【発想】『ハッとする言葉の紡ぎ方コピーライターが教える31の理論』堤藤成:マインドマップ的読書感想文

2025年03月07日

【発想】『ハッとする言葉の紡ぎ方コピーライターが教える31の理論』堤藤成

【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、昨日の「祥伝社新書創刊20周年!半額セール」の記事において、個人的に読みたかった作品。

電通出身のコピーライターである堤さんが、「31」の言葉の理論を指南する1冊です。

アマゾンの内容紹介から。

言葉を紡ぐと、道は開ける　
メール、ＬＩＮＥ、企画書、会議、プレゼン……、私たちは日々、言葉を紡いで生きている。
しかし、自分の思いをうまく言語化できずに、もどかしさを感じている人も多いのではないだろうか。
本書は、コピーライターとして数々の賞を受賞し、現在はオランダを拠点にクリエイティブ活動を行なっている著者が、言葉を紡ぐ楽しさを解説するもの。
「言葉を紡ぐことは思考を紡ぎ、行動を紡ぎ、習慣を紡ぎ、人格を紡ぎ、運命を紡ぐ」と著者は言う。
著者の経験や古今東西の名コピーとともに解説する31の理論を読めば、運命を切り開くあなただけの言葉が見つかるだろう。

中古に送料を加算すると定価を上回りますから、このKindle版が500円弱お買い得です！

【ポイント】

■1.どんな立場で語るかで物語は変わる

　いわゆる「ストーリー」とは、起承転結やあらすじなどの「客観的」な構成要素です。これは一般的に浸透しているし、理解しやすいと思います。
　対する「ナラティブ」とは、それぞれの個人の視点から語られる「主観的」なものです。それは、「ナレーター」の語源でもあります。(中略)
ボクのおとうさんは、桃太郎というやつに殺されました。
（2013年度新聞広告クリエーティブコンテスト　テーマ：しあわせ／山﨑博司）
　これは、2013年の新聞広告クリエーティブコンテスト最優秀賞となったコピーです。まさに桃太郎のめでたしめでたしでさえ、立場を変えてみると悲劇でしかないのです。このように「ナラティブを紡ぐ」と捉えると、「自分はつまらない平凡な日常しか送っていない」なんて卑屈にならなくても、ちょっとした物事から無限の物語が生まれる可能性があることに気づくでしょう。だから難しく考えずに、自分の物語を紡いでほしいのです。

■2.夢は口に出すと強い

　例えば、レストランに入ったとしても、注文しなければ料理は運ばれてきません。まずは「○○ってありますか？」と自分が欲しいものをリクエストしてみましょう。もちろん、売り切れになっていたり、そもそもメニューになかったりすることもあるでしょう。そのときは、また別のお店に行ってみればいいのです。(中略)
夢は、口に出すと強い。
（集英社「週刊少年ジャンプ」／小野麻利江、馬場俊輔）
　これは「〝海賊王〟に!!!　おれはなるっ!!!!」と語る『ONE PIECE』（尾田栄一郎）のルフィや「オレがなりてえのは火影だ!!」と語る『NARUTO-ナルト-』（岸本斉史）の主人公ナルトなど歴代の漫画の主人公たちのビジュアルに添えられた「少年ジャンプ」のコピーです。そのためにはまず自分のなかにある想いを言葉として紡ぎ、考え始めること。きっと言葉を口に出していくことで、答えは見つかるはずです。

■3.リズム感を味わい、言葉を磨き上げる

　自分にぴったりくる言葉を選ぶ際は、単語レベルで調整していく工夫が大切です。その際には五感を活用し、身体的に捉えていきましょう。(中略)
バザールでござーる
（日本電気／佐藤雅彦）
　この有名な「バザールでござーる」という言葉は、普通「セール中です」というところをまず「バザーです」と変更。そして「バザー」よりも、印象的な「バザールです」に単語を調整。次に「バザールでござる」という言い方で韻を踏むように改善しています。
　さらに「ざーる」と伸ばすことで、より音として繰り返し言いたくなるリズム感を演出しています。これだけでも相当な工夫が施されているのに、このＣＭの映像ではバザールにかけてオリジナルの猿のキャラクターが登場し、何度も連呼しながらセールを伝えていく。これは印象に残らないわけがありません。

■4.打席に立てる幸せを味わう

　最初から成功だけを収めようとすると、挑戦できなくなってしまいます。だからあくまでも実験結果を「計測する」ためにトライしているのだと、考えを変えてみる必要があります。ネーミングはＡがいいか、Ｂがいいか。値段はどれくらいが妥当か。まさにすべては「仮説」であり「試み」なのです。
　僕たちが行動するとき、「必ず成功させる」ではなく、「仮説を試すだけ」と考えると、気持ちが楽になります。それでもまだ行動することに対して、たじろいでしまうあなたにはこんな言葉を贈ります。
お若い方々よ。打席に立ったとき、三振するのも情けないゴロを打ってアウトになるのも、かまわない。見逃し三振さえも許してしまおう。いけないのは、ただひとつ「打席に立っていることがよろこべないこと」だ。その打席に立ちたくて目を輝かせたのではなかったのか。
（糸井重里『羊どろぼう。』〈ほぼ日ブックス＃〉より）

