2024年11月04日
【マーケティング】『顧客の数だけ、見ればいい 明日の不安から解放される、たった一つの経営指標』小阪裕司
顧客の数だけ、見ればいい 明日の不安から解放される、たった一つの経営指標
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも大人気だった作品。すでに土井英司さんがメルマガでプッシュされていましたから、お読みの方も多いかもしれません。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
ここ数年のコロナ禍や物価高の中でも、高い成果を出し続けている企業はあって、彼らには共通点があります。
「休みを増やしたのに儲かり続けるスーパー」「ハガキ一枚で大型案件を受注した問屋」「客単価が2.2倍になったレストラン」……
その秘密はすべて「顧客数経営」にあった!明日の売上の不安から解放される、たった一つの指標 「顧客数」だけ管理していたら、売上も利益もいつの間にか上がっていた!
マーケティングのカリスマが贈る、豊富かつ驚きの実例をもとに説く、まったく新しい経営手法。
中古が値下がりしていない一方で、Kindle版は「25%OFF」と大変お買い得です!
【ポイント】
■1.リピーターが増えても意味がない?たとえば、あるドラッグストアに初めてお客さんが来てくれた。これは「お客」です。
そのお客さんが毎日のように来るようになってくれた。これは「リピーター」です。
よく、「リピーターが大事」と言われます。
私もそう思いますが、ただ、単なるリピーターをいくら増やしても、それは安定的な売上にはつながりません。
たとえば、その後近くに新しいドラッグストアができ、さらにそちらのほうが安ければ、リピーターの大半はそちらに行ってしまうかもしれません。(中略)
一方、新しい店ができても、変わらず自分の店に来てくれた。こうなるとその人は「顧客」といっていいでしょう。
つまり、「顧客」とは、「その店に愛着と信頼と共感を持っている」から、もし近くに別の店ができてもあえてその店で買おうとするし、口コミで広めてくれたりもする人のことを指すのです。言い換えると「ファン」となるでしょう。
■2.メーカーでも「顧客化」できれば、世界が変わる
以前、ある大手食品メーカーの役員にこういう話を聞いたことがあります。
その会社では当時、あるヨーグルトドリンクが大ヒットしていたのですが、その重要なポイントは、「商品がヒットした」のではなく、「この商品を飲み続ける顧客を増やすことができた」という点にあると。
その方いわく、自社でもずっとヒット商品を狙い続けてきて、新商品発売の際には、認知を広げるためにCMも盛んにやってきた。しかし、特にこのヨーグルトドリンクのような健康機能系、栄養系商品は、そのように「当てる」のでなく、毎日買い、食し続けてくれる「顧客」を増やすことが肝要であると。実際この商品は、圧倒的な「顧客数」によって莫大な売上が作られているのだと。
メーカーといえども、やはり買ってくれているのは顧客。したがって、最も大事なものは「顧客の数」。この事実を視界に置かないというのは、あまりにもったいないのではないでしょうか。
■3.中小企業こそ「付加価値に全振り」すべき
第2章で「あまからくまから」が熊肉料理の客単価を上げていった例をお話ししましたが、同店にはさらにこんな例もあります。
同店の看板メニューの1つ、「アイヌジビエコース」。このコースのメインは「チタタプ」(正式には小さい「プ」)という料理です。
「チタタプ」とは、アイヌの人たちの料理法のこと。野生動物の肉や小骨などを叩いて、生や鍋で食べるものですが、叩く際に、「チタタプ、チタタプ」と唱えることが特色です。人気漫画『ゴールデンカムイ』(野田サトル、集英社)に出てくることで、一躍知られるようになりました。これを、マンガと同様に、お客さんがその場で「チタタプ、チタタプ」と唱えながら、肉を叩いて作り食すというユニークなコースです。
叩くための小刀には本格的なアイヌのマキリ(小刀)を用意。皿はあえて木の皿に。加えてアイヌの人が用いる刺繍の入った 鉢巻 を用意。お客さんには各々これをしめてもらい、「必ずチタタプ、チタタプと声に出しながらナイフで叩いてください!」とお願いするという徹底ぶりです。
