2024年02月12日
【質問力?】『質問の一流、二流、三流』桐生稔
質問の一流、二流、三流
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「明日香出版社 創業52周年記念フェア」の中でも、個人的に読みたかった1冊。著者の桐生稔さんは、コミュニケーションの専門家であり、「伝わる話し方」のセミナーを全国で多数開催されているという方です。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
いま、一流のコンサルタント、コーチ、カウンセラー、会社のマネジメント層やスポーツチームの監督にいたるまでが、徹底的に質問スキルを学んでいます。
一流は、相手の心に響く「言葉」より、相手の心の琴線に触れる「質問」の方が、相手の行動を変えることを知っているからです。
本書には、一流の質問力を最速で身につける方法をまとめました。
本書を読むことで、明日から質問がしたくなり、そして質問のクオリティがメキメキ上がるはずです。
仕事ではもちろん、家庭でもプライベートでも役立つ内容です。
中古がほとんど値下がりしていないため、このKindle版が800円弱お買い得となっています!
questions / Enderst07
【ポイント】
■1.複数の選択肢を用意して質問する「指示を仰ぐときは自分の意見とセット」ということがビジネス研修ではよく指導されます。
「○○商事様からクレームが入ったようです。どうしたらいいですか?」と質問されるより、「○○商事様からクレームが入ったようです。まず弊社の担当者に状況をヒアリングしたいと思いますがいかがでしょうか?」と、持論とセットで質問される方が相手は答えやすいからです。
それはとてもいいことですが、一流はさらに上をいきます。複数の選択肢を示しながら指示を仰ぐのです。(中略)
先ほどの例なら、
「○○商事様からクレームが入ったようです。
A:まずは弊社の担当者に状況をヒアリングするか
B:至急私が○○商事様に連絡を入れるか
今回は至急私が連絡を入れた方がいいと思いますが、いかがでしょうか?」
と、比較検討できる状態で質問します。
■2.共に味わってから質問する
たとえば、「昨年、会社が倒産しかけたんです」というお話。
「何があったんですか?」「どうしてそうなったんですか?」「どうやって乗り越えたのですか?」と質問ばかりすると、尋問のようになります。
そこで、質問する前にひとこと、その苦労を共に味わう言葉を付け加えてみてください。
「そうなんですね。それは本当に大変でしたね。 何があったのですか?」 「そんなことが……。相当ご苦労されたのではないですか。 どうしてそんなことに?」 「それは厳しい経験をされましたね。 どうやって乗り越えたのですか?」
同じ質問をするにしても、ひとこと、共感のメッセージがあるだけで随分と尋問っぽさが抜けたと思います。
共感することで、相手との心の距離が近づくからです。
■3.回答の意味が分からないときは、自分の理解が合っているか質問する
2015年に、マイナビが社会人490名に実施した調査によると、「会話を『つまり……』とまとめ直されるとイラッとする社会人は約6割」とのこと。理屈っぽさが面倒くさい、上から目線に感じるからだそうです。
相手を傷つけてはいけない。
これは一流が細心の注意を払っていることです。傷つけた方は覚えていないですが、傷つけられた方はずっと覚えていることを知っているからです。
だからこそ、相手の話がわかりづらかったときは、「つまり○○ですよね?」ではなく、「○○という理解で合っていますでしょうか?」と質問します。
「つまり○○ですよね?」は、私があなたの意見をまとめてあげたという態度です。
一方、「○○という理解で合っていますでしょうか?」は、私の理解が及んでいないかもしれないので、あなたに教えてほしいという態度です。
前者は自分の立場を上げる、後者は 相手の立場を上げる質問 です。根っこの真意が違います。
■4.仮説を使って質問する
営業職が一番緊張するのは、お金の話をするときです。いくらいい雰囲気で商談が進んでいたとしても、お金の話になると一気に空気が張り詰めます。
そこで、一流の営業ほど仮説を使うのです。
「いったん費用のことは置いておいたとして、 もし 購入したら、効果はあると思いますか?」
「もし」を使うと、まだ買うと決まっていないので急に答えやすくなります。でも、購入したときのことを想像するので、購買意欲は高まります。
上司に「手いっぱいです。誰か手を貸してください」と相談したら、「それぐらい自分でやりなさい」と言われるかもしれません。
そんなときも、「仮に手を貸してくれる人がいたら、手伝ってもらっていいですか?」と仮説を使えば、上司はYESと言いやすいです。なんせ仮の話だからです。
でも、実際に手伝ってくれる人がいたらNOとは言えないでしょう。
■5.肯定してから質問する
誰かを叱るときをイメージしてみましょう。
