【思考術】『すごい思考ツール　壁を突破するための〈１００の方程式〉』小西利行:マインドマップ的読書感想文

2024年11月14日

【思考術】『すごい思考ツール　壁を突破するための〈１００の方程式〉』小西利行

【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「Kindle (電子書籍) ポイントキャンペーン」でも大人気の1冊。

すでに土井英司さんがメルマガで取り上げていたので、お読みの方もいらっしゃるかもしれません。

アマゾンの内容紹介から一部引用。

「伊右衛門」「ザ・プレミアム・モルツ」「PlayStation」……
数々の大ヒットを生んできた国民的広告クリエイターが贈る、最高の「思考ツール」決定版！
「人生思考」メソッド、ホワイトかけ算メモ、そもそも思考、3秒ハードルメモ……“最弱”広告マンでも急成長できたスゴ技とは？

中古本体が定価を上回っていますから、このKindle版が1000円以上お買い得です！

【ポイント】

■1.お金がかかるアイデアは、たぶんアイデアではない

　僕が2012年に「はなまるうどん」で関わったほぼノーコストの施策を話そう。それが「期限切れクーポン大復活祭」。日本全国どんな期限切れクーポンでもお好きなメニューが50円引き！　とすることで、「紙切れ」を「金券」に変えたアイデアだ。
「えっ！　TSUTAYAのでもイオンのでも期限が切れていたら使えるの？」
　そんな驚きから当時SNSでかなりバズった。このアイデアの何が画期的かって、他人のふんどしで相撲をとったことだ。
　まだデジタルクーポンなど存在せず、ほぼすべての企業が紙にクーポンを印刷して配っていた時代、このキャンペーンは新たな印刷代ゼロ。しかも当時、財布の中はクーポンだらけで期限切れクーポンもいっぱい入っていて整理するのが面倒という“隠れ不満”を多くの人が持っていたから、強い共感も生んだ。「クーポンを発行する」というスタート地点から考え直したことで、お金をかけずに財布をクリーンにするアイデアに昇華できたわけだ。

■2.デコン×ヨコテンでオリジナルアイデアに

　デコンとはデコンストラクション。つまりアイデアの解体をすること。気になるアイデアに出会ったら、何から発想したか？　なぜ流行っているのか？　を考えて、自分なりの流行エッセンスを見つける思考ツールだ。
　ポイントは、自分が興味を持った流行だけを抽出することと固有名詞じゃなく一般ワードにすること。さらに間違ってもいいと思うこと。自分流のほうがオリジナルアイデアに到達しやすい。
　例えば人気の「サウナ」をデコンしてみると、いくつかの流行エッセンスが出てくる。①テレビで放映された　②バイブルがある　③伝道師がいる　④ファッション化されている　⑤儀式がある　⑥合言葉がある　⑦新旧の対立構造がある　⑧コミュニティがある　⑨独自の体験がある(中略)
　もう1つのインスパイア方法は、ヨコテン（水平展開）だ。ヨコテンとはデコンで因数分解した流行エッセンスを、違う分野に展開すること。

■3.アイデアの源泉は「不満」

　ちなみに僕は日頃から「不」という文字を意識しているが、それは「不」という言葉がついているものはすべてアイデアの種だからだ。不満はもちろん、不安、不潔、不快、不便、不吉、不可能、不公平……。これらに注目してみると、身の回りにいかにたくさんの解決すべき課題が隠れているかわかるだろう。
「不」はすなわち改善の種。そのすべてにアイデアが必要となる。さらに言うと、「不」は人の心をマイナスに揺さぶっているものだから、解決されれば大きなプラスの心の動きが生まれ、人に言いたい！　という衝動も生まれるので、「売れる」「流行る」ことにつながっていくわけだ。
　だから皆さんにも楽しんで「不」を探してほしいのだけれど、いざ探そうとしても見つけづらかったりする。そこでまずは「不」の一部である「不満」だけに注目して、身の回り半径5mの不満を見つけるのをおすすめしたい。それだけでも十分にアイデアの種は見つかると思う。

■4.まず「今の状況」を語ると言葉が深く刺さる

　日産セレナの「モノより思い出。」というコピーを書いたのは、2代目セレナの発売時期（1999年）だからもうずいぶん前になるが、今でもSNSで「座右の銘」と言われて愛されているのは、きっと「モノより」という出発点（X）が共感されたからだと思う。
　普通、未来を語る時には未来だけを語りがちだ。この場合なら「子どもともっと思い出を」とか「思い出づくりに出かけよう」だろうか。でもそれではあまりに理想的すぎて（ファンタジックで）共感できないし、あたりまえすぎて人に話すこともできない。
　それに対し、「モノより」という「今の状況」を語ることで、「あなたは今、子どもに思い出をつくるより、モノを買うことでやり過ごしてますよね」という突きつけが生まれる。それは多くの人が日頃から気にかかっていた「痛い」部分なので、言葉が深く突き刺さり、自分ごととして考えるきっかけになるわけだ。

