【英語学習】『最新の第二言語習得研究に基づく　究極の英語学習法』中田達也:マインドマップ的読書感想文

2025年04月18日

【英語学習】『最新の第二言語習得研究に基づく　究極の英語学習法』中田達也

【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「Kindle本 (電子書籍) ゴールデンウィークセール第一弾」の中でも人気の英語学習本。

今までレビューしてきた、この手のジャンルの書籍の中でも、最も「ガチ」な内容の1冊でした。

アマゾンの内容紹介から。

やみくもに努力しても、英語は身につかない。科学に基づく最適解の学習法
あなたの学習効率を最大化する、科学的エビデンスに基づく勉強法を１冊に。
【今すぐ使えて、確実に身につくメソッドが満載！】
・単語は「働き者」から覚えよ
・文法はネイティヴから習うな
・「シャトルラン」のように再読せよ
・ライティングは「コピペ」で。自分で書くな
・laughを「笑う」と覚えるな
・AIを英語学習に活用せよ
・最適な復習間隔、キーワードは「４割」

送料を足した中古よりも、このKindle版が500円弱お買い得です！

【ポイント】

■1.最適な復習間隔は？

「どのくらいの期間覚えていたいか」によって、セッション間間隔の効果は変わると言われています。すなわち、「1週間後に覚えていれば良い」という場合と、「1年後も覚えていたい」という場合とでは、最適な復習間隔は異なるようです。
　具体的には、以下の3点が示されています。
原則1：覚えていたい期間の10～40％程度の間隔で復習を繰り返すことが、最も高い保持率に結びつく。以後、これを「最適な復習間隔」と呼ぶ。
原則2：復習間隔が「最適な復習間隔」よりも短い場合は、間隔が長くなればなるほど保持率は急激に高くなる。
原則3：復習間隔が「最適な復習間隔」よりも長い場合は、間隔が長くなればなるほど保持率は徐々に低くなる。

■2.英単語の学習には想起練習をする

　外国語の語彙学習において、想起練習の効果を調べた有名な研究があります。この研究では、アメリカの大学生に、スワヒリ語の単語40個を学習してもらいました。
　スワヒリ語の単語とその訳語を眺める学習を2回行った場合、1週間後の事後テストの正答率は33％でした。それでは、スワヒリ語の単語とその訳語を眺める回数を2回から約4回に増やした場合は、正答率はどのくらいになったでしょうか？　学習回数が2倍になっているので、正答率も2倍くらいに上がっても良さそうなものです。しかし、実際には1週間後の正答率は36％で、3％の微増にとどまりました。
　一方で、スワヒリ語の単語を見て、その訳語を思い出すという想起練習の回数を2回から約4回に増やすと、1週間後の正答率はどのくらい増えたでしょうか？　なんと、33％から81％に、すなわち約2.5倍も上がっていました。
　この研究は、外国語の単語を記憶に定着させたい場合、単語とその意味を繰り返し眺めるよりも、単語に関する記憶を思い出す想起練習をした方が効果的なことを示唆しています。

■3.文法学習に役立つ教材

　英文法のルールを明示的に学び、宣言的知識を身につける上では、以下のような教材が活用できます。
・『一億人の英文法』（ナガセ）
・『表現のための実践ロイヤル英文法』（旺文社）
・『SKYWARD 総合英語』（桐原書店）
・『ジーニアス総合英語』（大修館書店）
・『総合英語Evergreen』（いいずな書店）
『ヘミングウェイで学ぶ英文法』（アスク出版）や、『英文解体新書』（研究社）シリーズなど、精読用の教材を通して文法知識を身につけることもできます。
　ドリル練習を通して文法知識を定着させる上では、以下の教材が良いでしょう。
・『英語のハノン』シリーズ（筑摩書房）
・『瞬間英作文』シリーズ（ベレ出版）
・『はじめてでも「使える英語」が身につく！英語復文勉強法』（ジャパンタイムズ出版）
・All Things Grammar（allthingsgrammar.com）
　上のような教材でドリル練習を行うことで、コミュニケーションで文法が使えるようになる基盤が養えます。

■4.英語の読解力には文法と語彙の知識が影響する

　例えば、関係代名詞や分詞構文が使われた英文を正しく理解するためには、これらの文法事項に関する知識が当然ながら不可欠です。正確な英文理解に文法知識が大きな影響を与えるというのは、直感的にも納得できるでしょう。
　語彙に関しては、英文中における既知語（すでに知っている単語）の割合が、正確な英文読解をする上で特に重要であることが示唆されています。これまでの研究では、既知語が少なくとも95～98％以上でないと、英文を正確に理解するのが困難になると言われています。言い換えれば、100語からなるテキストであれば、95～98語以上は知っている必要があるということです。
　平均的な英語の書籍は、1ページあたりの語数が300程度と言われていますので、知らない単語が1ページあたり6～15語（300×0.02～300×0.05）以上あるのであれば、その書籍は（辞書などを使用しない限り）理解できない可能性が高いということです。
　語彙と文法の知識が読解力に大きな影響を与えていることを考えると、リーディングの正確性を高める1つの方法は、英単語と英文法を学習することです。第2章～第4章を参考にして、まずは語彙と文法の基礎を固めましょう。

