【思考術】『超一流のコンサルが教えるロジックツリー入門』羽田康祐k

2024年09月23日

【思考術】『超一流のコンサルが教えるロジックツリー入門』羽田康祐k_bird

【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」記事にて、一番お求めいただいている思考術本。

著者である羽田康祐k_birdさんの作品は、過去当ブログでも何冊かレビューしており、いずれも人気が高かったので、ある意味妥当かもしれません。

アマゾンの内容紹介から一部引用。

外資系コンサルティングファームの実務で最もよく使われるフレームワークが「ロジックツリー」だ。ビジネスパーソンなら、見たことがあったり、使ったりしたことがある人が多いだろう。
しかし、その真価を引き出せている人は少ない。実は、問題発見や原因究明、問題解決に留まらず、これまでとは比べ物にならない「創造的な仮説」を生み出すツールにもなるのだ。
本書は、「視点力」と「論理力」を自由自在に使いこなし、ロジックツリーを徹底的に活用する方法を解説する。

中古が値下がりしていない一方で、Kindle版は「16％OFF」と、お買い得になっています！

【ポイント】

■1.ロジックツリーとピラミッドストラクチャーの違い

　すでに説明した通り、ロジックツリーは「何らかのテーマをツリー状に分解し、問題を生じさせている原因や問題解決策を導き出すフレームワーク」です。
　一方で、ピラミッドストラクチャーは「主張の正しさを裏付けるために、主張と根拠の構成を組み立てていくフレームワーク」のことを指します。(中略)
　ロジックツリーは、全体を構成要素に分解し、体系的に理解できるようにブレイクダウンしていきます。よって「試行錯誤段階」や「検討段階」で使われることが多いフレームワークです。
　一方で、ピラミッドストラクチャーは、すでに何らかの主張があって、その主張の正しさを支える根拠を構成していく手法です。よって「提案段階」や「説得段階」に用いられることが多いフレームワークです。
　また、ロジックツリーの場合、左右につながれた関係は「全体と構成要素の関係」になりますが、ピラミッドストラクチャーの場合は「主張と根拠の関係」になるのが大きな違いです。

■2.優れたイシューを設定する

　先ほど「売上の向上」の話をしました。その際に設定した「視点」は、「顧客数」「購入1回当たりの客単価」「購入頻度」の3つです。これらをイシュー（白黒つけるべき問題）にすると、
●イシュー①：顧客数を増やせるか？
●イシュー②：購入1回当たりの客単価を上げられるか？
●イシュー③：購入頻度を増やせるか？
となります。
　しかし、「視点」を変えることで、異なる側面からイシューを設定することも可能です。例えば、次の通りです。
●イシュー④：市場規模を拡大できるか？
●イシュー⑤：市場シェアを拡大できるか？
　売上は「顧客数×購入 1 回当たりの客単価×購入頻度」という視点でロジックツリーに分解できますが、「市場規模×市場シェア」という視点でも分解できます。
　むしろ、後者の視点でロジックツリーに分解したほうが、より大局的・戦略的なインパクトをもたらすアウトプットが導き出せるかもしれません。

■3.問題発生個所の特定に使う「Whatツリー」

　ロジックツリーの1つ目の型は「Whatツリー」と呼ばれるものです。
「What」とは「何を？」を意味する英語ですが、その言葉の通り、「全体」を「構成要素（What）」に足し算分解していくのがWhatツリーです。別名、「要素分解ツリー」とも呼ばれ、ロジックツリーの中では、最もオーソドックスな型です。
　Whatツリーは、「全体」を足し算分解していくロジックツリーであることから、
①全体と構成要素の包含関係の整理
②全体と構成要素の規模の比較
が可能になります。(中略)
　Whatツリーは、
●個々の構成要素は同じ性質（＝売上）を持ち、
●それぞれの段階の数字を足し上げれば「全体」の数字になる
という性質を持ちます。
　この性質を利用して、何か問題が発生した際に、「問題の発生個所」と「その規模感」を明らかにする際によく使われるのがWhatツリーです。

■4.自動車メーカーのビジネスの分解の切り口を再編集する

「移動サービス」は「移動手段」という物理的な実体と切り離しても実現できるサービスであることから、各移動手段を横断したプラットフォームビジネスがしやすいことがわかります。
　例えば、現在地から目的地に辿り着きたいときに、シェアサイクル、タクシー、鉄道、航空機、船舶などの移動手段を横断してルートナビゲーションしてくれる情報サービスなどが挙げられるでしょう。
　また、個々の移動手段を個別に予約しなくても、それらを横断してワンクリックで予約できる予約仲介サービスや決済代行サービスもありえます。
　さらに、移動手段の電動化や自動運転化が進んでくれば、無人タクシーが自宅まで送迎にきてくれて、駅から鉄道に乗り、目的地の駅にもあらかじめ無人タクシーが待機してくれるような、自動最適化サービスもありえそうです。
　これらを総合すると、自動車メーカーが目指す未来仮説の1つとして、自動車にこだわらず、移動手段を横断して「ルートナビゲーション」「予約」「決済」「移動」をワンストップで完結させる「総合移動プラットフォーマー」という業態がありえるかもしれません。

■5.ロジックツリーの頭の使い方の9ステップ

Step1：背景と目的を明確にする
Step2：全体を定義する
Step3：構成要素に分解する「切り口」を探す
Step4：切り口に沿って構成要素に分解する
Step5：構成要素同士の関係を整理する
Step6：構成要素同士の論理展開をチェックする
Step7：構成要素1つひとつの傾向を明らかにする
Step8：全体と構成要素の間に働くメカニズムを発見する
Step9：構成要素の優先順位を決める

