【読書】『現代人のための　読書入門～本を読むとはどういうことか～』印南敦史:マインドマップ的読書感想文

2024年10月25日

【読書】『現代人のための　読書入門～本を読むとはどういうことか～』印南敦史

【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも人気が高かった読書本。

当ブログではおなじみである書評家、印南敦史さんが、読書をテーマにざっくばらんに語った1冊です。

アマゾンの内容紹介から。

「最近の人は本を読まない」というような発言は、それが事実である一方、もうひとつの事実を覆い隠し、歪めてしまう可能性をはらんでいます。つまり否定的な論調は、「程度の差こそあれ、誰でも過去に読書体験はあり、無意識のうちにそこからなにかを学んでいた」という事実を覆い隠してしまうということです。（「はじめに」）「本が売れない」「読書人口の減少」といった文言が飛び交う現代社会で、「読書の原点」を問いなおす。

光文社新書ということで、Kindle版は定価でのご提供となります！

【ポイント】

■1.「浪費の読書」は無駄ではない

　ただただ、「面白いから」という読書がある。わたしの場合は、暇があればTVの他に、「消費」というか、むしろ「浪費」とでもいうべき読書をしている。読書の醍醐味は「浪費」にある、というのがわたしの一念であるといっていい。
　哲学者の鷲田小彌太氏は『読書原論』（言視舎）にこう記していますが、私もまさに同感です。もちろん「浪費」としての読書は、ベネフィットに期待する読書とは対照的です。つまり、〝わかりやすいなにか〟が得られるとは限らないわけですから、「浪費するなんて無駄じゃん？」と思われるかもしれません。
　しかし、ここでいう「浪費」は「無駄遣い」とは本質的に異なるものです。日常の習慣として読書という浪費を続けていけば、知らず知らずのうちに〝なんらかの本質〟が自身の内部へと染み込んでいくものだからです。すなわち、それが読書の本質であり、だからこそ「浪費」でも一向にかまわないわけです。それどころか、浪費であるという思いが読書へのハードルを下げるのであればそれはむしろ効果的であるはずです。

■2.どう読むかは気にしない

　したがって、もしも「どう読んだらいいのか」と悩んでいるのなら、真っ先にするべきはその悩みを捨て去ることです。そして、読みたい本をただ読めばいいのです。それこそが、自分にとっての正しい読み方であるはずだからです。雑音にはなにかと惑わされがちですが、そこに自信を持つことはとても大切だと思います。「いま、自分は本を読みたい」、その気持ちだけを重視すればいいのです。
　ブックカフェの店主である阿久津隆氏は『本の読める場所を求めて』（朝日出版社）の冒頭に、「僕は、ただ、読書が楽しい、読書が好き、読書が趣味、それだけだ」という文章を寄せておられます。食べるのと同じように、しないでは気が済まないし、満たされないのだと。気づきや学びや成長などよりも、ただ、楽しければいいのだと。これは、「どう読んだらいいのか」などというような答えが出るはずもない理屈よりもずっと本質的であり、とても大切なことだと思います。これこそが読書の、本と自分との関係に求められるべきものだからです。

■3.読書は恋愛と同じ

理由はわからないけどうまくいかなくなってきたカップルが、「一度、距離を置いてみようか」と判断する場合があります。そして数か月とか一年くらいブランクを挟んでみて再会した結果、関係が改善され、「距離を置くことも大切だよね」ということになるかもしれない。あるいは、「やっぱり無理だったね」となる可能性も否定できない。
　本だって同じで、一年後に読み返してみたらしっくりくる本がある一方、どれだけ時間を置いても好きになれない本もあるわけです。相性って、そんなものなのではないでしょうか。
　ですから、なにかの本を読んで「しっくりこないな」「相性が悪いな」と感じたら、無理して読み続けるのではなく、思い切って距離を置いてみることがまずは大切。時間が解決してくれることもあるからです。しかし、解決してくれない場合もあるので、その場合はきっぱり見切りをつけるべきです。

■4.習慣化できれば読書は楽しくなる

　そこで提案したいのが、読書を習慣のひとつと位置づけること。洗顔や歯磨きと同じように、「やって当たり前」のことにしてしまうのです。「ただでさえ時間がないのに、そんなの無理に決まっている」と感じる方は、読書を大げさに考えすぎです。読書習慣を身につけようという提案を、「読書に数時間を割かなければならない」と解釈してはいないでしょうか。だから不可能だと感じてしまうのです。たしかに「毎日2時間を読書にあてる」などとハードルを上げてしまったのでは、習慣化は困難なものになってしまうでしょう。
　でも、必ずしもそこまでする必要はありません。ここまで触れてきたように、（通勤時などの）ちょっとした隙間時間を利用して〝ちょっと読む〟習慣をつける。それだけでも、読書は身近なものになるはずです。

