2024年02月23日
【トーク術】『トークの教室: 「面白いトーク」はどのように生まれるのか』藤井青銅
トークの教室: 「面白いトーク」はどのように生まれるのか (河出新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事の中でも、トップクラスにお求めいただいている1冊。著者は「数多の新人アイドル、芸人に寄り添い、巧みなアドバイスで彼らのトーク力に磨きをかけてきたメンター、放送作家」の藤井青銅氏です。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
トークに悩める全人類&ラジオファン必読!
数多の才能を見出した放送作家がそのトーク術をついに皆伝。
オードリー 若林正恭さん推薦!!
「この教室の授業のせいで、痛い目にあった時に
「儲けた〜」と思ってしまう身体になりました。」
中古が値下がりしていない一方、Kindle版は、「10%OFF」とお買い得です!
Girl Talk / deanwissing
【ポイント】
■1.メモはいいけど台本にしないこの台本例は、最初こそ、
「もうすぐクリスマスですね」
と喋り言葉になっていますが、そのあとは、
〇街はイルミネーションがきれい。
〇子供の頃、クリスマスはとても楽しみなもの。
とそっけない書き方になっています。どうしてかというと、
「街はイルミネーションがきれいですね」
「子供の頃、クリスマスはとても楽しみでした」
なんて喋り言葉で書いてしまうと、人はついそれを読んでしまうからです。同じ内容を語るにしても、人それぞれに喋り方は違うはず。
「最近、街はイルミネーションがきれいじゃないですか」
「子供の頃はね、クリスマスがすごく楽しみだったんですよ」
などと自分なりの言い方で喋ってもらうため、あえてそっけなく書いているのです。〇とか*などの記号が多く、( ) で囲んだ部分があるのも同じ理由。キチンとした文章で書いてしまうと、喋る時どうしてもそれに寄っていき、原稿を読んでいるようなトークになってしまう。それが人間の心理です。
■2.できれば日常ネタで
どこか珍しい場所に行ってそこでアクシデントがあった…なんていうトークは、たいてい面白い。だから、それでもいいのです。けれど、
「ハワイに行く飛行機の中で……」
なんて言われても、普通の人の日常とかけ離れています。それより、
「会社に行く通勤電車の中で……」
の方が、ぐっと親近感が増します。
非日常的な大きな出来事ではなく、日常のなにげないところから話が始まる方がいいなあ、と思っています。そう、歯医者さんに行ったというのは、まさにそうです。他に、いつも行ってるお蕎麦屋さんが臨時休業で…とか、通販で買った電気製品が、届いてみたら予想以上に大きくて…とか。とりたてて大きな出来事ではないのに、なぜか話としては面白い。出来事ではなく、心の動きが面白いというパターンです。
■3.反面教師:「笑った話がある」で始める
私はこれから笑える話をする──と自分でわかっている点はいいのです。「これはなんの話なのか?」「この話のどこを面白がってもらうのか?」という点を、ちゃんと自覚しているわけですから。素直だから、ついそれを口に出してしまう。
すると、聞いている方は「このトークは最後に笑う場面がきて、それがオチだな」と知っているわけです。そこへ肝心の笑える場面がきても、笑いの量は少ないに決まっています。いわゆるネタバレ。意外性がありません。(中略)
この失敗は、笑いに限りません。
「この前、恥ずかしかったことがあるんですけど……」
「すごくビックリした経験がありまして……」
というのも同じ。トークの最後がどうなるかを聞き手が知っていれば、その予想を上回るものがないと、相手は満足しません。自らハードルを上げる行為はやめた方がいいでしょう。
■4.ハチ公前の交差点が「見えているのに見えていない」
渋谷は、私の学生時代から人気のある街で、よく行きました。渋谷にはNHKがあります。放送作家としても、よく行く街になりました。私は何十回、何百回もそこを通るたびにいつも、
「人が多い交差点だなあ」
と思っていました。おそらく東京に住んでいる人はみんなそうだろうし、テレビでもよく中継されるので、全国の方々もそういう感想でしょう。
ところがインターネットの時代になり、SNSが人気になると、外国人観光客によって、そこが東京の観光名所として一躍有名になったのはご存じの通り。
「信号が変わると、四方から大量の人々がどっと押し寄せ、それぞれがぶつかりもせずに交差点を渡りきる。それを二分ごとに一日中、秩序立てて繰り返している。この光景は実に日本人らしい」
言われてみれば、日本人らしいのかもしれません。(中略)
「とくに雨の日は、上から見ると色とりどりの傘が交錯し、動くモザイク画を見ているようで美しい」
たしかに美しい。映画『シェルブールの雨傘』のオープニングと同じ光景が目の前にあったのに、私たちは見ているのに見えていなかったのです。
■5.「あなた」に喋る
私が放送作家になって最初にプロデューサーに教えられたのは、
「ラジオに『みなさん』はないから」
ということでした。
「『みなさんお元気ですか?』とか『みなさんはどう思いますか?』とかいうセリフがある。テレビはお茶の間で家族で見ているけど、ラジオはだいたい部屋で一人で聞いている。呼びかける場合は『みなさん』ではなく『あなた』なんだ」
なるほど、たしかにそうだ! と深く納得しました。当時、テレビはまだ一人一台の時代ではありませんでした。その後、一人一台になりました。さらに現代ではテレビは見ずに、一人一人が小さなスマホで動画を見るようになりました。
しかし、YouTubeなど、チャンネル登録者が百万人いようとも、見ている時はたいてい一人です。百万人のカタマリの「みなさん」というものが存在するのではなく、「あなた」という一人一人が集まって百万人いる、と考えた方がいいのでしょう。人数が何人いようと、語りかける相手は常に「あなた」なのです。
