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2025年03月14日

【センスとは?】『「仕事ができる」とはどういうことか?』楠木健,山口周


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「仕事ができる」とはどういうことか?


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「Kindle本 (電子書籍) 499円セール」の中でも、個人的に気になっていた作品。

版元の宝島社さんは、まだ記事としては取り上げてなかったのですが、なるほどテーマといい、著者お二人といい、当ブログ向きだと思いました。

ちょっと長くなりますが(切れなかったので)、アマゾンの内容紹介から。
「スキルのデフレ化とセンスのインフレ化」はあらゆるジャンルで進行している! 『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)の楠木建と『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか』(光文社新書)の山口周が「仕事ができる」の正体を求めて新時代の仕事論を語り尽くす。仕事ができる人――本書でこの言葉の定義は「この人ならなんとかしれくれる」、もっと言えば「この人じゃないとダメだ」「余人をもって代えがたい人」である。プログラミングができる、英語が話せる、財務分析ができる――「あれができる・これができる」と言っているうちは半人前。スキルを超えたセンスにこそ「仕事ができる」の正体がある。スキルを伝授しようとする本は無数にある。しかし、センスの問題に正面から向き合った本は稀少だ。ほぼすべての人がセンスの重要性について薄々は気づいているにもかかわらず、である。本書はスキルとセンスの相克をテーマに、日本のビジネスシーンで「スキル優先、センス劣後」の状況が起きる理由から、「何がセンスを殺すのか」「センスを磨くとはどういうことか」まで、「仕事におけるセンス」の問題について2人が縦横に論じる。

中古は値崩れしているものの、送料を加味するとKindle版の方がお買い得です!






【ポイント】

■1.問題は解決すればするほど「量」から「質」にシフトする
山口 問題を解決すると新たな問題が生まれてくる。このとき「古い問題」と「新しい問題」では「問題のタイプ」が変わってくると思うんです。問題を「望ましい状況と現在の状況とのギャップ」だと定義すれば、「望ましい状態」をどのようなモノサシで定義するかで「問題のタイプ」が変わってくる。端的に言えば、問題は解決すればするほど「量的問題」から「質的問題」にシフトしますよね。(中略)
 量はわかりやすいですからね。ベンチマークとして「先進国のなかでわが国の乳児死亡率がいちばん高い」という話をすれば「それはまずいよね」「じゃあここまで引き上げましょう」という話になるわけで、統計の基礎的な知識やスキルがあればよくてセンスは必要ありません。一方で量で把握できない問題を問題として捉えるにはセンスが必要になりますね。「日本の町並みは美しくないから広告看板を規制すべきだ」という話になっても、「美しくない」ということを数値化できないわけで、なかなか収束しません。


■2.「やってみないとわからない」センスの事後性
楠木 意識しているのか無意識なのかは別にして、自分のセンスというものを後生大事に育て、磨きをかけていく。これがキャリア構築の実態だと僕は思っています。ただ、これの問題点を一言で言うと、やたらと「事後性が高い」んですね。
山口 予定調和というか、先見的に費用対効果を見極められないということですね。
楠木 そのとおりです。事前に目的と手段の因果関係がはっきりとわからない。一通りやって振り返ってみると「ああ、そういえばああいうことをやって、いろいろなことがあったから、いま自分のこういうセンスなりスタイルができているんだなぁ」ということが初めてわかる。そういう人が若い人に向かって「最後はセンスだよ」と言うと、「何を言ってるんだ、このおっさんは」というリアクションになるんですね。(中略)
 事後性というのは難物なのですが、漠然とでも事後性の克服が大切だという意識を持つ。これがとても必要なことだと思うんです。その意識がないと「今すぐに解決してくれ」「そのコツはなんですか?」「3つ挙げてください」とかいうことになる。


■3.センスがある経営者は「『それでだ』おじさん」
楠木 「シナジーおじさん」と対比して、時間的な奥行きがある直列思考の人のことを僕は「『それでだ』おじさん」と呼んでいるんです。僕の分野は競争戦略ですから、出発点はいつも「競争があるなかで、なぜある会社は儲かり、別の会社は儲からないのか。その論理は何か」という問いにあります。経営者と話したいことも、つまるところは「社長、なんでこの商売は儲かるんですか」──。収益の背後にあるストーリーを知りたいわけですよね。そのときに「うちはこういうことをやってるだろ」→「そうすると、だんだんこういうことができるようになるんだよ」→「やっているうちに客もこうなってくる」→「それでだ……」と、ここで儲かるポイントが出てくる。これが「『それでだ』おじさん」。僕の思うセンスに優れた経営者の思考回路ですね。
山口 流れがあるということですね。
楠木 そうなんです。思考や構想に時間的な奥行きがあり、論理でつながっている。


■4.島田紳助の「芸人は努力するな」の意味
山口 紳助さんが実際に何をやったかというと、まずは売れている芸人の漫才をすべて録音して書き起こして、どこでどうボケて、どうツッコミ、どういう種類の笑いを取っているのか、ということを分析していく。すると「落ちのパターンは8割一緒」「つまらないネタを直前に入れると面白いオチが光る」といった具合に言語化が可能になるんですね。紳助さん自身は「お笑いには教科書がなかったので自分で教科書をつくろうと思った」と言っていますけど、もう完全に笑いの経営学なんです。だけど、それをほかのみんなはやらない。なぜかというと、努力していると安心するからです。
楠木 鋭い。
山口 漫才の練習をしているとなんとなく前に進んでいるような気がして安心する。確かに、それで多少は漫才がうまくなるということもあるでしょう。ですが、自分がお笑いタレントとして本当の意味での生きていく場所を見つけないことには、職業として続けていくことはできないわけです。紳助さんの場合、その努力のレイヤーというか、努力の質がほかの芸人さんたちとは違っていたと思うんですね。


