2024年06月10日
【オススメ】『BIG THINGS どデカいことを成し遂げたヤツらはなにをしたのか?』ベント・フリウビヤ,ダン・ガードナー
BIG THINGS どデカいことを成し遂げたヤツらはなにをしたのか?
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「サンマーク出版 ビジネス・実用書セール」の中でも大人気の1冊。巨大プロジェクトの成功と失敗の秘訣を、豊富な事例をもとに詳細に明かした注目作です。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
本書の著者は、世界中の1000億ドルを超えるメガプロジェクトの「成否データ」を1万6000件以上蓄積・研究するオックスフォード大学教授。
メガプロジェクト研究において世界最多引用を誇り、アメリカ・イギリス・デンマーク・スイス・オランダ・中国など官民両プロジェクトで助言を求められ、国策に影響を与えるビジネスとアカデミズムの巨星。
予算内、期限内、とてつもない便益――
3拍子揃ったプロジェクトは0・5%のみ。
計画倒れか、爆益か。
頭の中のアイデアから超益を生む「BIG THINGS」を実現する方法を解き明かす!
中古に送料を足すと定価を超えますから、このKindle版が900円以上お買い得です!
【ポイント】
■1.あなたの予測は常に「ベストケース」を想定しているでは、私たちは実際にどうやって予測を立てているのだろう?
まず、家で仕事をしている自分の様子を頭に描く。そしてそれをもとに、週末どれだけの仕事ができるかをすばやく直感的にイメージする。それは本当らしく感じられるから、それをそのまま予測にする。
だがその予測は間違っている可能性がとても高い。なぜならこのとき思い描くのは、仕事をしている「自分の」姿だけだからだ。フォーカスが狭いせいで、働くあなたを邪魔する周りの人やものごとはすべて視界から消える。
言い換えると、あなたは「ベストケース(最良の場合)」のシナリオを想像している。(中略)
ベストケース・シナリオを予測の基準にするのは、大きな間違いだ。ベストケース・シナリオが実現することはめったにないし、その可能性すらないこともある。週末にあなたの仕事時間を奪うかもしれないできごとは、病気や事故、不眠、旧友からの電話、家族の急用、配管の故障等々、数限りなくある。
つまり、週末に起こり得るシナリオは数え切れないほどあるが、その中で、あなたの仕事時間に食い込むようなできごとがまったく起こらないシナリオはたった1つ、ベストケース・シナリオだけだ。だから月曜の朝になって、思ったほど仕事が進んでいなくても、驚くに当たらない。
■2.緻密な計画がカギ
ゲーリーがグッゲンハイム・ビルバオの計画立案で実現した緻密さと精度は、建築の世界では──またそれ以外のどの世界でも──当時も今もきわめて異例である。私はこれまでゲーリーと、彼のスタジオや、オックスフォード大学での招待講演、それに道端でも、何度か話をしているが、彼はつねづね緻密な計画がカギだと言っていた。
「私たちの会社では、クライアントの予算と条件に合ったものをつくれるという確信が持てるまでは、建設開始を許可しない。利用可能なあらゆるテクノロジーを駆使して、構造要素をできるだけ正確に定量化することで、不確定要素を減らしているよ」
グッゲンハイム・ビルバオとシドニー・オペラハウスの計画立案の違いは、いくら強調しても足りない。前者はプロジェクトを成功させる「ゆっくり考え、すばやく動く」の模範例で、後者はプロジェクトを失敗させる、「すばやく考え、ゆっくり動く」の悲劇的な例である。その意味で、これらの傑作の物語は、建設だけにとどまらない、多くのことを教えてくれる。
■3.永遠の初心者症候群
ここまで見てきたすべての不合理の集大成が、オリンピックだ。
1960年以降、オリンピック──パラリンピックと合わせて6週間にわたって行われる、4年に1度のスポーツの祭典──の開催費用は爆発的に高騰しており、現在では数百億ドル規模にまで膨らんでいる。データが入手可能な1960年以降の夏季・冬季のすべての大会で、開催費用が予算を超過している。私とチームが調査した20超のプロジェクトタイプのうち、コスト超過率がオリンピックを上回るのは、核廃棄物貯蔵だけである。(中略)
オリンピックには常時開催地というものがない。代わりに国際オリンピック委員会(IOC)は、大会ごとに開催地の立候補を募り、大会を地域から地域へ、大陸から大陸へと移動させることを好む。
この方法はオリンピックのブランドを宣伝するにはうってつけだから、IOCの利益に適っている。ひとことで言えば、政治的に好ましい。
