに当てはまる場合に限り、決定麻痺が生じやすくなる」のだとか。
逆に「当てはまるものがないなら、消費者は選択肢の多さを喜ぶ可能性が高い」そうなので、選択肢を減らせばいいものでもないわけです。
◆1つ飛んだ第4章からは、上記ポイントの2番目の「問いかけ」のお話をセレクト。
これはもう出版業界では『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』以降、ほぼ定番となっている手法ではあります。
「本を手に取らせる」だけでなく、「リンクをクリックさせる」「記事を読ませる」等々、その効果も幅広いもの。
ただここにあるように「ブランドに対する好意的な評価」まで高めるとは知りませんでした。
さらに本書によると、問いかけは「間接的に批判をする」こともできるようで、かつてジョン・F・ケネディ陣営は、ライバルのニクソン大統領候補を揶揄するかのように、こんなポスターを作ったのだとか。

Posterazzi Anti-Nixon ポスター 1960 NWould You Buy A Used Car From This Man American Poster 1960 リチャード・ニクソンへの不信感を表現 18 x 24インチ Posterazziによるレトロ大統領ウォールアートプリント
これはキッツイです(苦笑)。
◆また上記ポイントの3番目の「順序効果バイアス」のお話は、第7章から引用したもの。
小見出しの「極端回避バイアス」とは、その名のとおり、選択肢の中から真ん中を選ぶ、というヤツです(いわゆる「松竹梅効果」)。
それを踏まえて、メニューの上から下にどのような順番で並べるか?
なるほど、最初にドーンと高いやつがあれば、下に行くほどお得に感じますよね。
なお、研究チームはビール以外の分野でも同じ実験で結果を確かめているとのこと。
ちなみにこれ、選択肢が3つしかなければ、どう並べても真ん中が選ばれそうですが、4つ以上なら検討する価値がありそうです。
◆続く第8章からも上記ポイントの4番目として価格表示のテクニックが登場。
割引額と割引割合(%)があった場合、大きい方につられる、というお話です。
ですから金額が100(ドル)以下ならば、パーセンテージの方が大きく見えて、100を超えれば割引額の方が大きく見えるので、「100の法則」と呼ばれているらしく。
私は今まで意識したことがなかったのですが、お店(サイト)によっては実践しているところがあったのかもしれません。
ちなみにこの章では、他にも価格表示のテクニックが紹介されており、たとえばお値段が同じでも
・「40%OFF」vs「20%OFF」×「25%OFF」
・「10%OFF」×「40%OFF」vs「40%OFF」×「10%OFF」
では、それぞれどちらが購入されたかが紹介されていますので、気になる方は本書にてご確認を。
◆そして最後の上記ポイントの5番目は、少し飛んで第12章から抜き出したもの。
よく「他人にものを頼むときには、その理由を述べるとよい」という話(コピーの割り込みのやつです)があって、本書にはその話も出てくるのですが、さらに上がありました。
何だか断る選択肢を与えると、断りやすそうなものですが、実際は逆だったという。
しかも行動科学的にも大きな違いらしいので、これは私も取り入れたいと思います。
いずれにせよ本書は、科学的自己啓発書テイストを持ちながら、実践的なマーケティングテクニックが学べる次第。
いつまでお得か分かりませんが、このお値段なら「買い」でしょう。
これはオススメせざるを得ません!

自分で選んでいるつもり―行動科学に学ぶ驚異の心理バイアス
はじめに――行動科学は最強の武器である
第1章 習慣形成
第2章 簡単にする
第3章 面倒にする
第4章 産出効果
第5章 キーツ・ヒューリスティック
第6章 具体性
第6と1/2章 緻密さ、細かさ
第7章 極端回避
第8章 分母無視
第9章 実験の必要性
第10章 フレーミング
第11章 公正さ
第12章 選択の自由
第13章 レッドスニーカー効果
第14章 ハロー効果
第15章 ウィットのパワー
第16章 ピーク・エンドの法則
おわりに
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【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から注目作をご紹介。
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虚無レシピ

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