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2024年04月05日

【科学的自己啓発書?】『ぼくたちは習慣で、できている。[増補版]』佐々木典士


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ぼくたちは習慣で、できている。[増補版] (ちくま文庫)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、今月の「Kindle月替わりセール」の中でも、比較的当ブログ向きだと思っていた自己啓発書。

これがまた、タイトルや装丁とはうらはらに(?)、結構エビデンスベースの習慣本でした。

アマゾンの内容紹介から。
三日坊主は、あなたのせいじゃない。良い習慣を身につけ、悪い習慣をきっぱりやめるステップを55に増補。世界累計部数20万部突破。

中古は値崩れしていますが、送料を合わせるとこのKindle版の方がお買い得です!





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【ポイント】

■1.自分を習慣の動物にする
 秋になると、リスは冬に備えて餌をたっぷりためておこうとする。しかしリスは「これから冬が来るから、餌をたっぷりためておかないとな」と意識で考えたり、綿密な計画を立てているわけではない。リスの脳では、目に入る日光が一定の量だけ減少すると、餌を埋めるプログラムが作動するようになっているという。
 村上春樹さんは、「自分を習慣の動物にしてしまうこと」と言った(『考える人』2010年夏号、新潮社)。習慣を身につけることとは、自分の動物の部分、無意識が司る部分にアクセスすることだ。変えるべきは自分の意識などではなく、リスにとっての日光の量だ。


■2.毎日には迷いがない
「毎日する」ことの中には、今日それをすべきかどうか悩むことも決断もない。行くか、さもなくば行くしかない。
 そうして毎日するうちに、隠された報酬に気づくことができ、進んで自然としたいことに変わっていく。毎日すること、これは習慣のステップの中でも奥義のひとつだと思う。
 目標は小さくしていいが、頻度は減らしてはいけない。習慣づくまでは毎日やり、頼まれなくても自発的にしたくなるようになってから、頻度を適切に減らすのがいい。
 ランニングをするとしてもちろんいきなり走れない身体の人もいる。だからその場合は「毎日500mウォーキングをする」ことから始める。そして目標は小さく「ウォーキングシューズに足を入れること」でいい。「一駅前から自宅まで歩く」ことを習慣にするのも素敵だ。


■3.途中でやめる
 習慣が軌道に乗ってくると、何か調子がいいなと思う日がある。ぼくも走っている時、いつまでも走っていられるような感覚を持つことがある。しかしそこで、自分の限界を見たくなり、疲弊しきるまでランニングをしてしまうと、どこかでランニング=苦しいものという印象が脳に残り、次回始める時に影響してしまう。
 習慣は一度の達成より続けることを重視するので、もっとやりたいと思うところでやめる。途中でやめる。8割ぐらいでやめる。そうすれば、楽しいままの印象で終わる。ぼくもギターや英語の勉強も苦しくなるまではやらない。だから次の日もやりたくなる。なんだか楽しくなくなってきたかも、というところまではやらない。


■4.難易度は少しずつ上げる
 難易度の設定は厳しすぎると、ただ苦しいものと脳が認識して続かない。簡単すぎても満足感がなく飽きる。負荷があるからこそ、適度なストレスホルモン、コルチゾールが分泌され満足感を感じられるのだ。ストレスのないところには喜びもない。
 ジムのインストラクターに、いつウェイトを上げればいいのか質問してみたことがあるが、答えは「簡単に持ち上げられるようになった時」ということだった。車の運転もいつかは無意識に鼻歌交じりにできるようになる。ランニングで、かつては息切れして余裕のなかったスピードでも、別のことを考えながらできるようになったりする。難しかったはずのものが簡単になり、手応えを感じなくなる時が難易度を上げるべき合図だ。


■5.無限の可能性を信じる
 心理学者のキャロル・ドゥエックのチームが突き止めた大切なことがある。意志力のテストで、意志力は何かすれば減ると考えた人よりも、それが無限だと考えた人のほうがテスト成績がよかったのだ。意志力が実際に減るかどうかは置いておいて、ともかく意志力が減らないと考えるほうが有効だったというわけだ。
 才能と遺伝の問題もこれとまったく同じだと思う。少なくとも、遺伝で決まっている要素が大きいと考える人よりも、継続で変えられる余地が大きいと信じている人のほうが、遠くへ到達できることは疑いようがない。


【感想】

◆冒頭でも触れたように、タイトルや書影から、もっとエッセイチックな作品だと勝手に考えていた本書。

ところがいざ読み始めてみたら、当ブログではおなじみの科学的自己啓発書の作品からのお話が、わんさか登場してきてびっくりしました。

具体的には、当ブログでレビュー済みの作品に限っても、下記の関連書籍&記事に列挙したとおり7冊も登場。

他にも、「Kindle化されていない」という理由で、読むのを断念したこちらの作品も3回も言及されていました。

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WILLPOWER 意志力の科学

もっとも回数で言うならば、この本が計16回でダントツでしたが。

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天才たちの日課

参考記事:【習慣】『天才たちの日課』メイソン・カリー(2017年06月28日)

