【仕事術?】『参謀の教科書才能はいらない。あなたにもできる会社も上司も動かす仕事術』伊藤俊幸:マインドマップ的読書感想文

2024年09月09日

【仕事術?】『参謀の教科書才能はいらない。あなたにもできる会社も上司も動かす仕事術』伊藤俊幸

【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「双葉社フタスペ！～双葉社のスペシャルな夏2024～」の中でも大人気の仕事術本。

セール記事で「実用書が大半ですが、一部ガチなビジネス書」と言っていた、その「ガチなビジネス書」にやはり人気集中しました。

アマゾンの内容紹介から。

リーダーシップ論はもう古い。組織を効率的に動かし、成功に導くには「フォロワーシップ＝部下のあり方」こそが必要。理想的なフォロワーとしての「参謀」をキーワードに、この本を読んだ方が上司を組織を動かし、変えていくメソッドを「伝説の海将」と謳われた元・海上自衛隊海将の伊藤俊幸が教え尽くす。前著『リーダーシップは誰でも身に付けられる』を全面的に「部下視点」で改訂したもの。

値引率が「70％OFF」と高いこともあり、このKindle版が900円以上お買い得です！

【ポイント】

■1.「理性か服従か」の二択に陥らないこと

「理性ある服従」のできる部下。これこそいま多くの日本企業に足りない人材です。
　言われたことを勤勉にこなすことが美徳であると叩き込まれる日本人の多くは、「服従はするが理性に欠けた状態」にあるといえます。
　もちろん自分の意見を上司に臆せずぶつける部下も少数存在しています。しかしそういう人の多くは、今度は逆に上司のことを上司と思っておらず、「理性はあるが服従しない状態」であることが多いと感じます。
　そんな人は組織を飛び出して起業しがちですが、自分の考えが強いだけに部下に対しては「無批判な服従」を要求してしまう。結局、いつまで経っても日本企業はトップダウン型組織ばかりです。
「理性か服従か」といった両極端ではなく、「理性」と「服従」をバランスよく備えた人材をもっと増やして日本型組織をアップデートしたい。それが自衛隊退官後の私のライフワークとなっています。

■2.報告や提案は文章化が原則

　私は部下からの報告や提案は必ず文章化させることを基本にしていました。これは海上自衛隊の文化でもあります。もちろん、口頭でのコミュニケーションも取りますが、それは「命令や訓令が正しく伝わっているかお互い確認するため」という意味合いが強く、職場における意思疎通のベースは文章であるべきです。
　その背景には「人は思っていることを口にした段階でその6割しか言葉にできず、それを聞いた人はさらに6割しか理解できない」という、海上自衛隊に伝わる「6割の法則」というものがあります。
　つまり口頭で伝えた場合、0.6×0.6＝0.36で思っていることの4割弱しか伝わらないということ。「大事なことは口頭で直接伝えなければ」と考える人がたまにいますが、実はそうではないのです。

■3.上司の意図は直接聞く

　参謀の役割は上司を補佐することであり、そのためには、上司の意図を正しく、深く理解することが不可欠です。(中略)
　では、上司の意図を正しく理解する方法とはなんでしょうか？　訓令の形で指示が出されたときに、上司の期待を裏切らない確実な方法はあるのでしょうか？
　パッと思いつくのは読解力や観察力、想像力などです。たしかに上司が寡黙なタイプなら、そうせざるを得ないかもしれません。しかし、もっとシンプルで、はるかに確実な方法があるはずです。
　そう、前章でも紹介したように、上司の意図を直接聞けばいいのです。
　海上自衛隊よりもさらにアメリカ的な組織である航空自衛隊では、「意図伺い」「意図取り」と呼ばれる用語が日常的に使われています。文字通り、上司の意図を確認する工程のことです。
　もし「意図伺い」をせずに任務に着手して失敗すると上官に怒られます。民間企業で仕事の仕方で悩んだら、「上司がちゃんと説明しないからだ」と人のせいにして終わりそうですが、航空自衛隊では「意図取りしていないお前が悪い」と言われます。

■4.切れ者ほど陥りやすい「正論＝正義」の落とし穴

　頭のいい人がもっとも勘違いしやすいことは、「ロジックを真正面からぶつければ最後は正しいロジックが勝つ」と思っていること、つまり「正論こそ正義だ」という発想です。しかし、現実社会では正義が勝つわけではなく、力をもっている者が勝つのです。
　どれだけロジックが正しくても、それを聞いた相手が感情的な拒絶反応を見せたら聞く耳をもってもらえません。
　なぜなら「感情」は「理性」をいとも簡単に上書きするからです。とくに人の感情が傷つくのは自尊心を傷つけられたときです。カーネギーは、著書『人を動かす』（創元社）のなかで、
「自尊心を傷つけられた相手は、結局、反抗心を起こすことになり、誠に危険である」
　と述べています。一度感情的な対立が生まれると修復は容易ではありません。お互い一歩も引かない状態で自分のロジックを押し通すには、徹底的に相手を打ち負かすしかなくなります。

■5.時代はサーバントリーダーシップへ

　私は呉地方総監でしたので、元サンフレッチェ広島の監督で、2022年のサッカー・ワールドカップで一躍時の人となった森保一日本代表監督と、お話をする機会がありましたが、森保さんがおっしゃったのは、「僕は牧羊犬なんです」という言葉でした。
　牧羊犬とは、牧場で放牧している家畜の群れに誘導や見張り、人間による盗難や狼などの捕食動物から守るように訓練された作業犬です。誘導の際は、先頭に立つというよりも群れの横や後ろに位置します。
　日本ではリーダーシップというと、「人の先頭に立ち、大きな声で指示を出し、常に率先垂範せよ」と思われていますが、その結果、振り向くと誰も付いてこないということになっているのではないでしょうか。
　これはリーダーシップが「部下が自ら付いていこうという気持ちを原動力として組織を動かす方法論」であるということを理解していないから起こる現象だと私は思っています。
　一方、日本のチームスポーツは、いまや世界に通用するレベルになってきましたが、サッカーやラグビーの監督が〝牧羊犬〟すなわちサーバントリーダーシップをとる方が多くなっているのは、時代の流れなのでしょう。

