【時短?】『鬼時短―電通で「残業６０％減、成果はアップ」を実現した８鉄則』小柳はじめ:マインドマップ的読書感想文

2024年08月01日

【時短?】『鬼時短―電通で「残業６０％減、成果はアップ」を実現した８鉄則』小柳はじめ

【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「Kindle電子書籍ポイントキャンペーン」の中でも人気の高い働き方本。

タイトルどおり、あの電通で第一線で時短に取り組んだ小柳はじめさんが、その秘訣を明かした1冊です。

アマゾンの内容紹介から一部引用。

◆藤野英人氏（レオス・キャピタルワークス代表）絶賛！◆
「全経営者必読！速攻で永遠に効くメソッドだ」
◆電通の時短改革「社長特命」から2年間の激闘で学んだすべて◆
効率化、働き方改革、生産性向上、新規事業……あらゆる改革に効く
1カ月で「10万時間」削減の全手法を初公開！

まだ中古があまり値下がりしていませんから、このKindle版が700円弱お買い得となります！

【ポイント】

■1.社長が発信すべきメッセージの3条件

　社長からの発信のポイントは、次の3点です。
① 具体的な施策を、現場に丸投げせず、トップダウンで指示することを約束する
② その施策は現場が「少しだけがんばればできること」に限定することも約束する
③ トップダウンの期間には期限があることを明示する
　この3つを、社長が自ら繰り返し発信してください。
　①は、たとえば、導入すれば実際に時短なり効率化が進むと期待できるシステムやツールの類いです。こうした「手土産」によって具体的に時短できる結果を見せなければ、《現場》はけっして話を聞こうとはしません。
　電通の場合で言うと、その1つが、当時最先端のRPAでした。
　さらに電通の時短改革では、山本社長が2年間という「トップダウンによる《現場》への介入期限（③）」を設定していました。

■2.現場の「主」と社長が1対1で話す

　その際、すべきことはただ1つ。率直に謝ることです。これまでの経営陣の「丸投げの非」を認めるのです。(中略)
　そのうえで、以下の3つを強調してください。
① 社長である私の責任で、私が指揮をとって時短改革を進めます。けっして誰かに丸投げするようなことはしません。
② とはいえ長年、（たとえば）経理業務を仕切ってきた〇〇さんの知見がなければ、とうてい改革はできない。どうか、お知恵を貸してください。これまでずっと、「こうだったらいいのに」とか「こんなの本当に無意味、やめればいいのに」と思ってこられたことを、すべて教えてください。
③ 部署をとりまとめて会社に協力していただくようにするのは、あくまでも部門長の仕事です。とりまとめ役を買って出てほしいなどとは、けっして言いません。そんなリスクをあなた個人に負わせることはしません。

■3.「ムダな業務のリストアップ指示」は最悪手

「現場に、ムダな業務をリストアップさせよう」
　改革推進チームがこれを言っては、絶対にダメです。けっして言わせてはいけません。
　逆に、トップ自らこう発信してください。
「これまで会社がムリに押しつけてきたムダな業務を、リストアップしてわれわれに教えてください」
　このトップのセリフこそが、時短改革という従来の業務を改めていくプロジェクトの成否を左右します。
　時短が必要な状況になったのはすべて、会社が無関心だったのが悪い。工場と異なりオフィスのプロセス構築を、すべて現場に丸投げしてきた経営陣の責任である。その認識に立って時短改革を進めていくという姿勢を一貫させなければいけません。
　ですから、「おまえたちのムダな業務リスト」をつくらせるなどは論外です。

■4.業務を工程に分解する

「会議用の資料作成」という業務を例にとります。ここで、
「会議の資料作成（という業務）にどのくらいの時間をかけていますか」と聞くのではなく、　
「会議の資料作成を5工程に分けたとすると、各工程にどれほどの時間をかけていますか」と質問します。
　業務は多くの場合、複数の工程から成り立っています。結果的に業務の時間を短縮したいわけですが、そのためには1つひとつの工程の所要時間を減らすしかありません。それができないなら、業務そのものをやめてしまうかです。
　時短改革を進めるうえでの最重要ポイントは、時短対象の業務を工程単位で見ることです。これはかつて工場の生産管理を徹底する際にはあたりまえのことでした。
　経営者が、工場改革と同じ視点をもってオフィスの時短をはかろうとしているという姿勢それ自体が、社員の納得を得るカギとなります。これはメーカーにかぎらず、工場部門がない企業でも同様です。

