2024年07月19日
【文章術】『人生で大損しない文章術』今道琢也
人生で大損しない文章術(新潮新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのも、先日の「未読本・気になる本」の記事の中でも人気の高かった文章術本。タイトルにある「人生で大損しない」という表現の意味が最初分からなかったのですが、読んで「なるほど!」と膝を打ちました。
アマゾンの内容紹介から。
受験に就活、転職に昇進……世の中は意外なほど、文章力を問われる場であふれている。そこをうまくクリアできないと、人生を左右するチャンスを逃すことにもなりかねない。では、相手に「伝わる文章」、試験で高評価を得られる文章を書くためには、いったいどうすればいいのか? 文章指導の達人が、多くの人が陥りやすい間違いを解き明かし、まずは問題をきちんと読むことから始まる「正しい手順」を明快に伝授!
値引はありませんが、Kindle版も出ていますので、ご検討ください!
【ポイント】
■1.内容を理解して、問いに沿った答えを書く小論文にしてもエントリーシートにしても、あるいは、履歴書や各種申請書にしても、「……について述べよ」「……を記しなさい」といった指示があります。先方は「このことを聞きたい」という意図を持って問いかけているのです。先方が「聞きたいこと」と、書かれている内容が違っていれば、「そんなことは聞いていないのに」という反応になります。
実際、大手メーカーの人から聞いたことですが、「大学生から送られてくるエントリーシートを読むと、聞かれていることと違うことを書いている人が多い」のだそうです。そうなると当然のことながら印象はよくないですし、本来伝えるべき自分の思いが伝えられません。(中略)
特に、大学入試や公務員・教員試験は、公的な試験です。公平性が重視されますから、「聞いていることと書いていることは全然違うけれど、面白いことを書いているから合格させよう」という恣意的な採点はできません。書いていることが出題の趣旨からそれていれば、減点になります。
■2.読み誤りの具体例
問 日本の雇用制度の問題点を簡潔に記し、それをどのように改善していくべきか述べてください。この問は「日本の雇用制度の問題点を 簡潔に 記し」とあるわけですから、当然のことながら「日本の雇用制度の問題点」を短めにまとめた上で、「それをどのように改善していくべきか」を詳しく書かなければなりません。しかし、この点を見落として、「日本の雇用制度の問題点」を長々書いて、「どのように改善していくべきか」を簡単に済ませてしまう人がいます。
失敗例:日本の雇用制度の問題点を長々書いて、改善案を簡単に済ませている答案。
■3.聞かれていることの核となる部分は、必ず具体的に書く
問 職場でコンプライアンスを徹底させるためにあなたはどう取り組んでいくか、述べなさい。(中略)この答案では、
「誠心誠意取り組みを尽くし、職場全体でのコンプライアンスへの気運を高めていく」
「コンプライアンスは、社員一人一人の意識を高めることが必要」
「自ら正しい判断ができるように取り組みを進めていきたい」
など、抽象論ばかりが書かれており、「具体的に何をするの?」というところが見えてきません。これでは、出題者が一番知りたい「取り組み」の内容がぼかされてしまいます。大事なところは絶対に抽象論に逃げてはいけません。(中略)
出題で聞かれていることの核となる部分は、必ず具体的に書きます。ここで聞かれていることは、「あなたはどう取り組んでいくか」ですから、「取り組みの中身」が読み手に伝わらないと、全く評価されません。そうならないようにするために、相手の頭の中に、自分がリーダーとして行動している映像がありありと浮かぶ状態にすることが大事です。
■4.文章作成の基本的な手順
では、どのような手順で文章を書いていけばいいのでしょうか。私が提案するのは、以下のステップで進めていくことです。「文章作成の基本的な手順」この4段階で進めていけば、小論文であろうがエントリーシートであろうが履歴書であろうが、説得力のある文章が書けるはずです。200字程度の短い文章から3000字、4000字の長い文章まで対応できます。(詳細は本書を)
1 問題文の趣旨を正確に理解する(「聞かれていること」を整理する・意味を正確に押さえる)
2 問われていることを元に、構成を立てる
3 「主張」「理由」「具体例」を基本に材料を集め、下書きを作る
4 日本語表現に気をつけながら、文章にする
■5.答案の印象を変える技8選(抜粋)
●複数のことを書くときは、カテゴリー分けする部屋の中は整理整頓をしないと、どこに何があるのか分からなくなります。同じように、文章も散らかった状態だと何を言おうとしているのか分かりにくくなります。整理をして書くことが大事です。●大事なこと、効果的なことから先に書く答案で何か複数のことを挙げる場合、どういう順番が良いかを考えて書くようにします。●積極性のある表現、力強い表現で印象づける志望理由書、エントリーシート、考課表などは自分を売り込むための文章ですから、積極性のある表現を使った方が印象はよくなります。こういう場面で遠慮しても意味はありません。●問われていることの答えがどこにあるのか分かりやすく伝える採点者は、問われていることの答えがどこにあるのかに注目しながら文章を読んでいます。答案を書くときは、問いかけの答えを分かりやすく伝えることを心がけましょう。(詳細は本書を)
