【営業必読?】『1000人のトップセールスをデータ分析してわかった営業の正解』山田和裕:マインドマップ的読書感想文

2024年03月28日

【営業必読?】『1000人のトップセールスをデータ分析してわかった営業の正解』山田和裕

【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「Kindle本新生活セール」の中でも人気の1冊。

私自身、それほど営業本を読んできたわけではないものの、ロジカルなTIPSが多く、ハイライトを引きまくりました。

アマゾンの内容紹介から一部引用。

実は、業種・業界を超えて「できる営業」に共通する成功特性があります。それが“営業の正解”です。逆に、「できない営業」に共通する失敗特性（悪い癖）もあります。それは営業の不正解＝間違いです。
この本は、1000人以上のトップセールスにヒアリングを行い、そのノウハウを標準化・見える化して見えてきた、共通する成功特性＝ “営業の正解”のエッセンスを48にまとめたものです。「できる営業」と「できない営業」のよくあるパターンを対比させながら、営業の悩みに答える形で正解を導き出します。

送料を足した中古よりは、Kindle版が500円弱お買い得となります！

【ポイント】

■1.自分の言葉ではなく、相手の言葉に合わせる

　ソフトウェア会社S社のトップセールスYさんから聞いた話を紹介しましょう。
　初回のプレゼンでは眠そうにしていた人が、2回目には別人のように身を乗り出し「これがうちの業務プロセスそのものだ」と、ガラッと反応が変わることがよくあると言うのです。
　違いといえば、初回プレゼンでは汎用性の高い一般的な「標準デモ版」を使用したのに対し、2回目では言葉だけを少し変えた「修正デモ版」を使用したことです。(中略)
　タネを明かすと、「標準デモ版」と「修正デモ版」は言葉が数個ぐらい変わっているだけで、あとの設定はほとんど同じ。プロセス自体は変えていなかったそうです。例えば、「プレゼンテーション」を「提案・見積」に修正といった程度です。
　これくらいであれば、「修正デモ版」を作らなくても、「標準デモ版」で想像力を働かせれば十分わかるのでは、と凡人は考えますが、現実はそうではないのです。
　見る側にとってはなじみのない画面であるために、1回目では頭に入ってこなかった内容が、自分たちが普段使っている言葉に変わっただけで見やすくなり、2回目は理解できるようになったということなのです。

■2.相談を聞き協力する

　キーマンに刺さっていれば、必ず相談がきます。信頼されている「できる営業」は、顧客から自然と相談されるものなのです。商談情報も競合より早いタイミングで相談されます。コミュニティや地域で他の顧客も紹介してもらえます。
　保険や車などを中心としたB2Cビジネスでは、商品を売るだけでなく「よろず相談役」として、相談を聞き協力することが「できる営業」の仕事になります。
　例えば、大手生保N社のトップセールスSさんは、保険契約だけにこだわらず相談を受けること＝「まちの情報」を売ることが自分の仕事だと言い切ります。まちの情報とは、次のようなテーマに関することだそうです。
①子供の教育　②親の老後　③自分の老後の心配　④健康生活　⑤良い病院の紹介　⑥様々な課題解決策や専門家の紹介（不動産、弁護士、税理士など）　⑦婚活（合コンも含む）　⑧転職

■3.案件の質より量を重視する

　営業は確率論です。わかりやすく伝えるために、野球の打率に例えてみましょう。
　まずは打席に立つ、つまり案件数（＝打数）を増やすのが先です。打席に立たなければヒットは生まれません。打席に立ちながら、成約率（＝打率）を上げることを目指すのが普通の順番です。
　業種・業界や扱う商品によって変わってきますが、営業の場合、野球と同じく3割打てるかどうかが1つの目安になります。
　ちなみに、①案件の質を上げるべきか　②案件数を増やすべきか、という質問を受けることがありますが、これについてはトップセールス1000人へのヒアリングで、既に結論が出ています。答えは ②案件数を増やすです。
　理由は前の項目の〈成約率〉のところでも説明したように、顧客をコントロールするのは難しく、完璧な営業をしても取れない時は取れないからです（そもそも完璧な営業というのも、売る側の勝手な思い込みにすぎません）。

■4.スケジューラーを活用する

　意外と見落とされがちなのがスケジューラーです。スケジューラーに入力するのを面倒くさがる人は多いもの。時間を大切にという割には、スケジューラーを活用し、タイムマネジメントを実践している人は少ないのです。
　スケジューラーを活用する目的は2つあります。1つは、自分の行動予定を組織に共有するため。もう1つは、自分のタイムマネジメントを行うためです。
　自分の行動予定を組織内で共有するのは営業の義務です。行動予定を見える化することで、どの顧客を訪問するのかがわかり、上司やチームメンバーからも信頼されます。
　緊急対応があり連絡がつかない時も、行動予定が把握できていれば、代わりに同僚が本人から顧客にいつ頃連絡ができるかを伝えて、助けてもらうことができます。(中略)
　手書きの手帳では書き換えるだけで大変です。スケジューラーであれば予定を動かすのは簡単。「できる営業」は、「メリットを知ると、もう紙には戻れない。紙の手帳はもう10年以上使っていない」と言います。