■5.時短改革そのものを時短しない

　繰り返しますが、時短改革そのものを時短してはいけません。
　会議の準備の一工程でこれだけの時間がかかっている。それをくっきりと示す。
　すると、ある段階で《現場》から「そもそも会議の資料は印刷しなくてもいいかもしれない……」と言ってくれる瞬間がきます。
「それならば、データ共有だけですむのですね。会議のたびに1時間分は時短できますね。すばらしいアイデア、ありがとうございます！」
　この会話を積み上げていきます。
　そういう段取りを踏まずにいきなり、
「この時代に、なんで30名分わざわざ紙にプリントしているんですか？　時間も紙ももったいない、わかりますよね？」
などと一刀両断してはいけません。　
　《現場》の現状を絶対に否定しない、そのうえで「そこまでやるんですか？」と言われるほどの熱量をもって、圧倒的なデータを揃える。
　時短改革に限らず、いまの「エビデンス至上主義」全盛のビジネスシーンで人の心を動かすのは、こうした愚直な働きかけしかありません。

【感想】

◆ここまでお読みいただいた方なら、お気づきだと思いますが、本書は「時短」をうたってはいるものの、それはあくまで会社（プロジェクト）としての時短の実現であって、個々人の仕事の時短ではありません。

つまり本来本書を読むべき人は、会社の経営層ないしは、時短プロジェクトの関係者ということになります。

もちろん、直接関与しないビジネスパーソンが読んでも得るところはあるとはいえ、いかんともしがたいかと。

……自社で時短をやろうとして失敗していたなら、その理由が腑に落ちる、という効果はあるかもしれませんが。

実際私も、自分の仕事の効率化を意図して読み始めたのですが、むしろ顧問先でアドバイスする際に活用しようと、方向転換した次第です。

◆また、本書は主に舞台となっているのが、あの電通であり、時短とは無縁の長時間労働を行っていた会社として知られていたワケでして。

本書の中にも

もちろん「普通に」考えれば、夜中のオフィスに電話したって誰も出ないのはあたりまえ……しかし私たち、当時の電通社員には、「普通の方々にはマネできない苛烈な働きぶりだからこそ、取引先から格別の信頼をいただいてきた」という自負がありました。

なんて一節もありました。

この状態から、当時の山本社長は、2年で時短の実現を宣言。

「労働時間を30％削減する。しかし、仕事の質を落とさず、むしろプラスアルファを生み出す」と目標をかかげます。

そしてそのための「特命」を受けたのが、本書の著者である小柳さんでした。

◆わたしはてっきり、数字だけ掲げて、各部署に丸投げしまくるのかと思ったのですが、上記ポイントの1番目にあるように、ある意味真逆。

この3条件を読む限りでは、現場としてもまっこうから反対はできないでしょう。

……しかし、実際には変えようとしない反対勢力がどこにでもいるのですが、その辺の対処については本書にてご確認を。

また、本書を読んで最も意外だったのが、各現場の「主」とも言える人材との向き合い方でした。

仮にも会社のトップが、上記ポイントの2番目にあるように、「主」に頭を下げて協力を依頼するという……。

しかもこれ、会議に呼んで一度に話すのではなくて、各現場を訪れた上で、1対1で話すのですから、かなりの手間もかかります。

要はそのくらい丁寧にやるべきですし、ここで協力を得られないと、時短の実現もできないということでしょうね。

◆さらには、私だったら真っ先にやるであろう、「ムダな業務のリストアップ」も、上記ポイントの3番目でバッサリ否定されていました。

つまり時短が必要になったのは、あくまで「会社側に責任がある」というスタンスです。

代わりに行うのが、現状の作業の洗い出し。

具体的には上記ポイントの4番目のように、各業務を工程に分解します。

ちなみに、こういう調査において、上記でも挙げた現場の「主」が協力的だと、その現場の社員皆が、追随するのだそうで、なるほど、そういう副次的な効果も望めるのかと。

◆さて、本書では具体例として、「会議用の資料作成業務」が挙げられているのですが、その工程で注目されたのが、上記ポイントの5番目にある「印刷」でした。

とはいえ、その作業の煩雑さやムダも、こちらから指摘するのではなく、現場から声があがるのを待つという。

こういう「手間」を惜しまない、つまり「時短改革そのものを時短しない」ことで、目的が達せられるという点は、勉強になりました。

ちなみに、小柳さんたちの時点では、まだあまり普及していなかったRPAを、現場に納得してもらった上で導入し、大きな効果を上げましたが、今だったら生成AIその他の技術も活用できそうですね。

この先もまだまだ読みどころがあるのですが、ボリュームの関係で続きは本書をご覧いただきたく。

「時短プロジェクト」を実現するために読むべし！

鬼時短―電通で「残業６０％減、成果はアップ」を実現した８鉄則

はじめに経営陣のみなさん、いまこそ「時短」すべきです
序章「社長特命」が下った日
鉄則1 社長は「私欲」で訴えよう
鉄則2 現場が抵抗する「本当の理由」を理解しよう
鉄則3 現場の主は社長が自分で口説こう
鉄則4 現場の「すべて」を肯定しよう
鉄則5 トラブル処理は「すべて」引き受けよう
鉄則6 改革の「本質的価値」は語らない
鉄則7 「結果」で納得を得よう
鉄則8 「内部統制」という言い訳を封じよう
おわりに「時短」の向こう側にある世界