内容は確かに著名人たちの「日課」なのですが、毎日同じようなことを、決まったタイミングで行う人が多く、それがそのまま「習慣」につながっている次第です。


◆また、各章については、1章、2章、それに1つ飛んだ4章もハイライトはしっかり引いたものの、本書の白眉は3章の「習慣を身につけるための55のステップ」でしょう。

こちらはその章題とおり、習慣を身につけるための具体的なアドバイスを55個収録。

さらにはそれに関連して「習慣を難しくする原因」と題した、私たちの習性や問題行動についても指摘しています。

今回、この3章からすべてポイントを選んでもよかったのですが、一応、2〜4番目のポイントの3つに絞ってみました。

ちなみに、55も挙げている以上、類書とかぶるTIPSも結構あって、「トリガーをつくる」「ハードルを下げる」「チャンクダウンする」辺りは、ご存知の方も多いと思いますので割愛しています。

なお、習慣本で定番の「If-Thenプランニング」は、なぜか無かったのですが、「ルーチンの終わりにする行為が、次の習慣を始めるトリガーになる」という「チェインメイク」がそれに近いかもしれません。


◆さて、具体的に上記ポイントのを見ていくと、まず1番目の「習慣の動物にする」というユニークなTIPSは、本書の2章からのもの。

とにかく、意識したり、考えたりして行っているうちは、まだ習慣にはなっていない、ということなんでしょうね。

そこで実際に習慣化されるまでの過程において、大事な要素が3つ。

具体的には「トリガー」「ルーチン」「報酬」なんですが、これはこの本でおなじみのチャールズ・デュヒッグによるものなのだそうです(詳細は本書を)。

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習慣の力 The Power of Habit

参考記事:【オススメ!】『習慣の力 The Power of Habit』チャールズ・デュヒッグ

……上記記事では、具体例の話ばかりで、ロジックについては触れてませんでしたね(ダメじゃん)。


◆一方前述のように、ポイントの2〜4番目は3章の「習慣を身につけるための55のステップ」からのもの。

2番目の「毎日する」ことのメリットは、類書で指摘されているかもしれませんが、私は知りませんでした。

なお、楽器演奏のように、1日でもサボると技術が低下する習慣もあるので、その意味でも「毎日」が良さげ。

また、3番目の「途中でやめる」は、いわゆる「ツァイガルニク効果」とは違う理由のようです。

あの村上春樹さんも、「4000字(原稿用紙10枚)」まで書いたところで、キッカリやめるのだそうです。

さらに4番目の難易度のお話は、「フロー」体験にも関係するそうで、「難しすぎず、簡単すぎず適切な難易度のものに挑戦」しているときに起こるのだとか。

身近なところだと、早起きのタイマーも、毎日5分ずつ早めると良いらしいので、いつか朝型に挑戦する際に試してみようと思います。


◆そして最後の5番目のポイントは、4章の「ぼくたちは習慣で、できている。」から抜き出しました。

実際問題、意志力は減るか否かはさておき、「減らない」と考えた方が良いんですね。

……後半部分について言うなら、実際には年を取るにつれて、遺伝の影響の占める割合が大きい、という話もありますが。

いずれにせよ本書は、有名どころの翻訳本を引用した、科学的自己啓発書とも言えるもの。

著者の佐々木さんが、身につけた習慣(マラソン)と、断った習慣(飲酒)の双方もある点も、本書の説得力を増しています。

それが今回の「Kindle月替わりセール」だと「385円」で読めるのですから、結構お買い得ではないか、と。


この手の習慣本の好きな方なら、マストです!

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ぼくたちは習慣で、できている。[増補版] (ちくま文庫)
1章 意志力は、生まれつき決まってる?

2章 習慣とは何か?

3章 習慣を身につけるための55のステップ

4章 ぼくたちは習慣で、できている。


【関連書籍&記事】

本書で紹介されている各作品とそのレビューを掲載しておきます。

B01M70KAK0
天才たちの日課

参考記事:【習慣】『天才たちの日課』メイソン・カリー(2017年06月28日)


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ヤル気の科学 行動経済学が教える成功の秘訣

参考記事:【スゴ本!】『ヤル気の科学 行動経済学が教える成功の秘訣』イアン・エアーズ(2012年10月30日)


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習慣の力 The Power of Habit

参考記事:【オススメ!】『習慣の力 The Power of Habit』チャールズ・デュヒッグ


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スタンフォードの自分を変える教室 スタンフォード シリーズ

参考記事:【オススメ!】『スタンフォードの自分を変える教室』ケリー・マクゴニガル(2012年11月02日)


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小さな習慣

参考記事:【目標達成】『小さな習慣』スティーヴン・ガイズ(2017年05月26日)


B01LMP9RLY
やり抜く力

参考記事:【グリット?】『やり抜く力――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』アンジェラ・ダックワース(2016年09月12日)


B08NWVLV91
新版 20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義

参考記事:【スゴ本】「20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義」(2010年04月06日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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超トーク力 心を操る話し方の科学

科学的な話し方本、という1冊は、Kindle版が300円以上お得。

B099RVM1XZ
後悔しない家づくりのすべて

持ち家派の方なら要チェックなこちらの作品は、Kindle版が1000円以上お買い得。

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作家になる方法

この2月に出たばかりの、千田琢哉さんの作家指南本は、400ページを超すだけあって定価が高い分、Kindle版が2100円弱お得な計算です!


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