2024年03月30日
【職場のガン?】『職場を腐らせる人たち』片田珠美
職場を腐らせる人たち (講談社現代新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事の中でも、当ブログ向きと思われるコミュニケーション本。職場の人間関係を考える上でも、読んでおきたい1冊です。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
根性論を押し付ける、相手を見下す、責任転嫁、足を引っ張る、自己保身、人によって態度を変える……どの職場にも必ずいるかれらはいったい何を考えているのか?
これまで7000人以上を診察してきた著者は、最も多い悩みは職場の人間関係に関するものだという。
理屈が通じない、自覚がない……やっかいすぎる「職場を腐らせる人たち」とはどんな人なのか? 有効な対処法はあるのか? ベストセラー著者が、豊富な臨床例から明かす。
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【ポイント】
■1.幻想的万能感の肥大もっとも、スキルアップするにしても、まずは仕事を覚える必要があるはずだが、それさえも拒否するような新入社員がいるという。製造業のある会社では、新入社員の男性が、上司から指示された仕事であっても、「教えてもらっていないので、できません」「これは横で見ていただけなので、できません」などと断るそうだ。
仕方がないので、簡単な事務作業をするよう上司が指示すると「こんな仕事を僕にさせるなんて、僕の能力の無駄遣いです。もっと僕の能力を発揮できる仕事をさせてください」と要求する。そのため、どんな仕事をさせればいいのか会社では苦慮しているらしい。
この男性は、自分自身の能力を過大評価している可能性が高い。だが、実際には、自分で思っているほど仕事ができるわけではない。だからこそ、いろいろ理由をつけて仕事を断るのではないか。こういうタイプは、強い自己愛ゆえに自分は何でもできるという幻想的万能感を抱いていることが多い。仕事ができないという現実に直面すれば自己愛が傷つきかねないが、そうなるのは嫌なので、前もって断るわけだ。
■2.こじらせた承認欲求
これまでの経緯を振り返ると、この男性が自分の優位性を誇示して、周囲を見下すのは、自身の承認欲求が満たされず、欲求不満を募らせているからだと考えられる。本当は花形の融資課で成果を出して認められたかったのだが、実際にはそうはいかなかった。それどころか、学歴では劣る同期に融資案件の数で負けるという体たらくで、結果的に不本意な形で異動させられた。当然、本人のプライドは相当傷ついたに違いない。
こういう屈辱的な事態は誰にでも多かれ少なかれ起こりうるはずだ。そんなときこそ真価が問われるわけで、自分が味わった敗北感とどう向き合い、どう乗り越えていくかでその人の価値が決まるといっても過言ではない。
この男性は敗北感と向き合おうとせず、乗り越えられなかったように見える。おそらく、学歴では自分のほうが勝っている同期に融資の実績では負けたという現実を受け入れられなかったのだろう。いや、正確にいうと、受け入れたくなかったのかもしれない。自己愛が強いので、自分の敗北をどうしても認められないのだ。
■3.ストーカーに多い現実認識のズレ
(1)都合のいいように現実を歪曲まず、この女性もそうだが、ストーカーは自分に都合のいいように現実を歪曲する。手作りのお菓子を渡されて、むげに断るわけにもいかないので、 20代の男性は受け取り、おいしそうに食べただけなのだろうが、それを40代の女性は「自分に好意を抱いているから」とねじ曲げて解釈している。(2)「幻想的願望充足」このような曲解は、「〜だったらいいのに」という願望と現実を混同する「幻想的願望充足」によるところが大きい。「相手も自分を愛してくれたらいいのに」という願望が強すぎるあまり、「相手も自分を愛している」という幻想を抱き、それがあたかも現実であるかのように思い込む。(3)高すぎる自己評価実は、この40代の女性も、自分は美人で20代に見えると勘違いしているふしがあるように見受けられる。若い頃はそれなりに美人だったのかもしれないが、実際には年齢相応にシミやしわがあり、しかも太っているので、婚活でも苦戦しているようだ。にもかかわらず、本人の自己認識は違う印象を受ける。
■4.背景にある構造的要因:平等幻想
とくに、日本は「一億総中流社会」をかつて築き上げたことがあり、その頃に浸透した「みんな平等」という意識がいまだに根強く残っている。もちろん、それ自体は悪いことではない。だが、最近は必ずしも「みんな平等」とはいえない現実を思い知らされる機会が増えているにもかかわらず、平等幻想だけが漂っているので、「平等なはずなのに、なぜこんなに違うのか」と不満を抱かずにはいられない。
こうした不満は、羨望を生み出しやすい。だから、羨望で胸がヒリヒリするような思いをしながら、羨望の対象が転げ落ちるのを今か今かと待ち構えている。ところが、なかなかそうならないので、待ちきれなくなる。そこで、しびれを切らして、羨望の対象を少しでも不幸にするために不和の種をまいたり根も葉もない噂を流したりするのだ。
■5.最良の解決策は「できるだけ避ける」
ある人が職場を腐らせる人だと気づいたら、最良の解決策は、できるだけ避けることである。第2章で述べたように、職場を腐らせる人を変えるのが至難の業である以上、これは当然といえる。
たとえば、同じ職場で働いている場合、勤務の時間帯を変更するとか、向こうがよく行く場所には足を向けないようにするとかして、なるべく顔を合わせないようにする。場合によっては、異動や転勤を申し出るという選択肢だってあるかもしれない。