そのこだわりゆえにお値段も9580円とかなりの高額なのですが、大人気となっています。
■4.効率を落として顧客を増やす
顧客の解約が際立って少ないあるルート担当社員がおり、小山さんが他の担当者とどこが違うのかを調べると、顧客と「おしゃべり」をしていることがわかりました。
同社では、ルート回りの際に新たな商品を顧客にお薦めすることもありますが、この担当者はその販売成績も良かった。聞くとやはり、理由はおしゃべり。その合間に「ちょっと今日宣伝したいものがあるんですけど」と切り出すと、「ああ、何? 聞くよ」となり、スムーズに買ってもらえる。「これ買うと、あなたの成績になるんだよね」と積極的に買ってくれる方も少なくないとのことでした。(中略)
そこで「1ルート当たりの件数2割減」という「非効率な」施策を実行したのです。しかも、社員を送り出す際には、こう声をかけることにしました。
「お客さんとしゃべっておいで」
それが、どういう効果をもたらしたでしょうか。
解約率が通常1割、悪いと2割を上回ることもあるというこの業界で、解約率は「たった1%」という、業界常識では考えられない水準にまで下がったのです。
■5.専門店がなくなりつつある今がチャンス
特に最近、いわゆる「専門店」が減少しています。
たとえば「米屋」「魚屋」がなくなり、代わりにスーパーで購入する。「家具屋」「布団屋」がなくなり、代わりにホームセンターで購入する。全国で「ビューティーケアつかもと」のような化粧品専門店が激減していることは、前述した通りです。
しかし私はこんな時代だからこそ「専門店にこそチャンスがある」と考えます。
先日、知人に聞いた話がとても強く印象に残っています。
煙草の専門店にパイプ煙草を買いに行った彼は店員さんに、「これとこれはどう違いますか?」と聞いたのだそうです。すると、その店員さんはぶっきらぼうに、こう答えたそうです。「さあ? 全部いちいち吸ってられないんで」。
これは嘆くべき現場の劣化ですが、見方を変えれば「チャンス」です。
なぜなら、全国で専門店が減少し、専門店の看板を掲げながら現場が劣化しているのであれば、お客さんは「本物の専門店」となかなか出合えていない、いわば「専門店難民」になっているからです。
そんなお客さんが、ひとたび「本物の専門店」に出合ったら、どうなるでしょう?
【感想】
◆少々長くなりましたが、小阪さんらしさが全開の1冊と言えるかと。考えてみたら、私がこのブログを始めた頃は、ご紹介する書籍もマーケティング本が中心で、小阪さんの作品はその頃からのお付き合いでした。
改めてブログ内を検索したら、下記関連記事にもあるように、2006年から4冊レビューしてますね。
そしてその頃同じように人気が高かったのが、神田昌典さんで、お2人ともいわゆる中小規模の会社のマーケ本を多く書かれていたという。
さらにはともに、会員制を敷いていて、その会員さんの成功事例を書籍に掲載するのが常でした。
もちろん、お2人ともマーケティング本以外では、これとは異なるスタイルでしたし、逆にお2人以外にも、具体的な事例満載の本はたくさんありますが。
◆さて、今回小阪さんがテーマにしたのは「顧客数」という概念。
ただしここで言う「顧客」が、一般的に使われる「顧客」とは異なるのは、上記ポイントの1番目にあるとおりです。
ちなみに上記引用部分の最後で「ファン」と言われており、むしろそちらの方が概念的にはピッタリしますけど、小阪さんの考え方をまったく知らない方にとっては、「ファンを増やせ」と言われたら、ハードルが高く感じそうな。
そういう意味では「ファン」を「顧客」と呼ぶのは間違いはないんですが、本書を読まない方が本書のタイトルだけ見たら、単純に「新規の客の獲得を頑張れ」と誤解してもしょうがないと思います。
なお、上記ポイントの2番目で指摘されているように、本書の考え方は、中小企業のみならず、大企業(メーカー)でも適用できるとのこと。
以降登場する、リアルでの接触は難しいものの、商品やCMででも、「顧客」を育てることは可能なようです。
