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2025年01月19日

【オススメ】『人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』山口周


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人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事にて、もっともお求めいただいているキャリアデザイン本。

当ブログではおなじみである山口周さんの「集大成」というだけあって、ハイライトを引きまくりました(紙の本なら付箋だらけの画像を添付するところ)。

アマゾンの内容紹介から。
「そもそも生きている意味がわからない」「仕事で失敗するのが怖い」「40代を過ぎて、部下の若手の成長に焦る」「仕事ばかりしていて家族との時間がない」「最近全然成長できていない気がする」…人生でぶつかる様々な問題を、「経営戦略」のコンセプトで解決する、まったく新しい生き方の本。超人気著者の集大成!

中古がまったく値下がりしていませんから、時間差で「10%OFF」となったKindle版がお買い得です!






【ポイント】

■1.「時間泥棒」に自分の人生を奪われないために
 ミヒャエル・エンデの小説『モモ』には、人から時間を奪う灰色のスーツを着た「時間泥棒」が登場し、それまで十分幸福に暮らしていた人たちから時間を奪っていきます。このとき、彼ら時間泥棒が訴えたのは「愛する家族や隣人のために無為に使っている時間資本を切り詰めて貯蓄に回せば、あなたはお金持ちになれますよ」という提案でした。これはまさに「人生を豊かにしてくれる資本」のために注いでいた時間を、金融資本を築くためだけに集中して使ってはどうか、という提案なのです。そして、この提案を受け入れた人たちは、自分でも気づかないうちに、かつて実現していたウェルビーイングの状態をどんどん破壊していってしまうのです。
 では「灰色のスーツを着た男たち」に時間を奪われないために、私たちはどうすればいいのでしょうか? 答えはただひとつ、「自分にとって本当に大事なもの」「自分が本当に実現したいこと」を意識して時間資本の配分をマネージするしかありません。


■2.計画の策定・実行・修正を織り交ぜる
 私たちは一般に、事前の計画が、さまざまな可能性について仔細に考慮され、綿密で詳細なものであればあるほど、プロジェクトはスムーズに進むと考えてしまいがちですが、実証研究の結果はその真逆で、事前の計画に時間を費やせば費やすほど、プロジェクトの進行は遅くなり、プロダクトやサービスの競争力も低下するという結果が出ているのです。
 成功したプロジェクトチームは、仮説に基づいて大まかな計画を一気に作った上で、プロジェクトの進行に従って明らかになっていく仮説の検証結果に従って、その場その場で新しい計画を策定し、それに乗り換えていったのです。言うなれば、プロジェクトの実行過程全体にプロジェクトの計画と修正を溶かし込んでいるのです。(中略)
 同様のことが私たちの「人生の経営戦略=ライフ・マネジメント・ストラテジー」についても言えます。私たちは自分が何に夢中になり、どのような強みを持っているかを先見的に知ることができません。つまり、私たちの人生は「膨大な仮説の集合体」としてまずはスタートし、その仮説をひとつひとつ検証し、破棄・修正することでしか前に進んでいけない、ということなのです。であるとすれば「いかに早い段階で仮説を検証し、戦略を修正できるか」が重要な論点となってきます。


■3.人材の価値は「需要と供給の関係」によって決まる
 私たちは労働市場における「自分の価値」を高めるために、語学を学んだりスキルを身につけたりという努力をしているわけですが、そもそも「労働市場における価値」は何によって決まるのでしょうか?
 ともすれば、この問いに対して「それは能力や知識の水準だ」と答えを返してしまいがちですが、この答えは全くの誤りだとは言わないものの、不十分だと言わざるを得ません。
 なぜなら、どんなに素晴らしい能力や知識であっても、それが需要に対して過剰に供給されることになれば、それらの能力や知識には価値が認められないからです。
 ここは非常に重要な点なので、市場におけるポジショニングを検討する際は常に念頭に置いておいて欲しいのですが、「市場における価値」は「能力や知識の水準」ではなく「需要と供給の関係」によって決まります。


■4.リスクとリターンの性質の違う仕事を組み合わせる
 まず押さえておくべきなのは「リスクとリターンには非対称性がある」というポイントです。この非対称性をうまく組み合わせることで「上側には大化けするリスクがあるけれど、下側には大損するリスクはない」という仕事のポートフォリオをつくることを目指すのです。(中略)
 例えば、ベルンの特許局の役人として働きながら、余暇の時間を使って論文を書き、その論文によってノーベル賞を受賞したアインシュタインは、典型的な「人生のバーベル戦略」の実践者といえます。
 理論物理の論文を書くというプロジェクトには大きな「リターンとリスクの非対称性」があります。論文を書くことで失われるものは、研究に費やした時間と執筆に用いる文房具代くらいのものですが、一方で、もし論文が高く評価されれば、得られるリターンの大きさは計り知れません。