【感想】
◆改めて「面白いトーク」とはなんぞや、ということを考えさせられる1冊でした。そもそも、本書でテーマにしている「トーク」とは、著者の藤井さんがラジオの放送作家であり、芸人さんや新人アイドルさんの番組裏方をやっていたこともあって、ラジオ番組で放送されるものを念頭に置いていることは間違いありません。
ただ、藤井さんが就職を控えたマスコミ志望者たちの集まりに、ゲストスピーカーとして出演した際、質疑応答で「面接の時の自己アピール」としても、「面白いトーク」のニーズがあることを知ったのが、本書誕生のベースにもあるらしく。
要は、雑談等で思いつきでペラペラ話すのではなく、ある程度事前に準備をして、その内容を披露する「トーク」、といった感じです。
おそらく、本書に沿って鉄板ネタのトークを用意しておけば、簡単な自己紹介や、会合での挨拶、果ては合コン等でも使えるのではないでしょうか。
◆具体的なテクニックとしては、たとえば第2章から抜き出した上記ポイントの1番目。
こちらはラジオの台本なので、文章にするとそのまま読み上げてしまう可能性があるところ、メモに留めて「自分の言葉」「自分の喋り方」にすることを推奨しています。
そして本書の上記引用に続く部分では、逆に「記者会見で質問に答える政治家が、役人の書いた文章を読んでいる」シーンを比較。
確かに後者の「心のこもってない感」は半端ありません。
また、同じ第2章からは、上記ポイントの2番目の「できれば日常ネタで」をセレクトしました。
なるほど、日常の出来事から、「面白さ」を抽出できた方が、聴いている人の共感は得られそうです。
ただ「日常ネタ」より、「特異な体験」を話した方が、ツカミがあるのも事実なんですよね……。
◆一方第3章では、トークをする上でマネしてはいけない「反面教師」が合計12個紹介されています。
「話が長い」「一方的に喋る」「小声でボソボソ喋る」等の、当たり前なNGとは別に、個人的に「目からウロコ」だったのが、上記ポイントの3番目。
要は、トークの最後がどうなるかを、先に話してはいけないワケで、これって、ビジネス本のお約束である「結論から話す」とはまるで逆なのですが、確かに当然です。
さらにはこれに関連した、別の「反面教師」例として、「要約を先に言う」というものもありました。
「笑った」「びっくりした」のように分かりやすくはないのですが、
「人って年を重ねても変わらないなあと思ったんだけど……」と最初に言われてしまったら、結局ネタバレであることは同じですよね。
ビジネススキルの高い方ほど、「結論から先に言わない」よう、ご注意ください。
◆また、上記ポイントの4番目のハチ公前のスクランブル交差点のお話は、本書の第4章からのもの。
これはトークのコンテンツにも関係するのですが、「目の前にあるのに見ていない」「外からの視点によって初めて、そこに何かあることに気づく」のを、藤井さんは「切り口」と呼んでおり、その代表例として紹介されていました。
それ以前に私は、あのスクランブル交差点が、外国人観光客に人気だとは、本書を読んで初めて知ったという(情弱)。
そういえば、たまに渋谷から井の頭線に乗る際、結構な人数の人が上から写真を撮っていることがあったのですが、それはそういうことだったのか、と。
……何か起きているのかと思って窓際に近づいて外を見ても、何もなかったのも当然ですし、まさに「目の前にあるのに見ていない」そのものでした。
◆そして第5章から抜き出したのが、上記ポイントの5番目。
「ラジオから学ぶ」という論点で5つ挙げられた中の1つなのですが、これぞまさに「ラジオならでは」の視点でしょう。
ただし、ここでも触れられているように、現在のようなスマホ全盛期にこそ、すべて「あなた」で語りかけるべき!
……ホントはこのブログもそうしたかったんですが、ついつい「皆さん」と書いてしまっております(ダメじゃん)。
なお、割愛した中には「特別企画」として「紙上トークレッスン」なる、藤井さんによるトークの添削授業もアリ。
こちら、スピーカーとなったお三方のキャラによる部分もありますが、参考になるお話が多かったです。
「自分に合ったトークの正解」を見つけたい方に!
トークの教室: 「面白いトーク」はどのように生まれるのか (河出新書)
第1章 「面白いトーク」という呪縛
第2章 トークの構造
第3章 「つまらない」にはワケがある
第4章 トークの「切り口」
第5章トークの「語り口」
第6章 「ニン」に合うトークとは?
第7章 トークの居場所
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【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。ロバート・オッペンハイマー ――愚者としての科学者 (ちくま学芸文庫)
日本でも映画が公開されることになり、これから話題が高まりそうな「ロバート・オッペンハイマー」をテーマにしたこちらは、Kindle版が1500円以上お得。
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【編集後記2】
◆一昨日の「Kindle本ポイントキャンペーン」の文藝春秋分の記事で人気が高かったのは、この辺の作品でした(順不同)。世界一流エンジニアの思考法 (文春e-book)
情報なき国家の悲劇 大本営参謀の情報戦記 (文春文庫)
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イーロン・マスク 下 (文春e-book)
よろしければご参考まで!
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