◆その「リアルでの接触」ですが、なかなかインパクトが強かったのが、上記ポイントの3番目の「チタタプ」。
私はお恥ずかしながら『ゴールデンカムイ』を読んでいないのですが、読者の方にとっては1度は試してみたいメニューなのではないでしょうか。
野生動物ではないですが、鮭で再現したものを。
『ゴールデンカムイ』の 鮭のチタタプを再現! 【マンガの中のあのフード】 | マンガの中のあのフード
また、こうした「付加価値」の別の例として挙げられていたのが、えちごトキめき鉄道の「夜行列車」です。
これがなんと、2路線合計100キロ弱の全長ゆえ、同じところを往復したり途中駅での停車時間を延ばしたりして、なんとか夜から朝まで走らせるらしく……。
えちごトキめき鉄道の「夜行急行」|往年の夜行急行列車を再現 - マサテツ〜食べ鉄旅日記〜
つまり実用性はないにもかかわらず、チケットは発売と同時にほぼ売り切れだそうですから、まさに「付加価値」の勝利と言えるでしょう。
◆一方、上記ポイントの4番目に登場しているのは、ロマン産業という会社のお話です。
こちら、
業務内容は、店舗やオフィスなどの清掃事業や玄関マットなどのレンタル、オフィスや個人宅への水の宅配です。ということで、本来、いかに効率的に客先を回るかが勝負なハズ。
ところが顧客と「おしゃべり」することで、むしろ解約率が下がったそうです。
こうした「非効率」な行動が、結果的に売上につながった例として、他には「店頭での注文のみ」にしたところ、「ペンへの名入れキャンペーン」の売上が2倍になったお話もありました。
こちら、普通に考えたら注文数自体減ってしかるべきなのですが、店頭での相談の結果、より良いサービスを選ぶことで、単価が上がったのも、その理由の1つなのだそうです。
◆最後のポイントの「専門店」については、まさにそのとおりであり、これはいわゆるネットショッピングの反動なのかもしれません。
実際、私が使っている爪切りは、金物屋で相談して買ったのですが、値段の割にえらく切れ味がなめらかで、やすりを使う必要がないくらい。
また、10年以上前に住んでいた都立大学駅のバス通り沿いには、こんなお米の専門店がありました。
スズノブ西島氏が目利きした新米|美味お取り寄せ。dancyu
毎日店の前を通って、駅に向かっていたのですが、何でこんな普通の住宅街に、マニアックなお店があるのか不思議だったんですよね。
ちなみにネットショップの作りも、変に色気を出さない武骨(?)なもの。
スズノブネットショップ
ここでオススメされたら、無条件で買ってしまいそうです。
事例を読むだけでも楽しめる1冊!
顧客の数だけ、見ればいい 明日の不安から解放される、たった一つの経営指標
第1章 あなたがこれから解放される「5つの不安」
第2章 最強のKPIは「顧客数」
第3章 あなただけの「顧客」を生み出すために
第4章 「顧客の数」を増やすため、今すぐすべきこと
第5章 あえて非効率を追求すると、顧客が集まる
第6章 顧客はあなたが選んでいい
第7章 顧客数経営のカギを握るのは「人」、そして「土壌」
終 章 「幸せな安定」という選択肢
【関連記事】
【マーケティング】『「顧客消滅」時代のマーケティング ファンから始まる「売れるしくみ」の作り方』小阪裕司(2021年03月04日)【感性社会】「ビジネス脳を磨く」小阪裕司(2008年05月13日)
【研究知見】『「人間力」の科学』小阪裕司(2009年03月28日)
あなたにもできる「惚れるしくみ」がお店を変える! 小阪裕司(著)(2006年09月21日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。「老害の人」にならないコツ
そろそろ私も読んどいた方が良さげな1冊は、Kindle版が800円弱お得。
ぶらり世界裁判放浪記 (幻冬舎単行本)
世界中の裁判を傍聴しまくるという作品は、中古が定価を超えていますから、Kindle版が1900円弱お買い得。
いつも幸せはそばにある
結構な高評価の自己啓発書は、Kindle版が700円弱お得な計算です!
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