【感想】
◆冒頭でも触れたように、読み進めるにつれて、納得しまくりの1冊でした。とにかく、文章術本は数多くご紹介してきた私でも、この切り口の作品はお目にかかった記憶がありません。
おかげで下記の「関連記事」でも、厳密には一冊も類書は無かったと思います。
もちろん、それは単に私が一般的な文章術本……いわゆる「てにをは」の話から、「人を動かす」目的を持った文章の書き方まで……しかカバーしていなかったからなのですが。
一方本書は、冒頭のはじめにでも触れられているように、総合入試の小論文や、就職時のエントリーシート、さらには企業における昇進試験の小論文で必要な「文章力」を身につけるためのもの。
むしろ私にとっては、ムスコの中学受験勉強時の、国語の読解問題の解答に近い印象を受けました。
◆というのも、これらはいずれも、上記ポイントの1番目にもあるように、「聞かれていることに正しく答える」ことが必須です。
いくら流麗な文章が書けたとしても、その部分がクリアできていなければ、評価としてはダダ下がりなのは、言うまでもありません。
具体的に、どのようなズレた回答があるか、というと、分かりやすい例の1つが、上記ポイントの2番目。
ここでは「簡潔に記し」という部分を見落としています(実際には意識しないで、書きたいことを書く気も?)。
もっと陥りやすい間違いとして、このようなものも。
例えば「規律ある学校生活のために、子ども達をどう指導するか」といった出題があったとして、それに対して国語の先生から「校外学習やグループ学習を積極的に行う」といった答案が出てきます。「規律ある学校生活」とは、遅刻をしない、授業中におしゃべりをしない、等のルールをきちんと守らせるという意味です。その意味を理解せず、ただ思いつきで「校外学習やグループ学習を積極的に行う」という答案を書いてしまうのです。実際に文章自体は非常にしっかりしたものであっても、問われたことにただしく答えていませんから、答案としては失格でしょうね。
◆また、問われたことに答えているだけでは、あくまで必要最低限であって、それ以上の評価を望むには、さらに工夫が必要です。
その1つが、上記ポイントの3番目にある「具体的に書く」。
これは何も、試験や論文だけでなく、お中元のお礼状であっても考え方は同じです。
……つい先日も、抽象的なお礼状を書いてしまった私としては、冷や汗ものなのですが。
まぁ、お礼状であれば「大事なところ」という部分は特にないものの、上記ポイントのような出題に対する回答としては、キチンと意識しておく必要があるようです。
◆さて、このような考え方が理解できたら、いよいよ実際に文章を書いてみるべし!
そこで活用したいのが、上記ポイントの4番目の「文章作成の基本的な手順」です。
ここでは、サラッと見出しだけ挙げてしまいましたが、本書では練習問題が提示され、それに対して上記の手順を踏んで作成していく模様が、詳細に説明されていました。
……逆に細かくて量が多い分、個々に抜き出すのが不可能だったのですが。
たとえば「練習問題」の「1」と「2」はこんな問題でした。
問 理想とする管理職像を示した上で、あなたはその理想像を実現するためにどのように行動するか、考えを述べよ。(800字程度)
問 あなたがこれまでにリーダーシップを発揮して困難な物事に取り組んだ事例を挙げ、成長できたこと、課題と感じたことを述べなさい。また、その経験を、今後にどう活かせるかについてもあわせて記述しなさい。(1000字程度)似たようなテーマで文章を書く必要がありそうな方は、ぜひご確認ください。
◆さらに本書では、技術論として、上記ポイントの5番目にある「答案の印象を変える技8選」を収録。
ここまで「何を書くか」がメインだったのが、「どう書くか」のお話が展開されています。
こちらも、より「高い評価が得られる」文章を書きたい方なら、必見の内容ではないでしょうか。
そして最後の第5章では、本書の内容の総まとめ的な「練習問題4選」が用意されています。
私はレビューを書く関係で、いちいちワークはしませんでしたが、ここを読み込めば、「問われたことに答える文章術」が身につくことウケアイ。
ご自身の昇進や転職に備えて、必要のある方には本書をぜひ、お目通しいただきたいところです。
「人生で大損しない」テクニックがここに!
人生で大損しない文章術 (新潮新書 1051)
第1講 「書く」ことではなく「読む」ことから始める
第2講 具体性が文章の納得感・評価を決める
第3講 どんな実用文にも対応できる「文章作成の手順」
第4講 答案の印象を変える技8選
第5講 文章術の完全習得を目指す 練習問題4選
【関連記事】
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【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。改訂新版 小さな会社の人を育てる人事評価制度のつくり方【テンプレート・ダウンロードサービス付】
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