2024年02月16日
【科学的勉強本】『科学的根拠に基づく最高の勉強法』安川康介
科学的根拠に基づく最高の勉強法
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは先日の「未読本・気になる本」の記事でも大人気だった勉強本。かつては「勉強本マニア」を自認していた私ですから、「科学的根拠」「最高」なんてフレーズを見たら、読まざるを得ませんでした。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
脳は使い方次第! 「記憶力」× 「超効率化」× 「時短」の勉強法
306万回以上再生されているYouTubeの大人気動画「科学的根拠に基づく最高の勉強法」を書籍化。
私たちが今まで慣れ親しんだ、繰り返し読む(再読)、ノートに書き写す・まとめる、ハイライトや下線を引く、といった学習法は、実は身につきにくいやり方だった。
覚えたことを思い出す、人に教えられる=アウトプットこそが成長につながる、研究によって検証された効率的な勉強法です。
先日は定価だったKindle版が、今は「10%OFF」とお求めやすくなっています!
/ Monica Holli
【ポイント】
■1.再読の有用性は低いさまざまな学習方法の有用性について、膨大な過去の研究を調べてまとめたケント州立大学心理学部のダンロスキー教授らによる有名な報告書があります。(中略)
再読に関して、ダンロスキーらの報告書では、以下のように評価されています。「今ある科学的根拠に基づき、再読の有用性は低いと評価する」その理由として、例えば、大学生以外ではあまり効果が検証されていないこと、再読による理解を高める効果があまり明確ではないこと、そして最も重要な点として、後述する他の学習方法と比べて効果が低いことが挙げられています。
時間をかけて教科書や参考書、英単語の本を何度も繰り返し読んでいるのになかなか覚えられない、テストの点数が伸びないといった人は注意しましょう。
■2.決定的に重要な「アクティブリコール」
まず、学ぶために決定的に重要なのが「アクティブリコール(Active recall)」です。
なんだか難しい言葉ですが、簡単に言えばアクティブリコールとは「勉強したことや覚えたいことを、能動的に思い出すこと、記憶から引き出すこと」です。
「え? 記憶したいことを頑張って記憶から引き出す? それだけ?」、そう思われる方も多いかもしれません。
実は、これまでの学習に関する数多くの研究から、何かを記憶するためには、それを積極的に思い出す作業や、脳みそから頑張って取り出す作業こそが、決定的に重要だということが明らかになっています。
学術的にはアクティブリコール以外にも、想起練習・検索練習(Retrieval practice)、練習テスト(Practice test)と呼ばれることがありますが、同様の概念です。
■3.最強の学習法「連続的再学習」の手順
もし僕が連続的再学習で、難しい英単語20個を覚える場合、英単語を見て、発音しながらスペルを書き出し、日本語の意味も声に出してみます(プロダクション効果)。その後、今度は 何も見ずに 英単語のスペルと意味を思い出せるだけ、ブツブツ言いながら白い紙に書いていきます(アクティブリコールとプロダクション効果)。
その際、特に覚えにくいものは、教えているフリをしながら行います(プロテジェ効果)。
その時点で覚えていなければまた単語のリストを見て、英単語のスペルや意味を確認します(フィードバック)。
再度アクティブリコールをして、覚えていない単語をまた確認(フィードバック)という過程を、すべての英単語について少なくとも1回はアクティブリコールできるようになるまで繰り返します。これで1回目の勉強は終了です。
そして、難しい単語の場合は、1日以内にまたアクティブリコールし、忘れている単語があればまたフィードバックします。
この流れを、分散学習で繰り返します。
■4.効果が高い「自己説明」
精緻的質問と同様に、効果が高いとされている勉強法として、「自己説明(Self-explanation)」があります。
自己説明とは、何かを学習している時に、学習者が自分自身に向けて、学習内容や学習過程の理解について説明することを指します。(中略)
「自分はここがまだはっきりわかっていないな」「ここは大分理解できたと思う」など、自分の学習を客観的に評価することも自己説明になります。なので「自分の認知についての認知」である メタ認知 が必要なプロセスであるとも言えます。自分の思考や学習を客観的に見つめるメタ認知は学習において非常に重要です。
■5.科学的に検証されている「インターリービング」
科学的に検証されてきた効果的な学習方法として「インターリービング(Interleaving)」を紹介したいと思います。Interleaveは日本語に訳すと「交互に重ねる」、「(特定のページなどをページなどの)間にとじ込む」といった意味があります。
インターリービングを簡単に説明すると、似ているけれども異なった複数のスキルや勉強のトピックを交互に学習する学習法のことを指します。(中略)
この研究でも、ブロック学習をするグループと、問題を混ぜてインターリービングして学習するグループに分けて、その学習効果の違いを調べました。
練習問題を解いている段階では、ブロック学習をしている生徒のほうが正答率は99%と高く、インターリービングを行って学習している生徒は68%と低いものの、1日後のテストでは、インターリービングを行った生徒の正答率は77%とブロック学習をしている生徒らの正答率38%を大きく上回っていました。
