2025年05月15日
【経営指南?】『会社をつぶさない社長の選択』松岡靖浩

会社をつぶさない社長の選択
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、本日が最終日となる「かんき出版 初夏のステップアップフェアビジネス・実用・学び直しに役立つ1000冊!」の中でも一番人気の作品。まだ記事投稿して1日しか経っておりませんが、ダントツでお求めいただいていたので、これは読まねば、と思った次第です。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
「知りませんでした」「無知でした」「そんなことできるのですか……」
「倒産させない会社を作ること」をミッションに、500社以上の会社を経営危機から救ってきた税理士が、経営者が頭を悩ませるリアルな53の「選択」に答える!
送料を加味した中古よりも、Kindle版の方が300円弱お得となります!

【ポイント】
■1.銀行からは創業時に借りておくちなみにこの件に関して、よくある失敗談として挙げられるのが、創業時の借入れです。
「借金はしたくないから自己資金だけで事業をやっていくんだ」、そう意気込んで借入れをせずに無理して、なんとか大赤字で1期目を終えたとします。そしてようやく自己資金だけでは厳しいと考え、銀行や公庫から借入れすることを決断。一生懸命、今後の事業計画を練り、膨大な資料も作成して、いざ融資の申し込みをする。
しかし結果としてはどこからもすべて断られてしまう……というもの。
基本的に融資の審査は、決算書が出ている時点で事業計画ではなく実績ベースで審査に入ります。そのため、赤字で決算をしてしまったら「実績として赤字になっていますから、お金は貸せません」と断られてしまうのです。
事業を1期続けて赤字の実績を作ってしまったのであれば、翌期以降も期待はできないと判断されるわけです。
■2.特許は出口戦略が大事
このように特許は、権利が保護されている期限が切れそうになると、製品そのものの価値が落ちてきます。ですから、特許を取ろうとしているお客様には、「特許を取ったら最初のおいしい利益を取って、売却することを検討してください」と伝えています。
製品のライフサイクルには「導入→成長→成熟→衰退」という4つのフェーズがあります。成熟から衰退のフェーズに差し掛かっているタイミングで特許を売却しようとしても、実際に売れることはほとんどありません。
特許として一番価値が高いタイミングは、導入から成長に差し掛かったときですから、このタイミングで売却を検討するのが一番利益を出せると考えるべきでしょう。
資金力豊富な大手の企業であれば、戦略はまったく異なります。しかし、中小企業の事業規模で考えると、優れた特許の製品は買い叩かれるか、権利保護の期限が切れ、真似されてまったく売れなくなり、市場から真っ先に消えていくのが一般的です。
■3.税金はクレジットカードで支払う
最近では税務署をはじめとした公的機関も、いかにキャッシュレスに対応するかという流れで動いています。私も納税する際は、昨年からほぼクレジットカードで支払うようになりました。
クレジットカードで税金を支払う場合、手数料を取られますが、実はその手数料は支払額の1%にも満たない、非常に低い額です。ですから、クレジットカードのポイントを考えると、現金よりもクレジットカードで支払ったほうがお得なことが多いのです。
たとえば、私が使っているクレジットカードの場合、ポイントが1.5%つきますので、クレジットカードと手数料の差額が利益になります。
私のクライアントで納税額が大きい方がいらっしゃるのですが、その方には確定申告と自動車税、そして自宅の固定資産税は全部クレジットカードで支払いをしましょうと提案し、クレジットカードで支払ってもらっています。
■4.借入金の一括繰上返済は禁じ手
一見すると借金を繰上返済しているわけですから、いいことのように感じますよね。しかし、会社を経営する上で借入金の一括繰上返済は、禁じ手に近い愚行です。何がマズイのかと言うと、銀行の売上がなくなってしまうということが問題なのです。
銀行は会社に融資をする際に返済期間を設けています。銀行は約定通りに融資を返済してもらうことで、利益を出すことができるビジネスモデルになっているのです。
ですから、繰上返済をするということは、銀行の売上をすべて消してしまうということ。銀行にしてみると、取引先からの売上がいきなり消えるわけですから、「この会社はいきなり何をしてくれるんだ」となるのです。(中略)
資金繰りという面から考えると、借入金の一括返済はデメリットこそあれ、メリットがほとんどないのです。もし仮に、銀行に一括返済をして、その後業績が悪くなって銀行に改めて「融資をお願いします」と言っても、下手をすると貸してもらえないかもしれません。業績が悪くなってから借りに行くというのもそうですが、一括返済をしたという実績があまりにも印象がよくないからです。
■5.総代理店契約には注意を
たとえば、中小企業のメーカーで非常に売れ行きがいい商品があったとします。ある程度売上が上がってくると、大抵の場合「うちで総代理店を任せてもらえませんか?」と、大手の商社の営業担当者が訪問してくるようになります。
何も知らない中小企業の社長は、「うちの商品をこんな大きな会社が総代理店として販売してくれるんだ」と舞い上がって総代理店契約を結ぶのですが、これが実は地獄の始まりとなるのですから、恐ろしい話です。
