【ハラスメント】『「ハラスメント」の解剖図鑑：アウト or セーフの「境界線」と「根拠」がわかる！全48種のハラスメントを完全網羅』宮本剛志:マインドマップ的読書感想文

2025年04月24日

【ハラスメント】『「ハラスメント」の解剖図鑑：アウト or セーフの「境界線」と「根拠」がわかる！全48種のハラスメントを完全網羅』宮本剛志

「ハラスメント」の解剖図鑑：アウト or セーフの「境界線」と「根拠」がわかる！全48種のハラスメントを完全網羅

【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、本日が最終日となる「ゴールデンウィークセール第一弾」でも人気で、昨日の前日ランキングでも上位に付けていた1冊。

多くの方にセール期限内にお届けすべく、本エントリーの投稿時間も早めております。

アマゾンの内容紹介から一部引用。

2022年4月に中小企業でもパワハラ防止対策を実施することが義務付けられました（大企業は2020年から）。
職場でも、ハラスメントはパワハラだけでなく、マタハラ、セクハラ、モラハラ、アルコールハラスメントなど、多岐に渡ることが周知されてきています。
それにも関わらず、労働局などに寄せられる労働相談のトップはいまだに「いじめ、嫌がらせ」で、大企業では法律施行後も年間1万8千件以上のパワハラ相談が寄せられています。
研修などで社員教育を進める企業も多くありますが、担当者でさえ、「何がハラスメントにあたるのか」「どうしたら防げるのか」を理解していない場合が多いのが実情です。
本書は、企業や官公庁、学校にて年間150回程度のセミナーを行い、年間300人以上から個別の相談を受け、さまざまなハラスメントを解決に導いてきた著者が、職場で起きやすい全48種のハラスメントを解説します。

実は中古がまったく値下がりしていないため、このKindle版が900円弱お買い得です！

【ポイント】

■1.パワハラの基準とは？

　カウンセリングをしていると、「部下がパワハラと感じたらパワハラですよね？」とよく質問されます。世間にもこのように思い込んでいる人が少なくありません。はたして、本当にそうなのでしょうか？
　パワハラか否かを判断するためには、パワハラに該当する「3要素」を知っておくことが大切です。3要素とは法律上の定義にある以下の①～③のことです。
「①職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるもの」（改正労働施策総合推進法［通称：パワハラ防止法］より）
　①～③のすべてに当てはまるものがパワーハラスメントとなります。　
　では、これを誰が判断するのでしょうか？
　それは第三者です。相談があった場合、お互いの言い分を聞き、時には周囲の同僚にも話を聞いた上で判断されます。第三者によって、パワハラなのか指導なのか線引きする必要があるのです。
　つまり、部下（相手）がパワハラと感じたからといって、パワハラであるとは限らないのです。

■2.「ちゃん」付けもセクハラ

　ところで、田中さんが山田さんを「太郎ちゃん」と呼んでいる点はどうでしょうか？　実は、「ちゃん付け」はセクハラになります。労災の基準にセクハラがあるのですが、セクハラの心理的負荷の「弱」の具体例として、「○○ちゃん」と明記されています。
　現在は「さん付け」に統一する企業が増えています。例えば、ニトリは、全員「さん付け」のようです。役職でも呼ばないようです。お互いに人格的には平等なので、「さん」で何も問題ないのです。
「ちゃん付けしているのは、親しみを込めているからだよ」と言う人もいるでしょう。そういう人に、「全員に○○ちゃんと言っているのですか？」と聞くと「全員には言っていない」と言われます。
　その差はなんでしょうか？　結局お気に入りの社員のみ「ちゃん付け」しているのだと思います。お気に入りの社員だけ「ちゃん付け」して、距離が近いと錯覚した結果、ボディタッチなどの接触行為に発展することもあるでしょう。誰にも「さん付け」することは、セクハラ防止につながるといえるのです。

