【思考習慣】『考えすぎない練習』ジョセフ・グエン:マインドマップ的読書感想文

2024年01月28日

【思考習慣】『考えすぎない練習』ジョセフ・グエン

【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事にて、一番人気だった自己啓発書。

帯に「気鋭の戦略コンサルタントが伝授！」とあったので、ロジカルなお話かと思いきや、むしろ「考えない」（？）ことを推奨しているという作品でした。

アマゾンの内容紹介から一部引用。

★33ヶ国語に翻訳！
★累計発行部数　275,000部以上！
★Amazon.com　ビジネスヘルス＆ストレス部門、アンガーマネージメント部門など３部門でベストセラー獲得！
世界的自己啓発ベストセラーがついに日本上陸！

上記記事の時点とは違って、Kindle版が若干値下げしてくれています！

Mindfulness / darraghoconnor12

【ポイント】

■1.思考の内容ではなく「思考の量」がストレスをもたらす

　私たちにストレスをもたらすのは、考えている内容ではなく、私たちが考えているという事実そのものです。私たちが続けている思考の量は、常に私たちが経験しているストレスやネガティブな感情の大きさに直接相関しています。多くのフラストレーションやストレス、不安、ネガティブな感情を経験しているとき、それはあなたが考えているからであり、こうした感情の強さは続けている思考の量に直接相関していることを知っておきましょう。
　したがって、私たちに苦しみをもたらしているのは、私たちが考えている「内容」ではなく、私たちが考えているという「事実そのもの」なのです。
　つまり、愛、喜び、至福など、私たちが望むポジティブな感情を経験するために「ポジティブに考えよう」とする必要はありません。というのも、そうした感情を覚えるのが私たちの自然な状態だからです。

■2.「いま、ここ」に心を置く

Q.汚く濁った泥水の入ったボウルを私があなたに渡すところを想像してください。その水を澄んだ状態にするようにお伝えしたら、あなたはどうしますか？(中略)
　ほとんどの人は、水をろ過したり煮沸したりといった方法を口にします。泥水の入ったボウルをしばらく放っておくと、泥がひとりでに水の底に沈み始め、やがて水が自然と澄んでくることに、大半の人が気づきません。
　私たちの頭の働き方もこれと同じです。
「ろ過」や「煮沸」を試みて思考を乱すのではなく、そのまま放っておけば、思考はひとりでに落ち着いて、私たちの頭は思考から解放されます。水の自然な状態は澄んでおり、私たちの頭の中の自然な状態も、自分で乱さないかぎり澄んでいるのです。
　人生が不透明で混乱し、ストレスに満ちていると感じ、次に何をすべきかわからない場合、それはあなたの思考が泥をかき回して頭の中を濁らせ、前を見えづらくさせているからにすぎないことがもうおわかりでしょう
　あなたはこの状態を、自分が考えすぎていることに気づくための指標として使うことができます。

■3.考えなければゾーンに入れる

　最高のパフォーマンスをしているアスリートは、最高の状態にあるときのことを「ゾーン」に入ると表現します。この「ゾーン」とは、フロー状態、あるいは何も考えていない状態です。(中略)
　訓練を経ると、考えることがかえってアスリートのパフォーマンスを妨げますが、それは誰にでも当てはまります。考えたり必要以上の分析を始めたりしたときに限って、私たちは躊躇し、尻込みし、疑いや不安や恐れを抱きます。
　何も考えない状態に入った瞬間に、私たちは最高の状態で働き、パフォーマンスし、潜在能力を最大限に発揮できるのです。考えなければ、私たちはエゴの縛りから解放され、この世で最も素晴らしいものを生み出すことができます。

■4.目標が真っ先に思い浮かぶようにしておく

　私たちが考えるのをやめると、考えるために使っていたエネルギーが「解放」されますが、そのエネルギーはまだどこにも向けられていません。そこで何が起こるかというと、私たちは元のパターンに戻って、そのエネルギーを再び考えること（思考）に費やそうとします。私たちがそう条件づけられているからです。
　この場合、私たちにできることは、新たに確保されたエネルギーをインスピレーションから生まれる目標に向けることです。これは、そのエネルギーが再び考えすぎることに使われるのを防ぐ方法です。
　これをうまく行うには、ある程度時間をかけて（切羽詰まった状態からではなく）インスピレーションから生まれる目標を立て、この現象が起きたらすぐに全エネルギーを向けられるよう、その目標が真っ先に思い浮かぶようにしておくことです。もし頭の中に切羽詰まった状態で立てた目標しかなければ、その目標にエネルギーを向けることによって、思考とネガティブな感情を長引かせるだけです。

