2025年01月13日
【行動経済学】『行動経済学が最強の学問である』相良奈美香

行動経済学が最強の学問である
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「Kindle本(電子書籍) ビジネス本セール」にて、人気の高い行動経済学本。……と言っても、版元のSBクリエイティブさんは、まだ当ブログでは取り上げていないので、アソシエイトの売上から注目したのですが。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
ビジネス界の要請を受けた世界のトップ大学が、次々と「行動経済学部」を新設し始めている。
MBAのように、多くのビジネスパーソンが行動経済学を学びに集まっている。
もはや行動経済学は、「ビジネスパーソンが最も身につけるべき教養」となっているのだ。
しかし、行動経済学は新しい学問であるが故に、これまで体系化されてこなかった。
理論を一つ一つ丸暗記するしかなく、なかなか「本質」がつかめなかった。
そこで本書では、基礎知識をおさえた上で、「ナッジ理論」「システム1vsシステム2」「プロスペクト理論」から、「身体的認知」「アフェクト」「不確実性理論」「パワー・オブ・ビコーズ」まで、「主要理論」を初めて体系化するという、これまでにない手法で、行動経済学を解説する。
謎のポイント還元「225P」を合わせると、実質「63%OFF」となるため、このKindle版が1000円強お買い得となります!

【ポイント】
■1.高級時計は垂直に見せる左右の広告を比べると、左の広告は時計の向きが「垂直」で、右の広告は「ナナメ」になっています。このとき、人は左の広告からは、「権威性」や「贅沢」な印象を感じます。
人は垂直のものを見ると、無意識のうちに「人の上に立つ」「出世する」「優位性」といった感覚を抱くのです。その感覚によって「この時計は高級品に違いない」と解釈します。垂直性は「重力に逆らって上昇・忍耐力・強さ」を無意識に示唆するとの調査結果も出ており、左の写真を広告に使うことで、「高級で長く使える最高の時計」というイメージを喚起します。
このとき、「人の上に立つ」「出世する」「優位性」といった抽象的な概念を「垂直(な配置)」という「具体的なもの」に喩える(比喩) ということが起こっています。
■2.「解釈レベル理論」で宣伝プランを変える
先ほどの現在志向バイアスでもそうだったように、基本的に人間の意識が向くのは「今」であり、今については「現実的かつ具体的」に考えます。逆に1週間後、1カ月後、1年後と、考えることが先になるにつれ、思考は抽象的になっていく──。これが「解釈レベル理論」です。
ハワイツアーの例で言うと、「来年の夏休みはハワイに行こう」という遠い予定のことを考えている場合、顧客が思い描くのはハワイの海や雰囲気、街並みなど抽象的なイメージです。
これが旅行が直前に迫ると、顧客の思考は「飛行場からホテルまでのアクセス、ツアーの特典、ホテルの部屋はバスタブ付きか?」といった具体的なものに変化します。
つまり、ツアー開催が顧客にとって先のことであればイメージ優先(抽象的) の宣伝が効果的であり、「1週間後に参加できる直前ツアー」であれば、具体的な情報が盛り込まれた宣伝にしないと顧客は集まらない。それを知っているか知らないかで、宣伝プランは大きく変わるということです。
■3.自分で決めたと思いたい「自律性バイアス」
例えば、仮に私が銀行の暗唱番号を忘れてしまったのなら、口座認証の手続きが必要です。(中略)
こんなときに、以下の2つの聞き方をされたら、どちらが好印象でしょうか。1.「この手順を踏まなければ口座認証はできません」当然、2です。理由はこれまでの例と同じで、1だと自分の意志はない「強制」によるものですが、2はあくまで自分の意志を持って口座認証の手続きをするというものです。
2.「あなたの口座認証をするためお手伝いをさせてください」
これについては実験も行われており、「お手伝いをさせてください」と言うか言わないかで、顧客の評価も大きく変わっていました。この実験の後、顧客に追跡調査をすると、後者のほうが顧客の評価は82%が高く、手間も73%が少ないと感じたという結果になりました。この行動経済学的な効果を理解していることからこそ、最近のアメリカでは必ずと言っていいほど、「お手伝いをさせてください」という言葉がマニュアルに入っていると考えられます。
■4.「$」表示をつけない方が売れる
お金との心理的距離について、さらに面白い実験を紹介しましょう。レストランで2通りのメニューを用意しました。・Aには「○○○ $20.00」と各料理に「$+金額」を表示違うのは「$」の表示があるかないかだけ。メニューのデザインや、料理の種類など、その他の条件はすべて同じです。
・Bには「○○〇 20.00」と各料理に「金額のみ」を表示
結果、Bのメニューを受け取ったお客さんのほうが大幅に消費額が増大しました。
「$」という表示がないことで、頭では金額とわかっていますが、「お金を払う」という行動が心理的に響かず、簡単にお金を使ってしまったのです。
■5.宝くじを買い続ける理由
合理的に判断すれば「自分に当たるはずがない」となりますし、望みも薄いでしょう。(中略)
ところが、それでもみんな宝くじを買い続けるのは、当たる確率が極端に低すぎて、確率に対するイメージが全くできないからです。反対に「もし当たったら」というときの喜びは考えずともわかります。・「宝くじに当たるのは天文学的な確率」この2つのうち、どちらがイメージしやすいかと言えば、数学者でない限り(いや、数学者でも) 後者でしょう。そこで、合理的な「当たるはずのない数字の確率」よりも、「宝くじに当たったら仕事を辞めて、買いたいものを買って世界旅行をして優雅に過ごす!」という夢のような生活にまつわるアフェクトが優先されます。つまり、たとえ確率が極端に低くてもイメージしやすいアフェクトに導かれ、宝くじを買い続けるという非合理な行動につながるのです。
・「宝くじに当たったら仕事を辞めて豪華に暮らそう」
【感想】
◆当ブログでは、かなりの数の行動経済学本をご紹介しており、いいかげん新たなネタ(バイアス)も尽きたかと思ったのですが、本書を読んで考えを新たにしました。上記で挙げたポイントは、いずれも私が知らなかった、ないしは現象自体は知っていたものの、ロジックを知らなかったものばかり。
なお建前上、本書のキモは冒頭の内容紹介でも挙げたように「『主要理論』を初めて体系化」したことにあるのですが、本書の序章によると、この体系化は「アカデミック」なものではなく、あくまでビジネスユースなモノのよう。
……このアカデミックとビジネスの違いについては本書にてご確認いただけたら、と。
そして本書においては、行動経済学の各理論を「『非合理な意思決定』に影響を与える」3つのカテゴリーに分類しています。
それが下記目次の第1章から第3章までの「認知のクセ」と「状況」と「感情」の3つ。
上記のポイントも、この3つの章から抜き出しています。
◆まず第1章からは、上記ポイントの1番目の「垂直」のお話を。
いや、重さや温かさが、思考に影響を与える話は知っていましたが、垂直か否かで「権威性」や「贅沢」な印象が変わるとは、目からウロコでした。
と言いますか、垂直だと「ちゃんとしている」みたいな軽いノリじゃないんですね。
同じく上記ポイントの2番目も、第1章から。
「解釈レベル理論」という言葉は初めてでしたが、言っている理屈は分かります。
私も先日、ちょっとした旅行をしたのですが、確かに最初にホテルを予約したときは、値段とパッと見の部屋の印象程度で決めたものの、後になってから空港からのアクセスや、ホテルから目的地までの経路が気になりだしましたし(手遅れ)。
こちら、さまざまな広告で活用できる気がします。
◆一方第2章からは、上記ポイントの3番目を引用。
「自律性バイアス」という名称は、当ブログでは初登場とはいえ、こちらも言っている内容は、類書でも目にした記憶があります。
ただ、最後の「お手伝いをさせてください」というフレーズが、「自律性バイアス」から来ている、というのは指摘されて初めて気がつきました。
しかもちゃんとエビデンスもあって、「顧客の評価は82%が高く、手間も73%が少ないと感じた」という数字には、かなりのインパクトがあります。
私は銀行にこの手の問い合わせはしたことがないものの、「お手伝いをさせてください」というフレーズはどこかで見たことがあったような……。
今「お手伝いをさせてください」でググったんですが、敬語や挨拶文のお話ばかりですね。
◆そして第3章からは、上記ポイントの4番目と5番目を抜き出しました。
まず4番目の「『$』表示をつけない」というTIPSは、これまた目からウロコ。
これは当然「円」でも同じです。
自分が売り手側で売上を伸ばしたいなら「2000」と数字のみの表示にし、買い手側で節約をしたいとき、もし「2000」という表示になっているメニューを見たら、慎重になったほうがいいでしょう。ネットショッピングだとむしろ、通貨違いの方が怖いですが。
さらに最後のポイントの5番目の宝くじのお話は、私自身がまったく宝くじを買わない派なので、色々と腑に落ちました。
そうでなくとも、宝くじのテラ銭は法外(還元率が50%未満)なので、1〜3等の確率が今の10倍高くなっても、私は買わないでしょうけど。
なお、ここでいう「アフェクト」というのは、簡単に言うと「淡い感情」のこと。
本書の第3章には、これを有効に活用するTIPSがいくつも収録されていましたので、気になる方は本書にてご確認ください。
行動経済学好きなら、一読の価値アリ!

