【仕事術】『世界のハイパフォーマーを30年間見てきてわかった一流が大切にしている仕事の基本』佐藤美和:マインドマップ的読書感想文

2025年06月20日

【仕事術】『世界のハイパフォーマーを30年間見てきてわかった一流が大切にしている仕事の基本』佐藤美和

【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「かんき出版初夏のステップアップフェア」の中でも人気の高い仕事術本。

テーマごとに章を分けて、個々のTIPSを挙げていくスタイルは、当ブログの読者さん向きだと思います。

アマゾンの内容紹介から一部引用。

著者がこれまでにコンサルタントとして実際に関わった顧客企業は、延べ３０００社。日本を代表する企業や大手外資系企業が中心です。それらの企業で成果を出し続けている１万人以上の一流のビジネスパーソンを分析した結果、一流の人の「思考」と「行動」には、びっくりするくらい共通点があることがわかりました。業界、職業、職種、職位、年次、世代、国、時代が違ったとしても、根っこは同じだったのです。
この一流に共通する「思考」と「行動」をとりだしてやってみることで、いつでも、どこでも、誰でも、成果につなげることができます。
本書は、ビジネスパーソンならば、誰にでも必要な「思考」と「行動」を50個に絞り、「一流の人はみんなこうやっていますよ」ということをまとめました。50個の選定にあたっては、仕事を教えてくれる人がそばにいない環境で働いている人が知りたいことや、今さら上司や先輩に聞くのは気が引けてしまうようなことを網羅しています。

送料を加味した中古よりは、Kindle版の方が500円以上お買い得です！

【ポイント】

■1.すべての資料は電子媒体で保存する

　資料のファイリング作業は、頭脳も時間もたくさん使うのに何も生み出しません。
「電子媒体にするのなんていつでもできる。あとから紙の資料が必要になるかもしれないから、しばらくはそのまま取っておこう」と考える人がいます。
　でも、現時点で使う予定がないものが時間を置いて必要になることは、まずありません。必要になったとしても、紙でなければならない理由はありません。万一、紙媒体が必要だったら、スキャンした資料を印刷すればいいだけです。いずれは電子化してシュレッダーするのなら、決断を先送りにせずに、すぐにやってしまうべきです。
　ルールを決めて、電子化した資料をフォルダに保存しておけば、何度かクリックするだけでお目当てのファイルにたどり着けます。OCR（手書きや印刷された文字をスキャナなどで読みとって、デジタルの文字データにする方法）をかけておけば、キーワード検索だってできます。リモートでアクセスできるフォルダに保存すれば、急に在宅ワークをすることになっても、仕事が滞ることはありません。

■2.あいまい語をなくす

　人によって定義や解釈が異なる言葉を「あいまい語」と言います。
　一流の話は、誰が聞いても解釈にブレがありません。あいまいな言葉を使わないからです。(中略)
　まず、部下にどう説明したのかを再現してもらい、その中に出てきたあいまい語を5W1H（When「いつ」、Where「どこで」、Who「誰が」、What「何を」、Why「なぜ」、How「どうやって」）を手がかりにひとつずつ、考えてもらいます。
「状況を慎重に判断しながら、真に必要な支援に努めていきます」
　この説明の「慎重に」「真に必要な」「支援」「努める」はあいまい語です。
「努める」というのは、
When：いつやるの？　
Where：どの部門のどの業務の話？　
Who：担当は誰？　
What：何をするの？　
Why：どうしてそれをするの？　
How：どうやってやるの？　
　こんな感じで、言わんとしていることをはっきりさせていきます。

■3.アサーションは「DESC法」で

　一流は総じてアサーション上手です。アサーションとは、相手を尊重しつつ自分の意見を主張するコミュニケーション方法のひとつです。自分の意見ははっきりと言いますが、断る理由を客観的に述べるので、相手の感情を害さなくて済みます。
　アサーションのひとつのやり方に「DESC法」があります。
　DESC法とは、Describe（描写する）、Express（説明する）、Suggest（提案する）、Choose（選択する）の順に、目の前の出来事について自分の意見を述べる方法です。(中略)
D：「この仕事をはじめる前に、ご依頼内容と価格について契約書で合意をしました」
E：「契約は、あとになって思っていたのと違ったというトラブルを避けて、お互いに気持ちよく仕事をするために交わすものです」
S：「ご依頼の内容をやらないということではありません。最初に合意した内容が変わるのであれば、契約をし直してから、取りかからせていただきたいのです。いかがでしょうか？」
C：「新しい契約書のドラフトを明日メールでお送りしてもよろしいですか？」
　一流はいつでも、冷静に自分の考えや想いを伝えます。