■5.物事に良いも悪いもない

　そもそもピアノに間違った鍵盤などありません。続けて演奏されているときに、より心地よく聞こえたり聞こえなかったりする鍵盤や音色があるだけです。
　ピアノに間違った鍵盤がないように、人生に間違った決断はありません。私たちを心地よい気分にさせたり、不快な気分にさせたりする思考があるだけです。私たちが物事を正しいか間違っているか、良いか悪いかというバケツに入れるとき、人生に二元性や条件を生み出し、それが私たちの感じ方を左右するようになるのです。
　たとえば、対立政党は間違っている、または悪いと信じていると、私たちの中に敵意が生じ、ネガティブな感情がつくり出される場合があります。
　一方、ピアノにさまざまな鍵盤があるのと同じように、もともと「間違った」政党はないという視点からさまざまな政党を見ると、その瞬間に心が開かれて、愛や喜び、安らぎを感じることができます。今まで理解できなかった別の見方がわかるようになり、人生の本質に関する理解を深める機会が得られます。

【感想】

◆冒頭でも触れたように、極論を言うと「考えない」ことを推奨している作品でした。

もちろん、何も頭を働かせずにボーっとしていろ、というわけではありませんが、少なくとも本書のタイトルにある「考えすぎない」という表現だと、必要以上に考えるな、というニュアンスが強いのではないか、と。

つまりそれは、必要なだけは考える、ということであるのに対して、本書では「考えること（思考）」自体を手放すよう説いています。

なぜならば、上記ポイントの1番目にあるように、「考えているという『事実そのもの』」によって、ストレスがもたらされるから。

代わりにどうするのかというと、「考え」を「宇宙からダウンロードする」……と言われると、「スピリチュアル？」となりますが、これはいわゆる「直感」といって良いと思います。

◆とはいえ、考えることは、そう簡単にはやめられないもの。

そこでどうすればいいかというと、上記ポイントの2番目のとおり、「『いま、ここ』に心を置く」べし。

悩みのある状態が泥水ならば、それをかきまぜなければ良いワケで、メタファーとして秀逸です。

ちなみに「いま、ここ」というのは、マインドフルネスではおなじみの考え方ですけど、本書では1度もそのような指摘はありませんでした。

この辺は、原著がどうなのかが少々気になりますが、いずれにせよ、「考える」ことは最小限に抑えて、「考え」が溢れる状態を目指すべきなんでしょうね。

◆そしてマインドフルネス絡みではやはりおなじみなのが、上記ポイントの3番目の「ゾーン」です。

なるほど、今まで読んだ本でも、「ゾーン」に入っているときは、無意識のうちに体が動いて、高パフォーマンスが実現する旨、言われていました。

これは確かに「考えない」ことによるものだと言えるでしょう。

また、考えることは、非常にエネルギーを使います。

つまり考えることをやめれば、その分のエネルギーが余る、というお話が、上記ポイントの4番目。

そしてそのエネルギーは、「『インスピレーションから生まれる目標』に向けること」と言われています。

ちなみにその反対が「切羽詰まった状態から生まれる目標」……なんですが、両者の違いについては、少々長くなるので、本書の第9章にてご確認ください。

◆なお、上記ポイントの5番目は、第12章の「物事に良いも悪いもない」の章題そのままが見出しになっています。

ここにある「ピアノに間違った鍵盤などありません」という指摘は、メタファーとしても目からウロコ。

確かにミスタッチや不協和音があったとしても、それは鍵盤自体の罪ではありません。

ゆえに正誤や善悪を指摘しようとせず、いったんはすべてをそのまま許容すべきではないか、と私自身も思う次第。

前述のように、多少のスピリチュアルな表現が気にならなければ、得るべき部分が多い作品だと感じました。

自分で悩みを生み出さないためにも読むべし！

考えすぎない練習

はじめに　本書でわかることと、最大限の活用方法
Chapter01 苦しみの根本原因を探る旅
Chapter02すべての苦しみの根本原因
Chapter03なぜ私たちは考えてしまうのか
Chapter04「考え（Thoughts）」と「思考（Thinking）」
Chapter05ポジティブな感情を持つには、ポジティブに考える必要があるか？
Chapter06人の経験はどうつくられるか─３つの原理
Chapter07どうすれば考えるのをやめられるか？
Chapter08考えずにどうやって成功できるのか？
Chapter09考えることをやめたら、目標や夢はどうなるのか？
Chapter10無条件の愛と創造
Chapter11安らぎや喜びを得たら、次は何をすべきか？
Chapter12物事に良いも悪いもない
Chapter13「自分のすべきこと」を考えずに見つける方法
Chapter14直感に従う方法
Chapter15奇跡が起こるための余白をつくりだす
Chapter16考えない生活を始めると起こること
Chapter17では、これからどうするか？