2024年09月15日
【英語学習】『理系的 英語習得術 ――インプットとアウトプットの全技法』鎌田浩毅
理系的 英語習得術 ――インプットとアウトプットの全技法 (ちくま新書 １８１６)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも注目を浴びていた英語学習本。HONZでもおなじみだった鎌田浩毅さんが、独自の英語の学び方を指南してくれています。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
科学者として英語を日常的に使いこなす著者が、半世紀にわたる英語学習の経験から「結果を出せる」ノウハウだけを厳選してアドバイス。
システマティックで合理的な英語の勉強法、すなわち誰にでもできる「習得術」を理系的視点から大公開。
英語情報のインプット、アウトプット、未来の活用の三項目を見据えて学習を進めていく。
読めば、頭をポジティブに稼働させ、「英語が得意になった」感触を得ることができる実践の書。
当初はなかったKindle版は、「9％OFF」とお買い得になっています！
【ポイント】
■1.多読の3原則英語の多読学習には「多読の3原則」というメソッドがある。1．辞書を引かずに楽しめるものを読むである。
2．分かるところをつなげて読む
3．自分がおもしろいと思う本を選んで読む
ところで、多読に対する批判として、原則2．とも関連するが、「分からない箇所を飛ばし読みしていたら英語力はつかない」という意見がある。確かにその通りで、分からない箇所を次々に無視して読んでいたのでは内容も分からず、また長続きしないだろう。
したがって、多読で力をつけるには、「自分の英語力で読める本を選ぶ」必要があるのだ（原則 1．）。多読の成否はひとえに英書の選び方にあるのである。「わからない語があっても辞書を引かず飛ばして読む」ではなく、「分からない語があまり出てこない本を選び、たくさん読む」というのが多読のコツである。
そのために、自分がおもしろいと思えるジャンルや題材をセレクトすることも大切だ（原則3．）。
■2.音読筆写の技法
まず、ゆっくりで良いので発音に気を配りながらていねいに読んでみよう。二度、三度と繰り返してももちろん構わない。音読をしながら、その英文を瞬間的に記憶する。
次に、記憶した英文をノートに書き写す。ここで単語のつづりは正確でなくても構わない。音読筆写は、英語の「構造を理解する」ことを重視するからだ。したがって、若干つづりを間違えていても、瞬間記憶した英文が書ければよしとする。
もし、筆写の途中で書き続けることができなくなれば、もう一度音読からやり直す。筆写した英文は、後で読み返す必要はない。誰にも読めないほど汚い字でよいので、あるスピードをつけて一気に書いてみよう。このように音読筆写では「勢い」が大切なのである。
■3.シャドーイングの訓練法
ここではシャドーイングの訓練の具体的な進め方を述べておこう。最初に、30秒から1分の音声教材を、1カ月ほどかけて練習する。
ここでは詳細な解説のついたスクリプト（音声の書き起こし） が用意されている教材を選んでいただきたい。発話のスピードや抑揚を、できる限りまねをしながら繰り返そう。
先ほど述べた注意点、つまりスクリプトは見ない・音声の一時停止はしない、を守って取り組み、音声の最後までシャドーイングを終えたら、スクリプトを見直して確認しよう。その後またスクリプトを伏せ、音声のみのシャドーイングに挑戦、という繰り返しである。(中略)
シャドーイングに慣れるまでは、30秒の音声でもとても長く感じられるかもしれない。それでも、1つの題材を数十回繰り返し、1カ月程度の時間をかけて練習しよう。
なお、音声が無料配信されているウェブ上のニュース番組では、スクリプトが公開されているものがある。こうした教材を選んで、毎日違う文章でシャドーイングを行なうのもよいだろう。
■4.ライティングは和文和訳を練習する
1．日本語が伝えようとしている内容と本質をしっかりと理解する。換言すれば、細かなニュアンスを伝える形容句や慣用表現などに惑わされない。このような思考プロセスを身につけるため、「英文和訳」ならぬ「和文和訳」という練習をしてみよう。
2．本質の伝達に不要な形容句などを取り除き、平易な日本語で表現する。
3．「平易な表現に置き換えた日本語」に対する適切な英語表現を見つける。なお、ここで最善の選択ができなくても、次善の表現を手持ちの語彙から選び出す。
英語を書く際の秘訣は、日本の中学生が読んでわかる英文を書こうとすることである。文法も語彙もなるべく中学レベルで済ませる。複雑な文法を使おうとしたり、構造が込み入った文章を書いたりしようとすると、どこかで 齟齬 が生じ、通じない英語になってしまう。逆に、中学レベルで英文を書くと、多少の誤りがあっても、もともと平易な内容を表そうとしているため、大半はなんとか通じる。
■5.英語の「口」と「舌」を手に入れる
ネイティブの話し声は、英語らしく聞こえる。やはり英語らしい音、英語に特徴的な音というのは存在する。こうした英語らしい音を出せれば、全体の印象がガラッと変わってくる。(中略)
英語発音の際の口の形と舌の動かし方は、後述する発音指導本などを利用すれば、ものの5分で学習することができる。ところが、その発音を口と舌に覚えこませるには、意識的な訓練が必要である。発音の仕方を5分で習得したら、あとは1カ月程度の訓練で舌に形状記憶させる必要がある。
現実問題として、英語を話し続ける環境に1カ月間も身を置ける人はあまりいないだろう。しかし、先述した声帯などの発声の仕組みを意識して、英語らしい音はどのようにすれば出せるのか考えながら、発音してみよう。しばらくは試行錯誤が続くかもしれないが、「こういうことか！」という瞬間が訪れるはずである。