「佐藤君はよく提出物が遅れるから気をつけなさい」
これは、否定です。相手の心はいきなり閉ざされます。心が閉ざされている状態では、あなたの伝えたいことは相手の心の中に入っていきません。
では、「肯定する質問」とは?(中略)「田中さんのことだから何か考えは持っていると思うんだ」(肯定)+「会議では言いにくい環境だったりする?」(質問)肯定+質問で伝えると、相手の警戒心が解かれ、「実は会議みたいに大勢の人がいるところで発言するのが苦手で……」などと、本音を吐露してくれるかもしれません。
叱るときは、まずは肯定することで心理的な安全性を確保する。
これを知ってから、私のマネジメント力は大きく飛躍し、最初は5人くらいのチームから、最終的には300人ものメンバーを統率するまでに至りました。
【感想】
◆タイトルにある「一流、二流、三流」というフレーズを見て、てっきり二流や三流のやり方にページを割く(実際、そういう作品もちらほらあります)パターンだと覚悟していたのですが、杞憂に終わりました。もちろん、本書で提案されているのは一流のTIPSだけとはいえ、比較するために二流や三流のやり方を取り上げてもおかしくはないところ。
ただし、本書において一流以外の事例は、必要がある場合だけ登場しており、間違っても水増しのネタにはされていませんでしたので、その点が心配な方は、ご安心ください。
ちなみに、第1章から引用した上記ポイントの1番目には、いきなりその一流以外の事例が載っているのですが、これこそまさにあっても良い例です。
私も社会人時代は三流のように「どうしたらいいですか?」と聞いていたものですが、その後ビジネス書を読むようになって、持論を付すべきことを知りました。
そして今般、その持論も複数の選択肢を持たせる、というテクニックを知った次第です。
◆また、こういうテクニカルな質問の一方で、本書で取り入れられているのが、エモーショナルな質問。
たとえば第2章からの上記ポイントの2番目では、共感してから質問することが推奨されています。
どちらかというと、相手の話を聞くスキルとして、共感は用いられることが多いと思いますが、質問の前に行うというのは、結構目からウロコ。
また、この第2章では類書でも登場する、「質問に『褒める』を混ぜる」こともTIPSとしてあがっています。
当ブログで取り上げた中で多かったのは、むしろ「ただ褒める」とわざとらしいので、「質問形式にして褒める」というパターンでしたね。
たとえばこの本とか。
話すより10倍ラク! 聞く会話術
参考記事:【51のTIPS】『話すより10倍ラク! 聞く会話術』に学ぶ褒めテク5選(2015年02月10日)
◆一方、少々驚いたのが、第3章から抜き出した上記ポイントの3番目。
私自身、「つまり」でまとめ直すのがNGだとは知りませんでした。
……といいますか、そんなことでイラっとしますかね?
さらに「○○という理解で合っていますでしょうか?」なんて、生まれてこの方、言ったことありませんよ。
これはもしかしたら、私が地雷を踏みまくっていたのかもしれないので、今後はこのフレーズを頭に叩き込んでおかなくては。
◆さらに、営業本で見かけた記憶があるのが、上記ポイントの4番目の「仮に」です。
こちらは本書の第4章からのTIPSなのですが、本書でも営業の例として登場するくらいですから、営業の方にとっては鉄板なのかもしれません。
なお、こちらの本では、「ストレートに催促しにくい相手」に対して「仮に」を用いていますので、ご参考まで(ポイントの5番目)。
「本音で話す」は武器になる
参考記事:【5選】『「本音で話す」は武器になる』に学ぶ本音テク5選(2019年09月04日)
なお、上記ポイントの5番目は、1つ飛んだ第6章からのもの。
ある意味「叱責」に近い「質問」をやわらげるために、「肯定」フレーズを付すことで、「心理的な安全性を確保」しているわけですね。
これも私の場合、子どもに対しては「叱責」のみで対応していたので、反省しきり……。
冒頭の内容紹介にある「仕事ではもちろん、家庭でもプライベートでも役立つ内容」というのも納得の1冊でした。
よりよい質問を身につけるために読むべし!
質問の一流、二流、三流
Chapter 1 質問のはじめ方
Chapter 2 盛り上がる質問
Chapter 3 好かれる質問
Chapter 4 思わず答えてしまう質問
Chapter 5 仕事で成果を出す質問
Chapter 6 やる気を上げる質問
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【編集後記】
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【音声DL付】杉田敏の 現代ビジネス英語 2023年 夏号
ものがたり世界史 古代〜近代へ
よろしければご参考まで!
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