■5.成功者ほどリスクをコントロールしている
 私たちは失敗者の伝記を読みません。読むのは成功者の伝記だけです。そこに「リスクを取って起業した」とあれば「なるほど、成功者はやはりリスクを取っている」と考えてしまうわけですが、これは統計学でいう「生存者のバイアス」の典型です。
 実際のところはむしろ逆で、成功者ほど、オプション・バリューを保ちながら、リスクをコントロールして起業しているのに対して、失敗者ほど大胆にリスクを取ることがわかっています。
 例えば、ビル・ゲイツは、ハーバード大学在学中にマイクロソフトを起業し、そのまま事業を継続して世界一の大富豪になりました。これは非常に有名な話で、ともすれば「一流大学のハーバードに入ったのに、起業のために学歴を捨てるなんて、やっぱりリスクを取ってコミットしているじゃないか」と思われるかもしれませんが、実は仔細に状況を調べてみると、話は変わってきます。
 実はビル・ゲイツは、マイクロソフトの起業に当たって、ハーバード大学を「退学」したわけではなく「休学」しています。つまり、起業がうまくいかなかった場合は、すぐに大学に戻れる選択肢、つまりオプション・バリューを持っていたのです。


【感想】

◆久しぶりに山口さんのご本を読みましたが、なるほど「集大成」と言われるのも納得の濃い内容の作品でした。

サブタイトルにある「戦略コンセプト」というのは、山口さんが考え出したものではなく、冒頭の内容紹介にもあるように、広く知られている企業の経営戦略を、「人生戦略」として転用しているもの。

具体的にはダイヤモンド社さんのサイトの目次にもあるように「ライフ・サイクル・カーブ」や「ポジショニング」「ブルー・オーシャン戦略」等々になります。

なお、その「ブルー・オーシャン戦略」のところでは、「自分ならではの価値を組み合わせることによって、『自分のブルー・オーシャン』を構築することができる」と言われているのですが、これはまさに藤原和博さんが、下記の本を初めとして何度も言及しているお話かと。

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藤原和博の必ず食える1%の人になる方法

参考記事:【キャリア】『藤原和博の必ず食える1%の人になる方法』(2013年09月01日)

この大ネタすら、20ある戦略コンセプトの1つに過ぎないのですから、本書の大盤振る舞いぶりが分かるというものです。


◆ただし、その戦略の配分は各章によってばらつきがあり、例えば第1章では重要性の高い「パーパス」1つに集中。

確かに人生の目的を定めなくては、その戦略もキャリアデザインも不安定なものになるでしょう。

そして本書では、「人生というプロジェクトの長期目標」を次のように設定しています。
 時間資本を適切に配分することで持続的なウェルビーイングの状態を築き上げ、いつ余命宣告をされても「自分らしい、いい人生だった」と思えるような人生を送る
それを踏まえて確認したいのが、上記ポイントの1番目。

……私は『モモ』を読んだことがありませんでしたが、そんな成功本のようなことを言っていたのだとは!?

さらに本書のところどころで、山口さん自身の経験も語られているのですが、かつては山口さんも「周囲の人を羨ましがらせるもの」を手に入れようとしていた結果、「設定した目標がことごとく実現するのに全然ハッピーにならなかった」のだそうです。


◆続く第2章の「長期計画について」から抜き出したのが、上記ポイントの2番目。

これは「適応戦略」をテーマにした節からのものなのですが。
 適応戦略とは、企業や組織が、固定された戦略や計画に固執するのではなく、事業推進にともなって立ち現れてくる機会や脅威に適応するために、柔軟に対応し、資源配分を調整することで目標を達成するという考え方です。
まさに人生においても、想定外の出来事をも取り込んでいくのが正解ということなんですね。

また、ここでも山口さんの事例が登場するのですが、元はと言えば山口さんは、電通のクリエイティブ部門にいたのだそうです。

ところが考えたCMの企画やコピーがことごとくNGとなり、自分には才能もセンスもない、と自覚。

ところがある日、クライアントも交えた会議に末席で出席し、それまで黙って聞いていたにもかかわらず、会議が迷走して数時間に及んだところで、いきなり前に出て議論を仕切ってしまいます(理由:「友人との飲み会に遅れそうだったので」)。

すると翌日、局長に呼ばれて、慇懃無礼な態度を叱責されるかと思いきや、クライアントの役員からお礼の電話があった、と褒められたのだとか。

結局これをきっかけに、山口さんは自分の強みについての認識を修正し、それが今の活躍につながっているのですから、「戦略の修正」が大事なことを、身をもって立証されたと言えるかと。