■5.成功だけでなく失敗からも学ぶ

　受注した場合は会議などでほめたり、その内容を共有したりすることもありますが、失注した場合はどうでしょうか。叱責するか、かわいそうなのであえて何もせずに、うやむやのうちに闇に葬り去るのではないでしょうか。
　しかし、失注案件も大切なノウハウの蓄積です。いや、失注案件にこそ、営業改善のための大切なヒントが隠れているのです。成功・失敗パターンの分析を通して得られるのは、正解を見つけるための貴重な実証データです。そこから、同じミスや失敗を繰り返さないための工夫が生まれます。受注率アップの秘策やヒントが見つかります。(中略)
　何か失敗が起きた時に、「この失敗の原因を検証するために手間と時間をかけるべきか？」と躊躇することは過ちです。逆に時間や手間を惜しんだがゆえに失うものの方がはるかに大きいのです。失敗から学ぶことは費用対効果が高いと断言できます。

【感想】

◆営業経験がない私が言うのもアレですが、冒頭でも触れたようにハイライトを引きまくりました。

そもそも「できる営業」というモノを考えた場合、門外不出のテクニックだったり、属人性が強すぎて真似できないようなイメージがありましたが、本書は見事に言語化。

さすが本書は「トップセールス1000人をデータ分析して書かれた」だけのことはあります。

ただし、「できる営業」が挙げた一番多い答えは、「当たり前のことを、当たり前にやっているだけ」という、拍子抜けするような言葉だったのだそう。

しかし本書はその「当たり前」のことを、具体的なプロセスに分けて、1つひとつ掘り下げることで、「営業の正解」を導き出したワケです。

たとえば、本書では「できる営業」と「できない営業」が、どのプロセスに時間をかけたか比較しており、これがなかなかに説得力大。

アマゾンのページの方に、その比較のグラフが掲載されているので、ぜひご覧ください。

◆また、本書ではさまざまな業界（アマゾンの内容紹介によると「ＩＴ、自動車、保険、医薬、旅行、行政営業、機械、部品、建築、住宅、飲料、人材派遣、事務機器、飲食チェーン、総合物流など」とのこと）の事例も紹介されており、こちらも参考になりました。

ただ、実際に引用するとなると、ボリュームが増えるので難しかったのですが、唯一ご紹介できたのが、上記ポイントの1番目。

なるほど、ちょっと（実際には工数もそれなりにかかっているのでしょうけど）仕様を変えるだけで、成約できるのであれば、可能な限り試さない手はありません。

これは何も、技術の必要なソフトウエアだけの話ではなく、見込み客に渡す資料も同様です。

同じようにプレゼンをするにしたって、客先に言葉（用語）を合わせるだけで成約率が上がる可能性が高いハズ。

◆さらに、上記ポイントの2番目の「信頼されている『できる営業』は、顧客から自然と相談されるもの」という指摘は、なるほど確かに。

引用部分の最後で紹介されているテーマは、いずれも私たちの生活に密着しているものであり、これらの相談に乗っていたら、モノが売れるのも納得です。

なお、このようなネットワーク的なセールスは、地方の営業において効果的とのこと。

特に地域キーマンに「刺さって」いれば、多くの情報も得られて、継続的で安定したビジネスが実現できるそうです。

一方、上記ポイントの3番目の「質より量」というのは、身も蓋もないお話ですけど、ロジカルに考えたら当然のこと。

本書では、具体例として「営業の訪問件数を20～30倍にした」人材派遣会社のS社のケースが紹介されているのですが、その仕組みづくりが圧巻でしたので、ぜひご確認ください。

◆ところで、「手帳はアナログかデジタルか」という論争（？）が、ビジネスパーソンの間では長らく続いていますが、こと「できる営業」にとっては、上記ポイントの4番目で言われているように、デジタルが常識のよう。

確かにタイムマネジメントは紙でもできますが、情報の共有という点からは、デジタル一択なのも当然です。

実際、社内のみならず、顧客から会社に帰社時刻を聞かれて「わかりません」という対応を取られると、信頼関係が崩れていく、という指摘もありました。

また、スケジューラーに顧客訪問だけでなく、資料作成やクレーム対応、社内会議等の登録をすれば、「自分が何にどのくらい時間をかけているか」が可視化できます。

もちろん、社内でそれらがバレバレになるのですから、プレッシャーもかかり、その分生産性も上がる、という副次効果も期待できるかもしれませんね。

◆そして最後のポイントの5番目の「失敗の分析」は、気が乗らなくともやらねばならないことでしょう。

ちなみに本書では、当ブログでもご紹介済みのこの本を推奨していました。

失敗の科学

参考記事：【失敗?】『失敗の科学失敗から学習する組織、学習できない組織』マシュー・サイド（2016年12月28日）

……久しぶりにアマゾンのページも見ましたが、中古が全然値崩れしていない人気ぶりにビックリですよ。

また本書によると、大手外食チェーンのM社は、失敗＆成功事例を分析した「失敗・成功百選」を作成したのだそうです。

プロセスマネジメントと人事評価変革に着手してから半年で、すぐに業績改善効果が表れました。目標達成と未達を行ったり来たり繰り返していた店舗開発数達成率が 64％から96％に32ポイントアップ。不採算店率も14％から2％へ激減しました。

これだけではないにせよ、効果があるのは間違いなさげ。

営業に携わる方なら一読の価値アリです！

1000人のトップセールスをデータ分析してわかった営業の正解

第1章《営業の正解・導入編》1000人のトップセールスをデータ分析してわかった営業の正解
第2章《営業の正解・初級編》これから「できる営業」を目指す人へ
第3章《営業の正解・中級編》「ワンランク上の営業」を目指す人へ
第4章《営業の正解・上級編》「絶対的なエース」を目指す人へ
第5章《営業の正解・トップ・オブ・トップ編》「科学的な営業」を目指す人へ