■3.LGBTQのカミングアウトを受けたら自然に対応する

　例えば、あなたは部下から「実は私、レズビアンなんです」と言われたらどうしますか？
　最近はいわゆる「LGBT理解増進法」が成立し、注目されています。そのため、「余計なことは言ってはいけない」と思い、カミングアウトを受けた際に固まってしまう管理職がいます。
　また、驚いて不快な表情をしてしまう管理職もいます。
　もしくは、「それは大変だね。何に困っているの？」と、大変なことや困ることと決めつけた発言をしてしまうケースもあります。これは一見親切そうですが、偏見に基づく発言です。なぜなら、「LGBTQ＝大変なこと＝困っていることがあるはず＝可哀そうな人」という偏見の公式が頭に浮かんでいる可能性があるからです。
　ではどうするのか？　答えは「自然」です。つまり、自然に接してほしいのです。例えば、
「そうだったんだね。話してくれてありがとう」
　と受け止めましょう。つまり、他の話題で部下から話されたときとまったく同じでいいのです。

■4.ハラスメントの被害者を責める対応はセカンドハラスメントに

　Aさんは取引先のB専務を訪問した際、「この条件が呑めないなら担当を変えろ！」「明日までにやれ！」「おたくと付き合いがなくなってもいいんだよ、別に」と無理難題を押し付けられました。
　ここで揉めると会社にも迷惑がかかると思い、Aさんは我慢していました。
　しかしある日、B専務から皆の前で怒鳴られ、我慢の限界が来ました。部長に「ハラスメントされました」と相談したところ、部長は「キツイね」と同情しつつも、「毎日取引先に行くわけではないから」「どこでも取引先とはいろいろ問題があるから」と言って話題を避けている感じでした。
　また、「そもそもなんで関係が悪くなったの？」「即レスを怠ったんじゃないの？」「もっと専務に自分から電話すれば優しくなるよ」と、Aさんに改善を求めました。
　部長としては、大口の取引先なのでできる限り穏便に事を収めたいという心理が働いていました。戸惑う気持ちはわからなくもないですが、部下の気持ちに一切寄り添っていません。
　今回のケースは、セカンドハラスメント（二次被害）といえるでしょう。

■5.就活ハラスメント防止のためのチェックリスト（抜粋）

●本籍に関する質問
例「生まれたところはどこ？」
●家族構成や家族の職業・地位・収入に関する質問
例「お父さんは、どこの会社に勤めているの？　役職は？」「家業は何？」「家族の収入は？」(中略)
●資産に関する質問
例「住んでいる家は一戸建て？　持ち家？　借家？」
●思想・信条、宗教、尊敬する人物、支持政党に関する質問
例「実家の宗教は？」「信条としている言葉は何？」「何党を支持しているの？」「尊敬する人物は？」「自分の生き方についてどう考えているの？」「今の社会をどう思う？」「将来、どんな人になりたいの？」「愛読書は？」「何新聞を読んでいるの？」

【感想】

◆私自身、会社員を辞めてから30年以上経つので、ハラスメントの知識は、メディア等で知るものに限られています。

具体的には「セクハラ」「パワハラ」「カスハラ」辺りと、最近知った「モラハラ」「マタハラ」辺りでしょうか。

聞いたことがある程度を合わせても10前後のところ、本書は「全48種」も収録。

中には「え？そんなのも？」と思うものもありましたが、逆に知らないと無意識のうちに、ハラスメントをしてしまう可能性もあります。

そういう意味では、特に会社勤めをされている方は、普段から気をつけているいないに関わらず、本書ないしは類書を、1度は目を通しておくべきかもしれません。

◆ということで、まず第1章では、その私でも知っている有名どころのハラスメントについて解説が。

ただし、たとえばパワハラには「6類型」があるため、それぞれについて節を設けています。

このうち、無理な仕事を押し付ける（「過大な要求」）のがパワハラなのは分かるのですが、たとえば障がい者雇用の部下に対して、必要以上に気を遣って無理をさせないことも、場合によってはパワハラ（「過小な要求」）に該当する、というのは意外でした。

