【英語学習】『脳を活かす英会話　スタンフォード博士が教える超速英語学習法』星友啓:マインドマップ的読書感想文

2024年12月20日

【英語学習】『脳を活かす英会話　スタンフォード博士が教える超速英語学習法』星友啓

【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事の中でも注目を浴びていた英語学習本。

著者である星友啓さんの作品では、以前、スマホ活用本をレビューしたことがありましたが、本書はそれを英語学習に特化した感じです。

アマゾンの内容紹介から。

ネイティブ英語を目指す必要はアリマセン！
脳科学と心理学、そしてゲーム感覚でマスターする、ＡＩ時代を活かした最速・最楽の英語学習術！
脳を活かす英会話は、言いたいコトを言いたいママに言う英語。
ビジネスシーンからナチュラル日常会話まで、スタンフォード・オンライン高校校長の超直伝！

まだ中古が値下がりしていませんから、Kindle版が若干お得になります！

【ポイント】

■1.必要な英単語量はすでに学んでいる

　では、一般的な英会話や英語の文章の単語の95～98％くらいを知っておくためには、どれくらいの単語数の知識があればいいのか？
　例えば、標準的な映画であれば、3000語で95％、6000語で98％。つまり、学習指導要領改訂前の高卒の英単語量でもなかなかの理解ができるレベルであり、改訂後の人たちにおいてはだいぶいい感じです。同様に、TVは3000語で95％、7000語で98％。英語の歌なら、95％が2000語で、98％が4000語です。
　また、TEDTalkや大学の授業などのアカデミックな英語であれば、96％が4000語で、98％が8000語となって、多少増量が必要になります。そしてお待たせ、平均的な日常会話は95％が3000語で、98％が5000語！
　つまり、高校までの英単語の量で、英語の一般的なやりとりはかなりの精度で可能なわけです。改訂前に学校で英語を学んだ人たちも、日常会話の量としてはOKで、改訂後の人たちは、さらに隅々まで理解が行き届くというわけです。

■2.和訳せず英語を使うためのトレーニング

　例えば、「How is it going?」（調子どう？）と挨拶されて、「うーん、ものすごくいいわけでもないけど、悪いわけでもなく、まずまずだな。これ英語でどう言おう？」と日本語から考えてしまうと、会話を始める挨拶からつまずいてしまいます。
　そうではなく挨拶など日常の頻出シーンでは、ほぼ使うべき英語表現の選択肢が限られているので、そこから選んで返答するのが常套手段です。(中略)
　だから、「うーん、ものすごくいいわけでもないけど、悪いわけでもなく、まずまずだな」という日本語をどう伝えようか考えるのではなく、頻出の返答フレーズ「Not bad.」（悪くないね）や「Pretty good.」（けっこういいよ）辺りから選んでパッと答えるように練習するのが正解です。
　つまり、自分の思いを日本語から英語に翻訳する「英訳方式」ではなく、頻出場面のシンプルな答えの選択肢から選ぶ「チョイス方式」で練習する。これが、“日本語を介さない英語脳”になる第一歩です。

■3.無料でできる独学アウトプット英会話

　スマホと生成AIさえあれば、自分に合った英会話が独学しかも無料で可能になります。さらに、どんなところが良かったか、どこを改善したらいいかなどというフィードバックまでしてくれます。
　百聞は一見にしかず。まずはさっそく試してみましょう。無料ですから、ためらう必要はありません。
　まず、スマホの準備から。次のステップです。
①ChatGPTのアプリをダウンロード
②マイクマークを押して「こんにちは」と話してみよう
③認識されたことを確認
　さあ、準備ができました。さっそく新しいチャットを開いて、以下のように日本語で伝えてみましょう。
「私は英会話の初心者です。今日はあなたと英会話の練習をさせてください。まず初めは、英語で挨拶しますのでその後、自然に会話を続けてください。会話を終えたいときは私のほうから『終わり！』と言いますね」

