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2024年06月04日

【BPR】『ホワイトカラーの生産性はなぜ低いのか 日本型BPR 2.0』村田聡一郎


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ホワイトカラーの生産性はなぜ低いのか 日本型BPR 2.0


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事の中でも特に人気の高かった、システム系の働き方本。

よく「日本の生産性は低い」と言われますが、その理由が分かりやすく解説されており、かつ、その改善策まで提言されている作品です。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
トヨタ生産方式に代表されるカイゼンによって、ブルーカラーの現場では生産性アップが進んでいるのに対し、ホワイトカラー業務の生産性は、思うように改善されていない。
なぜ、日本企業のホワイトカラー業務は効率が悪く、生産性が低いのか。
その理由は、多くの日本企業、とくに経営者や上級管理職が、「ホワイトカラーの生産性を高める方法」を知らないことにある。
ブルーカラー業務に求められるのは、一定の品質のモノを大量に生み出すことであり、業務の一部を機械化するなどして、生産性が劇的にアップした。
ところがホワイトカラー業務では、そうはいかない……。
本書ではホワイトカラー業務の特性を読み解きながら、生産性が低い理由と、そこから脱却するための手法、そして、組織全体を成長させ、変革させるためのアプローチを解説する。

上記未読本記事の時点と比べて、Kindle版が定価から値下がりしてお得になっています!






Accounting Binder Cover / sopsal


【ポイント】

■1.デジタルが引き起こした生産性革命
 ではその90年代後半〜2000年頃に、世界的に何が起きたのか? 「デジタル」によるホワイトカラーの生産性革命である。(中略)
 むろん、人間の仕事のすべてをデジタルが代替できたわけではない。ことに、モノを扱うことが中心であるブルーカラーの職場では、当初はさほどのインパクトはなかった。
 一方、情報を扱うことが中心であるホワイトカラーは、デジタルの優位性を生かしやすかった。とくに、「定型化」することができるタスクは、ソフトウェアによってほぼ「自働化」できる。
 そこで欧米企業の経営者は、それまでホワイトカラー社員がやっていたタスクのうち、定型的な部分から少しずつ剥がして、ソフトウェアに渡していった。もちろん最初から全自動化できたわけではないが、デジタルの処理能力の伸びとともに少しずつ、デジタルに任せられる割合が増えていった。
 するとホワイトカラーは、新規事業の創造、新製品の開発、顧客への高度な対応など、ヒトにしかできない、付加価値の高い非定型な業務に、より多くの時間を振り向けることができる。結果、ホワイトカラー1人あたりの労働生産性は高まる。


■2.ヒトにやらせてはいけない業務
 どんな作業ならソフトウェアにやらせることができるのか? この問いにはいろいろな答え方ができるが、一番分かりやすいのは、「パッケージ・ソフトウェアによって自働化できる業務」だ。PLMやCRMなどさまざまなパッケージ・ソフトウェアが存在しているが、ここでは一例としてERP(統合基幹システム) を取り上げる。(中略)
 要は、ERPが提供している機能なら、ERPにやらせることができる。ということは、ERPがやれる定型業務(をホワイトカラー社員にやらせること) の価値はゼロになった。だから欧米企業はこぞってERPを導入して、その部分をヒトから剥がしてERPにやらせ、ホワイトカラー社員にはそれ以外の非定型業務をさせるようになっていったのである。
 Excelが存在しているがゆえに、ソロバンや電卓での計算をさせなくなった、のと(個人レベルと組織レベルの違いはあれど) 同じ構図である。


■3.ホワイトカラーも「ジャスト・イン・タイム」に
 たとえば一番分かりやすい、経営会議資料に載る「先月の実績」数値の報告、を考えてみよう。あなたの会社で、世界各国のオペレーションの結果を月次でとりまとめ、経営会議資料として報告されるまでのリードタイムはどのくらいだろうか? 数週間かかっている、というケースが多いのではないだろうか。(中略)
 月1回の経営会議で報告を受け指示を出しているということは、経営判断のタイミングは月に1回、年12回しかないことになる。別の言い方をすれば、「1カ月前の情報」を基にして判断し指示を出していることになる。あなたは1カ月前の新聞を読むだろうか? なぜ経営会議は、1カ月前の情報でヨシということになっているのか?
 一方ERPを正しく導入しているあなたのライバル企業は、バケツリレーのリードタイムはゼロだ。つまり月末を待つまでもなく、毎日いつでも、1秒前の時点での最新の状況を見て、必要なら現場に指示を出すことができる。つまり「今日の情報」を基にして経営判断を下すというサイクルを月に30回行えることになる。


■4.業務で扱うモノの違い
 ブルーカラーが従事している作業の大半は、「フィジカルなモノ」を対象としている。そしてそれは、ごく一部の例外を除き、「多数の」「均質な」モノである。(中略)
 それに対して、ホワイトカラーが従事している作業の大半は、「情報」を対象としている。そして情報には、モノと決定的に違う点がある。求められているのは「できるだけ有用な」情報が「ひとつ」だけである(「多数」作る必要がない)、ということだ。(中略)
「一定の品質のモノを多数作る・届ける」という業務と、「できるだけ有用な情報をひとつだけ作る・届ける」という業務は、お互いにまるで違う。ということは、それをうまく行うための方法論もまた異なるはずである、ということ自体にも納得していただけることだろう。


