2025年07月25日
【記憶?】『なぜあの人は同じミスを何度もするのか』榎本博明

なぜあの人は同じミスを何度もするのか (日経プレミアシリーズ)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事にて、個人的に気になっていた作品。下記内容紹介を読んで、こういう人いる、と思われた方も多いのではないでしょうか。
というわけで、そのアマゾンの内容紹介から。
何度言っても同じミスをする、忘れてはいけない重要な約束を忘れる、昨日と今日で意見が180度変わってしまう、思い込みが激しく話を聞いてくれない……身近なあの人の困った癖も、「記憶」の深層を知ることで対処のヒントが見えるかもしれません。思うようにいかない他人や自分との付き合い方を、心理学的見地から模索します。
中古価格に送料を加算すると定価を超えますから、若干でもお得なKindle版もご検討ください!

【ポイント】
■1.未来の事についての記憶である「展望記憶」朝食後に薬を飲むこと。お湯を沸かした後はガスの元栓を締めること。必要な物をもって出かけること。駅に行く途中にある郵便ポストに郵便物を投函すること。職場に着いたらすぐに上司に昨日の取引先との打ち合わせ結果を報告すること。(中略)
ある一日の予定として、このようなことがあるとしたら、それぞれの予定を覚えておき、適切なときに思い出す必要がある。それが展望記憶の機能である。右のように並べてみると、私たちがいかに多くの予定に関する展望記憶を活用しているかに気づくだろう。
回想記憶と展望記憶の関連を探った研究によって、回想記憶の能力と展望記憶の能力との間には関連がみられないことがわかっている。つまり、「過去のエピソードや知識を記憶し、それを必要に応じて想起する心の機能」と、「未来のある時点ですべきことを記憶し、それをタイミングよく想起する心の機能」は、まったく別物と言ってよいようである。
■2.4年前の自分の支持政党を間違って記憶している人々
たとえば、4年ごとに実施されるアメリカ大統領選挙の際に、ある調査が実施された。それは、現在の支持政党を答えてもらうと同時に、4年前の支持政党も答えてもらう、という調査である。
その結果、実際は4年前と支持政党が変わった人のうち、なんと9割以上が4年前も同じ政党を支持していたと答えたのだ。これはまさに現在の自分の意見に合致する方向に記憶が変容することの証拠と言える。
支持政党を変えた人たちも、記憶の中では自分の支持政党は変わっていない。自分は一貫していると思いたいという欲求が、このような記憶の変容を生み出すのであろう。(中略)
このように、記憶には、思い出すときの自分の心理状態や考えていることと矛盾しないように変容しやすい、といった性質がある。このことは心理学のさまざまな研究によって確認されている。
■3.同じ経験をしても人によって記憶が違う理由
そもそも記憶するのは知覚された出来事なのだが、その知覚さえもが能動的につくられている。つまり、見る人によって違う見え方になっている、聞く人によって違う聞こえ方になっている。(中略)
早く納入してくれないと困ると思っている人の心の中では、交渉中に出てきたいくつかの納期のうちの早い方の時期が記憶に刻まれやすい。納期までできるだけ時間的余裕がほしいと思っている人の心の中では、交渉中に出てきたいくつかの納期のうちの遅い方の時期が記憶に刻まれやすい。そのため双方の記憶にスレ違いが生じることになる。
一緒に旅行した友だちとの間の記憶のスレ違いにも、同じような心理メカニズムがかかわっている。先の例でいえば、寺院に興味のある人の場合、その寺を訪れたという記憶が鮮明に残っていても、寺院より景色や食事に関心のある人の場合は、そんな寺に行った記憶はない、といったスレ違いも起こってくる。
■4.記憶の揺らぎにくさの順は「なに」「どこ」「だれ」「いつ」
ワグナーは、リントンとよく似た方法で自分自身の日常生活における出来事を記録する記憶実験を行い、6年間で約2400の出来事を記録した。その際、出来事ごとに、「だれ」「何」「どこ」「いつ」という4種の情報を記録するとともに、「快−不快度」「感情度」「顕著度」を評定し記録した。
記憶実験では、4つの手がかりを順に提示して、その出来事の想起を行った。
その結果、正答率は4年間で70%から35%へと大きく落ち込んでいくことがわかった。やはり4年ほど経過するとかなり薄れる記憶が出てくることが示された。
そして、記憶の検索手がかりとしての有効性は、「何」「どこ」「だれ」「いつ」の順に高いことがわかった。
やはり時期についての記憶は最も揺らぎやすいようだ。出来事の内容は最も思い出しやすい。
■5.事後情報によって記憶は作り直される
車の衝突事故のフィルムを見せた後で、その事故に関する一連の質問をした。その中に、衝突した車のスピードについての質問が含まれていた。その質問としては、つぎのような5つのバージョンが用意された。
