2025年01月09日
【法律】『我が身を守る法律知識』瀬木比呂志
我が身を守る法律知識 (講談社現代新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、本日までとなる「人生を変えるヒントがここに 現代新書レーベルフェア」の前日ランキングにおいて、1位となった作品。正直、ノーマークだったので、あわてて読んでみたところ、学ぶところが多々ありました。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
この一冊で、あらゆる法的トラブルを予防できる知識が身につく!
市民、ビジネスパースン、学生、実務家、訴訟当事者・関係者必携の一冊!
ポイント還元もあわせると、このKindle版が400円以上お買い得となります!
【ポイント】
■1.日本にはびこる「誤った性善説」性善説それ自体に悪いところはありません。しかし、人間存在をリアルな目でとらえない、そして、自己責任の感覚をもたない、悪い意味での「甘えの構造」に基づいた「誤った性善説」は、法的紛争の原因になり、また、それをこじらせる原因にもなります。(中略)
ヨーロッパの童話に、主人公の、「年長の偉い方であるあなたを信用しないわけではありません。でも、そういう方が相手でも、疑問に思うことは問いただし、契約や取引はきちんとしておくようにと、父からいつも言われていましたから」という言葉が出てきて、「おお、そうだよね」と思ったことがあります。これが、近代的個人の正しい態度であり、「誤った性善説」の対極にあるものでしょう(日本の童話や民話にはまず出てこない種類の言葉であることは、おわかりでしょう)。「誤った性善説」は、「物事をあいまいなままにしておく性癖」同様、予防法学においてまず克服されるべき事柄です。
■2.交通事故が起きたら警察を呼ぶ
不幸にして事故が発生してしまったら、警察を呼ぶのが基本です。(中略)
もっとも、人身事故であることが明らかなら、普通の人であれば必ず警察を呼ぶでしょう。しかし、そうでない場合には、相手から懇願されると警察を呼ばずに示談をするケースも、実際にはそこそこあるようです。
しかし、身体に関しては、とりあえず障害がないと思ってもあとから症状が出てくる場合もあります。また、車両の修理費用も、意外に高くつくことがあります。
したがって、軽微な車両被害だけであることが明白であって、そのまま許してあげてもかまわない(示談の必要もない) 場合であればともかく、そうでなければ、警察に通報するのが無難です。
それは、警察を呼んでおかないと、「実況見分調書」が作成されず、保険会社から保険金を受け取るために原則として必要な「交通事故証明書」も発行されないため、思ったように示談が進まず、保険会社に対するものをも含め何らかの請求をしなければならなくなった場合に、それが困難になるからです。
■3.グループによる痴漢でっち上げに注意
これは、集団による暴力を伴うスリ(2人以上が押さえ付けている間にもう1人が財布等を取る) と同じく、集団で痴漢の外形を作り出すものです。女性を含む何人かのグループでターゲットを取り囲み、女性が痴漢を訴え、その後、面識のない他人を装った男たちがターゲットをつかまえ、引っ立てる。そして、恐怖に震えるターゲットを「じゃあお金で解決しますか?」と恐喝するわけです。
目的はほとんどの場合金銭ですが、より恐ろしいのは、これが、ターゲットを脅迫したり、その社会的地位に致命傷を与えたりするために使われる場合もありうることです。そのような事態をもくろむ人間や組織に依頼されたグループが、さらに精妙な作戦を仕掛けることになります。闇に葬られてしまうので、その実態はよくわからないのですが、こうしたケースも実際に存在するといわれています。
このパターンについての予防策は、電車内では常に一定の注意力を保って周囲に気をつけていること、電車内で女性を含む怪しい集団に取り囲まれそうになったらすぐに逃げること、です。
■4.海外で危険な場所に立ち寄らない
私は、まだニューヨークがアメリカで最も危険な都市の1つであったころにニューヨーク総領事館に勤務した外交官と話したことがあります。彼の言うところでは、「買春のために危険地域に入って行って殺される日本人男性(主として海外出張者や旅行者) の数は、年によっては数十人に及ぶ」ということでした。一切ニュースにならないのは、被害者家族も、雇用会社等の関係者も、その報道を望まないからだというのです。
そのころのニューヨークには、警官も立ち入れない「アンタッチャブル」の領域、建物がいくつもあり、地元民はもちろんそのことをよく知っていました。(中略)
しかし、日本人は、国内で出張に行って羽目を外すのと同じ感覚でそうした場所に入って行き、無惨な死体となって出てくるというのです。「『海外視察』にやって来る政治家も、そういう場所に行きたがるから、こっちで安全な店を教えておいてやらなきゃいけないんだ。入口まで連れて行ってやることもある。ほとんど、ダーティーな旅行社みたいなもんさ」とも言っていました。こういうところにも、「旅の恥はかき捨て」感覚に加えて、日本人の危機管理意識・認識の欠如が出ているといえそうです。
■5.保証人の責任は重い
保証人は、基本的に、主債務者と同等の責任を独立して負います。たとえば、主債務者が破産したあと免責を受けても、保証人の責任は残るのです。
訴訟においても、本人訴訟の被告である保証人が、時々、「絶対に迷惑をかけない、かたちだけだと言われて保証したのだから私に責任はない」などと強く主張する例がありますが、主債務者が保証を頼む場合にそうしたことを言うのはごく普通のことですから、それだけで勝訴することはありえません。
ですから、保証をする場合には、必ず、「自分が払うことになりうる」ことを念頭に置いて、みずからの責任で判断してください。それに不安があれば、断ることです。
【感想】
◆非常に興味深い作品でした。まずは、とにかく守備範囲の広いこと!