行動経済学が最強の学問である
プロローグ いま世界のビジネスエリートがこぞって学ぶのが「行動経済学」
序 章 本書といわゆる「行動経済学入門」の違い
第1章 認知のクセ――脳の「認知のクセ」が人の意思決定に影響する
第2章 状況――置かれた「状況」が人の意思決定に影響する
第3章 感情――その時の「感情」が人の意思決定に影響する
エピローグ あなたの「日常を取り巻く」行動経済学
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【行動経済学】『イェール大学集中講義 思考の穴──わかっていても間違える全人類のための思考法』アン・ウーキョン(2023年09月15日)
【バイアス?】『情報を正しく選択するための認知バイアス事典』情報文化研究所(著),高橋昌一郎(監修)(2021年07月24日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。
減速して自由に生きる ──ダウンシフターズ (ちくま文庫)
こちらのマイペースな起業本は、中古が値崩れしていますが、送料を加味すればKindle版がお得。

知ってはいけない 合本版 (講談社現代新書)
セールで人気の新書の合本は、2冊の送料の合計額よりも下でしょうから結果的にお買い得。

今さら聞けない!経済のキホンが2時間で全部頭に入る
「5000人が一発理解した経済講義」と銘打った1冊は、Kindle版が400円弱お得な計算です!
【編集後記2】
◆一昨日の「Kindle本(電子書籍) ビジネス本セール」のパンローリング分の記事で人気が高かったのは、この辺の作品でした(順不同)。
Best Loser Wins ――人間の脳に組み込まれた負けパターンを克服する方法

必要なのはゴールだけ ――ポテンシャルゾーンの入り方

インデックスファンドを推奨する42の理由 ──パッシブ投資は勝者のゲーム、アクティブ投資は敗者のゲーム

第三帝国のバンカー ヤルマル・シャハト ――ヒトラーに政権を握らせた金融の魔術師
よろしければご参考まで!
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