2024年06月03日
【知的生産術】『日記力 『日記』を書く生活のすすめ』阿久悠
日記力 『日記』を書く生活のすすめ (講談社+α新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「講談社 ポイント還元キャンペーン」にて、意外に人気が高かった知的生産術本。故・阿久悠さんがメモ術並びに日記術を指南してくれる作品です。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、インターネット……。情報が氾濫する時代、逃してはいけない大切なことをメモにとる。日記を書くとみずみずしい感性を失わない。自分なりに、情報を自由に書く、新しい日記の書き方!
中古が絶版で高値となっていますから、このKindle版が900円以上お買い得となっています!
diary writing / freddie boy
【ポイント】
■1.レイアウトにもこだわる日記を単なる備忘録にとどめず、のちに役立たせるためには、レイアウトの工夫も必要になります。僕は、内容に応じて黒ペンと赤ペンとオレンジのマーカーを使って、書きわけを行っています。
純粋な情報や、気象、その日の僕の行動などは、黒字で書きます。そして、テレビなり、ラジオなり、あるいは口コミで僕が受けた情報については、赤のラインで囲みをつくり、その中に黒字で書き込む。囲みの上端には、そこに書かれた内容が一目でわかるよう「NEWS」、「SPORTS」、「話題」などジャンルを記してあります。これらの受けた情報の中でも、これはちょっと覚えておいたほうがいいぞ、というものは、黒字で記したあと赤でアンダーラインを引きます。他にも、僕は人が語った言葉がひどく気になる 性質 なので、政治家などが、テレビやラジオで重大な発言をしたのを聞くと、その言葉を黒字でできるかぎり忠実に書き、やはり赤のアンダーラインを引いています。
また、情報自体に値打ちがあるものについては、黒字の記述した言葉そのものを赤のラインで囲みます。さらに重要だと思う内容は、オレンジのマーカーで印をつける、といった具合に差別化しています。
■2.アンチロマンスタイルの誕生
こうして、先にすでに紹介したとおり、感傷的な記述は極力避けて、その日1日僕の興味のアンテナに引っかかってきたものを、世界情勢から国内の事件、スポーツの結果から記憶に残る言葉、それから僕の考えと行動までを同格に書くというスタイルにたどりついたというわけです。
それも、日記に書くことは1ページに決めました。(中略)
最終選考が終わると、今度は残ったこの5つの中から、自分が「この日一番大切だったな」と思うことをトップに書いていくわけです。こうして、順位をつけると、1番目に書いてあることと、5番目に書いてあることが同じように重要に見えても、実際はそうではない、確実に違っていることがわかります。1番目に書いたことと、5番目に書いたこととでは、その重みは4倍も違っていることさえあります。それは日記を書いた日の自分の視点を確認することでもある。まさに「自画像」がそこにあるのです。その事実をあとで感じることができることが僕にとっては日記の最大の効用です。
■3.「時代の風」を感じるということ
えてして、日本人は情報というものをトレンドやブームをいち早く察知して、そこに行ったり、見たり、体験したりすることのようにとらえてはいないでしょうか。
時代の風を読むということは、そのとき流行っているものをとらえるということではないんです。ましてやブームに乗って、それを書こうとするものでもない。むしろ、その逆で、今は人気がないけど、それは大事なことではないか、耳をすませばその声が聞こえてくるのではないか、ということのほうを大切にするべきです。
日本人は、どこか賞味期限の中でしかものを評価しないところがあります。今すごい人とか、今流行っているとか、「今」にしかスポットを当てない。そして賞味期限が過ぎると見向きもしなくなる。ブームを過ぎてもビンテージになるものがあっていいはずなのに、それがまったく生まれてこないのが、今の日本です。
■4.情報の価値よりどう咀嚼し理解するか
じつは、僕は情報そのものに価値があるとは思っていません。むしろ大切なことは、情報を得るためのレンズや受信機だと考えています。送られてくる情報より、それをどう写し取るかが大切なんじゃないかと思う。ですから、日記の書き方もその考えに基づいています。
僕の日記は受けて、解釈して、整理する情報のまさに見本のようなものです。同じテレビを、日本中の人と同じように見ているのに、それらの人々とまったく違う価値観で情報を手に入れることに、重きを置いている。
