2025年02月20日
【思考術】『フローとストック 世界の先が読める「思考」と「知識」の法則』細谷 功

フローとストック 世界の先が読める「思考」と「知識」の法則
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、現在開催中であるKADOKAWAさんの「新生活応援!ビジネス・実用・エッセイ 春の2000冊フェア」の中でも人気の高い1冊。当ブログではおなじみである細谷功さんが、「CAFSマトリックス」という新たな思考法を指南してくれています。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
本書で細谷氏はまず、「具体と抽象」と並ぶ最重要コンセプト「フローとストック」を提示します。そこで目に見える「フローとストック」の構造はもちろん、目に見えない「お金」や「ルール」などの「フローとストック」の構造までも赤裸々に明らかにされます。
そして、この「フローとストック」を、人間の思考の根幹をかたちづくる「具体と抽象」という考え方にかけ合わせて提示するのが「CAFSマトリックス」。この新しいフレームワークを使いこなし、誰もが日常の事象の先読みができるようになるために、本書はつくられました。
なお、今回のセールではこのKindle版が600円弱お買い得となります!

【ポイント】
■1.「思考と知識」と「フロートストック」の関係まずは人間の頭のなか、つまり知的活動とはそもそも何か、という点について、日々の「思考」というフローの積み重ねが、「知識」というストックとなって蓄積されていくというイメージをしっかり押さえてもらいたいと思います。
知識とは、人類が長年にわたって積み重ねてきた行動によって得た知見を蓄積したものです。そこで積み重ねてきた行動をフローとも見なせますが、なかでも知的な行動に的を絞ると、人間の知的活動のフローとは「思考」である、ということができると思います。
文書化された知識とは「言葉や数式で表現している」時点で、抽象化の産物ということができます。第2章でも説明しますが、この抽象化とは人間の思考の中枢を担う部分であり、これはフローとしての思考の産物と言い換えてもよいものです。
こうして人類の知的活動を「思考」がフローであり、その蓄積としてのストックが「知識」であるという関係性で捉えることは、これから述べる人間の思考回路を「フロー型」と「ストック型」で見ていく場合の背景となります。
■2.空間と時間を超えて個別具体の事象を共有する「抽象概念」
「空間と時間を超えて個別具体の事象を共有することを可能にした」抽象概念の効用は、物理的な世界に譬えれば、物流(空間を超えた共有) や保存技術(時間を超えた共有) のようなものだといえるでしょう。この2つを組み合わせた「冷凍物流」をイメージしてもらえれば、抽象概念の威力がわかると思います。
捕れたての旬の魚(具体) は、基本的にはその場で消費することで最大の価値が得られますが、冷凍技術によって長期間鮮度を保つことができるようになり、なおかつそれを運ぶことで産地以外の遠隔地でも楽しめるようになります。
さらにこれを物理的な世界のみならず、より抽象化の進んだデジタルの世界に置いてみれば、時間的な共有(データ保存など) や空間的な共有(テレワークなど) が桁違いになることがわかるでしょう。これこそが、アナログの世界とデジタルの世界の抽象度の違いともいえます。
このように、抽象化は空間的・時間的に圧倒的に広い領域を人間にもたらしました。
■3.「CAFSマトリックス」4象限を解説する
「CAFSマトリックス」の左下の組み合わせは「フローとしての具体」です。この領域は人間のすべての解釈が入っていない自然や身の回りの事象などの「ありのまま」の状態を指します。(中略)
続いて、左上の組み合わせは「フローとしての抽象」です。この領域は一時的な作業領域のようなもので、永続的ではありません。右記の「フローとしての具体」を抽象化して考えることによって生まれた抽象概念、つまり、分類やカテゴリー、あるいは何らかの「線引き」がこの領域に相当します。(中略)
右上の組み合わせがその「ストックとしての抽象」です。「フローとしての抽象」がスナップショットとして固定化したものが、この領域です。先にも説明したパターンや法則やルール、あるいはさまざまな言葉(具体的事象をスナップショットとして表現したもの) などが、この領域に相当します。(中略)
最後の右下の組み合わせが「ストックとしての具体」です。この領域が最初はいちばんわかりにくいかもしれません。これは何らかの「線引き」がなされた状態で、具体が認識されることを意味しています。たとえば、「善悪」「正誤」「ルール違反の有無」などの「線引き」のもと、世の中の具体的な事象が認識されている、ということです。要は、大多数の人間が(言葉などによって) 無意識に認識している世界が、この領域です。
■4.サイクルとしての「CAFSマトリックス」
