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2024年11月25日

【マンガ】『漫画ビジネス』菊池健


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漫画ビジネス


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「ブラックフライデー Kindle本 (電子書籍) セール」における注目作。

個々の漫画の話ではなく、業界全体におけるビジネス面を多角的に掘り下げた内容になっています。

アマゾンの内容紹介から。
大ヒット漫画『鬼滅の刃』の経済規模は、2020年で約1兆円と言われています。 日本の漫画は、なぜ、このような成功を収めることができたのでしょうか? そのヒントは、「裾野広ければ頂き高し」という言葉。日本の漫画業界は、世界で最も多くのクリエイターが、その頂を目指している状態をつくることができているのです。ではなぜ、そのような創作の好循環をつくることができたのでしょうか。また、漫画ビジネスへ新たに参入することはできるのでしょうか? 本書では、コンサル出身で漫画業界に参入した著者が、ビジネス視点で世界で通用する面白い漫画のつくり方について考察を深めていきます。

中古があまり値下がりしていないため、このKindle版が700円弱お買い得です!






【ポイント】

■1.マーケットインかプロダクトアウトか
 マンガのつくり方は、大きく分けるとマーケットイン型でつくられるものと、プロダクトアウト型でつくられるものがあります。前者は、流行しているストーリーの型に当てはめてつくられるもので、最近でいうと、いわゆる「異世界転生」や「悪役令嬢」といったジャンルが該当します。(中略)
 後者のプロダクトアウト型は、漫画家の個人的体験や趣向を掘り下げ、物語として昇華させていくようにつくられるものです。日本の伝統的な漫画雑誌の編集部では、どちらかというとこちらを重視してきました。(中略)
 マーケットイン型のほうが手堅くヒットを生み出す傾向にあるのですが、時代を変えるような前例のない作品はプロダクトアウト型から生まれます。さらにいえば、数多くいる漫画家のうち、天才が描いたプロダクトアウト型の作品こそ、メガヒットの原石なのです。なぜなら、天才の作品というのは、連続的に発展していく凡人の発想を飛び越えて、跳躍した発想のもと、新たな表現を生み出して後の世に続く新たな天才に影響を与え続けて行くのです。


■2.スマホとともに普及した電子コミック
 総務省の調査によると、日本人のネット利用は、2012年の1日約70分から、2021年には約170分と倍以上になっています。電子コミックプラットフォーム利用者のデータを見ると、近年8割〜9割がスマホユーザーということも珍しくはないです。
 スマホが普及し、人々がその小さな画面と向き合う時間が増えるにつれて、電子コミックはユーザーに浸透していったということが言えるそうです。
 そう考えると、マンガが紙から電子コミックにデジタルシフトした歴史の背景には、日本人のスマホ利用が促進したことが大きな要因であったと推測されます。また、その中でゲームや動画視聴など、さまざまな競合サービスがある中で、SNS、ウェブ広告などの使用シーンが、マンガ・マンガ広告と極めて相性が高かったことも、電子コミックの普及に大きく貢献したと言えそうです。


■3.編集者も作家も大量生産・大量消費の時代へ
菊池 DXによって、編集者のあり方が変わったとのことですが、今の編集者はどのような仕事をしているのでしょうか?
石橋 多様化していて、大きく3種類くらいに分けられると思います。たとえば、ジャンプ+のように、作家志望の人がたくさん集まる媒体は、たくさんいる志望者の中から才能を選ぶという仕事。そんなに志望者が集まらないという立場の編集者は、SNSの中から作家をハントするという仕事。そして、物語を自分で考えてしまうという、漫画の原作者に近い仕事。僕は一番最後のスタイルです。市場の変化に合わせて、それぞれ置かれた環境に適応するため、一番必要なスキルを伸ばしていったというイメージです。
菊池 作家さんの変化もありましたか?
石橋 作家さんの数も、ものすごく増えました。公募すると集まる数が、以前の10倍くらいになっています。おそらく、クリスタなどの漫画制作ソフトの影響もあるでしょうね。参入障壁がすごく下がりました。以前は、綺麗な線を書ける人が少なかったのですが、手振れ補正機能のおかげで、簡単に綺麗な線が書けるようになったのです。いろんな人が入ってきて、本当に大量生産・大量消費の世界になったなと感じています。


