2025年07月28日
【陰謀論?】『となりの陰謀論』烏谷昌幸

となりの陰謀論 (講談社現代新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「講談社 ポイント還元キャンペーン」でも人気の1冊。最近の風潮的に、陰謀論も無視できないな、と思って読んでみたところ、ハイライトを引きまくることになりました!
アマゾンの内容紹介から一部引用。
トランプは「闇の政府」と戦っている!?
オバマもバイデンもすでに処刑された!?
陰謀論はどこで生まれるのか。
そして、なぜ信じてしまうのか。
現代世界を蝕む病の正体を、気鋭のメディア研究者が明かす!
中古がまったく値下がりしていないため、このKindle版が400円以上お買い得です!

【ポイント】
■1.陰謀論を信じていないと断言できるか?筆者は、2021年1月6日にアメリカで起きた連邦議会議事堂襲撃事件後に陰謀論の研究を少しずつ始めるようになりましたが、当初は全くの他人事でした。なぜ議事堂を襲撃した人たちは、「選挙が盗まれた」などというありもしない偽情報を信じ込んだのだろうかと、ただひたすら疑問でした。もちろん、自分が陰謀論者だなどと思ったこともありません(議事堂襲撃事件については本章の後半であらためて触れます)。
ところがある時、ふと自分の中にも陰謀論が刷り込まれていることに気がつきました。陰謀論に関する文献を読んでいる時に、ケネディ大統領暗殺事件に関する陰謀論の記述を違和感なく受け入れていたことに気がついたのです。そこからはっきりと自覚するまでに少々時間がかかりましたが、ケネディ暗殺事件に限ってはどうも自分は陰謀論者であるという結論に至りました。
■2.秘密結社「フリーメイソン」の実態とは?
フリーメイソン陰謀論の語る「証拠」は他にも数多くあります。それは初代アメリカ合衆国大統領のジョージ・ワシントンをはじめ、歴代大統領の多くがフリーメイソンのメンバーであったということです。(中略)
大統領だけではありません。アメリカの著名人の中にはフリーメイソンのメンバーであった人物が数多くいます。(中略)
これほど多くの有力者たちがメンバーであれば、組織として少なからぬ影響力を持つことができそうにも思えるため、フリーメイソンがアメリカを支配している「証拠」であるかのように受け止められたりもします。
ただ、このような都市伝説じみた噂の絶えないフリーメイソンですが、実態としてはただの友愛団体で、集まって何をやるのかというと、社会奉仕の活動や慈善活動をしたりメンバー同士の交流を深めながらそれぞれの「自己成長」を目指したりという程度のことでしかありません。類似例をあげるなら、今でいうロータリー・クラブのような社会奉仕団体とほぼ同じものであり、大学のボランティアサークルなどともそれほど大きく違わない集団といえるかもしれません。
■3.ヒルビリーの人々の思い
ここで『ヒルビリー・エレジー』を取り上げるのは、必ずしもアパラチアやヒルビリーの文化が知りたいからではありません。この作品の中でヴァンスは、自分の地元にはオバマがイスラム教徒であるとか、アメリカ人ではないと信じる人が大勢いたと書いています。出生地陰謀論を真剣に信じる人たちが多数いたと指摘しているのです。(中略)
ヴァンスは正直に書いています。アイビー・リーグの2つの大学を優秀な成績で卒業したオバマの学歴は、完璧過ぎて恐怖すら感じると。そして、オバマの存在そのものがヒルビリーたちの心の底にある不安を強く刺激したと述べています。オバマは良い父親だが、自分たちはそうではない、オバマの妻は子どもたちが何を食べるべきでないかを分かっていてその通りにしているのに、自分たちはそうではない。彼らの強迫観念がこのように締めあげられることで、オバマへの嫌悪が生まれてくるのだと彼は書いています。
しかし、より決定的なことは、オバマが人生の成功のために享受したあらゆる仕組みやルールが、自分たちのために何ら役割を果たしていないとヒルビリーたちが感じていたことです。
■4.陰謀論を武器化したトランプ
こうしてトランプは普通の政治家であれば間違いなく政治生命を断たれていたはずの絶体絶命の局面を幾度も乗り越えて、2024年の大統領選に出馬したのです。2020年の大統領選の敗北を受け入れず、陰謀論を大規模に拡散させて「国家を欺いた罪」を問われて起訴された人間でありながら、その陰謀論を信じ続ける支持者たちが彼を支え続けたのです。(中略)