だがその反面、開催の権利を勝ち取った都市と国は、開催経験をまったく持たないことになる。たとえ過去に開催したことがあったとしても、はるか昔のことだから、関係者はすでに引退したか死んでいる。
■4.過去の「同じようなこと」を参照する
あなたのキッチンリフォームの参照クラスは何だろう? 「キッチンリフォーム」だ。まず、過去のキッチンリフォームの実コストの平均値を求めよう。これをアンカーにする。あなたのプロジェクトのコストが、参照クラスの平均値よりも高い、または低いと考えてよい十分な理由がある場合は──たとえば標準品の3倍も値が張る高級なカウンタートップや備品を使っているなど──それに応じてアンカーを調整しよう。これで見積もりのできあがりだ。(中略)
そして調整を行うのは、行うべき確固たる理由があるときだけ、つまり調整の必要性を裏づけるデータが存在するときだけにしよう。判断を迷ったら調整しなくていい。参照クラスの平均値があなたのアンカーになり、アンカーが予測になる。とても単純だ。だが単純なことはよいことだ。バイアスを排除できるのだから。
私はこの予測プロセスを、「参照クラス予測法(Reference Class Forecasting、RCF法)」と名づけた。(中略)
RCF法の精度はずば抜けて高い。一般的な予測とRCF法による予測の精度の差は、プロジェクトタイプにもよるが、私がデータを収集したプロジェクトタイプの半数以上で、RCF法のほうが 30%ポイント以上精度が高い。
■5.小さいものを集めて巨大にする
「小さいもので大きいものをつくる」という優美なアイデアを表す無骨な用語が、「モジュール性」だ。1つのレゴブロックは小さいが、9000個以上集まれば史上最大級のレゴセット、「コロッセオ」になる。これがモジュール性だ。
周りを見回せば、モジュール性はどこにでもある。レンガの壁は数百個のレンガでできている。ムクドリの群れは単体の生き物のように動くが、数百、数千羽で構成される。(中略)
モジュール性の中核にあるのが、「反復」だ。レゴブロックを1個置こう。それにもう1個のレゴをはめよう。また1個。さらに1個。反復、反復、反復。パチッ、パチッ、パチッ。
反復はモジュール性の真髄である。反復は実験を可能にする。うまくいったことは計画に取り入れよう。うまくいかなかったら、シリコンバレーで言うように「さっさと失敗」して、失敗の原因を分析、学習し、計画を調整しよう。あなたは賢くなり、設計は改善される。
【感想】
◆引用のボリュームが多くて申し訳ありません。途中を端折ると分かりにくいので、ガッツリ抜き出したのですが、これでも捕捉しないと微妙な部分がチラホラと。
たとえば個々の事例について、本書では詳細に記されているのですが、記述部分以降は、それらを知っている前提で解説がされていますから、こちらで簡単に説明を。
たとえば上記ポイントの2番目に出てくる建築物である「グッゲンハイム・ビルバオ」と「シドニー・オペラハウス」についてだと、後者なら建物の外観イメージが分かる、という人は結構いらっしゃると思います。
シドニー・オペラハウス - Google 検索
ただし、この「シドニー・オペラハウス」について、本書ではこう言われています。
シドニー・オペラハウスの建設は、正真正銘の大混乱に陥った。次から次へと問題が発生してコストが膨張し、当初5年の予定が14年を要した。総工費は当初見積もりの15倍を超えたが、これは1つの建造物として史上最大級の超過率である。
◆一方、前者の「グッゲンハイム・ビルバオ」は、私もお恥ずかしながら外観を知りませんでしたが、こんな感じ。
グッゲンハイム・ビルバオ - Google 検索
私のような素人目には、独創的な外観、という意味で、シドニー・オペラハウスと似たような印象を受けますが、本書ではこう言われています。
対して、グッゲンハイム・ビルバオは、予算内かつ工期内に完成した。正確に言うと、コストは予算を3%下回った。また期待を上回る便益をもたらし、1章で見た、予算、工期、便益の3拍子揃った、希有な「0.5%」のプロジェクトの1つに数えられる。そして本書では、「グッゲンハイム・ビルバオ」ほか、上記ポイントの2番目で言われている「ゆっくり考え、すばやく動く」ことの大切さを訴えると同時に、その逆の「すばやく考え、ゆっくり動く」方針で悲惨な目にあったプロジェクトが、いくつも登場する次第。
たとえば、「すばやく」(安易に)考えることで、まず工期や費用等の見積もりが、グタグタになってしまいます。
ただ、それは他人事ではなく、私たちにとっても同様であり、たとえば上記ポイントの1番目を読んでいただけば、なぜ予測が外れるかも腑に落ちるのではないか、と。
……確かに私もどこかに出かけるにせよ、「何も起こらない」前提で時間を計算していますから、忘れ物が1つあっただけでも数分遅れて当たり前でした。