■4.昔は天才しか活躍できなかったが、今はそうではない
ぬこ 時代の変化でいうと、漫画家の世界って、昔は天才しか活躍できなかったのが、SNSによって天才ではない人も活躍できるようになったと思うんです。天才の人たちのすごいところは、自分の感性だけで漫画を描いていっても、それが良いものか悪いものか自分で判断できるところ。フィードバックするのが自分ひとりでも、どんどん良いものができてしまいます。
 でも、今はSNSに投稿したら、勝手にみんながフィードバックしてくれます。そのフィードバックを受け取って正しく次の作品をつくることができれば、秀才タイプの人でも、天才タイプの人に並べる時代になったのかなと思います。
 SNSで投稿しても誰も反応してくれないから、編集者のところへフィードバックをもらいにいきます、という人もなかにはいます。ですが「誰も反応してくれない」というのもひとつのフィードバックです。そういう自分にとって悪いフィードバックを受け取れるか、受け取れないかというところで、漫画家になれるかなれないかが決まってくるでしょうね。


■5.マンガ業界のビジネス構造の変化
 2020年代に入り数年、2022年あたりから国内のスマホの使用時間の伸びも頭打ちになったという民間調査が出ました。
 このタイミングと時を同じくして、電子コミック市場の伸びも1桁%台となり落ち着きを見せます。
 漫画市場の成長はこの伸びを持って踊り場を迎えるかという見方もあるかもしれません。
 ただし、この時期大手出版社、わけても集英社、講談社、KADOKAWAなどのマンガの売上比率が高い企業は依然成長を続けていました。これは、マンガ出版社の売り上げの中に、
・本以外のライセンス収入
・海外のマンガ販売
・イベント/グッズ販売 など
 IPを活用したマンガ以外のビジネスの売り上げが大きく占めて行くビジネスの構造変化がありました。
 マンガ出版社は、デジタルを含めた本を売るだけの存在から、生み出した作品をIPとして多くの周辺ビジネスに展開する存在へと進化したと言えそうです。


【感想】

◆連載マンガをリアルタイムで追わず、単行本が出てからまとめ読みしているような私にとっては、知らないことだらけの1冊でした。

とはいえ、こんな私でも『鬼滅の刃』は全巻揃えていますし、その後も『呪術廻戦』はネットカフェで本紙連載を追ってましたし、当然単行本も最終巻まで買うつもりです。

そういえば、その『鬼滅の刃』ですけど、今年の7月には、ついに劇場アニメ『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』が三部作で制作されることが発表されました。

映画『鬼滅の刃』無限城編が三部作で制作決定。クライマックスは劇場版で描かれる | ゲーム・エンタメ最新情報のファミ通.com

考えてみたら、マンガの連載自体は2020年に終わっていますから、かなり息の長いヒットと言えるでしょう。

もはや完全に社会現象ですし、確かにこういった作品は、アンケートや意見を募ってできるものでもないですし、まさに上記ポイントの1番目でいうところの「プロダクトアウト」の大傑作なんでしょうね。


◆さて、私自身はもはや老眼になりつつあるので、マンガのKindle版ももっぱらPCのデカい画面で読んでいますが、時代はすでにマンガはスマホで読むのが常識な模様。

一応、Kindleアプリも入れたことがあるのですが、ほぼ使わずに機種変をしてから、その後はインストールすらしておりません。

しかし上記ポイントの2番目にあるように、昨今の電子コミックの興隆ぶりは、ほぼスマホの普及によるものと言えるようです。

ここで留意しなくてはならないのが、アプリの存在。

Kindleすら入れていない私は、他のアプリも当然何も入れてないのですが、それこそ今は山のように電子コミックのアプリがあります。

こんなの1つに統一してくれればいいのに、と思う人は多いかもしれませんが、サービス提供側としてみれば、自分のところのアプリを使ってもらうことで、課金が発生しうるわけですから、そうもいきません。