また、「冗談だった」「そんなつもりはなかった」「気合を入れるつもりだった」という、「パワハラ加害者の3大言い訳」に覚えのある方は、くれぐれもご注意ください。

一方で、上記ポイントの1番目に挙げたように、パワハラか否かの判断をするのが「第三者」だというのは、私は知りませんでした。

被害者が忍耐強かったり、自責思考のある方がパワハラだと思ってなくとも、第三者が判断してアウトだったらパワハラに該当するわけですね。

◆同じく第1章からは、上記ポイントの2番目のセクハラ絡みもセレクト。

セクハラはイメージ的にも分かりやすい方とはいえ、まさか「ちゃん付け」が引っかかるとは思いませんでした。

なお「太郎ちゃん」と呼ばれている時点でお分かりのように、山田さんは男性なのですが、田中さんは女性。

女性から男性に対する言動でも、当然セクハラになりえます（もちろん同性間でも）。

しかも田中さん、「結構マッチョなんだね」と歓迎会で山田さんの胸や肩を触っており、その時点でも当然アウト。

ちなみにセクハラの境界線とは「その行為は電車で偶然遭遇した人にもするかしないか」だそうですから、よほどのこと（倒れるのを支える等）がない限り、身体接触は避けるべきでしょうね。

◆続く第2章では「今は当たり前！多様性時代のハラスメント」と題して、前述のように私の知らないハラスメントが多々登場。

言われてなるほどと思ったのが「ケアハラ（介護）」や「レイハラ（レイシャルハラスメント）」、さらには上記ポイントの3番目に関連する「SOGIハラ」です。

相談を受けたら、ここにもあるように自然に受け止めるべし。

かといって、本人に内緒で、他の部下にカミングアウトされたことを漏らしてしまったら、それは「アウティング」という問題行為になります。

アウティング - Wikipedia

実際にアウティングの被害者が、命を絶ったケースもありますし、こちらは絶対に行わないでください。

◆一方第3章では、これまた知らない……と言いますか、「そんなのまで？」というハラスメントが紹介されています。

「不機嫌ハラスメント」「ノイズハラスメント（キーボード音等）」「ハラスメントハラスメント（上司の適正な指摘にも「ハラスメントだ」と言う等）」辺りは、一人事務所の私には、あまり想像できませんでした。

ただし、上記ポイントの4番目の「セカンドハラスメント」は、明らかなハラスメントならさておき、本書に収録されている「意外な」ハラスメントだと、相談されても流してしまうかもしれません。

個人的には、このポイントの4番目の事例は、現在も問題になっている某テレビ局のケースも当てはまる気がするのですが……。

なお「アルコールハラスメント（むりやり酒を飲ませる）」に関して思い出したのですが、新入社員当時、何かの宴会で酔った他ラインの課長に「俺の酒が飲めないのか」と言われた私は、にっこり笑って「ハイ、飲めません」と答えた記憶が。

◆また、上記ポイントの5番目のチェックリストは、第4章の「こんなシチュエーションでも！油断できないハラスメント」から抜き出したもの。

面接時に聞いてはいけない項目のリストなのですが、私が就職活動を行っていた当時は、当たり前のようにほとんど聞かれていました。

特に役員面接で落ちた某社では、父親の勤務先を答えて、これがあまりいい印象を与えてなかったと感じたワタクシ。

ただ、もし今、私が面接官をするなら、尊敬する人物とか、愛読書なんて、普通に聞くつもりでいました。

……えー、だって愛読書が自分の好きな本だったら、採用したくなりません？（ダメですｗ）

もちろんこの辺は、各会社でも面接官にキチンと指導しているハズですけど、面接をしない方でも、知識として知っておいてください。

これ1冊でハラスメントはほぼカバーしているかと！