2024年03月09日
【抗老化?】『老化は治療できるか』河合香織
老化は治療できるか (文春新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「文藝春秋 ウルトラ電読フェア2024」の中でも、個人的に気になっていた健康本。母が認知症であり、かつ、私自身も老いを痛感する年ごろなので、色々と勉強になりました。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
権力も金もほしいままにした人間が、究極的に求めるもの……秦の始皇帝も、エジプトのファラオも、そして現在の世界の富裕層も躍起になって求めているのは「不老不死」である。ロシアのプーチン大統領も、鹿の血の風呂に入っているとメディアで報じられたことがあった。
金持ちや権力者だけではない。いま日本では一般人にもアンチエイジングが大流行である。老化防止を謳う化粧品や健康食品が市場に溢れ、テレビCMでも頻繁に流れている。
しかし、不老不死が人類の永遠の夢であっても、決定的な妙薬や技術はいまだ発見されてはいない。はたして人は何歳まで生きられるのか? 不老不死は可能なのか?……世界最先端の研究成果を紹介する。
それと同時に、科学者たちがおすすめする「日常の中でできるアンチエイジング」のコツも披露する。
送料を足した中古よりは、このKindle版の方が400円以上お買い得です!
【ポイント】
■1.人間の最大寿命には限界がある?生命の連続性を支えるゲノムの再生(若返り) 機構について研究する東京大学定量生命科学研究所の小林武彦教授は言う。
「日本における100歳以上の人口は、毎年数千人増え、現在は9万人を超えています。私が生まれた60年前は、100歳以上の人は150人ほどでした。ただし、これほど平均寿命が延びたのに、なぜか最大寿命はほとんど延びていないのです」
小林教授はベストセラーとなった『生物はなぜ死ぬのか』(講談社現代新書) の著者で、あらゆる生物にとって避けられない「死」の持つ意味を、生物学の視点から読み解いている。
一見すると、115歳も120歳も122歳も、数字としてはそれほど大きく変わらない。しかし、これらの数字の間には最大寿命という意味では大きな壁がある。115歳の人は稀にいるが、125歳の人は記録の上では人類史上一人も見つかっていないのだ。
■2.DNA修復能力を上げれば寿命が長くなる?
ハダカデバネズミは、ゾウと同じようにほとんどがんにならない。それはDNAにダメージを受けた場合の修復力が強いことが一因だと考えられている。
「私たちの研究では、ハダカデバネズミとマウスの神経幹細胞(神経細胞の元となる幹細胞) を培養して、同じ量の放射線を当てた場合、DNAへのダメージがハダカデバネズミの方が低いことがわかりました。照射された次の日に死亡数を比べると、ハダカデバネズミの細胞はあまり死んでいない一方、マウスの細胞は4割くらいが死んでいました」
ハダカデバネズミは人類とは遠い生物のように思えるが、DNAの修復に関わるタンパク質は、人間と共通だという。「ヒトでもそういったタンパク質の活性を上げれば、もしかしたら寿命が長くなる可能性はあるかもしれない」と三浦教授は話す。
さらに、インフラマエイジング(炎症による老化) と呼ばれる、慢性的な炎症が続くことで身体の老化が加速するメカニズムについても、ハダカデバネズミでは起こりにくいことを三浦教授らは明らかにした。
■3.糖尿病治療薬に効果が
メトホルミンは糖尿病の安価な治療薬として60年以上使われているが、さまざまな研究から人間の健康寿命を延ばすアンチエイジング効果がわかっている。
米国国立老化研究所は、低濃度のメトホルミンを投与したマウスは、そうではないマウスに比べ寿命が5%程度延びることを報告。さらにヒトの長寿遺伝子を世界で初めて発見したアルバート・アインシュタイン医科大学のニール・バルジライ教授らの研究チームは、メトホルミンの長寿効果を調べる臨床試験を始めると発表した。
メトホルミンに専門家たちが注目したきっかけの1つが、英国で実施された18万人以上のデータを用いた研究である。約7万8000人の糖尿病患者と同数の健常者を比べたところ、メトホルミンを服用する70〜75歳の糖尿病患者は、糖尿病ではない人たちに比べ、死亡率が15%も減少し、寿命が長かったことが明らかになった。
■4.いますぐできる「デュアルタスク」
富田教授は言う。
「たとえば認知症の予防で注目されているのは、『デュアルタスク』という運動の手法です」
これは有酸素運動をしながら「頭を働かせる」というもので、たとえば、息があがるくらいの運動をしながら画面上でクイズを解くのもその1つだ。
「運動しているときは、何かをちょっと考えながらやるといいと思いますね。その方が脳の広い領域が活性化されていると言われているからです。かくいう私もランニングするときは、なるべくいろんなことを考えるようにしています。運動するときは無心の方がいいという考え方もあると思いますが、意図的に難しいことを考えながら運動する方が、脳にとっては良い影響があるのではないか、と思います。若い世代であれば、ランニングをしながら意図的に難しいことを考えると、認知症の予防になるのではないかと思います」
■5.睡眠時間対策が加齢対策になる
柳沢機構長が発見した「オレキシン」の拮抗薬が不眠症治療薬として発売されている。オレキシン拮抗薬は髄液中のアミロイドβやリン酸化タウタンパク質を減らすという最新の研究もある。
「一晩だけの急性効果のデータであるため、認知症の予防になるかどうかはまだ分かりません。しかしこれは期待の持てる報告です。オレキシン受容体拮抗薬には依存性がないため、眠れるようになったら卒業できるという利点もあります」