■4.難しい交渉は1勝9敗のWin-Winを目指す

　交渉でWin-Winを実現するのはとても難しいことです。特に、お互いの利益が相反するような場合は、Win-Lose以外の結果は得られそうにもありません。
　こういうとき、一流は、1勝9敗のWin-Winを目指します。(中略)
　たった1勝であっても、最も大切なことさえ承諾してもらえれば、Win-Win交渉の成立です。
　例えば、オフィスの契約更新時にこちらは賃料を値上げしたい、相手は値下げしてほしいという立場で交渉をするときはどうしたらいいのでしょうか。
　一流は、交渉前に相手の立場に立ってみて、相手にとってのWinは何なのかを想定します。それから、相手の要求を「こちらにとってはそれほど大事ではないこと」と「絶対に譲れないこと」に選別していきます。
　相手は、契約更新時の支出が減るのであれば、毎月の賃料については妥協してくれるかもしれません。
　一方、こちらは月額賃料の値上げはどうしても譲れません。
　相手と自分の要求を考え合わせると、賃料を値上げする代わりに、更新料を割り引くという交渉の方針が見えてきます。

■5.部下はSBIで具体的に褒める

　SBIとは、Situation（状況）：どんなときに、Behavior（行動）：部下はどんな行動をとったのか、Impact（影響）：どんないい結果につながったのか、の3つの要素を具体的に示しながら褒める方法です。
「さっきの会議ではよかったよ」ではなくて、
・Situation（状況）：「さっきの会議で、最初は誰も意見を出さなかったでしょう？」
・Behavior（行動）：「そうしたら、『思いつきレベルのことでもいいんですか？　ちょっと変なことかもしれませんが、議論のたたき台にしてください』と言ってくれたよね」
・Impact（影響）：「あの発言をきっかけに場の雰囲気が変わって、最終的には全員が発言してくれた。その結果、みんなが納得できる結論を出せたね」
　こんなふうに何がどうよかったのかを具体的に褒めます。

【感想】

冒頭でも触れたように、異なるテーマである章ごとに6～8個のTIPSを配し、合計50個のTIPSを学べる仕様になっている本書。

いわゆる「どこから読んでもいい」系のスタイルなので、ご自分の気になる章からパラパラ読み始めてもいいと思います。

今回は特に、私自身が避けていたり、知らなかったものを中心にセレクト。

例えば第1章からの上記ポイント1番目の電子化は、かれこれ10年以上逡巡していることなんですよね。

一応、調査の立ち会いの関係で、申告書作成の資料もちょうど10年保存しなくてはいけなくて。

No.5930 帳簿書類等の保存期間｜国税庁

とはいえ、10年以上前の資料は、結局紙のままで廃棄したので、電子化しなくてもよかったという話もあるという……。

もちろん将来的に、事務所の規模を縮小するようなことがあれば、書類を置く場所がありませんから、必然的に電子化せざるをえないのですが。

◆また1つ飛んだ第3章からは、上記ポイントの2番目の「あいまい語」のお話をご紹介。

確かに私も「ちゃんと」とか「しっかり」みたいな抽象的な言葉は、仕事では使わないようにしているものの、ここで指摘されているように5W1Hで詰めるというのは、考えもしませんでした。

ちなみに、この引用部分の「詰め」の作業は、ある化学メーカーで実際に行われていたそうなのですが、本書によると、あいまい語をなくす努力をすることで、高い業績を出せるようになったのだとか。

続く上記ポイントの3番目の「DESC法」は、当ブログでも初めて登場した手法です。

これは本書の第4章から引用したのですが、なるほど、感情的にならずに淡々と、このひな型にそって発言すれば、うまくアサーションできそうな。

なおこの第4章では、おなじみPREP法使用時の注意点についても触れられており、これが参考になりました。

なんでもPREP法は、相手が自分と共通の認識がある場合を前提としているため、それ以外だと上手くいかないのだそう（詳細は本書を）。

◆さらに第5章から抜き出した、上記ポイントの4番目の「1勝9敗のWin-Win」の考え方も、私は初めて知ったもの。

こちら、本来は数多く譲ることで、絶対に譲れないことを押し通すやり方なのですが、ぶっちゃけ交渉テーマが合計10個もあることはレアだと思います。

そしてあまり譲歩できる部分がなければ、相手も単純には了解してくれないかも。

となると、むしろ、「1つのオレンジを分けるのに、皮と実で分ける」みたいな交渉を目指す方がいいかもしれません。

ドイツに学ぶ最強の交渉術　「役割交換」の訓練法とは｜日経BizGate

実務だと、値上げする代わりに、支払時期を遅くする、みたいな話が多いんですが。

◆一方、第6章から引用したのが、上記ポイントの5番目の「SBI」です。

褒め本もそれなりに、ご紹介してきましたが、このTIPSも当ブログ初登場のハズ。

……「SBI」でブログ内検索をしたら、「SBI証券」等の会社名ばかりヒットするんですが。

いずれにせよ、こちら部下を褒めるときにはぜひ活用したいもの。

なお、部下を叱る場合には、この「SBI」を同じように使った後、「Alternative Behavior（こうすればよかった行動）」と「Alternative Impact（こうすればよかった行動をとっていた場合の影響）」を付け加える、とのこと。

こちらはややデリケートなので、本書にて具体例をご確認ください。

いつでも、どこでも、誰でも成果を出すために読むべし！