2025年04月25日
【言語学習】『外国語独習法』大山祐亮

外国語独習法 (講談社現代新書 2773)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、昨日発売されたばかりの言語学習本。書影にある「100言語マスター」の文字に圧倒され、思わず読んでしまいました。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
教科書選びから単語暗記まで、なぜ私たちは語学に躓いてしまうのか。
スラスラ読めてコツが身につく、「ここまでやればいい」がわかる。
100の言語をあやつる若き天才学者による、外国語学習の決定書!
どんな言語にも使える!
挫折知らずの外国語独習50のルールを大公開!
まだ中古が値下がりしていない一方、Kindle版は「5%OFF」となっています!

【ポイント】
■1.最終防衛ラインをつくる私たちが生きている現代は、とにかく忙しい。誰もが何かしらの仕事や課題に追われています。そんな生活をしていると「今日の語学はもうやらなくてもいいや」という気持ちになることもあるでしょう。ですが、外国語独習において一日の勉強時間がゼロになるのはぜったいに避けたいところです。
そんなことを言われても困る。私には目の前の生活があるんだ──。そんな人におすすめなのが、どんなに忙しくてもこれだけはやるという「最終防衛ライン」を決めることです。5分くらいで済み、なおかつ別のことをしながらでも手軽にできるものが良いでしょう。
お風呂上がりにドライヤーをかけながら、トイレに入りながら、ちょっと飲み物を飲みながら。時間をとられてしまうという意識にならずにできるものを「最終防衛ライン」として用意することで、最低限の肯定的な要素を確保します。
私のおすすめは、既に勉強したことの復習か、Duolingoのような語学学習用のアプリを使うことです。
■2.教材を選ぶなら文法重視のものを
教材には、おおきく分けて文法重視のタイプと会話重視のタイプがあります。文法についての解説が充実している教材と、イラストなどと一緒に会話文が載せられている教材といえばイメージしやすいでしょうか。私は前者の文法重視の教材のほうが使い勝手が良いと考えています。極端に会話に特化したものはおすすめしません。
なぜなら会話が最大の目的だったとしても、複雑な会話をしようとすればするほど、結局は文法が重要になってくるからです。自分が一方的に話すだけであれば、簡単な表現の組み合わせでもどうにかなります。しかし相手が話した内容をきちんと理解するためには、かならず文法の知識が必要になります。発音・文法・聴解・内容の4つの能力が揃ってはじめて有意義な会話ができるようになります。ゆえに会話に特化した教科書ではなく、文法としっかり向き合った教科書を選ぶのがベターな選択です。
■3.「文の中心は動詞」が鉄則
私たちは文章を読むとき、普通は先頭から読みます。多くの言語では主語が文の先頭に置かれるし、目的語などがある場合も多いので、名詞に意識がいきがちです。わからない単語に出くわすたびに辞書を引くスタイルで勉強していると特にそうです。しかし、文において一番重要な役割を果たすのは動詞です。ここを強く意識しましょう。文を解釈する際には、動詞に注目したほうがうまくいきます。(中略)
英語は特に動詞がどれかを判別することが読解において重要になる言語ですが、英語以外の言語でも動詞が一番重要だというのは変わりません。名詞を辞書で調べるだけでは、文の作り方はわかりません。動詞がどのような名詞をどの位置にどの形で置くことを要求するのかを知ってはじめて、文の構造がしっかりと理解できるようになります。
読者のみなさんも、自分が学習している言語の動詞が他の品詞にどう影響しているのかを注目してみてください。
■4.初級レベルでは精読を優先
では、どういう場合に精読をするのがよくて、どういう場合に速読をするのがいいのでしょうか。大前提として認識しておくべきなのが、精読をしようと思ってもできない言語は、速読もできないという事実です。速読は精読ができるレベルの語学力があってはじめて成立するものです。だからこそ、初級レベルの段階でまずやるべきは精読です。速読は中級以降のレベルになってからとりかかりましょう。(中略)
精読の場合、わからない単語は辞書を引いて調べます。そのとき、辞書で引いた単語の最初に出てきた訳語をメモするだけではなく、どんな単語や文型と一緒に使われるのかも見ておきましょう。(中略)
精読では、読めないところを飛ばさない努力が必要になります。 避けなければならないのは、わからないところを調べずに放置することです。目の前の文章の成り立ちを理解することはもちろん、次に同じ構造の文章が出てきたときにパッと把握できるようになるのが精読の目標です。わからないところは徹底的に辞書や教科書・文法書で調べましょう。
■5.発音・リスニングのコツを知る
大原則として、自分で発音できない音は他人がしゃべっても聞き取れません。ですので、発音練習は必ずリスニング練習の前にやります。まずは一単語の発音から始めて、フレーズ単位、最終的に文や段落へと進みます。
自分で発音するのに慣れてきたら、リスニングの練習に進みましょう。ただし、いきなり母語話者が日常会話で話すような速度に挑戦するのはおすすめしません。上達するには段階を踏むのが賢明です。初級の教科書についている音声教材の場合はゆっくり読み上げてくれる場合も多いですが、YouTubeの動画などで練習をする場合には、最初は動画の再生速度を0.5倍か0.75倍にして聴きましょう。
さらに、応用的な練習方法として、オーバーラッピングやディクテーションという方法もあります。簡単に言えば、リスニングというインプット作業と同時に、音読や書き取りといったアウトプット作業を行う練習方法です。
【感想】
◆今回もまた、ハイライトを引きまくりました。ただし難しかったのが、私自身が語学を勉強する気がほとんどない(スイマセン)のに、本書のように実践までを期待する本を、どのように紹介すべきか、ということ。
特に本書の場合、英語のみならず、英語以外の言語も対象とし、あわよくば複数の言語を同時に学習する、という理想をも抱えています。
そういった、複数言語同時学習のコツを取り上げるべきか、はたまた言語マスターだからこそ知りえた、一般的な言語学習法に注目すべきか……。
正直迷ったのですが、さすがに前者の「複数言語同時学習」をされる方はレアだと判断し、後者の汎用性の高い言語学習法をセレクトしました。
その結果、本書の持つ独自性は薄れることになったのですが、「どの言語にも共通する=英語学習にも使える」TIPSになったのではないか、と。
◆さて、本書の第1章では「世界の言語地図」と題して、世界中の言語の様々な情報や知識を収録しています。
仮にご自身が特定の言語を学びたい、と言った場合、この章にてその言語がどんな立ち位置にあるかが理解できる仕様。
逆に、この章で立ち位置を確認して、新たに学びたくなる言語が出てくるかもしれません。
ちなみに私たち日本人が英語の次に何か学ぶとしたら、この章を読む限りでは、やはりスペイン語が向いていそうな気がします。
そうとは知らずに私は高校生のときに、第二外国語としてドイツ語を選択し、何とか自己紹介ができる程度には話せるようにはなりましたが、5年間でこの程度か、と悲しくなる次第……。
◆続く第2章からは、各章ごとにテーマがある一方、章をまたいで語学学習の「ルール」なるものが登場します。
上記ポイントのの小見出しも、基本的にはこのルールに沿っており、たとえば第2章から抜き出したのが、上記ポイントの1番目の「最終防衛ライン」のお話。
引用した後の部分でも
たとえ一日5分しか時間がとれなかったとしても、時間があるのに5分しかやる気にならなかったとしても、継続できていれば万々歳です。継続さえできていれば、それだけで外国語独習者としては勝ちです。何度でも繰り返しますが、語学学習において一番避けたいのは、すべて放り出してやめてしまうこと。それ以外を気にする必要はありません。と言われており、続けることの重要性が強調されています。
また、他のルールでも、頑張りすぎて挫折するくらいなら「カメのペース」を保つよう指南しており、そちらにも通じるな、と。
◆一方第3章は「教材はこうやって選ぶ」というテーマであり、まさにそれに合致した、上記ポイントの2番目のお話を引用。
語学学習というと、つい会話に目が行ってしまいますが、「まず文法ありき」なんですよね。
本書では具体的に「文法重視」の教科書や、会話重視でもしっかり文法もやってくれる教科書のシリーズ名を掲載していますが、実際に英語以外の言語でも出版されているようです。