付け加えると、マウスレベルの実験では、レム睡眠を人工的に増やしたマウスは、アルツハイマー病の原因となるアミロイドβが減ることも分かった。さらにレム睡眠増加マウスはストレス耐性が向上し、アルツハイマー病モデルマウスの実験でも、レム睡眠量が少ない個体ほど学習成績が悪い。
「これらのデータから、加齢の影響を少なくする一番の近道は、睡眠時間について考えることだと言えるのではないでしょうか」
【感想】
◆冒頭でも触れたように、色々と勉強になりました。たとえば、第1章の章題が「ヒトは何歳まで生きられるのか?」というものなのですが、直接答えになっている感じなのが、上記ポイントの1番目。
確かに、ひと昔前に比べて平均寿命がずいぶん伸びたことは知っていましたが、米ニューヨークのアルバート・アインシュタイン医科大学の研究グループの論文によると「人の寿命は115歳」なのだそうです。
もちろん、中にはそれ以上に生きていた人も記録には残っていますが、極めてまれ(上記論文によると、「世界のどこかで125歳まで生きている人を見つける確率は1万分の1未満」とのこと)。
ちなみに引用内に登場する小林教授は、人間の本来の寿命は「55歳程度」であると推定されています。
「その根拠は2つあります。1つは55歳を過ぎるとがんの死亡率がぐんと上がること。もう1つは、人間と同じ霊長類でゲノムが約1%しか違わないチンパンジーやゴリラの寿命が60歳を超えないからです。このように考えると、人類が本来の大型霊長類の寿命である55歳を超えて生きられる理由には、ヒト特有の何かがあるのだと思います」そう考えると、日本人の平均寿命84.3歳も立派なものですね。
◆続く第2章では、章題が「不老不死の生物の謎」ということで、いきなり「人間以外の生物」が多々登場。
特に意外だったのが、上記ポイントの2番目で取り上げられている、ハダカデバネズミです。
下記は本書とは関係ない動画ですが、画像の代わりにご覧下さい。
私自身、見た目が変わったネズミだな、という意識しかありませんでしたが、これがまたビックリするような生態だったという。
・ハツカネズミの寿命が平均3年のところ、平均寿命が30年!?
・無酸素でも18分間生きられる
・癌になりにくい
・加齢による死亡率の上昇が見られない
3番目の癌の話は、上記ポイントでも触れられていましたが、とにかく変わった生き物であることは間違いなく。
いずれにせよ、彼らを研究することが、人間の寿命を伸ばすことにつながるのであれば、今後の研究の結果を待ちたいところです。
◆さらに、アンチエイジングに効果がありそうな薬が紹介されているのが、上記ポイントの3番目。
これも同じく第2章から引用したのですが、確かに「メトホルミン」については、Wikipediaでも抗老化作用に触れられていますね。
メトホルミン - Wikipedia
なお、この第2章は、ハイライトを引きまくったので、他にも触れておきたいお話がいくつも。
特にスタンフォード大学の研究で、老化は一定のペースで進むのではなく、「34歳の青年期」「60歳の壮年期」「78歳の老年期」の3つの段階で「ガクッと進む」というお話は、確かに身に覚えがありました。
逆に言うと、なだらかだと気がつきにくい自分自身の老化も、一気に進めば実感しやすい、ということかもしれません。
◆一方、「脳」の老化について見ていったのが、第4章の「問題は『脳』にある」です。
ここでは認知症について多くのページを割いており、冒頭で触れたように、最近母の認知症に悩んでいる私にとっては、得るところが多々。
ただし、仕組みが分かったとしても、それが実践できるかはまた別ですし、現状、認知症の進行を止める(緩める)ことはできても、改善するところまではできないのだそうです。
一応、実践しやすそうなものとして選んだのが、上記ポイントの4番目の「デュアルタスク」。
かつて「ルームランナーに乗りながら読書をする」のが、一部で流行りましたが、これぞまさに「デュアルタスク」ですよね。
ただ、母のように高齢になると、そもそも運動自体に骨折の恐れがあるので、色々と難しく……。
◆そして最後のポイントの5番目は、第5章の「科学が解明した『長寿の生活習慣』」からのもの。
睡眠が大事なことは、もう何度も当ブログでは触れていますが、その一方で私自身は、真夜中に原稿書いている(現在夜中の3時)という大きな矛盾。
ただ、睡眠不足で寿命が短くなるのはさておき、身体がまだ元気なまま、認知症になってしまうのは、最近の母を見ていると切ないな、と思う次第です。
なんたって本書によると、「睡眠不足によって高まる認知症のリスクは4倍」だそうですから、シャレになりません。
一応、私は1日に3回くらい仮眠をとってはいて、何とか日々の生活は回していけているものの、抗加齢や寿命に密接に関係するレム睡眠は、睡眠の後半に増えるそうなので、昼寝では補えないっぽいんですよね……。
まぁ、このブログも、スマホで読まれる方が増えたので、読みやすいようにもうちょっと短くして、私の睡眠時間を稼ぐのもアリかもしれませぬ。
老化に抗うために読むべし!
老化は治療できるか (文春新書)
第1章 ヒトは何歳まで生きられるのか?
第2章 不老不死の生物の謎
第3章 究極の「若返り物質」を求めて
第4章 問題は「脳」にある
第5章 科学が解明した「長寿の生活習慣」
第6章 「長すぎる老後」をどう生きるか?
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【編集後記】
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