2024年02月09日
【図解】『説明がなくても伝わる 図解の教科書』桐山岳寛

説明がなくても伝わる 図解の教科書
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、今月の「Kindle月替わりセール」の中でも、個人的に読んでおきたかった1冊。上記記事でも触れたように、この「図解」というテーマなのにリフロー形式なのは、非常にありがたかったです。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
時間をかけて作成した資料なのに、書き方ひとつで、伝わるもの・伝わらないものに分かれ、伝わらないものをつくった場合には、「時間と紙のムダ」になってしまいます。
それは、あなたが「読む気力を奪わない資料」「補足がなくとも、伝わる資料」をつくっていない証拠。
5つのポイントを押さえた図なら、相手の直感に訴えるので、即座に、正確に伝わります。
海外で言葉の通じない外国人に、デザインひとつで「伝える」工夫をしてきた著者が、「図」を使って人に伝える技術の大切なポイントだけをぎゅっとまとめました。
絶版ゆえか中古価格が高騰しているため、数字上このKindle版が1500円弱お買い得です!

Eisenhower-Matrix / o.tacke
【ポイント】
■1.写真とイラストはどう使い分ける?たとえば、“おせち料理”の具体的なイメージを外国人に伝えたいとき、“写真”はとても役に立つ。それぞれの食材の解説をつける場合にも、写真に線を引っ張ってきて説明を加えれば、扱いが簡単になる。
写真は「実際の雰囲気をそのまま見せる」のに都合がいい。あいまいさを排除して、リアルな姿をあますことなく伝えられるのだ。
反対に、たとえばシンプルな線画イラストレーションでは、その美味しそうな感じや豊かな彩りを直感的に伝えるのは難しい。
それでは、「注射器の使用法」の説明書に載せる図版は、写真とイラストレーションのどちらがいいだろう?
答えは、“イラストレーション”である。
たとえば、注射器をもつ看護師の服装、腕時計や指輪、あるいは肌の色などは、「注射器の使用法」にとって、すべて不要な情報である。患者の性別や年齢も必要ない。けれども、写真はこれらをすべて伝えてしまう。
イラストなら、不必要な情報をあらかじめ省いておくことができる。
■2.円グラフは「全体に占める割合」を主題とするときだけ
目にする機会も自身でつくる機会も多いが、実は、つくり手の期待に反して情報の主題がもっとも伝わりにくいのが円グラフである。
というのも、適切な使用法から外れると円グラフが本来持っている効果が失われてしまうからだ。そして、円グラフほど誤った用途に使われているグラフはない。
多くの人は、円の中の「ある割合と別の割合」を比較させる目的で円グラフをつくってしまう。これは間違いである。では、適切な使用法とは何か。
円グラフは、「全体に占める割合」を主題とするときにだけ使う。
これが原則だ。円グラフが伝えるのは「全体に対してどれだけの割合を占めるか」であり、ある割合が他の部分より大きいか小さいかを伝えるものではない。
■3.数値は右ぞろえ、単位は左ぞろえを原則とする
一覧表に数値を配置するとき、必ず守りたい原則がある。それは数値と単位の関係性だ。
“失敗例”を見てほしい。図表の中の数値がすべて左ぞろえで配置してある。読み取りにいささか不便を感じるはずだ。この不便の原因こそが“数値と単位の関係性”である。
“改善例”を見てみよう。まったく同様の情報だが、格段に読み取りやすくなっていることに気づくはずだ。
違いは2つある。
数値を右ぞろえにしてあること。そして、単位を左ぞろえにしてあることだ。
つまり、数値と単位の間を境にした左右対称の配置である。
私たちは習慣的に数値を右揃えにして比較するため、単位が数値と区別してあるほうが読み取りやすい。
一方で、単位は通常の単語と同様に左ぞろえとすることが重要だ。
■4.折れ線グラフと棒グラフは重ねない
折れ線グラフと棒グラフを重ね合わせて、数値の関係性を示したものを毎日のように目にする。しかし実は、グラフは重ねないほうが伝わりやすい。
次の“ 失敗例”を見てほしい。このタイプのグラフを見ていつも戸惑うのは、左右どちらの目盛を見ればよいのかが直感的に理解できない点だ。
目盛が2つあることで煩雑になり、これが読み取りの妨げにつながっている。本当に重ねる必要があるのだろうか?
というのも、左右の目盛の間隔は作者が自由に変更できる。もともと恣意的につくられているのだ。つまり、重ねなければ正確性が失われてしまうケースは少ないといえる。
“改善例”を見てほしい。折れ線グラフと棒グラフを上下に切り離した。これでもグラフ間の関係性は十分に理解できる。また、このことで図がシンプルになったため、折れ線とバーに各数値を直接示すことができた。
これなら、左右の目盛に戸惑うことはない。
■5.文字サイズよりも行間の広さを調整する
「文章が読みにくいので、字を大きくしてほしい」
こんなことを、言われたことがないだろうか?
文字を大きくすれば、読みやすくなると考える人は多い。しかし、その認識は誤りだ。
小さな文字が苦手とされる高齢者さえ、多くは新聞の文字をやすやすと読んでいる。問題は文字サイズではない。
では、何が問題なのだろうか? 実は読み取りに大きな影響を与えている要素がもうひとつある。“行間の広さ”だ。
“失敗例”を見てほしい。文字サイズは十分だが読みにくい。なぜか?
行間が極端に狭いからである。“ 改善例”を見てみよう。行間にゆとりがある。ずっと読みやすいはずだ。
実は、文字サイズは 5パーセント小さい。