◆一方、第3章の「職業選択について」では、2つの節にまたがって「ポジショニング」を扱っています。

そこから引用したのが、上記ポイントの3番目。

ここの最後の段落を読んで分かるのが、「流行りの資格や学位をとる」のは、戦略的には悪手ということです。

逆に取るべき戦略は「『能力』を変えるより『立地』を変える」。
したがって、ポジショニング理論にのっとれば、競争優位を発揮できていない組織や個人が、本当に考えなければならないのは「どうやって資源や能力を獲得するか?」という論点以上に、「どのように立地や環境を変えるか?」という論点だということになります。
当ブログでは、かねてからスキルアップ本をよくレビューしていましたが、お役に立たなかった悪寒(すいません)。


◆同じく上記ポイントの4番目も第3章からのもの。

テーマ的には「イニシアチブ・ポートフォリオ」の節からなのですが、「仕事のポートフォリオ」を考える上では、「リスクとリターン」「長期と短期」「ライスワークとライフワーク」の3つの視点のバランスを考える必要があるのだそうです。

このポイントの4番目は、「リスクとリターン」のお話なんですけど、確かにアインシュタインの取った戦略は「ローリスク・ハイリターン」ですよね。

また「長期と短期」のところでは、横軸に「時間軸(収益化のタイミング)」、縦軸に「本業との近さ(馴染みのレベル)」をとって、自分の取り組みのポートフォリオを確認する、というTIPSが紹介されていました。

これまた山口さん自身のポートフォリオの図があって、納得できることうけあいという(詳細は本書を)。


◆そして上記ポイントの5番目は、第4章の「選択と意思決定について」からのもの。

具体的な節の戦略は「オプション・バリュー」なんですけど、私はこの用語を知りませんでした。

ググったら、「AIによる概要」がもっともらしい答えを。
オプション・バリューとは、ファイナンス用語で「選択肢を持っていることの経済的価値」を意味します。
なるほど納得。

ちなみに私たちの日常生活の例として、本書で挙げられていた中の1つが、通販の返品保証です。
これは、購入者がもともと背負っている損失リスクを「購入した品物を同じ金額で売却する権利」、つまりプットオプションを与えることで相殺している、と考えることができます。
……返品保証をこんな風に考えたことありませんでしたよ。

ところで、このポイントの5番目ではビル・ゲイツが挙げられていますが、Googleの創業者の二人もやはり退学ではなく「休学」。

また、異質なところでは、ローリング・ストーンズのミック・ジャガーが、ハイエクやクルーグマンが卒業した英国のエリート校(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)の学生だったのが、誰の目にもストーンズの成功が明らかになってから、正式に退学したのだそうです。

見た目に反して(?)、慎重だったとはw


まだ書き足りないんですが、これはオススメせざるを得ません!

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人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20
はじめに 思い通りにならない人生を、とにかくなんとかする
第0章 なぜ、いま「人生の経営戦略」なのか?
第1章 目標設定について
第2章 長期計画について
第3章 職業選択について
第4章 選択と意思決定について
第5章 学習と成長について
おわりに 資本主義社会のハッカーたちへ
経営学独習ブックガイド 書籍一覧


【関連書籍】

本書巻末の「経営学独習ブックガイド」のうち、当ブログでレビューしているものを、今回下記に列挙しますが、本書では50冊弱それぞれに寸評がついていますから、こちらもお見逃しなく。

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モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか

参考記事:【はてブ3000超!】ダニエル・ピンクの新作『モチベーション3.0』がついに登場!(2010年07月06日)

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エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする

参考記事:【本質主義】『エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする』グレッグ・マキューン(2014年11月20日)

4532317150
「権力」を握る人の法則

参考記事:本当は残酷な『「権力」を握る人の法則』 の話(2011年07月23日)

4309300227
才能の科学;人と組織の可能性を解放し、飛躍的に成長させる方法

参考記事:【科学的自己啓発書】『才能の科学 人と組織の可能性を解放し、飛躍的に成長させる方法』マシュー・サイド(2024年08月18日)

4794221789
マインドセット「やればできる! 」の研究

参考記事:【オススメ!】『マインドセット: 「やればできる!」の研究』キャロル・S. ドゥエック(2016年01月18日)

4140816589
ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか

参考記事:【スゴ本!】『ゼロ・トゥ・ワン―君はゼロから何を生み出せるか』ピーター・ティール,ブレイク・マスターズ(2014年09月26日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

B071WR8G74
未来の年表 人口減少日本でこれから起きること (講談社現代新書)

当ブログでもレビュー済みであり、その後の河合雅司さんの「年表」シリーズの先駆けとなった1冊。

送料を足しても中古の方が100円弱お得ですが、未読の方はこの機会にぜひ!

参考記事:【少子高齢化】『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』河合雅司(2017年06月27日)


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