【先延ばし防止!】『めんどくさがりの自分を予定通りに動かす科学的方法』竹内康二:マインドマップ的読書感想文

2024年02月04日

【先延ばし防止!】『めんどくさがりの自分を予定通りに動かす科学的方法』竹内康二

【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、今月の「Kindle月替わりセール」の中でも、当ブログ的には最注目の1冊。

「応用行動分析学に基づいた方法」により、私たちの「先延ばし癖」に対処しようと試みる作品です。

アマゾンの内容紹介から一部引用。

◎85年間の研究成果から導き出された「行動の技術」
◎“実践的”で“即効性アリ”の行動科学ですぐやる！
◎最新技術で「後回し」「手に付かない」「気が乗らない」を一発解決
◎意志力を使わないから「仕事」「勉強」がスムーズに完了される！
◎この行動のコツで「目標達成できる」「時間が増える」「心に余裕が生まれる」

中古に送料を加えると、かなり定価に近くなりますから、Kindle版が700円以上お買い得です！

Drawing UML / joone4u

【ポイント】

■1.「どうすれば、やる気が出るのか？」と考えるのはムダ

　なぜ、「やる気がない」と判断できたのでしょう。
　それは、実際に行動を起こさなかったからです。行動を起こしていないという結果を見て、「やる気がない」と判断しているだけです。
　逆に、バリバリと仕事をこなしながら「やる気がないなあ」と思う人はいないでしょう。
「行動できているときはやる気があり、行動できていないときはやる気がない」という分析は、行動の改善にはなんの役にも立ちません。
　仕事、勉強、健康……、より良くなるための行動を起こすための〝強い動機〟は、すでに誰もが持っています。必要だと感じ、取り組みたいと思っているのです。
　つまり、「やる気があるのに、なぜやらないのか？」を考えるべきであって、「どうやったら、やる気が出るのか」を考えることに意義はありません。(中略)
　すでにあるやる気をないことにして、やる気を回復させる方法について悩むことに意味はありません。
　すでに今存在しているやる気を〝行動に結び付ける方法〟を考えることが大切です。

■2.改善したい行動も表現次第で改善策が変わる

　たとえば、上司Bさんから私が「最近、Aさんの様子がおかしいんです。仕事に集中してないんです。どうしたらいいですか？」と相談された場合、「Aさんは具体的にどういう行動をするんですか？」と聞く必要があります。
「集中しない」ことは死人でもできるため、行動とは言えません。
　死人にはできない行ない、つまり「具体的な行動がなんなのか」を知ることがとても重要です。
　集中しないというのが、実は「寝ている」という行動なのであれば、コーヒーを出してあげたり、早寝するように助言したりすることができるでしょう。
　集中しないというのが、実は「同僚との私語が多過ぎる」という行動を意味しているのであれば、本人と同僚の両方に作業中のルールやマナーを明示すれば解決しそうです。
「〇〇しない」ことが問題だと思っている場合は、今一度、死人テストに従って「〇〇している」という行動の表現に言い換えてみましょう。そこから、解決の糸口がつかめるかもしれません。

■3.「即時結果＞遅延結果の原則」を受け入れると成功する！

　行動の不足であっても、行動の過剰であっても、思い通りに行動できない問題に共通して横たわっているのは、「遅延結果より即時結果のほうが、影響力が強い」ということです。
　私たちは、このことを「抗えない原則」として受け入れたほうが良いと思います。
　もちろん、個人差はあるし、状況によっては遅延結果のほうが強い場合もあるし、遅延結果の影響が強くなるような工夫も可能ではあります。
　しかし、「即時結果＞遅延結果」が原則と認めて対処を考えたほうが、生産的で前向きです。
「即時結果＞遅延結果」になる自分は「意志が弱い」と考えて反省しているだけでは、「気合を入れる」といった精神論に頼ることになってしまいます。問題解決に役立つ対策は生まれません。
　人がそもそも抱えている「業」として「即時結果＞遅延結果」を受け入れ、その上で対策を検討したほうが良いのです。

■4.行動分析学的に正しいToDoリストの使い方

　まず、ToDoリストをつくるには、自分がやるべき行動を端的に箇条書きする必要があります。
　これは、セルフマネジメントで最初にやるべき「標的行動の定義」そのものと言えます。先にご説明した死人テストを思い出しながら、標的行動をリストに記入していきます。
「〇〇を頑張る」ではなく、「○○までに△△さんに□□する」 というように、「期限」と「相手」を「明確な行動」を記入することができれば効果が高まります。
　明確な行動を記入するためには、行動を細分化するのが一番です。
　たとえば、「〇〇について企画を考える」という行動には、その前段階の「資料を集める」とか「△△さんに相談する」といった行動が含まれます。
　たとえば、相談するには△△さんにアポイントを取ることになるので、「メールで相談日時を調整する」行動が必要になります。

