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2024年06月20日

【ミス対処】『間違い学:「ゼロリスク」と「レジリエンス」』松尾太加志


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間違い学:「ゼロリスク」と「レジリエンス」 (新潮新書 1048)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事の中でも当ブログ向きの1冊。

過去何冊も「失敗」に関する作品をレビューしてきた当ブログとしては、取り上げないわけにはいきませんでした。

アマゾンの内容紹介から。
手術患者の取り違え、投薬ミスによる死亡事故、手動遮断機の操作ミスで起きた踏切事故――あらゆる「ミス=間違い」は、人が関わることで生じている。しかし、生身の人間である以上、間違いを100%なくすことは不可能だ。なぜ、どのように間違いは起こるのか? そのミスを大惨事につなげないためにはどうしたらいいのか? 世の中にDXが浸透する現状もふまえ、最新の知見をもとに徹底分析。

上記未読本記事の時点では定価販売だったKindle版が、若干とはいえお求めやすくなっています!






【ポイント】

■1.罰則よりも教訓に活かす
 アメリカでは航空機事故の場合に、当事者に対しては免責が与えられる。航空機事故では、コックピットの中で生じたことはそのクルーにしかわからないことが多い。事故の要因を調べるにはクルーに正しく証言をしてもらわなければならない。自分のミスが誘因となって事故が生じた場合もあるからだ。
 その際、そのミスに対して罰が与えられるとすると、自分のミスを隠ぺいしてしまい、ミスを隠すために事実でないことを証言してしまう可能性がある。その結果、本質的な問題が解明されないことがある。すると、潜在的に抱えている問題が解決されない。そして、何も改善されないまま再び航空機の運航が続行されてしまうと、将来的により大きな事故につながる可能性は十分にある。
 1人のパイロットを免責にすることで正しい証言をしてもらう。そう判断をするのが賢い選択である。それによって、将来、大勢の人が遭遇し、より多くの命を失ってしまう可能性のある事故を防ぐことができる。


■2.注意すると改善されるという誤謬
 ただ、私たちの感覚としては、注意することは無駄ではないと思っている。注意をするとしばらくは効果がある。しかし、時間が経つと気が緩んでしまう。だから、注意し続けることが大事だと思ってしまう。
 ところが、ここに誤解がある。注意すると効果があるという誤解だ。確かに、現象としては、ヒューマンエラーが生じたので注意をすると、しばらくエラーは生じなくなる。そして、また時間が経つと何かしら生じてしまう。それは事実である。そのため、注意の効果がしばらくは続いたと思ってしまう。
 それが誤謬なのだ。こう考えるべきである。ヒューマンエラーというのは始終生じているわけではない。ある期間をおいてランダムに発生している。あるときエラーが生じるとしばらくは生じない。それを繰り返している。私たちが注意をするのはエラーが生じてからであるが、「もともと」直後はしばらくエラーは生じない。だからそれは注意をしたからではなく、「もともと」の現象なのである。注意がエラーを減少させたという因果的な関係を信じてしまっているだけなのだ。


■3.電子アシスタントという手がかり
 さきほど、「対象」のところで座席ロック解除の方式を述べたが、正しい座席かどうかのチェックを電子的に行うことは不可能ではない。外的手がかりの分類では「電子アシスタント」である。(中略)
 今、入学試験の出願はほとんどインターネット出願となっており、受験票も受験生が自ら印刷して持参するようなしくみとなっている。そうすると、スマホの受験票という方式も可能である。
 試験会場の座席に受験番号とともにQRコードを貼付しておけば、受験生が座席のQRコードをスマホで読み取ることで、自分の受験番号と合致するかどうかチェックできる。「対象」で述べた椅子のロック機能まで求めなければ、こうしたシステムは技術的には実現可能であり、インターネット出願まで実現できているのであればコストもそれほどかからないだろう。
 さらに受験生によるチェックをシステムと連動させれば、いつも試験監督者が目視で実施している受験生の出欠確認もタブレット上でできることにもなる。


■4.使おうとすると間違いに気づく
 かつて、医薬品の中で、水虫薬と点眼薬を間違える事故が発生していた。どちらの薬も容器をつまんでへこますことで液が滴下するようになっていて、手に持って行いやすいよう、容器自体の形や大きさが類似している。そこで事故を防ぐために、水虫薬には「目に入れないこと」といった表示が目立つように赤い文字で入れられていたり、添付の説明書には注意書きがなされたりしている。
 しかし、表示や文書の場合、見ない可能性がある。そのため事故は起こってしまう。そこで、厚生労働省がメーカーに容器を変えるように通知を出した。水虫の薬では滴下しないタイプのものが販売されるようになった。塗り薬、スプレータイプや、スポンジキャップになっていて患部に押し当てると液が出るタイプなど、眼に差すことはできない形態のものに変わっていった。このようにモノ自体を変えることで間違いを起こさないしくみが作られた。