■4.脳科学に基づく英単語リトリーバル記憶法

　例えば、以下のような4つの選択肢があったら、皆さんはどれが一番効果的だと思いますか？
1．覚える単語と意味を見ながら、5回音読する。
2．覚える単語とその意味を30秒間凝視する。
3．覚える単語と意味を見ながら、5回書き出す。
4．覚える単語と意味を見てから、目を閉じてスペルと意味を5回思い出す。
　これまでの研究でダントツの効果が示されたのは、4つ目の方法。ポイントなのは、5回という回数ではなくて、いったん目で見て頭に入れた単語を、「何も見ずに自分の頭だけで思い起こす」という行為です。
　これを「リトリーバル（retrieval）」と言います。「リトリーバル」とは、いったんなくなったものを取り戻すという意味で、今インプットしたものを脳の中から取り戻すということです。
　しかも、単に思い出せばいいのではなくて、自分の頭だけで思い出す。教科書やノートを補助に使わず、自分の脳の力だけで、いったんインプットしたことを思い出す。そうした脳のエンゲージメント法を総称して「リトリーバル」と呼びます。

■5.プレゼンで言いがちなNGフレーズ

　私は学会やビジネスの場で、英語のノン・ネイティブの人たちの多くのプレゼンを見てきました。あるとき日本人のプレゼンでよくある共通点に気づきました。中国人、韓国人、ヨーロッパ、他の国からのノン・ネイティブの人たちのプレゼンではまず見ない、日本人に特有のプレゼン現象。それは、自分の英語を自虐的に語ることです。
「Sorry, my English is not good.」（英語が下手ですみません）とか、「My pronunciation is bad, so please stop me when you don't understand.」（発音が悪いのでわからなかったら止めてください）とか、自分の英語がうまくないことの断りを入れたがる。これは絶対にNGです！
　まず、英語のレベルはプレゼンをしている間にわかるので、改めてうまくないなどと言わなくていい。発音に関しても同様。それでも、話す内容に興味があって聞いている聴衆がそこにいる。「英語がうまくないです」は、聴衆にとって、非常に興醒めで、なんだかかわいそうな気がして気が散ってしまいます。

【感想】

◆なかなか実践的な英語学習本でした。

以前ご紹介した、こちらの安河内先生の英語学習本と近い系統といいますか。

高校生が感動した英語独習法 (PHP新書)

参考記事：【AI英語学習法?】『高校生が感動した英語独習法』安河内哲也（2024年07月02日）

安河内先生の作品は、タイトルに「高校生」と入っている分、社会人向けとは言い難いのですが、本書は基本的には社会人仕様です。

上記ポイントの5番目のようにプレゼンのお話もありますし、今回は割愛していますけど、英文のビジネスメールのパートもありました。

その代わり、色々なサイトやアプリを活用するのではなく、基本的にはChatGPTをフル活用する感じ。

安河内先生の本を読んだときも、その威力を実感しましたが、本書を読んで、改めてこれからの英語学習には対話型のAIサービスは必須だと感じました。

◆そこでまずは、前提となる英単語の知識について触れているのが、上記ポイントの1番目。

とりあえず高校卒業のレベルであれば、大丈夫……って、ここに具体的な単語数が載っていませんね。

　例えば、2020年の学習指導要領の改訂で小学校での英語教育が必修化されました。それによって学生が高校卒業までに学ぶ英単語は4000～5000語に増えました。改訂以前は3000語程度だったので、非常に思い切った改革だったわけです。

……2020年に小学生だったら、社会人で改定後の方はまだいないかと。

ただ、今までも3000語はあったわけですし、アカデミックでない限りは95％はすでにカバーできているようです。

その割に日本人があまり喋れないのは、やはりアウトプット不足なんでしょうね。

一方上記ポイントの2番目では、和訳を挟まない学習法が指南されています。

よく「和訳せずに英語でモノを考えろ」と言われますが、そうは簡単にいかないもの。

でもこのやり方なら、「英文を考える」のではなく「すでに頭の中にある英文からセレクトする」ワケですから、比較的容易にできそうです。

◆そしていよいよ、上記ポイントの3番目ではChatGPTによる英語学習法が登場。

ここでは最後にプロンプトが登場して終わっていますが、実際にはここからやり取りがスタートします。

本書ではそのやりとりも収録されているものの、長くなるので割愛。

ご存じない方だとピンと来ないと思いますので、YouTubeで似たようなことをされている方の動画を見つけてきました。

初心者向けの動画ゆえ、スピードを落とすリクエストまでしてくれているのがありがたいという。

また、本書では具体的な場面設定をした方が、より効果的ということで、「レストランでの注文」「就職面接」「病院の予約」「空港での対応」といった、計18の場面設定プロンプトも用意されていますから、ぜひご活用ください。