◆さらに、予定どおりにいかないものの代表が、上記ポイントの3番目のオリンピックです。
実際、どこの国(都市)も初めての経験ないしは、大昔の経験しかありませんし、たとえ前回の当事者が生きていても、当時とは技術が違い過ぎて参考にならなさげ。
おまけに、期日だけはしっかり決められていますし、それを死守するためには、お金をバカスカつぎ込むしかありません。
それとこれは、公共施設等にありがちな、お役所やらお偉いさんのプライド等々……。
なんでもコスト超過率トップの1976年夏のモントリオール大会は、予算を720%超過したのだそうです。
本書ではこのコスト超過の元凶である、メインスタジアムの設計から完成までの経緯が記されているのですが、とにかく悲惨で、結局開会式にもスタジアムの屋根や売り物のタワーが間に合わなかったようで(詳細は本書を)。
◆それもこれも、まずは見積もりが甘すぎるから。
では逆に、どうすべきかというと、上記ポイントの4番目にあるように「過去のデータの集まり」である「参照クラス」をアンカーにして、適切な見積もりを立てること。
これは例えば、伝記作家のロバート・カロが、ニューヨーク市の都市計画を40年以上も支配していたロバート・モーゼスの伝記を書こうとした際のエピソードでも明らかでした。
カロは今までの自分の調査報道記者としての経験から、長くても1年で終わると思った執筆作業が、5年かかっても終わらなかったとのこと。
悶々と苦しんでいたカロですが、たまたま作家専用の執筆室で出会った歴史的伝記の作者2人に、自分が5年かかっても終わってないことを告白すると、2人は驚くどころかうなずきます。
「ああ、そんなに長くないね」と1人が言った、「私はジョージ・ワシントンの評伝に9年かかっているよ」。もう1人は、フランクリンとエレノアのローズヴェルト大統領夫妻の伝記を書くのに7年かかったと打ち明けた。励まされたカロは結局7年かかって書き上げ、その作品はピューリッツァー賞を受賞し、ベストセラーとなったそうです。
The Power Broker: Robert Moses and the Fall of New York
◆そして計画を立てた後の実行面では、「反復」が大きなキーポイントとなります。
上記ポイントの5番目では、具体例が挙げられていませんが、有名なものとしてはエンパイア・ステートビルもそうでした。
パーツの種類と複雑性を最小限に抑え、各階の設計も可能な限り同一にした。おかげで作業員は同じ作業の反復を通じて学習することができた。つまり、 作業員は102階建てのビルを1個建設したのではなく、1階建てのビルを102個建設したのだ。また、具体的な建築物は登場しませんが、モジュールという概念から思い浮かぶのが「太陽光発電」でしょうか。
実際、この太陽光発電や風力発電は「モジュール型」であるがゆえ、スピード、コスト、リスクのすべての面で、他のプロジェクトより有利なのだそうです。
……実はウチのムスコは、将来、太陽光発電関係を専攻したいと言っていたのですが、環境破壊や耐久性の問題もあって、個人的にはネガティブな印象を持っていました。
ただ、こういったプロジェクトとして評価した場合、意外と手堅いのかもしれませんね(親馬鹿)。
いずれにせよ本書は、家のリフォームから巨大建築物まで具体例も豊富で、楽しみながら学べました!
これはオススメせざるを得ません!
BIG THINGS どデカいことを成し遂げたヤツらはなにをしたのか?
序章 "夢のカリフォルニア"
1章 ゆっくり考え、すばやく動く
2章 本当にそれでいい?
3章 「根本」を明確にする
4章 ピクサー・プランニング
5章 「経験」のパワー
6章 唯一無二のつもり?
7章 再現的クリエイティブ
8章 一丸チームですばやくつくる
9章 スモールシング戦略
終章 「見事で凄いもの」を創る勝ち筋
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【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。92歳、広岡達朗の正体
おなじみ広岡達朗さんをテーマにした作品なんですが、もう90歳を超えてらっしゃるとは!?
中古があまり値下がりせず定価並みのお値段ですから、Kindle版が750円以上お買い得です!
【編集後記2】
◆一昨日の「サンマーク出版 ビジネス・実用書セール」の記事で人気が高かったのは、この辺の作品でした(順不同)。BIG THINGS どデカいことを成し遂げたヤツらはなにをしたのか?
読書脳
大丈夫なふりして生きてる人の体に効く こわばり筋ほぐし
100年足腰
よろしければご参考まで!
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