総代理店契約は、独占販売権を渡すのと同義です。つまりは、総代理店契約をした会社にしか商品を卸せなくなるということです。これはある意味、自分の首を絞めるのと同じで、相手が売り方を好き勝手できてしまうということなのです。
たとえば、資本力がある商社が総代理店になった場合、契約後にいろいろと理由をつけてその商品を売らない可能性もあるのです。「もっと卸値を下げてくれないと、売りませんよ」、そういうことが資本力がある会社であればできてしまいます。
【感想】
◆内容がある程度専門的でありながらも、分かりやすくまとめられた作品でした。基本的には、すべての項目についてタイトルにあるように、二者択一の「選択」が提示されている仕様(アマゾンの詳細な内容詳細ご参考のこと)。
それぞれが主に中小企業の経営層には、かなりお役立ちな内容だと思いますし、中には実際に経営をしていないとピンとこないであろうTIPSもありました。
たとえば、第1章から抜き出した、上記ポイントの1番目の創業時の借り入れ。
「借金はしたくない」というのは、個人レベルならアリでも、会社を経営する際には、危険な思い込みであることが分かります。
現金預金さえあれば、基本的に会社は倒産しません。仮に1億円の借金があったとしても、1億円の現金があれば問題はないのです。この辺は特にご留意いただきたく。
「多額の借金=倒産」、これを連想される方は多いのですが、借金をして倒産した会社はありません。 会社が倒産するのは手持ちの現金預金がなくなるときです。
◆続く第2章では「経営戦略」がテーマで、「客単価か客数か」ですとか「外注化か雇用か」といった「選択」が登場します。
ただ、個人的に知らなかったのが、上記ポイントの2番目の特許のお話。
特許というものは、保護期間(20年間)が切れるまで、自社で活用するものだと思っていたのですが、これは大きな誤りだったようです。
ただ、その特許を用いて製造等していた場合、その製品を引き続き製造するには、売却先にロイヤリティーを払わねばいけないハズ。
逆に、その製品に見切りをつけて、他のことをやるのであれば、特許売却は最善手でしょうけど。
◆一方、第3章は「税務」がテーマであり、著者の松岡さんは税理士である以上、ここは本業絡みでお得意でしょう。
ただ、税務関係はどっちが有利かというのは、計算(シミュレーション)すれば分かることが多いので、「選択」という意味ではあまり論点にはならないかもしれません。
とはいえ、上記ポイントの3番目のクレカでの納付というのは、まだあまりやっている人もいないかと。
もちろん、ご自身のクレカのポイント次第では、ほとんど変わらかったり、損をするケースもありますのでご注意ください。
たとえば、楽天カードの場合、税金等のポイント付与率は0.2%なので、クレカでの納税手数料を下回っています。
カード利用獲得ポイントの還元率が異なるご利用先|楽天カード
一応、手数料を試算するサイトがあるので、こちらもご参考まで。
納付手続きの前に │ F-REGI 公金支払い - 国税 クレジットカードお支払サイト - クレジットカード納付
◆また、第4章のテーマは「資金繰り」であり、実は松岡さんが最も得意とするのは、こちらかもしれません。
ここでまた私が知らなかったのが、上記ポイントの4番目の「借入金の一括繰上返済」の件。
上記ポイントの1番目でも、借金はできるときにしておけ、というお話がありましたが、こちらもそれに近いです。
と言いますか、むしろ銀行にとっての「飯のタネ」をチャラにしてしまうワケですから、「いきなり何をしてくれるんだ」となるのも当然でしょう。
また、借入ではないですが、「補助金」と「助成金」の性質の違いも押さえておきたいところ。
助成金は要件が揃えばもらえますが、補助金は領収書をもらってから申請するので、少なくとも補助金と同額以上のお金がいるのだそうです。
◆そして上記ポイントの5番目は、第5章からのもの。
章題が「つぶさない社長の選択」というだけあって、この「総代理店契約」というのも、一歩間違うとかなり危険です。
総代理店契約というのは、その製品の独占販売ができるような契約です。ですから、場合によっては非常にリスクが高い契約だと言えます。とくに中小企業が大手企業と契約する際に総代理店契約を結び、つぶされるというケースはよくある話です。さらには、本当につぶれそうになったら、「うちがお金を出すから傘下に入りませんか?」といって、工場や人、ノウハウを手中に収めたりするのだとか。
実際松岡さんは、このようなケースを何度も見てきているそうですから、大きな売上が見込めたり、有利な条件であったとしても、断った方が良さげですね。
いずれにせよ本書は、何故にセール記事だけで一番お求めいただけたのか謎ですが、私個人としては「買い」の1冊でした。
会社をつぶさないために読むべし!

会社をつぶさない社長の選択
第1章 起業時の選択
第2章 経営戦略の選択
第3章 税務の選択
第4章 資金繰りが悪くなったときの選択
第5章 つぶさない社長の選択
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【編集後記】
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【編集後記2】
◆昨日の「かんき出版 初夏のステップアップフェアビジネス・実用・学び直しに役立つ1000冊!」の記事で人気が高かったのは、この辺の作品でした(順不同)。
会社をつぶさない社長の選択

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