私も実は15年ぶりくらいに英語を話す機会が先日あったのですが、思ったより口が回らなかったり、相手に意図が伝わらなかったりして、多少ショックを受けたので、ChatGPTで慣らしておけばよかったな、と。

◆さらに本書では、ChatGPTに頼るだけではなく、ベースとなる勉強法についても言及されています。

その1つが、上記ポイントの4番目の「リトリーバル記憶法」。

単語を覚えるときには必ず対象となる単語をいったん学んでから、何も見ずに心の中で復唱したり、意味を思い出したり、スペルを書いてみたりするように心がけましょう。スペルや意味がパッと脳内に出てこなければ、もう一度見直してみる。その上で、目をそらして何も見ずに、スペルや意味を思い出せるかどうか再度試してみる。スムーズに思い出せるようになるまで、このプロセスを繰り返しましょう。

勉強本界隈では、一般的に「想起」と呼ばれている作業ですが、ここで指摘されているように「何も見ない」ことが大事なようです。

また、リトリーバルをした後は、ある程度間を置いてから復習すべし！

本書では「スペーシング（spacing）」と呼んでいますが、具体的には、学習してから1日後、さらにその1週間後を指示していました。

なお本書では、英単語の暗記にも、ChatGPTを使って和訳をランダムに並べるよう指示して問題を作成していましたが、個人的には「そこまで使わなんくても～」と思った次第。

もちろん、並びで覚えちゃったりする（私、得意です）のを防げるので、やらないよりはやった方が良いのでしょうけど。

◆さらに最後のポイントの5番目では、英語プレゼンでの注意事項が登場。

私は英語でプレゼンしたことはまだありませんが、そういう機会があったら、注意したいと思います。

他にもプレゼンや会議の開始時やクロージングの常套句等も、ビジネスパーソンには役立つこと必至。

もっと高度な「意見や考えを求めるフレーズ」や「議論をさらに展開したいフレーズ」等も、覚えておきたいところです。

また、役立つといえば、話が戻りますが、本書にはChatGPT用のさまざまなプロンプトが収録されており、それらを実際に活用するだけでも、本書の元は取れそうな。

いずれにせよ、まだ高校生のムスコにはChatGPTによる英語学習をやらせるべきだと思いますので、本書を参考に始めてみたいと思います。

「AI時代を活かした最速・最楽の英語学習術」を学ぶべし！

脳を活かす英会話　スタンフォード博士が教える超速英語学習法 (朝日新書)

【Stage 1　７つのゴールデンルール～AI時代の独学術】
①ネイティブ英語を目指さない
②英語のテストを受けてはいけない　
③日本の英語学習の強みと弱み　
④やる気の続くアウトプットの環境作り
⑤無料でできる独学アウトプット英会話
⑥脳科学に基づく英単語リトリーバル記憶法
⑦オリジナルのリーディング＆リスニング問題作り

【Stage 2　脳が欲するフレーズ～スーパークールなビジネス英語】
①周りを気遣う優しいビジネスフレーズ
②プレゼンで使えるスマート表現
③会議が楽しくなる！　知って得するキラーフレーズ
④失敗しないビジネスメールのテンプレート
⑤超クールなビジネス頻出フレーズ29

【Stage 3　ラリーが続く！～ナチュラル英語の日常会話】
アクティブ・リスニングで会話の沈黙をなくそう
①Focus：相手の話に集中していることを示す
②Empathy：相手の気持ちを理解したことを伝える
③Paraphrase：相手の話を言い換えたり、まとめて確認する
④Question：相手の発言を確認したり、より詳しく聞いてみる
気まずい沈黙を避けるベストテクニック
さらっと断るカジュアルフレーズ

巻末付録：
プロンプト①長文読解問題、プロンプト
プロンプト②リスニング問題