「ぶつかってぺしゃんこになったときのスピードは?」
「激しくぶつかったときのスピードは?」
「どしんとぶつかったときのスピードは?」
「ぶつかったときのスピードは?」
「接触したときのスピードは?」
つまり、言葉づかいによって連想する事故の激しさが異なるように操作した。
その結果、表現の仕方によって推定されたスピードが違ってくることが示されたのだ。(中略)
同じ事故を見ながら、事後の質問において、「ぺしゃんこになった」のようにいかにも激しい事故を連想させる言葉遣いを用いると速く推定され、「接触した」のようにちょっとした軽い事故を連想させる言葉遣いを用いると遅く推定されるというわけである。
【感想】
◆当初、本のタイトルを見た時は、「職場の『困ったちゃん』と上手くやっていく方法」みたいな内容かと思っていました。ところがどっこい、いざ読んでみたところ、「困ったちゃん」どころか、自分がその「困ったちゃん」になりかねないことが判明。
さらには、著者の榎本さんご自身が、第1章から抜き出した、上記ポイントの1番目の「展望記憶」に難のある人だったという……。
ちなみに榎本さんは、「過去の出来事」を覚えている「回想記憶」は良い方なのに、「展望記憶」が絶望的で、子どものころから忘れ物が異様に多かったのだそうです。
この展望記憶に問題があると、仕事面では致命的な失敗をおかしやすく、大事な予定や大事な書類を忘れる等、かなり大変なことに。
ゆえに、アラームやメモ、タイマー等のリスクマネジメントが必須となります。
◆ところが、この「展望記憶」や「回想記憶」に問題が無ければ大丈夫かというと、そうでもありません。
たとえば仕事上でも「確かに言った」「そんなの聞いてない」といった食い違いは、往々にして起こるもの。
そういう思い違いの原因とも言えるのが、第3章から引用した上記ポイントの2番目のお話。
その件について思い出したときの自分の考えと、相反しないように記憶を変容させてしまう、というのは驚きです。
さらには、そもそもの記憶したときの気持ちや考えにも、記憶自体が左右されてしまうという。
その件に触れているのが、第4章からの上記ポイントの3番目のお話です。
それは利害関係がある相手とのやりとりだと、自分に都合のいいように覚えかねませんよね。
◆一方、記憶の対象によって、記憶の薄れ方が違う、ということを述べているのが、上記ポイントの4番目。
これは第5章から引用したのですが、なるほど、言われてみたら思い当たるフシがありました。
というのも、当ブログでも何度か触れているように、私の母はいわゆる認知症を発症しておりまして。
そのことを知らない人が母と話していても、まったく相手は分からない(よく電話で話した旧知の人にも言われます)のですが、とにかく母が認知できないのが、今日が「いつ」かということです。
何日かとか、何曜日かというのは、カレンダー等を見ないとまったく分からず、また何かしらの出来事が起きたのが、昨日なのか、一昨日なのかも思い出せません。
ただ、これはまだいい方で、徐々に相手が誰かも思い出せなくなるのだそうで、まさにここに挙げられた順番だな、と。
◆そして、意図的に相手の記憶を変えることができる、という上記ポイントの5番目のお話は、第6章から抜き出したもの。
このように記憶は簡単に誘導できるため、警察での取り調べ等でも、目撃者に何らかの働きかけがあったら、白を黒にできかねません。
そうでなくとも、この本を読んで「目撃証言は信じられない」と思ったワタクシ。

認知バイアス 心に潜むふしぎな働き (ブルーバックス)
参考記事:【バイアス】『認知バイアス 心に潜むふしぎな働き』鈴木宏昭(2025年07月04日)
……ちなみにこの本、現在「45%ポイント還元」とお得なので、未読の方はご検討を。
結局のところ、記憶なんてたとえ自分が自身満々だったとしても、意外と曖昧だ、ということが良く分かる作品でした。
他人や自分の記憶を見つめ直すために読むべし!

なぜあの人は同じミスを何度もするのか (日経プレミアシリーズ)
第1章 なぜあの人は何度注意しても同じミスをするのか
第2章 なぜあの人はいつも愚痴ばかりなのか
第3章 なぜあの人は言うことがコロコロ変わるのか
第4章 なぜ同じ経験をしているのに記憶がスレ違うのか
第5章 なぜ昔の歌は覚えているのに 最近の歌は覚えられないのか
第6章 なぜあの人と話すと記憶が変わっていくのか
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【バイアス】『認知バイアス 心に潜むふしぎな働き』鈴木宏昭(2025年07月04日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。
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【編集後記2】
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