【文章術】『日本人のための「書く」全技術【極み】』藤𠮷豊,小川真理子:マインドマップ的読書感想文

2025年02月13日

【文章術】『日本人のための「書く」全技術【極み】』藤𠮷豊,小川真理子

【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、明日で終了となる「翔泳社祭 2025」の中でも当ブログ向きの作品。

以前、『「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』をご紹介している、藤𠮷豊さんと小川真理子さんが、再び文章術本に挑んだ1冊です。

アマゾンの内容紹介から一部引用。

レポート・ネット記事・メール・ブログ・SNS・企画書・論文・書籍執筆……すべてに効果抜群！
「2,000本以上の記事作成」「書籍200冊以上の執筆経験」「ベストセラー探究」から著者が導き出した、マネするだけで誰でも文章がうまくなるロジカル文章術！
・才能いらずであなたも必ず「書ける人」になる！
・「で、何が言いたいの？」から卒業！
・AIに負けない「人間らしさ」を活かしつつ、ゼロから文章が書けるようになる
・「究極のポータブルスキル」である文章術を今このタイミングで極める！
20万部突破『文章術のベストセラー100冊のポイントを1冊にまとめてみた。』の著者がはじめて自らの執筆メソッドを全部公開！ベストセラーは本書のスキルを使って書かれていた！

送料を加算した中古よりは、このKindle版が600円強お得な計算です！

【ポイント】

■1.「読者の役に立つ内容」を書く

　文道の藤𠮷が編集者になったばかりの頃、月刊誌の「料理コーナー（料理道具の紹介ページ）」を担当したことがありました。ところが編集会議で企画を提案しても、なかなかOKがもらえません。当時の上司からは、
「藤𠮷はその企画をおもしろいと思っているのだろうが、本当に読者の役に立つのか、根拠が薄い。藤𠮷の伝えたいことと、読者が知りたいことが本当に一致しているのか、再考してはどうか」
　という指摘をもらいました。
　そこで、かっぱ橋道具街（東京都台東区にある問屋街）に出向き、問屋の店主から「どのような調理道具を、どのように使うと料理の味が変わるのか（たとえば、おろし金の素材とわさびのすり方を変えると、辛味がどう変わるかなど）」を教えていただき、その内容をもとに企画を立てたところ、無事に企画が通りました。料理道具の使い方の提案は、読者の役に立つからです。

■2.インタビュイーも知らない情報を見つける

　1次情報と2次情報の使い方として、次のケースがあります。
　インタビューした原稿をまとめる過程で、補足、補強をするために、内容に関連することで、インタビュイーも知らない情報（具体的な話が出なかった情報）を探すこともあります。
　たとえば、インタビュイーが、「今は働く人が減っている」と発言したとすれば、実際にどのくらい減っているのかを官公庁のサイトなどで調べ（2次情報）、原稿に追記していきます。
　実際の推移や数字を入れる（2次情報で補強する）と、
・発言に厚みが出る
・説得力が増す
・記事が立体的（さまざまな角度からとらえること）になる
　といったメリットがあります。読者にとっても有益です。

■3.文章のプロも使っている書き出し8パターン（抜粋）

・パターン①……会話から始める
「いつか、いつかと思うなら、今すぐはじめよう」
　今も忘れない恩師の言葉です。
・パターン②……動きのあるシーンから始める
　寂しさにこらえきれなくなったのか、3歳の息子は、母の手をぎゅっと握った。
・パターン③……疑問を投げかける
　日本人は、なぜマスクを外せないのだろうか？
・パターン④……状況、現状を説明する
　年齢が下がるほど、SNS上のトラブルが増加している。(中略)
・パターン⑥……意外な事実から始める
「長時間の運動によって、かえって筋肉量が減ることがある」という事実をご存知でしたか？
・パターン⑦……音から始める
　コツ、コツ、コツ。自分以外は誰もいないはずなのに、足音が聞こえた。

■4.見出し（タイトル）をつけるときの7つのポイント

①文章の内容がすぐにわかるようにする（具体的に書く）。
②見出しと同じ内容の言い回しを本文中にも使う（本文中の言い回しを見出しに使う）。
③本文中の「キーワード」を組み合わせる。
④「メリットがある」と期待させる（役に立つ、得する、損をしないと思わせる）。
⑤「自分に関係がある」と思わせる。
⑥メインタイトルは主題、サブタイトルは説明。
⑦パターンに当てはめる。