しかも
2010年代中盤に、日本のマンガアプリをすべて統合し、一定金額のサブスクで販売した場合、マンガの売上金額全体は6分の1ほどになるという試算をした人がいました
なんて話を知ると、それは乱立もしかたないのかな、と。


◆さて、本書では業界のキーパーソンにもインタビューしているのですが、その1人がアプリ「マンガワン」の立ち上げにも携わってきた、漫画原作者・漫画編集者の石橋和章氏。

そういう経歴だけに、立ち上げ前時からの環境の変化や、他社動向も興味深かったです。

また、上記ポイントの3番目で触れた、編集者や作家の変化も興味深いところ。

引用した「クリスタ」とは、正式名称を「CLIP STUDIO PAINT」といい、かなり高性能なソフトのようです。

イラスト マンガ制作アプリ CLIP STUDIO PAINT(クリスタ)

……確かに線の補正機能だけ見ても、全然違いますわ。


◆また、もう1人のキーパーソンが、私もTwitterで見たことのある、漫画家のぬこー様ちゃんさん(敬称多すぎ😂)。

ぬこー様ちゃん@絵日記毎日18時更新(@nukosama)さん / X

……すいません、本書を読んで初めて知ったのですが、月収が700万超でいらっしゃるんですね!?

実際、このインタビューでは、具体的なマネタイズの手法についても触れられており、ここも読みどころの1つかと。

また、氏はこうしたクリエイター向けのセミナー講師も務めているだけあって、視点も鋭いです。

上記ポイントの4番目は、インタビューから抜き出したものなのですが、ここではマーケットインによる制作方法について述べられており、普通の漫画家志望者の方は、こちらのルートの方が現実性があると感じました。


◆なお、上記ポイントの5番目は、下記目次の第8章から抜き出したもの。

なるほど、ここにもあるように、今後はIPビジネスへの進出が鍵になってきそうです。

今回は割愛しましたが、昨今はAI技術の発達により翻訳もやりやすくなったようで、これもまた海外進出にはプラスになるかと。

なんでも今はネット配信の影響で、アニメの初回放送から世界同時ヒットもあり得るのだそうです。

前述のクリスタもそうですけど、こうした技術の恩恵によって、マンガビジネスは今後も発展するのかもしれませんね。


マンガをビジネス目線で分析した1冊!

B0DHCBKLDZ
漫画ビジネス
序 章 うちの会社で『鬼滅の刃』をつくれますか?
第1章 日本のマンガがメガヒットする理由
第2章 漫画編集部に学ぶ新人育成
第3章 漫画雑誌を支えた組織と流通
第4章 漫画雑誌から電子コミックへ
第5章 デジタル化によって変化した制作のあり方
第6章 いまの漫画家が置かれている状況
第7章 ウェブトゥーンという新たな可能性
第8章 IPビジネスとしてのマンガ
第9章 漫画業界に流れ込む巨大マネー
終 章 結局『鬼滅の刃』はどうすればつくれますか?


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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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ソシュールを読む (講談社学術文庫)

読む人を選びそうな1冊は、中古が値崩れしていますが、送料を加味すればKindle版がお得。

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イラストでイメージがつかめる 英語の前置詞使いわけ図鑑

イラストを使った英語勉強本は、Kindle版が1000円弱お買い得となっています!


【編集後記2】

◆一昨日の「ブラックフライデー Kindle本 (電子書籍) セール」の翔泳社分の記事で人気が高かったのは、この辺の作品でした(順不同)。

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作業効率が10倍アップする! ChatGPT×Excelスゴ技大全

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正解がない時代のビジョンのつくり方 「自分たちらしさ」から始めるチームビルディング

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名画から学ぶ 写真の見方・撮り方

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よろしければご参考まで!


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