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また第4章以降、第6章まで「独習の秘訣」が続き、まず第4章では「文法編」が登場。
ここからは、上記ポイントの3番目の動詞のお話を抜き出しましたが、そこまで動詞が重要だとは、今般初めて知りました。
もう1点、割愛した中で留意したいのが、主語、動詞、目的語の語順のお話です。
日本語(主語、目的語、動詞の順)と英語(主語、動詞、目的語の順)とでは順番が違いますが、欧州の言語の多くが英語タイプではあるものの、実は日本語のタイプの方が一番の多数派なのだとか。
◆さらに第5章の「読解、暗記編」からは、上記ポイントの4番目の精読のお話を選んでみました。
なるほど、まず精読ありきで、地ならしをしてから速読に移るべし!
なお、速読の目標は、「日本語と同じような感覚で長い文章を読めるようになること」なのだそうです。
また割愛した「暗記編」の方では、どれか特定のやり方に頼るのではなく、複数の暗記テクニックを併用することが推奨されていましたので、ご留意を。
そして上記ポイントの5番目の「発音・リスニングのコツ」は、第6章の「会話・発音、発展編」からのものになります。
リスニングの前に発音をしっかり、というお話は、類書でも読んだ記憶がありましたが、動画の再生スピードを落とす、というのもアリなんですね。
また、最後のオーバーラッピングやディクテーションについても、本書ではキチンと解説されていますので、そちらもご覧ください。
言語学習全般に効き目がある1冊!

外国語独習法 (講談社現代新書 2773)
はじめに
第1章 世界の言語地図
第2章 外国語習得の心構え
第3章 教材はこうやって選ぶ
第4章 独習の秘訣~文法編~
第5章 独習の秘訣~読解、暗記編~
第6章 独習の秘訣~会話・発音、発展編~
終章 多言語学習のすすめ
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【編集後記】
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