【感想】

◆冒頭でも触れたように、「ガチなビジネス書」でした。

上記ポイントをお読みいただいても分かるように、普通にビジネス書専門の版元から出ていてもおかしくないくらい。

むしろ、どうして双葉社さんから出すことになったのか、とか、会議でよく通ったな、とか余計なことを考えてしまいました。

もしかして、ミリタリー系のツテとかかもしれませんが、いずれにせよ、ネタ感はゼロであり、私も普通に読了しています。

また、テーマも逆マネジメントと言いますか、部下の立場からの立ち振る舞いを指南したもの。

ただし、タイトルにある「参謀」とは、私たちが一般的にイメージするもの（「諸葛孔明」的な？）とはちょっと違って、「部下自ら頭を使い、積極的に上司の意図を理解し、上司に意見を述べたり、働きかけたり、補佐したりできる部下のあり方」を説いている次第です。

◆それが如実に記されているのが、第1章から抜き出した上記ポイントの1番目。

しかし現在の我が国においては、「服従はするが理性に欠けた」人か「理性はあるが服従しない」人ばかりであることは、実感としてあるのではないでしょうか。

そこで両者のバランスをとった「理性ある服従」を、本書は一貫して目指しているとのこと。

そして、実際に「理性ある服従」を実現するには、さまざまな資質が必要です。

その1つが第2章のテーマでもある「科学的思考力」。

一見「ロジカルシンキング」のようでもありますが、ロジカルシンキングは前提となるファクトがフェイク（フェイクニュース）だと、「論理的ではあるが科学的ではない」となってしまいます。

そこで本書ではファクトとロジックの双方にこだわりつつ、さまざまな訓練方法が挙げられていました。

たとえば上記ポイントの2番目の文章化もそうであり、確かに口頭だと何となくわかった気でいても、いざ文章化するとあいまいな部分が浮き彫りになるのは、私自身も重々身に覚えがありますね……。

◆一方、上記ポイントの3番目の上司の意図を聞く件は、第3章の「最高のブレーンを目指す」からのもの。

ただ、上司から仕事を振られた際に、その意図や目的を聞くことは、私たち一般的なビジネスパーソンでも、実践している人は多いのではないでしょうか？

ここで興味深かったのが、同じ自衛隊でも陸海空それぞれ違いと言いますか、特徴があることで、上記ポイントにもあるように航空自衛隊はわざわざ用語まであることで、逆に他に陸海の自衛隊はそこまで一般的ではないのでしょう。

実はこの三者の違いは、他の章でも触れられていたのですが、特に第4章にあった「礼節の度合いの違い」が典型的で、たとえば会議で部長が発言ミスをした場合、陸上自衛隊だと、会議終了後、参謀が会議室を歩き回り「先ほどの発言は……」と尻ぬぐいをするのだそう。

それに対し、海上自衛隊だと参謀がメモを渡して、その場で部長自ら訂正するのですが、航空自衛隊だと参謀が挙手して、「今の部長の発言は……」と訂正してしまうのだそうです。

……えらい違いですねｗ

◆その礼節に関係するのが、やはり第4章から抜き出した上記ポイントの4番目。

確かにここでも指摘されているように、正論で相手（特に上司）を論破してしまうと、かえって仕事がやりにくくなってしまいます。

そこでこの章で提案されているのが「ボス・マネジメント」という考え方。

要は上司をひとつの「機能」もしくは「資産」としてみるもので、基本的に「ボスは顧客として扱う」のだそうです。

なお、本書で「ボスマネ」を学ぶ上でオススメされていたのがこちらの作品。

上司に「仕事させる」技術

上司が「使えない」と思われている方は、読んでみると良いかもしれません。

◆なお、本書で言う「参謀」はいつまでも「参謀」ではなくて、いずれ「リーダー」になります。

そこに触れられているのが、1つ飛んだ第6章であり、上記ポイントの5番目もそこから引用しました。

もちろん、部下のレベルによって、とるべきリーダーシップのタイプは異なるのですが（詳細は本書にて）、昨今注目を浴びているのが、ここで挙げた「サーバントリーダーシップ」です。

サーバントリーダーシップ - Wikipedia

そして、その具体例として紹介されているのが、現在ちょうどW杯最終予選を戦っている、サッカー日本代表監督の森保一さん。

一部では、戦術を選手に丸投げしている等の批判もありますが、なるほど頭ごなしに「こうやれ」と言わないところは、「サーバントリーダーシップ」的ではありますね（「牧羊犬」を自称していることは知りませんでしたが）。

ちなみに本書には、過去の戦争や現在の自衛隊の興味深いエピソードが多々収録されているのですが、スペースの関係で割愛してしまいました。

実際に本書をお読みになって、そちらもお楽しみいただきたいと思います。

このお値段なら「買い」の1冊！

参謀の教科書才能はいらない。あなたにもできる会社も上司も動かす仕事術

第1章参謀は「最強の部下」である
第2章【提案力/基礎編】科学的思考をしよう
第3章【提案力/応用編】最高のブレーンを目指す
第4章【対人力】組織で活かされるには「礼節」が必要
第5章【危機管理能力】プランとプランニング
第6章正しい参謀がよきリーダーになる

【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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