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2024年06月07日

【読書の本質】『人生を変える読書 人類三千年の叡智を力に変える』堀内勉


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人生を変える読書 人類三千年の叡智を力に変える


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、昨日ご紹介した「Gakken 夏の特大フェア」からの注目作。

ベストセラーとなった『読書大全』の著者である堀内勉さんが、その続編的な位置づけで書かれた作品です。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
答えのない時代だからこそ、人生の灯火として「読書」をするべきである! 『読書大全』の著者だから知っている、精神的支柱をつくり、教養を血肉に変える「読書の方法」とは?
読書を通じてあなたがあなた自身についての理解を深めることは、あなたの人間全体についての理解が深まることでもあります。そしてそれは、あなたの生き方や他者との交じわり方に大きな影響を与えることになるはずです。(おわりにより)

中古があまり値下がりしていませんから、このKindle版が800円弱お買い得です!





Reading a book / ckaroli


【ポイント】

■1.「考える」ための灯火としての読書
 ものを考えるために、私たち人類は、文字と本というものを発明しました。そして私は、読書こそが、「考える材料」を集め、「考える枠組み」を構築する手段としてもっとも優れたものなのではないかと考えています。
 本を読めば、人間にはじつにさまざまなものの見方や考え方、価値観があることがわかり、それら人間のさまざまな思考の軌跡を、読書を通じて容易に追体験することができるからです。
 そのようにして、「考える材料」を自分の中にどんどんインプットし、自らの血肉としていくことで、自分の頭で「考える」ためのベースができていきます。
 そうした「考える」ための指針、あるいは自分を導いてくれる「灯火」として、読書を活用すればよいのです。


■2.「ネットワークの節目」となる本を読む
 東京工業大学の橋爪大三郎名誉教授は、『正しい本の読み方』(講談社現代新書) の中で、本と本はネットワークを築いていると述べています。
 人と人がつながってネットワークを築いているように、本にもネットワークがあり、一冊の本にはその本を生み出した別の本があり、その別の本を生み出したさらに別の本が存在します。なぜなら、本を書く著者は多くの場合、別の本を何十冊、何百冊と参照したうえで、新しい本を書くからです。
 つまり、本の書き手は、同時に読み手でもあるということです。
 そこで橋爪名誉教授は、本を選ぶときは、その本が持つネットワークの構造を理解し、「ネットワークの節目」となる本を読むことがポイントになると述べています。
 要するに、本というものは、まるで脳細胞のようにすべてがネットワークでつながっていて、その中でも相対的に重要な本とそうでもない本があるということです。


■3.「アンチライブラリー」の勧め
『ブラック・スワン──不確実性とリスクの本質』(ダイヤモンド社) で有名な、リスクや不確実性の研究者であるナシーム・ニコラス・タレブは、『薔薇の名前』(東京創元社) で有名なイタリアの小説家ウンベルト・エーコが、自宅に約3万冊の本を持っていたことを挙げて、「読んでいない本」というのは、「自分がまだそれを知らないこと」を思い出させてくれる「アンチライブラリー(antilibrary)」だと述べています。
「アンチライブラリー」という造語は、自分が知っていることと同時に、自分が「何を知らないのか」を把握しておくことの重要性を言葉にしたものです。つまり、「自分が読んでいないものを含めて、そこに本がある」という事実を示してくれるのです。
 この「アンチライブラリー」のポイントは、「買ったのに読んでいない本がたくさんあることに罪悪感を持つことなく、関心がありそうな本は手当たり次第に買うべき」だということです。


■4.筋の悪い本には近づかない
「良い本」と「悪い本」の見分け方というのは、それこそ教養を身につけていく過程で自分なりの機軸を持たなければ、具体的な判断が難しいのですが、まずは頭で考える前に、自分の感性を信じて「良い」「悪い」を感じてみてください。ソクラテスが言っているような、「善い生き方」という視点から見て、それが本当に「善い」ことなのか。
 ここで一点だけ補足しておきますと、「悪い本」とは「自分の考えにそぐわない本」のことではありません。私が言っているのは「筋の悪い本」ということです。自分の考えとは違う内容の本を敬遠し続けるのであれば、それはたんなる「食わず嫌い」でしかありません。(中略)
 そうした前提で、「筋の悪い本」に話を戻しますと、人間は社会的存在であり、また自分が思う以上に弱い存在ですから、簡単に人や本から影響を受けてしまいます。ほかの人によい影響を与えられるような機軸のある人になれれば、それは理想かもしれませんが、その前にまず他人から悪影響を受けないように意識することが大切なのです。


■5.本は手段のひとつ
世の中には「本を読まないとダメだ」というようなことを言う人がいますが、そこまで本を読むことが絶対的によいことだと決めつける必要もありません。本当に素晴らしい人との出会いが、何百冊、何千冊の本に匹敵するほどの影響力を持つこともあります。
 ですから、本は手段のひとつだと考えればよいのです。どうすればたくさん読めるのか、どうすれば速く読めるのかということを追求するのは、本をたくさん読むことがよいことで、本を読むのが遅いのは悪いことだというような、特定の価値観という枠組みにとらわれてしまっているということです。
 これに対して、特定の枠組みにとらわれなくなること、自由な発想や生き方を獲得していくこと、その中で自分なりの基軸を確立すること、これこそが読書の価値なのです。


【感想】

◆まず、最初にお話ししておかねばならないのですが、私は冒頭で触れた本書の前作的な作品である、『読書大全』を読んでおりません。

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読書大全 世界のビジネスリーダーが読んでいる経済・哲学・歴史・科学200冊