■5.4コマ漫画の描写練習をする

　英語で出来事を描写する能力を高めたい場合は、4コマ漫画の描写練習をしましょう。具体的には、『4コマ漫画で攻略！　英語スピーキング』（DHC）や『14日でできる！英検準1級二次試験・面接完全予想問題改訂版』（旺文社）などの教材を使用して、次の手順で練習します。
（1）教材に収録された4コマ漫画を選ぶ。
（2）4コマ漫画の説明に使えそうなキーワードをメモする。
（3）4コマ漫画とメモを元に、漫画の内容を英語で説明し、スマホなどに録音する。
（4）録音した要約を模範解答と照らし合わせ、英語で言いたかったけれど言えなかった表現をメモする。
（5）上の（4）で作成したメモを元に、4コマ漫画の内容を再度英語で話し、スマホなどに録音する。
この活動を行う上でも、模範解答と照らし合わせるステップ（4）が重要です。やりっぱなしにするのではなく、自分の要約と模範解答とを照らし合わせ、スピーキングで使用できる表現のレパートリーを増やしましょう。

【感想】

◆冒頭で触れたように、今まで読んだ英語学習本の中でも、最も「ガチ」な内容でした。

そもそも私の場合、大学等の受験もしませんし、TOEICや英検にも無縁、さらに仕事でもほぼ100％英語を使いませんから、そんな人間が「この英語本がオススメ！」と言っても説得力がありません。

正直な話、何となく「英語ができたらいいなー」ですとか、「Twitterで流れてくる英文のポストの意味が分かったらいいなー」（今は「ポストを翻訳」ボタンを押せば翻訳されちゃいますが）ぐらいのノリで、今まで英語本を取り上げてきたワケでして。

従ってレビューしたものも、読み物に近いと言いますか、おそらく本の形式としては新書が多かったと思います。

逆に、普通の勉強本が、ほぼ単行本ばかり（それ以前にあまり新書で出てませんが）なのとは対照的だったかと。

◆一方本書は、下記目次をご覧いただくとお分かりのように、章分けからして、ひと味違います。

しかも第1章の「英語学習の原則」だけでも、記事が1本書けるくらいの濃さ。

節のタイトルを列挙するとこんな感じです。

（1）大人になってからではもう手遅れ?
（2）「ネイティヴ英語」を目標にすべきではない
（3）「コミュニケーション」＝「英会話」ではない
（4）「英語はネイティヴに習った方が良い」とは限らない
（5）「日本人は世界に名だたる英語下手」ではない
（6）明確な目標がない方にお薦めの学習法
（7）「文法よりコミュニケーションが重要」というウソ
（8）理解できない英文は「聞き流し」ても身につかない
（9）英語でのコミュニケーション能力を身につけるカギは「流暢性」
（10）英語学習に効果的な復習スケジュール

当然、ハイライトも引きまくり。

中でも(10)から引用した、上記ポイントの1番目の復習のタイミングは、英語学習者に限らず気になるのではないでしょうか。

やけにマニアックだと思いきや、著者の中田さんは、「復習スケジュールに関する研究を20年近く行っており、その成果を国際的な学術誌（ジャーナル）や学会で発表している」方だそうなので、解説部分を含めて、詳しくは本書にてご確認ください。

◆続く第2章の「単語」からは、上記ポイントの2番目の想起のお話を。

と言いますか、むしろ英単語に限らず、見て覚えるやり方はあまり効果がなく、想起しなくてはならない、という、類書でも言われているお話を裏付けています。

ただ、当ブログでご紹介してきた本でも、具体的な研究内容、特に2.5倍も効果があるとは、触れてなかったハズ。

なお、この章では、単語帳や単語カード、単語学習アプリ、語呂合わせといったやり方の、長所や短所もまとめられていますから、ぜひこちらも要チェックで。

ちなみに、次の第3章の「定型表現」では、私の知らない定型表現（イディオムしか知りませんでした）が多々登場したのですが、皆さん、こういうのってご存知でしたか？

具体的には「コロケーション」とか「二項表現」とか「句動詞」とかなんですが……。

◆一方第4章は、おなじみの「文法」。

上記ポイントの3番目の初っ端にある「宣言的知識」とは、たとえば「三単現なら動詞に"S"を付ける」みたいに「言葉で説明できる知識」のことで、それと対になる「手続き的知識」とは、実際に三単現の時に"S"を（無意識でも）付けられるように「実際に何かができる」ことを指します。

……英語の例だと分かりにくいですが、日本語で私たちが無意識にでも「私は」と「私が」の、「は」と「が」を使い分けているようなものですね。

さて、ここでは思いっきり、文献の紹介に徹してみました。

本書では他の章でも、このように参考書の類が多数紹介されていますから、きちんと学習したい方は、この辺も押さえておいていただきたいところです。

◆……とここまで書いてきて、未だ英語の4つのスキル（「リーディング」「リスニング」「ライティング」「スピーキング」）にたどり着いていませんでした。

そこでまずは第6章のリーディングから、上記ポイントの4番目をご紹介してみました。

結局、ここにもあるように、まずは文法と語彙を強化しないと、時間の無駄になってしまうんですよね。

実は、割愛している第7章のリスニングも語彙は同様で、さらには発音の知識もないと、知ってる単語でも聞き取れないことがあります。

つまり、まずは第5章までをしっかりやるべきかと。

そして、上記ポイントの5番目は、第9章のスピーキングから抜き出したものになります。

私は知らなかったのですが、英検準1級の面接試験では、4コマ漫画を説明する問題が出題されるのだとか

ゆえに、4コマ漫画の描写練習は英検準1級対策にもなるということで、ダブルでオススメな次第です。

英語をしっかり勉強したい方なら、オススメの1冊！