下記目次をご覧いただければお分かりのように、交通事故から、不動産、痴漢、離婚、相続等々、各章ごとにテーマが設けられており、それぞれに読みどころがありました。
と言いますか、本来であれば、個々のテーマが、それ単独で本が1冊書けるような奥深さですから、話も濃いことこの上ありません。
それだけに、上記ポイントで抜き出したお話も、必ずしもベストとは思えず、人によっては違うテーマを選ばれても不思議ではないか、と。
◆ただ前提として踏まえておきたいのが、私たち日本人の法律に対するナイーブさです。
たとえば本書によると、人口比でみた民事訴訟件数は、アメリカでは日本の10倍以上、イギリス、ドイツ、フランスでも少なくとも数倍以上にはなりそう、とのこと。
これは1つには、日本人にはいわゆる「性善説」がベースとしてあって、争うことを想定していないからではないでしょうか。
それに関連して抜き出したのが、第1章からの上記ポイントの1番目。
確かに、たとえ年上に対してでなくとも、お客さんや取引相手を疑うのは失礼、みたいな空気は、確かに日本にはあると思います。
そして、そういった「性善説」を前提にしたビジネスモデルが、昨今崩壊しつつあるという……。
LUUPと交通違反、タイミーと闇バイト、メルカリとさらし行為――“性善説サービス”はいずれ崩壊するのか(1/6 ページ) - ITmedia ビジネスオンライン
◆一方、私たちにとって身近な法律事項の1つが、第2章のテーマである交通事故です。
ただし、ここでも「性善説」的に警察を呼ばないと、上記ポイントの2番目にあるように、後で面倒なことになりかねません。
また、相手が警察への報告を嫌がっている場合、
そうした人にはそれなりの前歴や問題がありうることも否定できないので、警察を呼ばなかった場合に誠実に対応してくれるか疑問なことも多い点には注意したいところ。
さらに、当たり前ですけど、保険には入っておかないと大変なことにもなりうる、という指摘もごもっともです。
私は車には乗らないものの、自転車の事故による賠償金額が高額になることを考えて、数年前から自転車の保険には入っておりますが。
月140円〜!サイクル安心保険|一般財団法人 全日本交通安全協会 自転車会員入会および自転車保険加入のご案内
◆さらに1つ飛んだ第4章では、痴漢えん罪がテーマです。
ちなみに自分が何もしていないのに、痴漢を疑われた場合の対応については、その場を去る、去らないの意見の相違があるようなので、ここでは割愛。
逆に注意をしないといけないのが、上記ポイントの3番目に引用した「でっち上げ」のケースです。
誰も目撃者がいない、通常の痴漢えん罪のケースでも孤立無援なのに、複数人で「見た」と言われてしまっては、勝ち目がありません。
また、同じく法律関係ないですけど気をつけたいのが、第5章から抜き出した上記ポイントの4番目のお話です。
そんなに事件が起きてるのに報道されないのもビックリですが、こちらはある意味自業自得。
さらに最近では、男性の買春ではなく、女性の出稼ぎ売春が増えて、現地でトラブル(事件)になっている、という話もあります。
性善説じゃないですが、日本の常識は海外では通用しないことを留意していただきたく……。
◆なお上記ポイントの5番目は、1つ飛んだ第7章から抜き出したもの。
よく聞く「保証人」のお話ですが、留意すべきは「主債務者が破産したあと免責を受けても、保証人の責任は残る」というところでしょう。
つまり、債権者にしてみたら、債務者がどうせ払えないのは百も承知で、あらかじめ払うことができる保証人をつけることができれば、目的は達せられるということ。
ですから、ここは心を鬼にして、保証人になること自体を断わらないといけません。
ここでも再び「誤った性善説」なんぞ信じないようにしなくては。
……法律ってホントに怖いですね。
この機会に幅広く法律を学ぶべし!
我が身を守る法律知識 (講談社現代新書)
1章 法的紛争防止のために必要な知識と法的感覚
第2章 交通事故 不測の事故で人生を失う危険
第3章 不動産をめぐるトラブル 普通の市民が出あいやすい重大紛争
第4章 痴漢えん罪に学ぶ刑事事件の恐怖
第5章 離婚、子ども、不貞 家族にかかわるトラブル
第6章 相続をめぐる「骨肉の争い」とその予防策
第7章 雇用、投資、保証 経済取引関連紛争
第8章 日常生活にひそむ危険 医療、日常事故、いじめ、海外旅行、高齢者詐欺
第9章 紛争が起こってしまったら 弁護士の選び方、とりうる方法等
終 章 個人と社会・国家の危機管理
【関連記事】
【交渉術】『実践・交渉のセオリー ビジネスパーソン必修の13のコミュニケーションテクニック』高杉尚孝(2016年08月23日)【密会ハック?】『文春にバレない密会の方法』キン マサタカ(2017年07月18日)
【『影響力の武器』悪用編?】『だましの手口』に学ぶブラック手法6選(2012年03月07日)
【犯罪】『入門 犯罪心理学』原田隆之(2017年08月03日)
絶対に公開してはいけない「詐欺師の逆転話術」(2010年05月09日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。おとなの青春18きっぷの旅 ベストセレクション
鉄道好きなら要チェックの1冊。
絶版で中古が高値のため、Kindle版が1100円弱お買い得となります!
この記事のカテゴリー:「ビジネススキル」へ
「マインドマップ的読書感想文」のトップへ
スポンサーリンク
当ブログの一番人気!
1月23日まで
Kindle月替わりセール
年間売上ランキング
月別アーカイブ
最近のオススメ
最近の記事
このブログはリンクフリーです