「オバマは外国で生まれた」「オバマはアメリカ人ではない」という出生地陰謀論は、トランプが考案したものではなく、既にネットの中で広まっていた噂話をトランプが拾い上げて利用したものでした。不正選挙陰謀論は、トランプが支持者に向けて大宣伝することで広まっていきました。トランプと彼の熱狂的支持者たちは、相互に影響を与え合いながら陰謀論を共有してきたのです。陰謀論は「烙印を押された知識」であると第1章で述べましたが、罪深い噓を共有することでより一層緊密に結ばれているといってよいかもしれません。
■5.哲学者カッシーラーの後悔
ナチスは、第一次大戦の戦勝国が「ドイツを奴隷化」しようとしているのだと強く主張し、それら国家の背後にユダヤの世界支配の陰謀が潜んでいるのだと訴えていました。当初、その訴えを馬鹿げた主張であると感じ、一笑に付していたカッシーラーはその態度が間違いであったことを後悔しているのです。彼のこの後悔を今日のわれわれも共有しておく必要があると思います。第3章の後半で述べたように、陰謀論はその内容が馬鹿げているがゆえにこそ恐ろしい面もあるのです。陰謀論を笑うものは、いつの日か陰謀論によって手痛いしっぺ返しを喰らわないとも限りません。
カッシーラーが神話を「不死身」であると述べていることの含意については、繰り返し立ち返って考えてみる必要がありそうです。神話が猛威をふるうとき、哲学がいかに無力であったかをカッシーラーは痛いほど嚙み締めていることが伝わってきます。このカッシーラーの無力感は、今日、偽情報が拡散するスピードにファクトチェックが追いつかず、誤りをどれほど訴えても不正選挙陰謀論を信じる人の割合がほとんど変化しないことに無力感を感じているジャーナリストや研究者らの実感と相通ずるものがあるのではないでしょうか。
【感想】
◆軽い気持ちで読み始めた本書ですが、当初の思惑よりもはるかに奥深く、結果的に冒頭でも触れたように、ハイライトを引きまくるハメになりました。といっても、俗に陰謀論と言われるものを、当ブログの読者さんの中には信じてらっしゃる方もいらっしゃるでしょうから、その方々がどう思われるかは、少々分からないのですが。
いずれにしても、私自身は、陰謀論とは程遠い「エビデンス」ベースの情報を信じるタイプ。
なのに、上記ポイントの1番目で触れた、ケネディ大統領暗殺事件に関しては、著者同様「何かしらあったのでは?」と思っておりました。
ただしこの件に関しては、現時点で犯人のオズワルド以外の人間が関与していた、という証拠は出てきていません。
……とはいえ、これをテーマにした小説や映画が量産されて、それを読んだり観たりしている人が大勢いることを思うと、皆、陰謀論一歩手前と言えなくもないのでは?
◆同じく何気に信じている人が多そうなのが、上記ポイントの2番目で挙げた「フリーメイソン」です。
私の場合、信じるも信じないも、そういう結社があるんだよね、程度の知識しかなかったのですが、1ドル札の裏側に記載されたピラミッドの上にある「目」が、「万物を見通す目」といって、フリーメイソンで用いられているシンボルなのだそう。
ちょうど、今回のサムネイルの画像に載っているヤツですね。
また、この図柄でピラミッドに沿って、六芒星と言われる図形(別名「ダビデの星」、イスラエル国旗にも描かれている)を描くと、「MASON」という文字になるのだとか。
テキストで言われても良く分からないと思いますので、画像付きで言及しているブログ記事をご紹介しておきます。
USA1ドル札柄 TEE フリーメイソンの謎 FREEMASON | 古着屋ガレージセール ブログ
先にこういう情報から入っていたら、私も「これは何かある!」と思ったかもしれないんですが、本書で「ロータリー・クラブのような社会奉仕団体とほぼ同じ」と同時に言われてしまったので、ハマりようがありませぬ。
◆もっともこうした、「あまり実生活に影響のない」陰謀論だけなら平和なのですが、むしろ本書のテーマは「陰謀論政治」と著者が名付けたもの。
これは具体的には「自らの政治的影響力を高めるために、何ら躊躇することなく陰謀論を徹底的に利用し尽くそうとするトランプに代表されるような政治手法のこと」を指すのですが、そのトランプ大統領を後押ししている人々の1つが、上記ポイントの3番目で登場するヒルビリー(主にアメリカのアパラチア地域やその周辺に住む、白人労働者階級のコミュニティ)です。
私もこの言葉自体を知ったのが、現副大統領のヴァンスが書いたこの本ででした。

