【超仕事術?】『コンサルティング会社　完全サバイバルマニュアル』メン獄:マインドマップ的読書感想文

2024年03月13日

【超仕事術?】『コンサルティング会社　完全サバイバルマニュアル』メン獄

【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「文藝春秋ウルトラ電読フェア2024」の中でも、当ブログ向きの1冊。

コンサル会社の方が書いた、この手の仕事術本は多いですが、その中でもかなり実践的だと思います。

アマゾンの内容紹介から一部引用。

Twitter、noteで話題の筆者が贈る、初の著書！
外資系大手コンサルティング会社を12年間生き延びた、元文系バンドマンでもできた“最速仕事術”とは!?
答えがあることを自分で考えない、議事録は会議前に作れる、迷子にならないための論点思考……etc　
どんな業界でも使える門外不出の秘技を初公開！

中古がまだあまり値下がりしていませんから、セール期間中なら、このKindle版が800円以上お買い得です！

Consultants speak. / ironypoisoning

【ポイント】

■1.作業ロットを2時間にする

　1日かけた作業が生産高に結びつかないことは5営業日のうちの20％が既に無駄になってしまったことを意味する。その時点で残りの4営業日でリカバリーが必要となり、本来避けるべき残業が発生してしまう。
　このような惨事を回避するために、まずは2時間集中し、その中で何かしらのアウトプットが出せるかどうかを自分で考え、そこまでの成果をぶつけよう。
　作業を進める中で20分以上手が止まる場合は2時間を待たずして、即上司に対してエスカレーション（上席への報告）することを心がけたい。20分考えて手が止まるような場合は、作業のやり方がイメージできていないことを意味する。作業の手順を具体的に指示するのは上司の仕事の一環でもあるので、その場合遠慮なく相談しよう。結果としてその方が仕事は早く終わり、かつ残業代が節約されれば、プロジェクトのファイナンスも改善しクライアントの予算を無駄にすることもなくなる。これは立派なクライアントと会社への貢献なのだ。

■2.会議調整の確認事項

　クライアントを巻き込んでの会議は、クライアントの必須出席者の空き枠の候補をいくつか頂戴し、その中で社内の人間の予定をつける方法が最速となる。社内の人間の予定が既に埋まってしまっている場合であっても、クライアントとの会議であれば調整をつけることが多いためだ。会議調整を頼まれた場合、そのタイミングで以下をすぐ確認しよう。
・必須出席者、任意出席者
・何を決めるのか（アジェンダ）
・会議時間
・場所（プロジェクタ、マイクは必要か）
・投影資料を誰が準備するのか、そのレビュー者、レビュータイミングはいつなのか？
　これが曖昧な会議は必ず失敗する。だいたい会議の調整は不明瞭な文言で雑に依頼されることが多く、５Ｗ１Ｈが曖昧になりがちだ。これは会議調整に限った話ではないが、何か仕事を頼まれた場合、その仕事を確実に終わらせるための情報は依頼者に多少めんどくさがられても必ず刈り取るようにしよう。

■3.コミュニケーションの基本ルール

　わかりやすい例を挙げると〝アンサーファースト〟という決まりだ。少し進行が遅れている仕事について、上司から「あの仕事って今日中に終わるの？」という質問を受けてしまった時に、「実は差し込みの仕事がありまして」というように言い訳からはじめると、多くの場合「終わるのか？　って聞いてんだけど」と怒られる。上司が聞いているのは終わるか終わらないかの二択であり、それ以外のことから喋るのはルール違反になる。　
　また、発言する際は主語を明示し、必ず誰の意見であるのかをはっきりさせる。「私の考えですが、」「○○さんから伺った話なのですが、」と冒頭につけるだけで、聞き手はその情報が事実であるのかどうか、推測や仮説が含まれたものであるのかを判別することができる。自分の意見を述べる場合は必ず、そう考えた理由を添えることもルールだ。理由がなければ必ず「なんで？」と聞かれるだろう。　
　コンサルタントのコミュニケーションはMECEであることが理想とされ、「原則として」という言葉を使う場合は、そこから外れる「例外」についても言及する必要がある。「大部分は」「やや」「概ね」という定性的な表現は可能な限り避け、定量的に状況を説明する。

■4.部下には自分でやろうと思えばできる仕事をお願いする

　部下への作業依頼の鉄則として、「自分でやろうと思えばできること」でなければ部下に投げてはいけない。通常、作業の指示は仕事のインプットとアウトプット、そしてインプットからアウトプットへの変換のプロセスを手順として示してはじめて成立する。
　自分にプロセスと完成形のイメージがないと、インプットかアウトプット、あるいはその中間手順について、部下に考えさせることになる。既に習熟した関係性のある上司と部下であれば大きな問題が生じないこともあるが、部下が持ってきたアウトプットが自分の想定と大きく異なる事態を招くことも多い。
　部下である人間が、具体的な作業の手順とアウトプットのイメージを持てるようになるまで、資料のアウトライン・構成、各スライドのメッセージ、各スライドのボディの図のイメージまではホワイドボードで手書きしながら一緒に議論すると良いだろう。

■5.ビジネス言い換え集（抜粋）

【社内篇】
●あなたに言われる筋合いはない。
→貴重なご意見ありがとうございます。参考にさせていただきます。

●ちょっとは自分の頭で考えろよ。
→ちなみにこれ、工夫してくれたポイントってどの辺ですか？

●私はお前のママじゃない。
→○○さん個人としての活躍を会社に私から説明できるようになりたいなと思っていて。

【対外篇】
●送ったマニュアル、メールに書いてるからちゃんと読んでくれや。
→先日お送りした資料の○○により詳しく記載されているものですので、もし他にご不明点等あれば合わせてこのタイミングでご教示いただければと思います。