■5.正しい問いの立て方
「トレードオフがある前提で、定型業務はすべてERPにやらせることによって、現在の2分の1の工数および2分の1のリードタイムで、やれる方法を考えてください」です。当社の場合、「少人化」の前に人手不足を解消しなくてはなりませんので、まず2分の1の「工数」をターゲットとし、さらに3分の1、4分の1……を目指します。
 これを少しブレイクダウンするなら、
・定型処理はすべてERPで自働化できるようにプロセスを見直してください
・やれないことは、どういう条件付きなら廃止できるか考えてみてください
・どうしても廃止できない、というプロセスがあったら教えてください(その対処は個別に検討しましょう)
 です。現行業務プロセスに合わせてシステムを見直すのではなく、システムに合わせて現行業務プロセスを見直し、人から剥がすのです。


【感想】

◆薄々と感じてはいたのですが、やはり日本の生産性の低さは、私がかつていたような、一般企業のホワイトカラー部門に原因があることがよく分かりました。

一方で、海外の国の生産性は、日本に比べて高いのも、日本とは逆に、ホワイトカラーの生産性が高いことが要因とのこと。

その辺の概略が述べられているのが、第2章から引用した、上記ポイントの1番目です。

結局本書のテーマである、「それまでホワイトカラー社員がやっていたタスクのうち、定型的な部分から少しずつ剥がして、ソフトウェアに渡していった」というのを、海外では長年かけてやってきた次第。

かたや日本は、というと、部分最適が全体最適に必ずしもなりえない場合、海外ほど経営層が「剛腕」ではないため、トップダウンでの導入が困難でした。。

さらには、合理化されてなくなる仕事に部門に固執して反対する人や、終身雇用の問題もあって、技術の進歩があったにもかかわらず他国に比べて、生産性が伸びなかったという。


◆では具体的にどんな業務をソフトウエアにやらせるか、について触れられているのが本書の第3章です。

上記ポイントの2番目はここから引用したのですが、本書内で何度も出てくる「ERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)」なる単語を私は知りませんでした(恥)。

企業資源計画 - Wikipedia

そしてこのERPに代用させる業務として、具体的にこの辺が挙げられています。
 単なる「集計」だけではない。たとえば 在庫の管理、生産量の管理、売上・利益の管理、請求・入金の管理、購買管理、人事管理……
なるほど、ほとんどの事務職の業務は激減ないしは消滅しそうな気が。


◆おまけにこれは単なる代用レベルではなく、より付加価値が高くなっている、というお話が上記ポイントの3番目。

これは本書の第4章から抜き出したもので、人力でチカラワザで作っていた時と、レベルが違う資料となっているのが、お分かりになるのではないでしょうか。。

しかも従来は、各部門から上がってきた数字を上の部門が取りまとめて集計していた(「Excelのバケツリレー」なんて言葉初めて知りました)ので、ミスもあれば時間もかかっていたのは明らかです。

それは生産性も上がりませんよね。

実際私も会社員時代、海外の国ごと、製品ごとで、受注から売上、入金まで管理するグループにいましたが、製品によって使っている管理システムが違う(製造事業部が違うため)ため、システムの統合はできていませんでした(さすがに今は違うでしょうけど)。


◆また、上記ポイントの4番目は、第5章から引用しました。

こちら、ブルーカラーとホワイトカラーの違いを端的に表しており、個人的には目からウロコ。

特にホワイトカラーの作るものが「ひとつだけ」というのは、かなりのキモだと思います。

しかも、この情報の価値と、それに投入したホワイトカラーの作業量(時間)には、実はほとんど関係がありません。

つまり、うまくいけば、非常に生産性を高くできるのですが、逆にいくら時間をかけても価値がない可能性もあるという。

ここも生産性を考える上で、非常に大事なお話だと思います。


◆なお、本書の第7章では丸々1章を費やして、本書のタイトルにもある「日本型BPR 2.0」を、実際に導入した企業のケーススタディを紹介。

実はこの第7章が非常に重要で、実際にゼロから導入していく生々しい過程を、検証していくことができます。

と言いますか、思ったよりもトップに力というか、権限がないとかなり大変であろうことが想像できるわけで。

しかもこちらの会社は、海外子会社で社長を務め、実際にBPRを実現していた経験のある人物が、新たな社長に就任したため、勝手も知っていました。

たとえば、「既存の業務プロセスにシステムを合わせる」のではなく、「システムに合わせて現行業務プロセスを見直せ」と指示を出しているのが、上記ポイントの5番目。

ここまでバッサリ言わないと「人から剥がせない」んでしょうね。

……私の顧問先で、ここまでできるところがあるのか否か。


ホワイトカラーの生産性を上げたい方に!

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ホワイトカラーの生産性はなぜ低いのか 日本型BPR 2.0
Chapter 1 生産性のカギは「人間性の尊重」
Chapter 2 日本の置かれた現状
Chapter 3 ホワイトカラーの生産性革命とは
Chapter 4 部分最適vs全体最適
Chapter 5 ホワイトカラー業務の本質
Chapter 6 現場主導のカイゼンによる生産性アップの限界
Chapter 7 日本型BPR 2.0=変革の仕組み化


【関連記事】

【生産性向上?】『サイエンスドリブン 生産性向上につながる科学的人事』梅本 哲(2021年11月03日)

【仕事術】『抵抗勢力との向き合い方』榊巻亮(2017年12月14日)

【生産性?】『なぜ日本の会社は生産性が低いのか?』熊野英生(2019年01月21日)

【トヨタ式】『トヨタの段取り』(株)OJTソリューションズ(2015年10月17日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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コンサルを超える 問題解決と価値創造の全技法

「問題解決」と「価値創造」という2大テーマが1冊で学べる本書は、単行本のページ数も512ページと厚め。

一方で値引率が「81%OFF」と高いため、Kindle版が1000円弱お得となります!


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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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