【感想】
◆「勉強法」というジャンルとしては、王道的な内容でした。ただし著者の安川さんはアメリカの医師試験をトップ1%で合格された方、ということで、本書内ではやたらと英語表現が用いられています。
たとえば上記ポイントにある「アクティブリコール」やら「インターリービング」なんてワードは、何百冊も勉強本をレビューしている当ブログでも初登場でした。
もっとも本書の巻末には、1つを除いてすべて英語の参考文献が150超も掲載されていますから、そちらで用いられている表現なのかもしれませんね。
試しにググってみたら、どちらも勉強系のサイトがヒットしますし、当ブログが置いてかれ気味なのかも。
◆一方で本書が大胆なのは、第1章の「科学的に効果の高くない勉強法」にて、従来類書で推奨されていた勉強法をdisっていること。
上記ポイントの1番目の「再読」もその1つで、「●回読み勉強法」に喧嘩売ってるのか、というくらいです。
もっとも私も、当ブログで何度か「再読」については疑問を投げかけていましたし、安川さんの主張も分かります。
特に私の場合は、何度もただ読んでいるだけだと思考が停止しちゃうんですよね……。
とはいえ注意していただきたいのは、「有用性が低い」だけであって、そもそも効果がゼロではありませんから、一応ご注意を。
また、この章で同じく「あまり効果がない」と指摘されたのが「ハイライトや下線」です。
ただしこちらは、安川さん自身も「あとで覚え直すところ、何か資料として使えそうなところはマークしておく」そうですから、「勉強した気にならない」ようにするなら、実践してOKとのことでした。
◆逆に効果が高い、と言われているのが第2章にて取り上げられた勉強法の数々です。
たとえば上記ポイントの2番目の「アクティブリコール」がその筆頭で、これは俗に「想起」と言われるもの。
それこそ当ブログでも何度も登場している勉強法の1つです。
本書では各研究報告が、類書に比べて詳しく載っており、「アクティブリコール」も研究結果を見るかぎりでは、その効果が明らかでした。
また、この「アクティブリコール」と、「間隔反復(分散学習)」を組み合わせたのが、上記ポイントの3番目の「連続的再学習」です。
こちらは途中で、いくつか見慣れない用語が出てくるので補足しておくと、まず「プロダクション効果」とは「声に出したり、紙に書いたりした方が記憶に残る」というもの。
続く「プロテジェ効果」とは、「誰かに教える、または教えようとすることで理解が深まること」であり、「フィードバック」は……まぁ分かりますか。
◆一方、上記ポイントの4番目の「自己説明」は、「メタ認知」ができていないと難しいかもしれません。
メタ認知 - Wikipedia
当ブログでは、そちらをテーマにした作品をレビューしているので、お時間のある方はそちらもお目通しください。
メタ認知-あなたの頭はもっとよくなる (中公新書ラクレ, 755)
参考記事:【超勉強法?】『メタ認知-あなたの頭はもっとよくなる』三宮真智子(2022年02月16日)
そして最後の「インターリービング」とは、ここにもあるように「似ているけれども異なった複数のスキルや勉強のトピックを交互に学習する学習法」のこと。
逆に「ブロック学習」とは、「同じスキルやトピックをそれぞれまとめて学習する」ことを言います。
注目すべきは、学習直後はブロック学習の方が正答率が高いものの、1日後には逆転しているということであり、それがゆえ「インターリービング」は効果を実感しにくいのだとか。
そこで本書によって、そのギャップに納得し、「インターリービング」にて学習していただきたいところです。
◆さて、ここまででまだ本書は第2章であり、第3章の「記憶術」、第4章の「心・体・環境の整え方」まで到達できませんでした。
もっとも、記憶術はそれだけで本がたくさん出ていますし、睡眠や運動のお話も、当ブログで過去さんざんやっていますから、割愛してもいいかな、と。
なお、最後になりましたが、安川さんが上記ポイントの3番目で英語の覚え方を解説されている内容を、ほぼ実践している動画がYouTubeにありましたのでご紹介。
ところで勉強法に関する私の考えとして、基本的に一定数以上の他人を指導した経験のない著者さんのメソッドは、再現性が保証されないと思っております(もちろん例外はありますが)。
安川さんも、塾や学校の講師や、家庭教師の経験はないハズですが、こうして動画でコメントを得られていますから、そういう形でのフィードバックもアリかもしれませんね。
科学的にも効果の高い勉強法がここに!
科学的根拠に基づく最高の勉強法
第1章 科学的に効果の高くない勉強法
第2章 科学的に効果が高い勉強法
第3章 覚えにくいものを覚える古代からの記憶術
第4章 勉強にまつわる心・体・環境の整え方
【関連記事】
【超勉強法?】『メタ認知-あなたの頭はもっとよくなる』三宮真智子(2022年02月16日)【勉強法】『脳科学が教えてくれた 覚えられる 忘れない! 記憶術』篠原菊紀(2016年01月10日)
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【勉強法】『実験心理学が見つけた 超効率的勉強法: ~復習はすぐやるな! 思い込みで点数アップ!~』竹内龍人(2014年04月28日)
【編集後記】
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