■5.やっぱり15分ルールは使える

　60分という遅延結果に、人はなかなか耐えられません。60分の話を強化子なしに聞き続けることはできないのです。60分の話を聞くには、その途中で細かく強化子が配置されていなければなりません。
　それがなければ、他のことを考え始めてしまったり、眠くなってしまったりするのです。少なくとも15分に1回ぐらいは強化子が必要でしょう。
　人の話に集中できるのは15分。このルールは、自分ひとりで行なう作業についても適用可能です。
　たとえば、今から90分ぐらいの時間を使って仕事をしようと思ったとき、15分を1セットとして「90分の中で何セットできるかな」と考えてみます。
　15分×6セットで90分ではありますが、それでは一度も集中を途切れさせないで作業し続けることになるので非現実的です。
　現実的な計画としては、15分×5セットで計75分、各セットごとに4分の休憩を入れて4分×4回で計16分、作業75分と休憩16分で総計は91分といった感じになるでしょう。
　つまり、90分の中で15分を5セット行なうことが目的となります。逆に言えば、15分ぐらいは休んでもいいと考えることができます。

【感想】

◆当初思っていたよりも、ロジカルな作品でした。

「行動分析学」と言われて、当ブログでもおなじみの「行動経済学」みたいなものかと思ったら、あにはからんや。

私たちの行動が、いかにして行われたり抑制されるかが、よく分かりました。

また、そもそも先延ばしの原因を「やる気」に求めてしまうのが、まちがいであることが、第1章から引用した上記ポイントの1番目でよく分かりました。

実際、先延ばし対策の本でも「やる気」の方を何とかしようとしていた作品があった気が。

◆また、結構目からウロコだったのが、上記ポイントの2番目の「表現」のお話。

こちらは第2章から抜き出したのですが、中に「死人」とか「死人テスト」とあって、何のことだと思われた方も多いかもしれません。

これはその前段で「行動」というものの定義を本書ではしており、要は「死人にできないことが行動であり、死人でもできることは行動ではない」のだとか。

そして、それを判定することを「死人テスト」と呼ぶのですが、それに従うと「集中しない」のは、死人にもできるので、行動ではないことになります。

そこからさらに、「寝ている」とか「私語が多過ぎる」に具体化することで、初めて対処できる次第。

今後「行動」について考える際には、この「死人テスト」をぜひお試しいただきたいな、と。

◆一方、第3章から引用したのが、上記ポイントの3番目の「即時結果＞遅延結果の原則」です。

これはいわゆる「現在価値と将来価値」のお話に近い気がしますが、要は、一般的な傾向として私たちは、目先の結果に影響を受けやすい、ということですね。

つまり、将来的な健康（遅延結果）よりも、目の前のケーキ（即時結果）の方に惹かれてしまうワケで。

もちろん、上記でも触れているように、この傾向は人によっても差がありますが、いずれにせよ、「そういう前提」で設計しなくてはなりません。

逆にそこを考慮せずに「意志が弱い」で片づけてしまうと、いつまで経っても、問題は解決しないでしょう。

◆なお、第4章以降では、具体的な「先延ばし対策」がいくつも登場します。

正直、上記ポイントも全部第4章以降から、TIPSばかり抜き出した方が記事としては使い勝手がいいんですけど、ここまでの3つのポイントは、今後他の本を読んだときにも使えそうな汎用性の高さだったので、省略できませんでした。

ということで、具体的なお話として第5章から引用したのが、上記ポイントの4番目の「ToDoリスト」の正しい使い方。

ここにもあるように「期限」「相手」「明確な行動」をお忘れなく！

また、今回は割愛しましたが、ToDoリストで終わった作業を二重線で消したり、付箋を廃棄する行為は、「達成感を味わう」という「即時結果」が得られますから、ぜひとも行うべきなのだそうです。

　小さな喜びがこまめに得られる機会を大切にすることが、先延ばしをせずに予定通りに行動するためのコツです。

なるほど確かに。

◆そして同じ第5章からもう1つ、上記ポイントの5番目の「15分ルール」も紹介させてもらいました。

中に「強化子」という聞きなれない言葉が出てきていますが、これは「ある行動に後続して生じることで、その行動が将来起きやすくなるような刺激や出来事」を指します。

　たとえば、ポテトチップスが好きで繰り返し食べている場合、強化子は食べた直後に生じる味や食感と考えられます。

つまり簡単に言うと「ご褒美」みたいなものかと。

実は本書の第6章では、この「強化子」について掘り下げており、自分自身の「強化子マトリクス」を作ることを推奨しています。

画像が引用できないのでテキストで説明すると、縦軸が時間（15分ごと、1時間ごと、1日ごと、1週間ごと、1カ月ごと）で、横軸はジャンル（生活、対人、トークン、文化、自己）。

……時間はさておき、ジャンルの方は具体的に書かないと分かりにくいのですが、代表例を挙げておくと「生活」は「食べ物」、「対人」は「会話」、「トークン」は「ポイント」、「文化」は「ゲーム」、「自己」は「ToDoリストを消す」辺りでしょうか。

これで縦横交わったところに、具体的な強化子を入れていき、たとえば「15分ごと」の「生活」の欄に「ポテチ1枚」といった感じです（詳細は本書を）。
　　

先延ばしを改善するために読むべし!

めんどくさがりの自分を予定通りに動かす科学的方法

第1章行動の科学では、意志力を使わない！
第2章思い通りにならない自分を予定通りに動かす「行動分析学」超入門
第3章行動科学の原理原則に抗わない、利用する。
第4章新しい自分に変わる5つの行動コントロール法
第5章やってのける人の具体策
第6章それでも、うまくいかないときのセルフコンパッション
第7章今日から、日常の中に「自分が勝手に動き出す」仕組みを忍び込ませよう！