そこまでするかと思われるかもしれないが、職場を腐らせる人は、あれこれケチをつけたり、その場にいない人の悪口を言ったりして、重苦しい雰囲気を醸成し、不和やもめごとを引き起こす達人なので、避けるのが最も賢明だ。(中略)
間違っても、あなたの私生活や心配事などを話してはいけない。というのも、あなたがつい話してしまった内容を、職場を腐らせる人は、都合のいいように解釈したり脚色したりして、言いふらしかねないからである。
【感想】
◆なかなか気の滅入るような事例が、次から次へと登場する作品でした。何せ著者の片田さんは、精神科医として働かれている傍ら、企業や金融機関などで、定期的にメンタルヘルスの相談に乗っており、ここでも「職場を腐らせる人」に関する相談が持ち込まれるのだそう。
本書の第1章では、こうした経験に基づく具体例が合計15も収録されており、さまざまなパターンを疑似体験することが可能です。
読み始める前は、てっきり「パワハラ」的なお話が中心かと思っていたのですが、そんな単純なものではありませんでした。
たとえば上記ポイントの1番目の新入社員は、自分自身を過大評価しているため、我がままな希望を言いまくり。
これなぞはまさに、ダニングクルーガー効果を絵で描いたようなものです。
◆また、上記ポイントの2番目の「他人を見下す人」も、職場にいたら、それは職場も腐ります罠。
しかもその「根拠」が「こじらせた承認欲求」なのですから、周りもたまったものではありません。
こうした人に見られがちなのが、「過去の成功体験」を持ち出すことで、その最たるものが「学歴」なのだそう。
学歴は主にペーパーテストの点数で決まり、コミュニケーション能力や臨機応変に対応する能力を必ずしも反映しているわけではない。当然、業務内容によっては、高学歴だが仕事ができない人が一定の割合で存在する。この男性の上司のように「いい大学を出ているのに、あまり仕事ができない」部下の件で相談を持ちかける管理職に何度もお目にかかったことがある。こういう人の上司になるのも、大変だな、と……。
◆なお、上記ポイントの3番目のストーカーのケースは、ちょっとレアですが、ここに挙げた3つの「ズレ」が非常に参考になったので取り上げました。
「現実を歪曲」「幻想的願望充足」「高すぎる自己評価」のいずれも、自分の中だけで完結しているなら、特に問題はないものの、いったん外に出てしまうと、相手にとっては脅威です。
……長くなるのでエピソードは割愛しましたけど、こういう人にターゲットにされてしまったら、目も当てられませんよ。
こういう人こそ、メタ視点で自分を客観視してもらいたいのですが、それができれば苦労もないわけで。
ちなみにこのケースは、女性がストーカー化したものであり、実際、片田さんが相談を受けるのもこのパターンが多いそうなのですが、統計上、ストーカーは男性の方が圧倒的に多いのだとか。
これはおそらく、男性のストーカーの場合、女性とっては身の危険もありますから、直接警察へ持ち込まれてるのではないか、と片田さんは言われています。
◆具体例はこの辺にしておいて、続く第2章では、「職場を腐らせる人」が変わらない理由を分析。
簡潔にまとめてしまうと、次の4つの理由ゆえなのだそうです。
(1)たいてい自己保身がからんでいるそれぞれについては、本書にてご確認を。
(2)根底に喪失不安が潜んでいる
(3)合理的思考ではなく感情に突き動かされている
(4)自分が悪いとは思わない
さらに特に最後の自己正当化に関係して、現在の日本にある「構造的要因」が3つ挙げられていました。
そしてその中の1つである「平等幻想」の解説から抜き出したのが、上記ポイントの4番目です。
確かに昔に比べたら、昨今は「格差社会」ですから、それは「平等」ではいられませんって……。
◆最後の第3章では、こうした「腐る職場」での対処法が述べられているものの、結論から言うと「できるだけ避ける」。
とにかく相手は「変わりません」から、やり過ごすしかありません。
本書を読んでいても、相手が悪いのに、どうしてこちらが我慢せねばならぬ、と思ったことが多々。
前述のストーカーのケースも、被害者の男性は遠方の支社に飛ばされた一方、女性の方は新人教育を担当させなくなっただけらしく。
自分が一方的に恋心を募らせた男性の自宅にまで押しかけることを繰り返しているので、警察に通報されても、会社から解雇されても不思議ではないと個人的には思う。しかし、会社の上層部としては、この女性が解雇されたことを逆恨みして、何をするかわからないという危惧があったようだ。どうしても反撃したい方は、この辺の作品をご参考ください。
頭に来てもアホとは戦うな! 賢者の反撃編
参考記事:【処世術?】『頭に来てもアホとは戦うな!賢者の反撃編』田村耕太郎(2023年05月08日)
気が小さくても立場を悪くせずとも職場のアホを撃退できる! 都合のよすぎる方法
参考記事:【人間関係?】『気が小さくても立場を悪くせずとも職場のアホを撃退できる! 都合のよすぎる方法』イェンツ・ヴァイドナー(2018年09月12日)
本書を読んで適切に対処すべし!
職場を腐らせる人たち (講談社現代新書)
第1章 職場を腐らせる人たち
第2章 なぜ職場を腐らせる人は変わらないのか
第3章 腐る職場でどう生きるか
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【人間関係?】『気が小さくても立場を悪くせずとも職場のアホを撃退できる! 都合のよすぎる方法』イェンツ・ヴァイドナー(2018年09月12日)
【編集後記】
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