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2024年09月06日

【知的生産術】『英国エリート名門校が教える最高の教養』ジョー・ノーマン


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英国エリート名門校が教える最高の教養 (文春e-book)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「文藝春秋 電書の森2024!」における注目作。

タイトルからして、いわゆる「教養本」だと思ったのですが、むしろ「読む」「書く」等の知的生産に特化した1冊でした。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
〈世界一の教養〉とは? 英国エリートに伝授される奥義を全公開!
ビジネスパーソン必読「究極の学び本」
英国の名門パブリックスクール(中高一貫校)が伝授する「本物の教養」が学べる一冊!
〈世界の大学ランキング8年連続1位〉のオックスフォード大学やケンブリッジ大学へ、卒業生の多くが進学。歴代首相を40人近く輩出、全寮制で『ハリー・ポッター』の舞台にもなった。
秘密主義のヴェールに包まれエリートのみに伝授されてきた〈教育の奥義〉を、あますことなく公開する。

中古がまだあまり値下がりしていないので、このKindle版が800円弱お買い得です!






【ポイント】

■1.「英国エリート名門校の秘伝『教養のための必読リスト114冊』」より(抜粋)
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若い読者のための哲学史 【イェール大学出版局 リトル・ヒストリー】
過去2500年における主要な西洋思想家40名についてコンパクトに読みやすくまとめた入門書。好きなところから読めばよい。

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大いなる遺産 上 (河出文庫)
ディケンズの最高傑作にして、最も短い小説のひとつ。立身出世する者たちが過去に置き去りにし、二度と取り戻せないものがある。社会的地位の高い者たちが犯す大小の罪が暴かれる。

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完全版 マウス――アウシュヴィッツを生きのびた父親の物語 (フェニックスシリーズ)
アート・スピーゲルマンの父がポーランドのユダヤ人街、そしてアウシュヴィッツで体験したことが、ネズミとネコの漫画によって語られる。コミック史に残る名作。


■2.何世紀にもわたり存在し続ける偉大な本とは?
 すでに亡き人たちが残した本を読むことで、学びにおいて、そして人生において、正真正銘唯一絶対最大限の効果がもたらされると疑いなく言える。わたしはそう考えるが、なぜか?
 すでに没した詩人W・H・オーデンの言葉がその答えになる。
 記憶されるべきだが不当に忘れ去られる本はある。だが、記憶されるべきではないが記憶される本はない。
 すでに没した作家の本をたくさん読むとはどういうことか? その時代の愚書は印刷物としてすでに残っていないはずだから、今読めるものは当時最高の本だったということになる。これは大いに喜ぶべきことで、われわれは今、古今東西の名作が読めるのだ。
 古典とは何か? 伝えなければならないことを、今も伝え続けている本だ。だから今もニュースとして存在する。『ハリー・ポッター』シリーズは、聖書を除いてこれまで書かれたどの本より売り上げは上回ったが、これから百年後まで読まれつづけるかどうかで真の評価が定まる。はたして聖書のように二千年後まで読み継がれるだろうか?


■3.「非常に(very)」と「本当に(really)」は削る
 英語では削除してもほとんど問題がない語がふたつある。本当に(really)と非常に(very)だ。本当だろうか?(Really?)まさにそうだ(Very much so.)。でも、どうして?
 なぜなら、どちらも副詞であり、形容詞を修飾して理論上、強調する役割しか果たさないからだ。
ここにいられて本当にうれしいです。
 本当にそう思っているだろうか? そんなふうに思えないが。もう一度声に出して読んでほしい。言い方によっては、皮肉と受け取られてしまうかもしれない。それとも本当にうれしくてそう言っているのだろうか?  
 同じように、「彼はいい人だ」も悪くないが、ちょっと弱いかもしれない。そうではあるが、「彼は非常にいい人で……」という言い方をすると、大概は「……ですが」が続くように思える。
 すでに述べたとおり、不必要な言葉を入れると往々にして意味が弱くなってしまう。よって、たとえ(あるいは 特に)文章を華やかにしようとする時でも、だらだらと言葉を続けることがないようにしたい。


■4.自分の発言を否定する
 何を書くかについてアドバイスすれば、こういうことになる。
 文章を書いていて行き詰まった場合、「一方で……」という言葉で新しい段落を始めて、自分が言ったことを強く否定する以下のやり方はそれほど悪くない。自分の発言を否定することで、自分は公正であると思わせようとするのだ。F・スコット・フィッツジェラルドは言う。
一流の知性を備えているかどうかは、相反するふたつの考えを同時に備えているかどうかで試される……。
 よって、エッセイは二番目にいいと思うことから書き始めて、いちばんいいと考えることで締めることだ。これでかなりいいものになる。
 ドイツ生まれの哲学者ハンナ・アーレントは、何かを判断する際には、他人の視点を考慮し、他人が何を考え、何を感じるか、想像しなければならない、とした。自身が定義した「拡大した精神性」を取り入れる必要があるとしたのだ。
 これがエッセイに求められる。