「最強のブックガイド」と呼ばれ、この手の書籍にしては異例の3万5000部突破しており、本来ならば当ブログとしても読まねばならないところです。

ただしこちら、単行本だと488ページもあり、いわゆる「鈍器本」と呼ばれるモノ。

一晩で読み切れない分厚い作品は、ただでさえ睡眠時間が少ない私が仕事サボらざるを得ないので、泣く泣くスルーしておりました。

ところが最近は、この本のほか、今まででしたら厚すぎてあまり売れなかった、下記のような鈍器本まで売れ行き好調なのだそうです。

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【ビジネス書大賞特別賞受賞作】哲学と宗教全史

B08DR7YL5J
独学大全――絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法

たまたまなのか、この2冊はどちらもダイヤモンド社さんが版元なのですが、普通だったら尻込みするような企画やボリュームでも、しっかり販売につなげているのは流石だな、と。


◆さて、こうした硬派な風潮を反映してか、本書はタイパやコスパとは無縁の、「骨太の読書」を推奨しています。

私も記事タイトルで、普段だったら多用する「読書術」を使わなかったのも、実際に本書が一般的な「読書術本」ではないから。

たとえば、序章の「自分を形づくる読書」から抜き出した、上記ポイントの1番目でも、読書の目的が「情報を得る」ことではなく、「考える」ためにあることを示しています。

一方で、堀内さんのもとには講演会やセミナーのたびに「どんな本を読めばよいですか?」という質問が寄せられるのだとか。

これはもちろん「その人それぞれによって違う」のは当然あるにせよ、その前提となる「自分自身がなにものであるか?」という答えも、読書がヒントとなって見えてくる次第。

……結局、読書もトライ&エラーが必要なんですね。


◆続く第1章の「人生を変える読書」でも、読書の本質的なお話が登場。
「基礎体力」を鍛えるための読書が必要
毎日繰り返し良書に触れることで、次第に心が鍛えられていくはず
といった、パンチラインのようなフレーズに、思わずハイライトを引いてしまいました。

とはいえ、当ブログ的にオイシイのは、上記ポイントの2番目の「『ネットワークの節目』となる本を読む」という考え方でしょうか。

具体的に本書でも、以下のような書籍群が関連付けながら紹介されていたのは、この「本と本のネットワーク」のことなのだとか。

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アリストテレス ニコマコス倫理学 上 (岩波文庫)
 ↓
B0CF4S6YMD
政治学(上) (光文社古典新訳文庫)
 ↓
B00QT9XAU8
アラン 幸福論 (岩波文庫)
 ↓
B00J4G0QP0
幸せのメカニズム 実践・幸福学入門 (講談社現代新書)
 ↓
B0B68JML6B
「みんな違ってみんないい」のか? ──相対主義と普遍主義の問題 (ちくまプリマー新書)
 ↓
4788508125
ヒューマン・ユニヴァーサルズ―文化相対主義から普遍性の認識へ

なお、堀内さんの『読書大全』でも、紹介する本ごとに、それぞれの「参考図書」を載せたところ、読者から好評だったのだそうです。


◆また、第2章の「生きるための読書」からは、上記ポイントの3番目をセレクト。

私はタレブの本も、ウンベルト・エーコの本も読んだことはありませんが、ここで言う「アンチライブラリー」って、俗に言う「積読」のことやん? と思ったら、本書でもその旨触れられていました。
 自分の関心がある本は迷わず買っておき、読む暇がないなら読まずに積んでおく。これはいわゆる日本語で言う「積ん読」のことであり、この言葉は、最近海外でも「Tsundoku」として少しずつ知られるようになっています。
海外でも「Tsundoku」なんて言われてるとは知らなんだw

でも確かに私も、Kindleセールで本を買うことは多いですし、その中でも「Kindle日替わりセール」は、セール期間中のレビューは間に合わないので、とりあえず買うだけ買っとく、みたいな感じです。

一方、上記ポイントの4番目の「筋の悪い本」のお話は、第3章の「好きから始める読書」からのもの。

具体的には、暴露本や芸能スキャンダルのような記事を指すそうなのですが、避ける理由は「負の感情を増幅させる」「自分の中の『知りたい』という欲望を掻き立てるだけ」等々だから。

たとえば堀内さんにとっては、この本が「筋の悪い本」だったのだそうです。

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わが闘争(上下・続 3冊合本版) (角川文庫)


◆そして上記ポイントの5番目は、第4章の「対話としての読書」から抜き出しました。

「特定の枠組み」の中に「どうすればたくさん読めるのか」「どうすれば速く読めるのか」とあって、当ブログ的には耳イタイところ。

なお、ここのお話に限らず、本書はハック的な読書へのアプローチを極力避けて、自分自身を高めるために読書をするよう繰り返し説いているのが印象的でした。

それを含め、今回の記事では、できるだけ当ブログの路線に沿った部分を上記ポイントで拾ったのですが、いざ本書を読んでみたら、もっと濃くて深い、と感じられる方が多いかも。

そういう意味では、まさに本書をじっくり読むことで、「『基礎体力』を鍛える読書」ができると思います。


精神的支柱をつくり、教養を血肉に変えるために読むべし!

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人生を変える読書 人類三千年の叡智を力に変える
序 章 自分を形づくる読書
第1章 人生を変える読書
第2章 生きるための読書
第3章 好きから始める読書
第4章 対話としての読書


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【読書術】『忘れる読書』落合陽一(2022年10月29日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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タクシードライバーぐるぐる日記

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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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