ヒルビリー・エレジー〜アメリカの繁栄から取り残された白人たち〜 (光文社未来ライブラリー)
中古が値下がりしていないのに、現時点で「63%ポイント還元」と激安になっているのは何かのセールなのかも(詳細不明)。
いずれにせよ、ヒルビリーがトランプを支持したのも、オバマをはじめとするエスタブリッシュメントに対する反感だと思うと、素直に腑に落ちます。
◆しかもそのトランプ大統領は、この陰謀論を武器に、支持を広げ、かつ、普通であれば出られない(起訴されていたので)選挙に出馬。
ご存知のように大差で勝って、2期目の大統領に就任しています。
ちなみに例の議会襲撃事件の根拠となった「選挙の不正」については、むしろ募金の口実にしていたとのこと。
たとえば、2020年の大統領選が終わった後、トランプ陣営は「選挙に不正があった」ことを訴える何100万通もの電子メールを支持者たちに送りつけて、支持者たちから寄付を募りました。選挙の不正を暴く法廷闘争のために寄付が必要だと訴えたのです。下院特別委員会のまとめた報告書によると、寄付を募るメールは、襲撃事件があった2021年1月6日まで続き、その間2億5000万ドルを超える多額の寄付が集められたとのことです。もう何がなんだか……。
その辺についてのまとめが、上記ポイントの4番目になります。
結局「オバマは外国で生まれた」から「選挙に不正があった」まで、陰謀論を活用している次第。
◆そして実は、この陰謀論を政治に巧みに活用していたのが、上記ポイントの5番目にあるようにナチスドイツでした。
私は、この「第一次大戦の戦勝国が『ドイツを奴隷化』しようとしているのだと強く主張し、それら国家の背後にユダヤの世界支配の陰謀が潜んでいるのだと訴えていた」というのは知らなかったのですが、当時の人が普通に聞いたら「何を言ってるんだか」になっていたと思います。
実際、それを「一笑に付した」という哲学者カッシーラーは、そのことをその後後悔。
そう言えばここで触れられている「ファクトチェック」の「無力感」同様、特にXはエコーチェンバーの傾向が強いため、今回の参院選でも私のタイムラインには特定の政党を危惧するポストが溢れていたのですが、多分、彼らの支持者のタイムラインにはまったく載らなかったと思います。
結局頭ごなしに馬鹿にしたり否定するのではなく、今一度、色々と考えなくてはならない、と、本書を読んで強く感じました。
今こそ陰謀論を深く知るために!

となりの陰謀論 (講談社現代新書)
第1章 陰謀論とは何か
第2章 陰謀論が生む「パラレルワールド」
第3章 「陰謀論政治」はなぜ生まれるのか
第4章 陰謀論を過小評価してはならない
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【多様性?】『多様性の科学 画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織』マシュー・サイド(2022年08月06日)
【編集後記】
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参考記事:【健康】『ズボラでもラクラク!1週間で脂肪肝はスッキリよくなる』栗原毅(2024年07月08日)

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