■5.物語に必要な「因果関係」
『サウスパーク』は過激な描写や社会風刺で知られる長寿アニメ番組だが、原作・監督・脚本を務めるトレイ・パーカーとマット・ストーンは、ストーリーに関して、ひとつ決めていることがある。ライターに各話のストーリー案を提示されると、「それからどうなる?」とすぐにふたりでいくつかの可能性を考えるのだ。パーカーとストーンにとって、「それから」はストーリーに不可欠だ。なぜなら、そこに あるべきものがない からだ。ふたりがストーリーに関して決めているルールは、「因果関係」を考えることだ。ふたりにとっては、「何かがなぜ起こったか?」は、「何が起こったか?」より少なくとも重要なのだ。単に「そして」と言うだけでは、物語の時間軸はわかるが、「なぜ起こったか」はわからない。
 ストーリーの存在理由は、因果関係を示すことだ。わたしたち人間は因果関係を求めるから、常に物語を必要とするし、この先もそれはおそらく変わらない。物語はわたしたちが実際にその行動を取らなくても、もしそうしていたらどうなるかを教えてくれる。


【感想】

◆下記目次をご覧頂くとお分かりになるように、本書は5つの章から構成されています。

このうち第1章の「何を読むか」で主に展開されているのが、上記ポイントの1番目の「英国エリート名門校の秘伝『教養のための必読リスト114冊』」。

これはいわゆるブックガイドに相当するもので、各作品に付されたコメントは、上記ポイントでも引用されている程度の短いものです。

ただし114冊それぞれについて掲載されていますから、実はここだけでもかなりのページを費やしているという……。

また、そもそもこういうブックガイドを本の冒頭に持ってくる作品というのも、あまり記憶にありません。

とはいえ、当ブログのような読書系ブログにとっては、こういう企画はありがたいもの。

著者や本書の置かれた立場ゆえか、類書とはひと味違う選書になっていると思います。

ラインナップもフィクションやノンフィクション、さらにはコミック(ただし日本の漫画はなし)やグラフィックノベルをも対象にしている次第。


◆また上記ポイントの2番目も第1章からなのですが、古典に対する指摘には、思わず納得しました。

確かにW・H・オーデンの言うように「記憶されるべきではないが記憶される本はない」以上、古い作品は残っている時点で、すでに「名作」と良いもの。

上記の114冊には、比較的最近の本もありましたが、将来まで残っているであろう可能性が高いと思われるものばかりでした。

逆にハリポタシリーズがどうなの、という話はさておき、今後は頑張って(?)古典にも手を伸ばしてみたいな、と。

続く第2章の「どう読むか」については、極めてページが少ないので割愛(すいません)。

ただし、「古典を読むには十分な理解力が必要」という指摘は、正直耳イタイばかりです。


◆一方、第3章は「どう書くか」ということで、ライティング本に近い内容が。

上記ポイントの3番目の「非常に」と「本当に」は、日本語でもおそらく同じことでしょう。

……似たようなニュアンスでは「絶対に」という単語も、使うと信用ならない、という話もありますよね。

また、「自分の読者に響く本を書くためには、自分に響く本を読み直すべし」ということで、著者のジョー・ノーマンは、スコット・フィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』(いわく、「英語で書かれた20世紀最高の小説」)を熟読したのだそうです。

村上春樹翻訳ライブラリー グレート・ギャツビー -村上春樹 訳 スコット・フィッツジェラルド 著|単行本|中央公論新社

(本書内で挙げられている「中央公論新社版」をアマゾンで扱ってないので、版元サイトを)


◆また、第4章では具体的にエッセイの書き方が登場。

こちらで大々的に取り上げられているのが「二項対立」の考え方で(「テーゼ」「アンチテーゼ」等)、上記ポイントの4番目もその延長線上にあるものです。

今まで読んできた本の多くが、どちらかというと、自分の意見を述べてその根拠を列挙するパターンが多かったので、ここで触れているように「自分が言ったことを強く否定する」というのは、珍しいやり方だな、と。

イメージ的には、ディベートで双方の意見を考慮するような感じでしょうか。

そして第5章の「ストーリーをどう語るか」から抜き出したのが、上記ポイントの5番目の「因果関係」のお話。

まさかあの『サウスパーク』が、そのような作りになっているとは思いもしませんでした。

なるほど、ただ事件が漠然と起こっているのではなくて、物語である以上、「なぜ」がフックとなって、話がつながっているんだな、と。

……てな感じで、第2章以降も興味深かったのですが、当ブログ的には第1章だけで元は取れていると思います。


イギリス流の教養を身につけるために読むべし!

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英国エリート名門校が教える最高の教養 (文春e-book)
Chapter1 何を読むか
Chapter2 どう読むか
Chapter3 どう書くか
Chapter4 エッセイをどう構成するか
Chapter5 ストーリーをどう語るか


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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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