■5.読書はマインドフルネスにつながる

　マインドフルネス瞑想が心を落ち着かせ、頭のなかをきれいに整理し、本当に重要なことに意識を集中させてくれるわけですが、私は読書にも似たような効果があると考えています。(中略)
　読みはじめた本に心を奪われ、知らず知らずのうちに集中していて、気がつけばずいぶん長い時間が経っていたというような経験は誰にでもあるのではないでしょうか。そんなとき、読書を終えたらスッキリした気分になっていたりもするものです。つまりそれは、まさに「いま」「ここ」にある読書に集中できていたということ。だから達成感や心地よさを実感できるわけです。いいかえれば、読書はマインドフルネスにつながるのかもしれない。もちろん科学的にそれを証明することは私にはできませんが、経験的に強くそう感じるのです。

【感想】

◆いかにも印南さんらしい「読書術本」でした。

いかにも、というのは、まず、「アンチ速読派」であるということ。

それはもう、過去にこのような作品を出されていることからも明らかなのですが。

遅読家のための読書術情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣 (PHP文庫)

参考記事：【読書術】『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』印南敦史（2016年03月07日）

本書の中で、印南さんが指摘されていることで「なるほど」と思ったのが、「速読指向は『資格マニア』と同じ」というくだりです。

つまり、資格マニアの目的が「資格を取ること」であるように、速読マニアの方の目的は「時間を短縮すること」であるというわけです。

もっとも、どちらかというと、資格を取得するためには、大量のテキストを読み込まねばならないので、必然的に速く読めるようになる、という話もあるのですが。

◆さらに第1章で述べられているのが、上記ポイントの1番目の「何を読むか」に関連したお話。

「役に立つ何か」を読むのではなく、浪費に見えようとも読みたい本を読むのが正解、という主張です。

なぜならそのことにより、「何らかの本質」が得られるからであり、それが読書の本質だから。

そういえば私も、ブログ関係なしにこの本が読みたくて、8月にセールで購入して一気読みをしたのでした。

穏やかなゴースト　画家・中園孔二を追って

加えて、同じく第1章にて「どう読むか」を論じたのが、上記ポイントの2番目です。

「読書術」を散々ご紹介してきた当ブログが涙目となるような結論である、「どう読んだらいいのか」という悩みは真っ先に捨てよ、とのこと。

要は「好きなモノ」を「好きなように」読むことを、本書で印南さんは一貫して主張されている次第です。

◆かといって、読む本、読む本がすべて自分にとって「アタリ」というワケではないのは、当ブログの読者さんもご存知のことかと。

その対処法は、類書でも言われているように、いったんは「距離を置く」。

そしてしかるのちに「再挑戦」するよう、本書の第2章から抜き出した上記ポイントの3番目では言われています。

……すいません、私は「こりゃアカン」と思った本は、2度目はないですねー。

ただ、読んで何言っているのか分からない本は、それに関連した知識や情報が身につくと、すんなり読めることはあります。

この辺は、勉強と同じと言えるのかもしれませんが。

◆一方、第3章から引用したのが、上記ポイントの4番目の習慣化のお話。

この第3章では、「スマホを置いて読書」とか「テレビを観ないで読書」のようなアドバイスもあるものの、家だとなかなか難しいのではないでしょうか？

そこで個人的にオススメしたいのは、定番の「通勤中の読書」です。

今の私は地下鉄に乗っている時間が5分ほどなので、もはや読書はできないのですが、かつて目黒方面から日比谷線～東横線で通っていた頃は、読んでいた本がハズレだと、途中下車して本屋に駆けこんでいたものでした。

その後、読書スタイルが完全にKindleに移行してしまったので、途中下車はないですが、交通機関で移動中に何もしないのは苦痛なので、今でも遠方に行く必要がある時は、Kindle端末を携帯しています。

……って一般的に今の若い方だと、そういうときは、スマホで済ませちゃうんですよね、きっと。

◆そして最後のポイントの5番目は、第4章から抜き出しました。

マインドフルネスは、それこそ「今」「ここ」に集中するものですから、読書中にその状態になっている、という体験は私にもあります。

と言いますか、本を読んでいて電車乗り過ごしたりしている人は、立派に集中しているのではないでしょうか？（経験多数）

印南さんは上記で「科学的にそれを証明することはできない」旨言われていますけど、関係書籍では、既に明らかにされているかもしれません。

なお、当ブログでもランニングしながらマインドフルネスを行う、というこのような作品をご紹介しておりますので、ご参考まで。