文字が小さくとも、行間の広さに注意していれば、読みやすさが損なわれることはない。
もちろん、極端に小さな文字には問題が生じるが、読みにくさの原因の多くは行間の設定にある。ときどき行間の広さを確かめよう。
【感想】
◆自分で書いておいて、こういうことを言うのもどうかと思いますが、この記事自体が図解の必要性を強く訴えている、と言ってもいいかもしれません。とにかく「図ありき」の内容ゆえ、ハイライトを引いた中でも、図がないと絶対的に分かりにくいものは、必然的にカット。
それでも第3章までは、なんとか拾えないこともなかったのですが、全体の約3割を占める第4章では、全50TIPSのすべてに「失敗例」と「成功例」の図解が付いているという徹底ぶりです。
結果、上記ポイントの3番目以降は、双方の図を想像していただくしかなく……。
ただし、この第4章こそが、本書のキモだと思いますので、書店で吟味する際には、まずそちらからご覧いただきたいところです。
◆それでも本書を読んで図解の必然性を伝えよう、と思ったきっかけは、比較的最近、私の顧問先でちょっとした社内トラブルがあったからでした。
何でも病気で休職していたベテラン社員氏の休職中の給与のうち、休業保険で賄えない分を賞与で補填する、という単純な話のハズが、休職中も社会保険は払わねばならず、いったん社員氏に支払った上でそれを徴収し、と細かい作業が増えるにつれて、話が混乱。
経理担当の役員に、ベテラン社員氏から「もらえる金額が違う」「話が違う」とクレームが寄せられてしまいました。
揉めた理由の1つには、その役員が作った金額表が、少々分かりにくかったからなのですが、守秘義務があるので詳細は割愛。
挙句の果てには、その社員氏は役員を飛び越えて社長に直訴し、困った社長から「2人で行きますので先生から説得してください」と言われてしまったのでした。
そこで私も腰を落ち着けて、現状を図で整理したところ、意外な盲点に気がつき、その図を清書して送付。
それを見た社員氏も金額に納得し、役員に謝罪したそうです(めでたしめでたし)。
私自身、1枚の図がここまで他人の理解を促す、というのは初めての体験であり、このスキルは高めたいな、と改めて思った次第。
◆いずれにせよ本書は、図解をする上で大事なTIPSが山ほどつまっているのですが、まず押さえておきたいのが、上記ポイントの1番目の「写真」と「イラスト」の使い分け。
確かにディテールを極めた方がよければ「写真」で、逆に不要な情報をカットしたいなら「イラスト」というのは腑に落ちます。
ちなみに以前読んだ本で、宣伝チラシに自分の顔を載せる場合、ファクス等で白黒になるなら、イラストの方が良い、というTIPSがありました。
実際、小さめの顔写真が白黒で載っていると、よほど画像が細かくない限り結構不気味になりますよね。
また、本書の第3章では、グラフの使い分けについてページを割いており、そこから抜き出したのが、上記ポイントの2番目。
ここにあるように円グラフは「全体に占める割合」を表すために使いますが、では要素ごとの割合を比較する場合には何を使うか?
……答えは「分割棒グラフ」であり、なるほど高さが一緒ですから、円グラフの扇型に比べたら比較がしやすいです。
◆また圧巻なのが、前述のように第4章の事例集。
ここに全部目を通すだけで、図解のレベルがワンランク以上アップしそうです。
上記ポイントの3番目以降で「失敗例」「改善例」の図のいずれも載せられなくて恐縮なのですが、上記ポイントの3番目の数値と単位の右左ぞろえのお話は、私のように可能な限りExcelで図を作る者にとっては、ごく自然なことでした。
また、これに関連して他のTIPSで挙げられていてなるほど、と思ったのが、数字を使った表の縦軸と横軸の切り方です。
つまり、比べる数値は縦に並んでいないと、比べにくい(横だと桁数すら分かりにくい)ため、それを理解した上で軸を決めなければなりません。
今まで複数要素を年度ごとに比較する場合、無意識に横軸を年度にしていました(折れ線グラフだと当然そう)が、縦に並べた方が、変化は分かりやすい、というのは目からウロコ。
◆またその折れ線グラフと棒グラフのミックス版の注意点が上記ポイントの4番目です。
言われてみたら、重なっているグラフは異様に多いですけど、確かに目盛りがどっちがどっちかは、瞬間的には分からないでしょう。
もっとも、重ねないとそれぞれのグラフの高さが半分になってしまう、という話も分からないでもないですが……。
そして最後のポイントの5番目の行間の広さは、私自身、調整した事がありませんでした。
本書で見る限り、確かに行間が広い方が断然読みやすいですから、老眼対策に取り入れたいですね。
いやでも、ホント図が載せられないのが悔しいくらい、実用的な作品でした。
伝わる資料が作りたい方なら必読!

説明がなくても伝わる 図解の教科書
Chapter1 [準備する]「図」がすべてを語ってくれる
Chapter2 [「図」のはたらき]伝わる「図」の5つのポイント
Chapter3 [「図」をつくる]「主題」「見せ方」「仕上げ」の3つの山を越える
Chapter4 [事例集]「図」を変えればすべて伝わる
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【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。
呼吸の科学 いのちを支える驚きのメカニズム (ブルーバックス)
当ブログでも人気の「呼吸」をテーマにした作品。
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