イメージを摑みやすいように、まず日常生活で1つ例を挙げます。何度も例に出した部屋の整理整頓という行為を考えてみましょう。
最初は「散らかった部屋」から始まります。本来であれば、何もないところからモノが増えていくということになりますが、この例ではある程度モノが揃っていて普通に生活をしている(しかし、まだ整理整頓はしていない) という状態をスタート地点とします。
この混沌状態を見て、多くの人は整理しようという気持ちになり、整理の仕方を考えはじめます。整理とは基本的に「同類のものをまとめる」ことになるので、これは抽象化そのものです。
さらにフローの世界、つまりある片づけの瞬間だけではなく、この整理を定着させるために、人はその状態をキープする収納の分類を考えたり、棚を用意したりなどします。これが「ストックとしての抽象」、つまりルール化に相当します。
「棚」が用意されたことで、その後の整理整頓は、しばらく安定的に進行します。結果としてある程度の期間、秩序が保たれます(「ストックとしての具体」)。しかし、この状態も永久に続くわけではありません。ライフサイクルの進展による持ち物の変化などによって、一度決めた整理方法ではうまく整理できないもの(例外事項=アノマリー) が徐々に増えてくるからです。その結果として整理できないものが出てくることで、一部が再度、混沌へと向かいます。
【感想】
◆今回、1つひとつのポイントが長いので、数を1つ減らしてみました。といいますか、そもそも長くならざるを得ない内容であり、これでも簡潔にまとめられている部分を選んだ方という。
特に、後半の「CAFSマトリックス」が出てきた辺りから、とてもいつもの引用の仕方では対処しきれないと感じた次第です。
実際、象限が4つあり、かつ、1つを割愛して意味が通るかというと、かなり難しい気が……。
また、各事例には解説のための図も付されており、これを用いずに引用しても、あまりご理解いただけないのではないと思います。
一方「CAFSマトリックス」は、結構大胆な「仮説」なので、私も腑に落ちるまでに時間がかかった事例がいくつかありました。
◆さて、第1章では本書のタイトルでもある「フローとストック」について言及。
こちらは、概念的には比較的身近な方だと思います。
私個人としても、損益計算書と貸借対照表のような関係だとアバウトに理解していますし。
それを「思考と知識」に当てはめたのが、上記ポイントの1番目。
従来は「知識重視」だったのが、ここ最近は「思考重視」にトレンドが移っている気がします(受験においても)。
◆続く第2章は、細谷さんお得意の「具体と抽象」がテーマ。
この辺は、下記参考記事にもあるような、細谷さんの著作をお読みの方にとっては、馴染み深い内容だと思います。
特に「ビジネスモデルの他業種への展開」といったお話は、抽象化の本領発揮といったところでしょう。
もちろん、人間社会の基礎をなす「数」「言葉」「お金」も抽象化の代表的なもの。
また、上記ポイントの2番目の「冷凍物流」も、言われてみたら抽象化の権化でした。
◆ただ、『フローとストック』というタイトルの本で、何でいまさら「具体と抽象」まで触れるのかと、読む前は少々疑問に思っていたのですが、その答えは第3章以降にありました。
それが上記でも何度も触れている「CAFSマトリックス」です。
さすがにこちらを解説しないわけにもいかないので、上記ポイントの3番目で簡単に。
文章で読んでも今ひとつ分かりにくい(各象限とも解説を端折っていますし)ので、今回その「CAFSマトリックス」を上記で再現しておきました。
こちらのマトリックスを見ながら、上記ポイントの3番目を読んでいただくと、理解しやすいと思います。
◆そして、この「CAFSマトリックス」が、私たちの生活でどのように存在しているのかに触れているのが本書の第4章。
ここでは上記ポイントの4番目の「部屋の整理整頓」を抜き出しましたが、他にも
・ルール改善のサイクル等々が、解説されています。
・アンラーン
・組織のライフサイクル
・イノベーションのサイクル
・自然科学の進化のサイクル
確かに「言われてみたら」レベルで、気づきも多かったのですが、本当なら冒頭の内容紹介にもあるように、「次の動き」を予測できるのが大きいのではないでしょうか。
実際、内容が濃いので、いずれ時間を作って熟読したい1冊でした。
日常の事象の先読みができるようになるために!

フローとストック 世界の先が読める「思考」と「知識」の法則
第1章 世界は「フローとストック」からできている
第2章 人間の思考に欠かせない「具体と抽象」
第3章 新しいフレームワーク「CAFSマトリックス」
第4章 「CAFSマトリックス」を回して未来を読む
終 章 「CAFSマトリックス」のリアルな使い方
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【編集後記】
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