【感想】
◆なかなか真っ当な英語学習本でした。「楽して身につく」という安易なやり方とは一線を画した、地に足の着いた勉強法といいますか。
ただ、タイトルに「理系的」と付いているのは、鎌田先生が著作のいくつかに「理系」「理科的」等付けられているものの絡みであって、特に「これは理系的だ」という勉強法ではないのでは、と感じました。
むしろ、新しいアプリやツール等をガンガンに使ったりもしないので、どちらかというと文系的とも言えなくもなく？
もちろん、文系であれ、理系であれ、英語の学習効果が得られるのであれば、読者にとってはOKでしょうから、そこは気にしなくて良いでしょうが。
◆また、上記ポイントでは、あえて細かな学習メソッドを中心に抜き出しました。
本来なら心構えやら何やら、大事な部分もあるのでしょうけど、基本的に勉強本は、使えるTIPSが1つでも2つでもあればいい、という考え方を当ブログとしてはしておりますので。
たとえば上記ポイントの1番目の多読のお話は、読解力がテーマの第3章からのもの。
なるほど、最初に本を選ぶ時点で、成否が決まってくるのだな、と。
一方で、精読するのならば必要なのが辞書です。
今回は割愛しましたが、鎌田先生いわく、「辞書は『意味』を調べるのではなく、『用法』を調べるもの」なのだそう（詳細は本書を）。
◆続く上記ポイントの2番目の「音読筆写」は、私は英語勉強本では初めて目にしました。
厳密には、記憶しなくて良いのならば、こちらの本で「ひたすら音読と筆写をする」というTIPSが紹介されていましたね。
一生モノの英語力を身につけるたったひとつの学習法 (講談社＋α新書)
参考記事：【英語】『一生モノの英語力を身につけるたったひとつの学習法』澤井康佑（2017年03月31日）
また、上記参考記事内の該当部分に
「同時通訳の神様」とも呼ばれた國弘正雄でさえも、音読・筆写という、実に平凡で単純な作業に頼り、英語の感覚を磨いているということがわかります。とあるくらいですから、効果は望めそうです。
なお鎌田先生は、この「音読筆写」の学習パターンとして
初日に数回連続で、音読筆写の練習を行なう。その後の1週間は、数日おきに繰り返す。さらに数週間後に、もう一度だめ押しの練習をすると非常に効果的である。と言われていました。
◆一方、鎌田先生も推奨しているシャドーイングは、類書や一般的な学習本でもおなじみでしょうから、詳細は割愛。
そこで具体的な訓練法について、上記ポイントの3番目にてご紹介しました。
なお、本書で鎌田先生は、シャドーイングを軸としたリスニングのための参考書として、こちらを紹介されています。
【音声・プログレスシートDL付】究極の英語学習法 K/Hシステム 基本編
……ただちょっとレベルが高いそうなので、一応ご留意を。
さらにライティングについては、上記ポイントの4番目にある和文和訳が興味深かったです。
そもそも私たちの思考は日本語で行われるため、英訳しにくいことは致し方ないわけで。
そういえば、こういう英訳しやすい日本語文だと、ChatGPTとも相性が良さそうですね。
◆そして、最後の上記ポイントの5番目は、第8章のスピーキングの章からのもの。
「口」や「舌」の形というのは、理屈ではなく実践して、カラダで身につけねばならないようです。
形状記憶という表現はウケましたけど、実際そうなんでしょうね。
ちなみに、バッサリ割愛してしまいましたが、第9章は英語の名文やその原典ががわんさか収録されています。
ここはもう、ブックガイド的にも活用できますので、興味のある方はぜひご覧ください。
……そういえば巻末に索引がしっかりあるのは、理系チックだと思ったワタクシ。
正攻法の英語勉強法がここに！
理系的 英語習得術 ――インプットとアウトプットの全技法 (ちくま新書 １８１６)
はじめに
第�吃堯￣儻貶拔�法の点検と整備
第1章 なぜ英語を勉強するのか？
第2章 コミュニケーション・ツールとしての英語
第�局堯￣儻譴鮖箸い海覆拘靄楜蚕�
第3章 読解力がすべての基礎となる
第4章 単語力を身につける
第5章 文法力を武器にする
第6章 リスニングは習慣化が命
第�敬堯々舁�的なアウトプット術と英語の活用
第7章 作文力獲得のツボ
第8章 スピーキングの上達が自信を生む
第9章 英語の名文で教養を身につける
第10章 デジタル環境での英語勉強法
おわりに 無理をしなくても実践できる英語勉強法
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【英語】『一生モノの英語力を身につけるたったひとつの学習法』澤井康佑（2017年03月31日）【英語学習】『「超」英語独学法』野口悠紀雄（2021年03月11日）
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【英語学習】『50歳から始める英語 楽しいから結果が出る「正しい勉強法」74のリスト』清涼院流水（2019年04月05日）
【英語学習】『科学的トレーニングで英語力は伸ばせる!』田浦秀幸（2016年02月06日）
【編集後記】
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参考記事：【モテ】『美人の正体』に学ぶフツメン以下の恋愛戦略7選（2013年09月21日）
この記事のカテゴリー：「私と100冊の勉強本」へ
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