情報そのものに価値があるわけではなく、情報をどう受け入れたかに価値があるといったのはそういう意味です。先にも述べたように、最近では自分で見ることより、その結果を分析することにいそしんでいる僕は、ますます怠け者になりつつあります(笑)。現場にはめったに出かけていかない。そして、多くの時間を寝そべりながら、しかし、世界や世間へのアンテナだけはハリネズミのように何百本も立て、意地悪な目つきと優しい心の観察者になっているんです。
■5.自分の好き嫌いを理解する
今の世の中には自分が何が好きなのか、何が許せないのか、そのことさえ、把握していない人がいます。また、大抵のことは大丈夫だけど、これだけは我慢できないということがわかっている人とわかっていない人がいる。僕は忍耐強い人間ですが、「これだけは、触れられると爆発するぞ」という明確な境界線があります。そういう境界線が見つかるかどうかが重要で、それがわかっていれば、そこからスッといなくなるとか、話をしていても「ちょっと休憩しましょうか」と切り替えることができる。
自分のことがわかっていれば、話をしていて「こいつはこの境界線を越す危険性があるな」と察知することができる。もちろん、こちらが怒れば済む話ですが、できれば怒りたくないな、と思いますから、「ちょっと休もうか」という方向に持っていくことができます。
こうして自分がわかっていれば、嫌なことから回避したり、防衛したりすることはできるはずで、誰かに何とかしてもらうことではないと思います。
【感想】
◆本書のまえがきに記されているのですが、本書はいわゆる「語り下ろし」によって書かれたものであり、六本木の阿久さんの仕事場で、1回目の超ロングインタビューが行われたのが、2003年1月。同年5月に、伊豆にある阿久さんの自宅で追加インタビューが行われ(同時に日記の実物の写真も撮影)、あとがきが書かれたのが2003年6月とのことでした。
つまり約21年前に、阿久さんが考えていたことや、それまで20数年に渡って続けてきた(本書発行後も?)日記について、その書き方から目的、効果に至るまで語りつくしたのが本書ということ。
そもそも生涯作詞した曲が5000曲以上という、日本を代表する作詞家の「知的生産術」ですから、面白くないわけがありません。
なお、冒頭では「メモ術」と書いたものの、阿久さんはいきなり日記を書くわけではなくて、ご自身のアンテナに引っ掛かってきたやアイデアを、すべてメモに残しているのだそう。
本書の第1章によると、特にメモ帳や専用用紙があるのではなくて、書き損じた原稿用紙や不要になったコピー用紙を、ハガキ大に切りそろえて、束ねたものなのだとか。
◆また興味深かったのがメモを取る対象で、株価から天気、スポーツ、新聞の中の言葉まで、ホントに様々な情報がメモするらしく。
なるほど、と思ったのが、「ど忘れしたこと」もメモに残すことで、何度も同じことをど忘れしていることに気づくのだそうです。
……言われてみたら、私もなぜかいくつかの同じものを、よくど忘れしてしまっていますから、これからはメモして記憶に残さなくては。
なお、メモについてはレイアウトの記述がなかった一方、そのまとめとなる日記は、上記ポイントの1番目にあるように、キチンとした決まりがあるようです。
本書に何枚も収録されている阿久さんの日記の画像が、白黒なのが惜しまれますが、確かにパッと見ただけで、必要な情報や、重要な情報が目に入る仕組みになっていました。
◆続く第2章では、日記の内容についての踏み込んだ言及が。
上記ポイントの2番目では、初っ端で「先にすでに紹介したとおり」とあって面食らったかもしれませんが、これは阿久さんが、「旅日記」や「育児日記」「闘病日記」等々のさまざまな日記がある中、「アンチロマンスタイル」という、「何物にも執着しない」「客観性を追求した」日記を目指したお話を指しています。
また、書くボリュームは1日1ページで、ネタは上位5つのみ。
その5つを順位をつけて書いていくことや、紙面構成を考えることが、阿久さんの日記の重要なポイントなのだそうです。
一方、そのネタを選ぶ際に、どのようにアンテナを立てるかに触れられているのが、第3章から抜き出した上記ポイントの3番目。
後半部分の「『今』にしかスポットを当てない」という指摘は、20年後の今も同様でしょう。
流行り廃りはあくまで表面的なことであり、本質的な部分にまで目を向けられるのが一番なんでしょうけど、本書が出た後のインターネットの普及や、昨今のSNSの伝播力を考えたら、むしろ悪化しているかもしれません。
◆では、こうした有象無象の情報に、どう対処するかというと、上記ポイントの4番目にあるように、情報自体の価値に重きを置かずに、「どう咀嚼し理解するか」に注力すべし!
