2025年02月21日
【トリック?】『統計的な? 数字に騙されないための10の視点 STATISTICAL』アンソニー・ルーベン

統計的な? 数字に騙されないための10の視点 STATISTICAL
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「ビジネス・実用・写真集★スペシャルキャンペーン」の中でも、当ブログ向きの1冊。以前から気にはなっていたのですが、激安設定になっていたのを機会に、やっと読んでみました。
アマゾンの内容紹介から。
経済成長率、有効求人倍率など公的な発表から、メディアごとにまちまちな内閣支持率、はたまた街の商店の割引率まで、生活の中で目にする様々な「数字」。しかし、その数字は真実でしょうか?
統計データや世論調査などに潜む、私たちを騙そうとするもっともらしい数字の真偽を見抜くために必要な視点を、英BBCで初めて統計部長を務め、現在はファクトチェックのトップとして活躍する著者が、痛快かつ明快に解説します。
中古は底値なのですが、「80%ポイント還元」の「351円」というこのKindle版に軍配が上がります!

【ポイント】
■1.質問をするのにふさわしい人たちか?ふさわしい人々と話をすることは驚くほど難しく、ふさわしい人と話をしていなければ、調査人数が多くても意味はない。(中略)
2015年のイギリス総選挙のあと、世論調査会社ICMのマーティン・ブーンは、2000人から回答を得るために3万もの無作為の番号に電話をしなければならなかったことを明かした。つまり、電話に出て、さらに質問にも答えてくれる人々というのは典型的な人々ではないという危険が高まる。そのように少ない割合の人々が質問に答えている場合、彼らには何か普通とは違う部分があるのではないかと考える必要がある。全体よりは年齢が高いかもしれないし、普通の人よりは政治に興味があるという可能性もある。
■2.未決定の回答を無視しない
世論調査会社が1000人にインタビューして、そのうち300人が「賛成」に投票し、200人が「反対」に投票すると答え、残りはまだ決めていないと答えているとしよう。
記者が「わからない」という答えを無視すると、見出しは「賛成が60パーセント対40パーセントでリード」となるが、それでは選挙で起こっていることを本当に伝えていることにならない。賛成が30パーセント対20パーセントでリードしていると報道するほうが、選挙運動でこれからまだまだ変化があるということをより正確に伝えるものになるだろう。
これはすべての調査において重要な決定だ。わからないとかまだ決めていないと答えた人が決心したときには、それ以外の人たちと同じような決定をすると考えたくなるものだが、そうなるという根拠はほとんどない。 未決定の回答を無視するのは、誤った方向に導くことになる。
■3.パーセンテージは上昇時には下降時より大きくなる
英国レコード産業協会(BPI)はイギリスのレコード音楽業界を代表する協会だが、あらかじめ説明することもなく、1994年にレコード盤の売り上げを正式に記録しはじめた。その年の売り上げは約150万枚で、そこから2007年には約20万枚にまで落ちこんだ。しかし、そこから回復に転じ、2014年にはふたたび100万枚を超え、2017年には410万枚に達した。レコードの売り上げは99パーセント下落してから、1900パーセント上昇したと言うこともできるが、そう聞くと、レコードの売り上げが天井知らずに上がって、前代未聞の数のレコードが売れたように思われる。もちろん、そうではない。レコード盤の回復は目覚ましいものではあるが、それでも1970年代のピーク時に年9000万枚を出荷していたレベルよりはかなり下回っている。
■4.他に何が起こっているか
ラジオ4のすばらしい番組〈More or Less〉チームが、携帯電話のアンテナ塔が出生率を上昇させているという話をでっちあげた。ある地域のアンテナ塔の数と新生児の数の相関関係を発見したのだ。ある地域でアンテナ塔が1基増えるごとに、年間の新生児数が国の平均より17・6パーセント増加することがわかった。田園地方に突きだしているアンテナ塔に何かロマンチックなものがあるのだろうか、と番組では問いかけていた。2つの事柄に相関関係があり、偶然ではないことには疑いの余地はない。電話会社は電波が届くように、人口の多い場所により多くのアンテナ塔を建てる。人口が多い場所では多くの子供が生まれるということに、説明の必要はないだろう。つまり、そこにはつながりがあるのだが、それを意味のあるものにするためにはそこからさらに1歩進まなければならない。
■5.絶対リスクとパーセント変化のどちらも見ること
2008年3月、デイリーメール紙に「1日にたった1本ソーセージを食べるだけで癌のリスクが20パーセント上昇する理由」という見出しが載った。(中略)
リスクについて語ることは概してうまくいかないものだが、私たち全員のためにその手助けをしようとしているのが、先述したサー・デイヴィッド・シュピーゲルホルター教授だ。(中略)