■5.エラーに気づいてうまく対処できればよい
 道路の走行の話をしたが、道路からはみ出したら自分でわかる。しかし、現実のエラーは道路からはみ出す方向に行ってしまっていることがわからない、実際にはみ出しているのに気がつかない状況である。それを外的手がかりで気づかせ、うまく対処していくことがヒューマンエラー防止には大切なのだ。
 第7章で、外的手がかりには制止、防護、修正という3つの役割があるとした。これらの役割は、エラーが生じることを前提としており、ヒューマンエラーをどの段階で防ぐのかの話だった。そして、事故を防ぐことによって、大きな被害に至らず最終的にうまくいくことをねらいとしている。
 何度でも繰り返そう。ヒューマンエラーをなくすことはできない。とくにエラーを起こしたことに本人は気づけない。だからエラーであることに気づかせて、最終的にうまくいくようになればいいのである。
 人間に求められるのは、ヒューマンエラーを絶対にしないことではない。ITやDXが進展した時代では、機械のほうが正確に効率よくいろいろなことをこなしてくれる。機械的な細かい業務や作業は機械に任せ、人間はもっと大局的な見地から、想定されないことが生じたときにどう対処できるかが求められていると考える。


【感想】

◆私のような「失敗学」好きにとっては、ツボな作品でした。

しかも、失敗の「原因」と「対応」の双方ともに、しっかり掘り下げているという1冊。

特に本書で大きく扱われているのが、いわゆる「ヒューマンエラー」です。

今まで意識したことが無かったのですが、このヒューマンエラーとは、システムと人間の両者にミスが起こりうる場面で、人間がおかしたエラーを指すもの。

確かに機械の出番がないテニスのストロークミスはヒューマンエラーとは普通言いませんし、もちろん、人間が全く関与しない状況ならば、そもそも「ヒューマン」がありません。


◆一方で、もしヒューマンエラーがあったら、そのエラーした人を罰したり、もしくはエラーした本人も「今後は気をつけなければ」と思ってしまうのではないでしょうか。

ここで目からウロコだったのが、上記ポイントの1番目のアメリカの航空機事故のお話。

エラーを罰するどころか、免責を与えるというのは、日本ではあまり考えられないやり方です。

ただ、確かに被害者の家族の感情面を除けば、できるだけ詳しく(=自分の責任が明確になろうとも)証言してもらった方が、事態の究明や、今後の対応に役立つことは間違いないハズ。

また、「気をつける」のもあまり意味がないことを示しているのが、上記ポイントの2番目です。

これはいわゆる「平均への回帰」と呼ばれるもので、新人王を取った選手がよく言われる「2年目のジンクス」などが代表ではないか、と。

結局「気をつけた」ところで、エラーは起きてしまうのですから、別の対策を考える必要があります。


◆そこで本書では第4章以降で、エラーを防ぐ仕組みを検討。

たとえば上記ポイントの3番目では、受験生の座席間違いを防ぐ仕組みを、電子的に行うやり方を紹介しています。

もちろん、全員がスマホ持ちであったり、当日の故障やスマホ忘れに対処する必要はありますが、エラーを防ぐ仕組みとしてはなかなかのものだと言えるでしょう。

もっとも、こうしたスマホ持ち込みによって、問題を「Yahoo!知恵袋」に質問する受験生もいたりしましたが。

また、現在の大学入学共通テストの受験番号には、チェックデジットなる仕組みが導入されているとのこと。

チェックデジット - 成績処理|株式会社DCI

これも受験から縁遠い私は全く知りませんでした。


◆さらにもっと徹底するためには、物理的にエラーを防ぐこと。

上記ポイントの4番目の水虫の薬のお話は、目薬方式の時期の薬を知らなかったのですが、なるほど、と納得しました。

……と言いますか、水虫の薬を目に点したら、失明しかねませんかね??

そういえば、私はメガネのくもり止めに、この商品を使っているのですが、メガネのレンズに数滴垂らすタイプなので、ボーっとしていると目薬と勘違いしそうです。

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玉川衛材 フィッティPLUS+ メガネのくもり止め 8ML

なるほど、スプレー式の方が良かったのか……。


◆そして上記ポイントの5番目は、本書のサブタイトルにもある「レジリエンス」にも通じること。

エラーを完璧に防ぐのではなく、多少なりとも起こりうる前提で設計し、どこかの段階でリカバリーして最終的な被害を防ぐというのが良い、というのが本書の主張になります。

実際、電子器具の端子はサイズや形が異なると、差し込むことができませんが、差す段階まで来てますから、ある意味エラーが起きているワケで。

それでも入らなかったりブカブカだったら、間違いには気づきますし、大事にも至りません。

いずれにせよ、このようにヒューマンエラーが起こるのは想定内にして、大きな問題にならないよう、対処していきたいものです。


ミスしがちな方なら要チェックな1冊!

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間違い学:「ゼロリスク」と「レジリエンス」 (新潮新書 1048)
はじめに
第1章 ヒューマンエラーがもたらす事故
第2章 ヒューマンエラーとは
第3章 エラーをした人は悪いのか?
第4章 外的手がかりでヒューマンエラーに気づかせる
第5章 外的手がかりの枠組みでエラー防止を整理
第6章 そのときの状況がエラーを招く
第7章 外的手がかりは使いものになるのか
第8章 IT、DX、AIはヒューマンエラーを防止するのか
第9章 ゼロリスクを求める危険性
おわりに


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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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