●それを考えるのがあなたたちの仕事では？
→そちらは御社からご提案いただけると嬉しいところではあります。

●そのパワハラ体質、なんとかしたほうがいいっすよ。
→最近私も社内で同じ言い方した時に人事から注意されてしまいまして（笑）。

【感想】

◆冒頭の内容紹介に「元文系バンドマン」等の記述があったので、それに関連したとんでもない解決法でも登場するのかと思いきや、いたって真っ当な仕事術本でした。

厳密には、「元文系バンドマン」が普通に感じられるくらい、キャラの立った上司や同期がわんさか登場するので、むしろ彼らの言動に目を奪われてしまったのですが。

たとえば……

・元々は議員秘書で、田中角栄を思わせる豪快な喋り方とリーダーシップを持つ明石氏

・ピンクのワイシャツの第3ボタンまで外れている、野獣のような迫力の川島氏

・陸上自衛隊出身で当時からネットワーク領域に造詣の深い藤木氏

・ギャル男でプレイボーイの西村氏……等々

ただし、キャラが立ってるのに、殺伐としたコンサル業界を生き抜けてきた以上、いずれの方も仕事の方では抜かりありません。

もっとも、そのTIPSは俗人性が強すぎるため、仕事術としてご紹介できないものがほとんどであり、かえって上記で挙げたような、コンサル業界では王道のやり方の方が、私たちの参考になると思った次第。

◆さて、コンサル業界では、コンサルタントの見習いであるアナリスト、ジュニアコンサルタント、シニアコンサルタントと出世するにつれて、求められるスキルも変わります。

本書では下記目次にもあるように、アナリスト編、ジュニアコンサルタント編、シニアコンサルタント・マネージャー編の3つの部に分けて、それぞれの業務内容やスキルについて解説。

この中では、やはり第Ⅰ部のアナリスト編が、仕事術としては充実していました。

たとえば上記ポイントの1番目では、「2時間集中」を原則としつつも、もし手が止まるようなら、20分で上司に報告することを推奨。

実際、「下手な考え休むに似たり」とはいいますが、20分を過ぎるようなら、それは考えているのではなく悩んでいますよね。

◆また、昨今嫌われがちな会議も、コンサル会社にとっては一種の晴れ舞台のようなもの。

特に会議調整は、著者のメン獄さんいわく「舞台演出」なのだそうです。

そこで上記ポイントの2番目において、その手順を明らかにしました。

もちろん他にも、椅子が足りない場合に備えて、借りる段取りをつけたり、プロジェクタの規格があっているか（変換アダプタの要不要）を確認する等も忘れずに！

なおこれらを含んだ、「会議前日までのチェックリスト」も本書では収録していますから、ぜひご活用ください。

◆なお、この第Ⅰ部では、第4章までの各章の終わりに、「スピードスキル集」なるコラム的なパートが登場します。

「議事録篇」「Excel篇」「PowerPoint篇」「コミュニケーションツール篇」といずれもハイライトを引きまくっているのですが、むしろそれぞれのボリュームが大きくて、引用しにくいのが惜しまれるところ。

その中から唯一ご紹介できたのが、「コミュニケーションツール篇」から抜き出した上記ポイントの3番目の「コミュニケーションの基本ルール」です。

なるほど、これを社内で実践していれば、スピードアップすること間違いなし！

特に「発言する際は主語を明示し、必ず誰の意見であるのかをはっきりさせる」というのは、日本語の欠点である「主語抜け」を補うものとして、意識したいな、と。

ただし、このポイントの3番目のようなノリで、クライアントと話をするのは失礼なので、その点については本書の後の方で言及されていました。

◆さて、第Ⅱ部では「ジュニアコンサルタント編」ということで、部下に対するアサインの仕方についても当然登場します。

上記ポイントの4番目の「部下への作業依頼の鉄則」は、わかっちゃいるんですが、くれぐれも「自分でやった方が速い」と、抱え込まないようにしたいもの。

逆に、この引用部分の少し前では「生命線となり得るコアタスクについては絶対に部下に投げずに、自分自身の手で行おう」とありました。

こういった「作業の切り出し」を正しく行うのも、ジュニアコンサルタントの大事なスキルです。

そして上記ポイントの5番目は、巻末の特別付録からのもの。

こちらでは【社内篇】と【対外篇】でそれぞれ30ずつ、思わずニヤリとするような言い換えが掲載されています。

特に参考になるのは対外篇の方で、言い換え前のようにラフに思うことはなくとも、顧客や取引先に対して「オトナの言い方」をするのが、スマートなビジネスパーソンと言えるかと。

逆に社内篇の方は、本書を読む限り、言い換えしないでそのまま言ってる人もちらほら居たような……。

リアルな「コンサルタントの仕事術」がここに！

コンサルティング会社　完全サバイバルマニュアル (文春e-book)

第Ⅰ部アナリスト編私大文系バンドマン。コンサルタントになる
第1章「"速い"はそれ自体が重要な価値だ」
第2章「ピカソの絵を買う人は値段を見て買わない」
第3章「自分の限界を会社の限界にするな」
第4章「3ヶ月後に何を言えれば成功なのか？」
第5章「お前がいないくらいで潰れるようなチームじゃない」

第Ⅱ部ジュニアコンサルタント編限界労働。その先
第6章「顧客の歴史に敬意を払え」
第7章「前提を疑え」
第8章「あなたが社長ならどうします？」
第9章「作業を切り出せ」

第Ⅲ部シニアコンサルタント・マネージャー編
第10章「真剣にやってその程度なら降格しろ」
第11章「お前って結局何ができる奴なんだっけ？」
第12章「最高のチームでした」

特別付録ビジネス言い換え集＠メン獄