■5.センスとは「具体と抽象の往復運動」
楠木 これはユニクロの柳井正さんを見ていても思うことなんです。ある商品が計画よりも売れなかったことがあった。こういうときに、センスのない人はすぐ横の具体に飛んで解決しようとするんですよ。つまり「去年はどうだったのか」とか、「色味とか形はどうだったのか」とか、「競合相手はどうだったのか」とか、「地域によっての売れ方は」とか……どんどん横の具体に飛んでいくわけです。具体の地平の上を右往左往しているだけで、一向に本質に至らない。
 だけど柳井さんは絶対にそういうことをしない。すごく具体的な問題があっても、まず自分の頭の中の引き出しを開ける。「これってこういうことじゃないかな」と該当する論理を取り出してくる。で、「どうも問題の本質はここにありそうなので、こうやったら解決する」となって、最後はすごく具体的な指示が出てくる。それが横の具体に滑っているんじゃなくて、自分の中の抽象的な「要するに」のところから来ている。
 これを僕は「具体と抽象の往復運動」と言っています。


【感想】

◆元は単行本だったとはいえ、新書で296ページというのは、そこそこのボリューム。

しかも著者お2人は、当ブログではどちらも4冊以上ご紹介しているとあっては、当ブログ的に「ツボ」だったとしても不思議ではありません。

おまけにテーマが「センス」という、「スキル」が陳腐化しかかった今、一番求められるものとあっては、ハイライトも引きまくる、というものです。

ただし「スキル」と違って「センス」は、言語化しにくい上に習得も難しく、本書でも「具体的にこうしたら身につきます」的な描写はナシ。

ひたすらお2人が、会話を重ねていくことで、その実態を明らかにしていく、という仕様です。

そういう意味では、単行本ではなくて新書というフォーマットが、まさにピッタリだったと思われ。


◆さて、第1章から引用した上記ポイントの1番目では、問題解決の中身が「量」から「質」へと移ることで、必要とされる能力も「スキル」から「センス」へと変わることに言及しています。

確かに、単純な問題であれば、普通は「スキル」で何とかなるもの。

それは大抵、数値化できることが多いです。

一方で、問題設定自体が数値化できない(=量で把握できない問題)ものを、問題として捉えるにはセンスが必要、という指摘は的を射ているのではないか、と。

ちなみに、ノーベル医学生理学賞を受賞した医学者の本庶佑先生いわく、「『何を知りたいか』がいちばん大切な問い」なのだそうです。

……深い!


◆そんな「センス」も、上記ポイントの2番目にあるように「事後性が高い」のが玉にキズ。

こちらは第2章から抜き出したものなのですが、まだ実際にやってみていない若い人にとっては、すでに手を出した人から言われても「何を言ってるんだ」になりかねません。

特に昨今の「タイパ」「コスパ」重視の人にとっては、そもそも手を出さずに終わる可能性が高いかと。

逆に「スキル」はやればやっただけ、身に付いたり、効果が出たりしますから、「どうせやるなら、そっち」というのが現状でしょう。

結果、「スキル」ばかり高めて、「センス」が身に付いていないビジネスパーソンばかりになるという……。


◆では実際に「センス」のある人の特徴は、というと、第3章から引用した上記ポイントの3番目で紹介されている「『それでだ』おじさん」です。

……なお、ここで登場する「シナジーおじさん」というのは、やたらと「相乗効果を追求し……」等の「シナジー」を連発する人のことなので、あまりお気になさらず。

そしてこの「『それでだ』おじさん」には、キチンと個々のロジックに繋がりがあり、時間的な奥行きがあるとのこと。

逆に楠木さんいわく、仕事ができない人は、時間的な奥行きがない、という意味での「箇条書きが好き」なのだそうです。

この辺の論理の流れ、というか物語的な考え方は、まさにこの本に通じるものでしょうね。

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ストーリーとしての競争戦略 Hitotsubashi Business Review Books

参考記事:【スゴ本】『ストーリーとしての競争戦略』楠木 建(2010年10月20日)


◆続く第4章から抜き出したのが上記ポイントの4番目。

山口さんが紹介しているお話は、こちらのDVDからのものだそうです(私もしばらく観ていないので、失念していましたが)。

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紳竜の研究 [DVD]

参考記事:【紳助のヒミツ】「紳竜の研究」はスゴかった(2008年03月14日)

当時は漫才界でここまで分析をしていた人は、恐らくいなかったと思いますが、今や若手でも頭脳的な方がどんどん出てきているのも、恐らくこのコンテンツを踏まえているのではないか、と。

同じく第4章からの上記ポイントの5番目における「具体と抽象の往復運動」も、楠木さんのお話が、細谷功さんばりに深いです。

実はこの「具体と抽象の往復運動」は、かつて楠木さんのこちらの本でも触れられているのですが、当時はイマイチ良く分かりませんでした。

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すべては「好き嫌い」から始まる 仕事を自由にする思考法 (文春e-book)

参考記事:【思考術】『すべては「好き嫌い」から始まる 仕事を自由にする思考法』楠木 建(2019年05月06日)

その後、「具体と抽象」をテーマにした細谷さんの本を何冊か読んだこともあってか、このユニクロの柳井さんのエピソードも腑に落ちた次第。


センスを身に付けたい方なら、まずは読むべし!

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「仕事ができる」とはどういうことか?
第1章 スキル優先、センス劣後の理由
第2章 「仕事ができる」とはどういうことか?
第3章 何がセンスを殺すのか
第4章 センスを磨く


【関連記事】

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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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