■5.理性とおばかの反復をする

　僕たち一般の人が、名キャッチコピーをお手本として見たときに、自分には書けないと固まってしまう原因は、「いきなり」最高の名コピーを書こうとしているからです。
　そこでまずは、オリエンシートと睨めっこして、普通に考えたらこんなアイデアだなぁとおりこうに考えてキャッチコピーを書いてみます。それはあまりにも普通すぎてつまらない、と思うでしょう。でもまずはそれでいいので一旦頭の中にあるものを書き出してみるのです。
　次に今度はめちゃくちゃおバカになって、思いついたものはなんでも書いてみましょう。まったく意味不明でも、支離滅裂でもいいのです。とにかく今度はバカになって、それこそ「うんこ」のようなアイデアや言葉を書き出してみる。そうすると、「おりこう山」と「おばか山」がたくさん積み上がっていきます。それを交互に繰り返しているうちに、自分のなかのカタブツ先生のような凝り固まった部分が取り除かれて、シャレのわかる、でもちゃんとしたまじめな〝ええ先生〟になっていくのだそうです。

【感想】

◆下記の関連記事に挙げた作品を初めとして、当ブログでは広告代理店出身のコピーライターさんの本を、数多くご紹介しております。

ただし、それらがストレートにビジネススキルに結び付くかというと、ちと違うと言いますか。

もちろん、佐々木圭一さんの『伝え方が9割』のように、具体的なスキルを述べた作品は別として、仕事上「そのまま使うには難しい」ケースがほとんどです。

というのも、私たちビジネスパーソンのほとんどが、「コピー」を書く必要がありませんし、そもそも、文章においても「表現」にこだわる必要がほぼないから。

むしろ、いわゆる「パラグラフライティング」の方が、ニーズが高いかもしれません。

当ブログで言うと、この本あたりがそうなのですが。

論理が伝わる　世界標準の「書く技術」 (ブルーバックス)

参考記事：【文章術】『論理が伝わる世界標準の「書く技術」』倉島保美（2012年12月04日）

◆では、なぜに私が何冊もコピーライターさんの本を取り上げるかというと、「目からウロコ」の視点や発想、エピソードを得られることが多いから。

上記ポイントの1番目の「桃太郎」のお話などは、まさにそうですよね。

最近では映画でも、スピンオフ的にサブキャラが主役のお話が登場したりしていますが、まったくの敵側からの視点というのは、指摘されるまで意識していない方がほとんどだと思います。

もちろん、このケースに限らず、そのまま使うのが難しくても、抽象化することで、別の分野や用途にも使えるハズ。

個人的には、問題解決で行き詰ったときに、このような「パラダイムシフト」的な発想ができると、打開できると感じています。

一方で、上記ポイントの2番目のように「そのまんま」使えるTIPSは、そのままでｗ

◆また、やや広告業界寄りのお話ですけど、上記ポイントの3番目に出てくる佐藤雅彦さんの、CM等の一連のお仕事群は、以前から他の広告とは一線を画している、と思っていました。

その理由というか、佐藤さんの考え方が明らかになっているのが、もう9年近く前なのですが、こちらのインタビューです。

朝日広告賞を受賞していなかったら、ピタゴラスイッチもだんご3兄弟もポリンキーもI.Qも生まれていなかった｜東京藝術大学大学院映像研究科教授佐藤雅彦：スペシャルコンテンツ：朝日広告賞

非常に面白い（という表現が適切か分かりませんが）ので、未読の方はぜひお目通しいただけたら、と。

それにしても、ロジカルな方法論で、たくさんのヒットを生み出されているのがスゴイです。

このポイントの3番目の「バザールでござーる」も、知らぬ人がいないくらい流行りましたけど、何気ないフレーズでも工夫が詰め込まれていたんですね。

◆また、上記ポイントの4番目のお話は、尻込みしやすい方にお届けしたいTIPS。

「数をこなす」「計測する」と割り切ることで、行動を促すことができます。

実際、セールスなどは、「数勝負」な部分があるのは、広く知られるところ（ナンパもそうですが）。

ただし、立てた「仮説」を検証して、次に活かすことは忘れないでください。

さらに上記ポイントの5番目でも、いきなり「成功」を狙わないところは同じです。

ただ、こちらのTIPSがスゴイのは、発想として、真逆のようなアイデアも出してみるという振り切りぶり。

そうやって両者間を思考が行き来することで、案が練られる次第です。

なお詳細は、こちらの本の中島信也さんのパートに載っているそうなので、ご参考まで。