（詳細は本書を）

【感想】

◆久しぶりにコンサル系のフレームワーク本を読了しました。

もっとも著者の羽田さんは、外資系コンサルご出身なのですから、フレームワークもお手の物でしょうけど、よりによって「ロジックツリー」だけで、1冊の本になるとはビックリの巻。

私自身、「ロジックツリーとは？」と問われたら、何となく「1つのテーマを、レイヤーごとに細分化したもの」等、アバウトに答えていたと思うのですが、本書を読んでその奥深さに、正直驚かされました。

さすが帯にあるように、高松智史さんが推奨されただけのことはあるな、と。

なお、「ロジックツリー」と似たものに「ピラミッドストラクチャー」がありますが、両者の違いについては、第1章から抜き出した上記ポイントの1番目にあるとおりです。

なお、「ピラミッドストラクチャー」の場合、ここにもあるように主に「主張と根拠の構成」になりますから、必ずしもMECEの関係にはなっていないかと。

◆さて、続く第2章では「ロジックツリーに必要な2つの力」と題して、「視点力」と「論理力」が掘り下げられています。

このうち上記ポイントの2番目は、「視点力」について触れられたもの。

もし「売上向上の要素を述べよ」と言われたら、私も「顧客数」「単価」「頻度」と答えていましたが、その視点だけではないという。

なるほど、「市場規模」と「市場シェア」を増やすことでも、売上は伸ばせますよね。

　このように、自由自在に視点を変える「視点力」を身につければ、様々なイシューを導き出し、その中から筋のよいイシューを選び取り、ロジックツリー（＝イシューツリー）へと展開できるようになります。

これは個人的には「目からウロコ」でした。

なお、残りの「論理力」については、本書にてご確認ください。

◆さらに第3章では、「ロジックツリーの7つの型」ということで、その型それぞれについての、詳細な解説が掲載されています。

上記ポイントの3番目は、そのうちの1つである「Whatツリー」を解説したもの。

本書では具体例が添えられているのですが、簡単に触れておくと、会社全体で売上が5億円減少した原因を、ABCの3つの事業部における、それぞれが扱う2つの商品（計6種類）ごとに売上の傾向を探ることで特定しています。

……これは私が社会人時代に、全世界の地域ごと×事業部ごとのマトリクスを作って、予算管理していたのにも近い気が。

他にも「Whyツリー」「Howツリー」「KPIツリー」「概念分析ツリー」「プロセスツリー」「フレームワークツリー」と続くのですが、中でも「『曖昧で捉えどころがない概念』を分解していくことで具体化し、『何について考えればいいか？』という『考えるとっかかり』を与えてくれる」という「概念分析ツリー」は、身につけたいと思いました。

なんでも、コンサルティングファームでは、何か曖昧な物事に出くわしたときには、「とにかく砕け！」と教えられるそうなのですが、この「砕け！」とは「概念分解ツリー」のことを指しているのだとか。

◆なお、第4章のサブタイトルにある「創造型ロジックツリー」とは、先ほどの7つの型とは別の、まさに「応用技」ともいえるもの。

これは主に、「未来に向けた様々な可能性を考える」ために用います。

具体例では、自動車メーカーグループのビジネスが登場しているのですが、一般的に考えたら「製造・販売」と「サービス」に分けて、前者は「新車」と「中古車」、後者は「レンタカー」や「リース」が挙げられるかと。

しかしここで、ロジックツリーを左に遡って「移動手段ビジネス」と考えると、自転車やオートバイ、鉄道、航空機も考えられます（ホンダやスズキはオートバイも出していますし）。

さらには上記ポイントの4番目にあるように、「移動手段」という実体と切り離しても、さまざまなビジネスが考えられる次第。

　ここまで見てきたように、ロジックツリーは、右側に分解していくと「既存の枠組みの内側」で考えることになるので、「どんな自動車を製造・販売するか？」、あるいは、「どんな自動車サービスを展開するか？」など、これまでの延長線上の仮説になってしまいがちです。
　一方で、ロジックツリーを左側に遡って「全体」を再定義すると、既存の枠組みを超えて視野が広がっていきます。
　さらに、「再定義した全体」から構成要素を再分解していくことで、既存の枠組みを超えた仮説を導き出すことが可能になるのです。

なるほど、確かに！

◆そして第5章では、実際にロジックツリーを作成するうえでの「頭の使い方」を指南。

具体的には上記ポイントの5番目にある、9つのステップがそれに該当します。

もちろん本書では、これらのステップごとに、詳細な解説が掲載されていますから、こちらを読むことで、より理解が深まるはず。

ただし、本書を読了したとしても、いきなりロジックツリーができるようになるわけではないことが、巻末の「おわりに」で述べられています。

確かに昨今は、「タイパ」「コスパ」がブームだからと言って、「効率の良さ」だけを求めてはいけません。

それに関して羽田さんいわく、「『まず最高レベルの品質のものを作れるようになって』『それをどう効率的に作れるようにしていくか？』という順番で考えるべきもの」 とのこと。

あまりにも効率を重視しすぎて、この順番が入れ替わってしまうと、「平凡なものを、効率的に作れる」人材にとどまってしまいます。

……これは耳イタイですね。

本書の教えを実践して、ロジックツリーをマスターすべし！

超一流のコンサルが教えるロジックツリー入門 (PHPビジネス新書)

第1章ロジックツリーとは何か？――ロジックツリーがもたらす７つのメリット
第2章ロジックツリーに必要な2つの力――「視点力」と「論理力」
第3章ロジックツリーの7つの型――基本型を使い倒す
第4章ロジックツリーの応用技――創造型ロジックツリー
第5章ロジックツリーの頭の使い方の9ステップ――頭の中に「思考回路」を実装する
第6章ロジックツリーのトレーニング方法――日常を教材に変える