彼が推薦しているのは、絶対リスクの文脈のなかでリスクのレベルがどれだけ変わったか(相対リスク)に注目する方法だ。ここでは相対リスクが20パーセントだとわかっている。これは1日にソーセージを余分に1本食べる人とそうでない人の差だ。だが、絶対リスクも知る必要がある。それはソーセージを食べたことで影響を受けた人の実際の数字だ。膵臓がんの場合は、1日に1本ソーセージを食べていなければ、生涯では400人中5人が発症する。毎日ソーセージを1本かベーコンを3切れ食べていれば、それが6人に増える。5人から6人に増えるということはまさに20パーセントの上昇だが、実際の人数だと最初の見出しほどの衝撃は受けない。
【感想】
◆当ブログでは、今までも何冊か、数字本や統計本をご紹介してきましたが、その流れに沿った作品でした。特に本書で紹介されている事例は、いずれもメディアや政府広報によってアナウンスされたものばかりですから、そのまま受け入れてしまいがちです。
もっとも、その中身にまで踏み込んでみると、当初の印象とは異なること必至。
たとえば上記ポイントの1番目は、第1章の「アンケート調査」から抜き出したのですが、アンケートが行われたのは事実ですし、その結果もウソではないでしょう。
ただし、固定電話を使った調査はその時点で、ある一定のバイアス(高齢者?)がかかっていると考えた方が良さげ。
ちなみに最近の調査は、自動音声で調査をしていますから、コストは下がっているのでしょうけど。
◆続く第2章の「世論調査」から抜き出したのが、上記ポイントの2番目。
確かに「60:40」と、「30:20」とでは、受ける印象もずいぶんと変わります。
ただ、この「未決定の回答の扱い」のお話は、必ずしも世論調査だけには限らないでしょう。
むしろ、上記ポイントの1番目の「誰に聞くか」の影響を、より一層受けやすいのも「世論調査」だと思います。
本書では1936年のアメリカ大統領選挙の際の世論調査の例を挙げていますが、調査の元となった名簿が結果的に富裕層が中心だったことから、ルーズベルト大統領の当選を予測できなかったとのこと(詳細は本書を)。
まぁ、つい最近の大統領選挙も、トランプ大統領が予想以上の大差で勝っていますから、そう簡単にはいかないのでしょうね。
◆また、言われてみて思わず納得したのが、上記ポイントの3番目のパーセンテージのお話です。
これは第4章の章題でもあり、この章は今さらながらハイライトを引きまくりました。
そもそも増減のパーセント変化は、新しい数字から古い数字を引き、これを古い数字で割って(新しい数字で割りがちなので要注意)、100をかけたもの。
そしてここにもあるように、増加するときは「1900パーセント」のような大きな数になる反面、減少するときは、どんなに落ち込んでも100%を超えることはありません。
当たり前といったら当たり前なのですが、何となく違和感がありますよね?(私だけ?)
◆一方、この手の数字のお話で、ひんぱんに登場するのが、第7章の章題でもある「相関関係と因果関係」。
こちらはもう、それだけで本になってるくらいなので、割愛してもよかったのですが、上記ポイントの4番目の事例を知らなかったので、抜き出した次第です。
といいますか、むしろ高圧電線や電磁波の影響で、女のコが生まれやすい、という都市伝説は聞いたことがありましたが。
自衛隊の都市伝説「レーダー電波を浴び続けると女の子しか生まれなくなる」の調査結果(JSF) - エキスパート - Yahoo!ニュース
逆にこちらは、アンテナを立てたから子どもが生まれたのではなくて、アンテナを人口の多い所に立てたから、そこに子どもが生まれただけでした。
さらに、この章では「ダークチョコレートを食べると体重が減る」という、「でっちあげの調査」のお話が、大変興味深かったです。
……私ここ最近、健康のためにダークチョコレートをよく食べているのですが、効果のエビデンスは大丈夫なのか??
◆そして第9章の「リスクと不確実性」から引用したのが、上記ポイントの5番目です。
実際、見出しで「癌のリスクが20パーセント上昇」と言われたら、かなりショッキングでしょう。
もっとも、人数レベルで言うなら「1人増えた」だけに過ぎず、印象はずいぶん変わります。
要は「起こる可能性が低い」と、実際問題として、無視してもいいようなレベルになる、ということは覚えておかねば。
本書はこうした「嘘ではない」ものの、「意図的に誤解をさせる」やり口が数多く載っており、非常に勉強になりました。
数字に騙されないために読むべし!

統計的な? 数字に騙されないための10の視点 STATISTICAL
第1章 アンケート調査
第2章 世論調査
第3章 コスト
第4章 パーセンテージ
第5章 平均
第6章 大きな数字
第7章 相関関係と因果関係
第8章 危険なフレーズ
第9章 リスクと不確実性
第10章 経済モデル
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【編集後記】
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