■5.プレゼンの必勝方程式「課題→未来→実現案」

　僕の考えるプレゼンの必勝方程式は「課題→未来→実現案」だ。普通のプレゼンは「課題→解決案」というスタイルだと思うが、必ずそこに「未来」という夢を入れ込む。それは、そもそも未来の提示がなければ人はワクワクしないし、何より未来の姿がなければ「解決方法」を選ぶ基準がないからだ。
　この方程式を守るだけで、プレゼンはもちろん、事業の成功確率も飛躍的に上がると思う。例えば、発売当時のプレイステーションが「ソフトの多さを言うのか」「ハードのスペックを言うのか」を決める際に、ソフトの多さを訴求したのは、「すべてのゲームはここに集まる」という未来が見えていたからだろう。向かうべき未来の姿がなければ、あれもありこれもありと、いちいち判断がブレることになる。「こういう未来を実現したい」があるからこそ「こう解決する」と手段を決められる。

【感想】

◆土井英司さんが推すだけあって、充実の内容でした。

また、土井さんがこの2冊を挙げて、この辺が好きな人は、きっとハマると思います、と言われていたのですが、まさに私もその1人。

案本「ユニーク」な「アイディア」の「提案」のための「脳内経験」

参考記事：【脳内経験】『案本「ユニーク」な「アイディア」の「提案」のための「脳内経験」』山本高史（2008年04月10日）

広告コピーってこう書くんだ!読本

参考記事：【スゴ本!】「広告コピーってこう書くんだ!読本」谷山雅計（2008年01月15日）

この2冊、いずれもオススメなのですが、それに匹敵するクオリティだと思います。

とにかく、提示された「問題・課題」も重要ですし、その「解決策」はTIPSとしてご紹介したいですし、さらには「具体例」も豊富で、それらだけでも記事になるくらい。

結局上記ポイントでは、「解決策」と「事例」を中心に抜き出しましたが、本当はその前段部分からお読みいただくと、より理解が深まると思います。

◆たとえば、上記ポイントの1番目の「お金がかかるアイデア」のお話は、言われてみたら、至極ごもっとも。

むしろお金をかけないからこそ、秀逸なアイデアが生まれたりするワケで、この「はなまるうどん」の事例は正直ビックリしました。

私は本当に知らなかったので、ググってみたところ、確かに実施されていた模様。

他社の期限切れクーポンで50円値引き！『期限切れクーポン大復活祭』 | PR EDGE

小西さんいわく

「お金があれば成功できるのに」と思っているマインドの人は、多くの場合お金があっても成功できない

とのことで、耳イタイ人も多いのではないでしょうか。

◆また、上記ポイントの2番目の「デコン×ヨコテン」は、いきなりTIPSのみを抜き出したもの。

まず、デコンによって要素分解すると、他業種（他事例）に転用しやすくなるとは思いました。

……いわゆる「レイヤーが上がる」と言いますか。

上記のように、気になった流行のエッセンスを抽出＆ストックしておけば、次なる流行を考えるきっかけとして使える。それを持っている人と持っていない人では、企画に雲泥の差が生まれるのは歴然だ。

これまたおっしゃるとおりでございます。

一方ヨコテンのポイントは「別ジャンルの仕事に似ているポイントを見つけて展開すること」なのだそう。

具体例として、こちらの商品の企画が紹介されていましたので、何をどう展開したのか考えてみてください（詳細は本書を）。

#SKIOプチプチ部　アイディア投稿コンテスト詳細お知らせ♪｜skio_official

◆なお、上記ポイントの3番目の「不」のお話は、類書でもよく言われていることですが、本書ではあの孫正義さんのエピソードも登場しています。

弟の孫泰蔵さんに聞いたところによると、「毎日不満をノートに書き込み、その解決アイデアを発明すること」が、正義さんの日頃のルーティンなのだとか。

起業する前は直後ならまだしも、ここまで著名になってからもなさっているとは驚きです。

さらに上記ポイントの4番目の「未来だけでなく今の状況も語る」というのは、結構目からウロコでした。

確かに未来だけ語るよりも、「今」を語ることで「深く刺さる」というのは、納得感が高いです。

小西さんによると、プレミアムモルツを贈答市場に売り込む際には、

「贈り物には、普通のビールより、プレミアムビールでしょ」

というコピーにより、他のビールを「普通のビール」と定義することで、プレミアム感を出したのだとか。

◆そして最後のポイントの5番目は、特にプレゼンをする際に意識しておきたいもの。

実際、普通のプレゼンは「課題→解決案」というスタイルがデフォルトでしょう。

それでも小西さんによると「どんなに短い時間でも、どんなに小さな案件でも、プレゼンでは必ず未来を提示したほうがいい」とのこと。