（詳細は本書を）

■5.推敲における音読のメリット

　音読は多くの文章のプロたちが推奨しています。
【音読のメリット】
・読み飛ばすことができないため、誤字脱字を発見しやすい。
・声に出すことで、読みやすさや文章のリズム、句読点の位置などを確認できる。
　人間の脳は、文章を読むときに一文字ごとに読むのではなく、まとまりとして文字列を認識するといわれています。
　そのため、単語の最初と最後が正しければ、それ以外の文字が間違っていても、問題なく読めてしまいます。脳が勝手に単語を予測して補正するためです。これを「タイポグリセミア現象」といいます。たとえば、「はめじしまて」という文字列を、「はじめまして」と認識する人が多いのも補正が働いているからです。
　音読することで、タイポグリセミア現象にも対応できます。
　音読をして、スラスラ読めないところや、リズムの悪いところなどは、文章を見直す候補となります。

【感想】

◆なるほど、著者お二人が、ライター経験がある（今もされている？）、ということが十分感じられる作品でした。

そもそも普通「文章術本」と言った場合、いわゆる「文章を書く」ことに特化していることが多く、その前後（特に「前」）を意識している作品はあまり多くありません。

一方、本を書いたりライターをされている方だと、「企画」して、情報を「集めて」、「構成する」、というところから始める必要があります。

実はその3つの作業が、本書の第1章から第3章までの各章のテーマであり、一般的な文章術的な内容は、本書の場合第4章の「書く」が大半になるかと。

ちなみに本書の著者お二人の、前作的な意味合いが強いこちらの作品は、文章術本を集めて、それらに頻出する内容を順位付けした結果、ほぼほぼこの「書く」TIPSがほとんどだったのと対照的ではあります。

「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。

参考記事：【文章術】『「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』藤吉豊,小川真理子（2021年01月06日）

むしろ、この本を書かれる過程で、「『文章を書く』というのは、これだけじゃないんだぞ」的に思われて、本書を執筆されたのかもしれませんが。

◆そこで各章からそれぞれ抜き出したポイントを見ていくと、まず上記ポイントの1番目は、第1章の「企画する」からのもの。

「HOW」に先立つ「WHAT」のTIPSとして、意識しておきたいところです。

結局、読んでもらえない文章（企画）を書いても、自己満足に過ぎませんから。

また、第2章の「集める」から引用したのが、上記ポイントの2番目。

よく、「2次情報よりも1次情報が大事」と言われますが、矛盾しないのであれば併用しても良いわけで、情報補完という意味では、むしろ2次情報も有意義でしょう。

なお、第6章のコラムで、校正者の柳下恭平さんが言われていたのですが、フジロックにどんなタレントが来たかは1次情報であたれるけれど、どんな服装だったかは、一般人のブログの写真等（2次情報）で確認できるのだそうです。

◆そして1つ飛んだ第4章の「書く」からは、前述のように文章術的なTIPSをたくさん抜き出せるのですが、唯一抜き出したのが上記ポイントの3番目の「文章のプロも使っている書き出し8パターン」。

「文章を短くする」とか「わかりやすい言葉を使う」といった、類書でもよく見かけるお話はスルーして、汎用性の高いものを選んでみました。

やはり書き出しで惹きつけることができれば、それだけ読んでもらえる可能性も高いでしょうし。

ただ、句点や読点の付け方はさておき、助詞の「は」と「が」の使い分けは、私自身、何も考えずに感覚で書いていますが、ちゃんとルールがあったんですね（詳細は本書を）。

やはりこの第4章はお目通しいただきたいと思います。

◆なお、上記の「惹きつける」は、続く第5章のテーマでして、書き出し以前に重要な見出しの付け方を指南しているのが、上記ポイントの4番目。

こちら長くなるので、最初にあった小見出しだけ引用しましたけど、本書ではそれぞれ解説されていますから、ぜひご覧ください。

もちろん、この見出しだけでも、世間的には1冊の本が書かれているくらいですから、それでも足りないくらいなのですが。

そして目からウロコだったのが、上記ポイントの5番目の音読のお話。

こちらは、第6章の「推敲する」からのTIPSなのですが、「タイポグリセミア現象」が関係していた、というのは目からウロコでした。

タイポグリセミア - Wikipedia

今までキチンと音読してなかったのですが、大事な文章はしっかり音読して推敲したいと思います。

文章のプロが書いた文章術本がここに！