要は阿久さんは、市井の人々と同じテレビを観て、同じ情報を手に入れながらも、違う「価値」を見出しているワケです。
そして、その思考の醸造をより深める意味でも、日記を書き続けることに意義がある次第。
一方で、その情報自体に、バイアスがかかっていることも、阿久さんは理解されています。
繰り返すようですが、写真も映像も人の手によって編集されていることぐらいは、わかって見ていなければなりません。要するに、合成と編集ができるようになった時点から、100パーセント真実であると思うわけにはいかないということなのです。なお、これに関連して申し上げると、本書では当時の政治に対する不信感のお話にもページが割かれているものの、本題とは直接関係ないのでとりあえず割愛しました。
◆なお、上記ポイントの5番目のお話は、本書の第4章からのもの。
この章では、日本における映画や楽曲、街並み等々に対して、阿久さんの批判が展開されており、ある面では納得できたり、今の時代にそれ言ったらアカンというお話もありました(ネタバレ自重)。
その根底にあるのが、ここで挙げた「好き嫌い」の把握です。
大好きなものはこれ、絶対に嫌いなものはこれ、ということがわかるかどうか、簡単なことのようですが、大事なことだと思う。日記をつけるという行為は、「自分のことがどのぐらいわかっていますか」という確認でもあると思いますね。好き嫌いの感覚は大事にしたほうがいい。これは日頃から意識しておきたいところ。
また、ボリュームの関係で割愛しましたが、第6章におけるご自身の書かれた歌詞と時代とのかかわりあい等のお話は、クリエイティブ系のネタがお好きな方なら要チェックだと思います。
ワンランク上の日記を書くために読むべし!
日記力 『日記』を書く生活のすすめ (講談社+α新書)
第1章 ある日の阿久日記
第2章 阿久日記ことはじめ
第3章 情報の洪水を泳ぐコツ
第4章 日記から読む現代日本の病巣
第5章 昨日と違う今日の確認
第6章 日記に隠された創作の秘密
第7章 日記を書く生活のすすめ
【関連記事】
【クリエイティブ】『「企み」の仕事術』阿久 悠(2012年06月05日)【メモ術】『考える人のメモの技術 手を動かして答えを出す「万能の問題解決術」』下地寛也(2022年09月12日)
【メモ術?】『メモ活』上阪徹(2020年10月16日)
【スゴ本!】『AKB48の戦略! 秋元康の仕事術』(2013年01月26日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。100万回死んだねこ 覚え違いタイトル集
私もボケる前の母に「黒猫ヤカタの宅急便」と言われたことがあるので、他人事ではない1冊は、中古の方が100円強お得なので、オススメしずらく。
老後ひとり暮らしの壁 身近に頼る人がいない人のための解決策
私も離婚したら他人事ではない(上に続いて)こちらの作品は、Kindle版が1000円弱お買い得です!
【編集後記2】
◆一昨日の「講談社 ポイント還元キャンペーン」の記事で人気が高かったのは、この辺の作品でした(順不同)。日記力 『日記』を書く生活のすすめ (講談社+α新書)
中年期うつと森田療法 (こころライブラリー)
ユングと心理療法 心理療法の本(上) (講談社+α文庫)
決定版 日本妖怪大全 妖怪・あの世・神様 (講談社文庫)
よろしければご参考まで!
この記事のカテゴリー:「ビジネススキル」へ
「マインドマップ的読書感想文」のトップへ
スポンサーリンク
当ブログの一番人気!
11月21日まで
Kindle月替わりセール
年間売上ランキング
月別アーカイブ
最近のオススメ
最近の記事
このブログはリンクフリーです