【要約力?】『頭がよくなる！　要約力』齋藤孝:マインドマップ的読書感想文

2024年01月17日

【要約力?】『頭がよくなる！　要約力』齋藤孝

【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、今月の「Kindle月替わりセール」の中でも大人気の1冊。

おなじみ齋藤孝さんお得意の、知的生産系の作品になります。

アマゾンの内容紹介から。

人の話を聞いても、本を読んでも、映画を見ても、人に話をする時にも、もちろん仕事をするにも、絶対必要な力は「要約力」だ。的確に相手の言いたいことを理解し、要点を押さえる力をつければ、仕事はスムーズに進み、人の心をつかむことができる。現代に必要な要約力を身につけるにはどうすればいいか、基本技からそのためのトレーニング、さらに高い自分なりのコメントをつける「要約力」を鍛える方法を開示する。

中古が値崩れしていますが、送料を合わせるとKindle版がお買い得です！

summary / Payton Chung

【ポイント】

■1.「要約力」があれば的確な状況把握ができる

「要約力」というのは、簡単にいうと、本質をギュッとつかんで課題を見つけ出す力、「要するに○○は△△である」と的確に言える力のことです。
　たとえば大学生に「今どういう状況なのか、そして今何が必要なのかを言ってみてください」と聞いてみると、もうその時点で脱落してしまう人がいます。「要約力」がないために、状況把握ができないのです。
　先日もこんな例がありました。私は将来、学校の教師をめざす学生たちのクラスを受け持っていますが、教育実習中の学生に「今クラスで、子どもたちはどういう状況ですか」とたずねたときに、「全体の3分の1の生徒たちしか課題ができていない状況です。なので、3分の2の生徒たちがついていけるように指導します」と的確に答えられる学生がいました。その人には安心して実習をまかせられると思いました。
　しかし中には、「ええ、まああの、なんとなく大丈夫だと思います」という答え方をする学生も少なからずいたのです。

■2.究極の「要約力」は定義に行き着く

　本質をひと言で言い切るのは、ものごとを定義することと同義です。究極の「要約力」は定義すること、と言ってもいいでしょう。(中略)
　定義を見つけるには簡単な方法があります。「○○は××と見つけたり」という公式にあてはめていくのです。
　たとえば「結婚とは○○と見つけたり」と考えてみると、いろいろな定義が見つかります。ある人は「結婚とは地獄の八丁目と見つけたり」と言うかもしれませんし、ある人は「結婚とはおおいなる勘違いと見つけたり」と言うかもしれません。
　神話学者キャンベルの対話集のタイトルは、『ジョーゼフ・キャンベルが言うには、愛ある結婚は冒険である。』です。これも1つの定義です。

■3.冒頭で共通項を話す

　私はときどきテレビに出演すると、コメントを求められることがあります。事態が複雑なものに対してコメントを言うさいは、「これこれは今、こういうことになっていますね」というまとめを5～10秒ほどで述べ、そのあと自分の意見を簡単に言って、全部で20秒ほどにおさめることをやっています。
　それをやると、ただ意見を言うだけより、共感を得やすくなります。
　みなさんも、自分が今テレビに出ているコメンテーターなら、どう言うだろうと考えながら、テレビを見てみてください。ニュースを漫然と聞き流すのではなく、このニュースを10秒にまとめると、どうなるだろうと考えるのです。
　ニュースを見るたびに、それをやっていると、簡単な内容なら5～10秒でまとめられるようになります。それを会議や打ち合わせで応用して、意見を言う前に「今まで出た意見はこうで、課題はこうだと思うのですが」と切り出すと、現場をうまく整理しているようで、みんなの評価が上がります。

■4.「規制」をかけて要約する

　要約とふつうの文章の違いは、多くの場合、要約には字数制限があることです。字数無限大の要約などあまり考えられません。スペースが限られていたり、字数や行数が決まっていたりするなど、限定がある中で行うのが要約です。
　そう考えると、みなさんは字数が限られているツイッターなどSNSをふだんから利用しているので、「要約力」がきたえられているはずなのですが、大学で学生たちを見ていると、必ずしもそういうわけではないと感じます。
　なぜSNSをやっていても「要約力」がきたえられないのかというと、SNSは要約ではなくたんなるおしゃべりだからです。だらだらと緊張感なく、とりとめもなく書いているだけでは「要約力」はつきません。
　要約とは、限定がある中で、キリッと緊張感を持ってまとめることです。ですから本気で「要約力」をつけたいと思うなら、ある程度の緊張感を持って、限られた条件下で要約するトレーニングをするのが効果的だと思います。

■5.リード文が書けるとインパクトのある要約になる

　人を惹きつける言葉を「惹句」といいます。キャッチコピーあるいは、少し長いものだとリード文といってもいいでしょう。要約の最初にこの惹句を持ってくると、全体がキュッと締まり、一段上の要約になります。
　太宰治の『人間失格』を紹介する要約で、新潮文庫は次のようなリード文から始めています。
この主人公は自分だ、と思う人とそうでない人に、日本人は二分される。
　要約の冒頭でいきなりこの一文がくるので、読む人は「なんだ?!」と興味をひかれるでしょう。「『人間失格』は太宰治の苦悩を描いた自伝的な小説です」というありきたりの要約より、ずっとインパクトがあります。
　要約というと、全体をまんべんなく、しかも何字以内で書くといった無難な印象でとらえてしまう人が多いのですが、いきなり惹句で始める個性的な要約があってもいいと思います。

【感想】

◆まことにもって「ごもっとも」な内容でした。

そもそも齊藤先生は、ご自身のゼミの学生さんたちに「1分間にまとめさせて」話をさせるトレーニング等をさせてきた方。

いわゆる「要約」的な作業のお話は、本書に限らず今までもされてきたのですから、本書もその延長線上にあると考えていいでしょう。

また、本書の第1章にあったのですが、要約力があると、アウトプットのみならず、インプットにも効果があるよう。

　よく、一緒にいて気持ちがいいのは、〝聞き上手〟な人、といわれますが、聞き上手な人は「要約力」にすぐれていると私は思います。ただ漫然と人の話を聞いているのではなく、ちゃんと相手の言いたいことを頭の中で要約しているのです。
　だから、的確なあいづちを打ったり、絶妙な返しができたりします。いい球を返すには、相手の球筋が見えていなければできません。球筋を読むのが「要約力」です。

つまりコミュニケーションスキルを高める上でも、「要約力」は必要になってくるワケですね。

◆また、第2章から抜き出した上記ポイントの1番目にあるように、「要約力」があると状況判断も的確に行えます。

ただ、置かれた状況下で、何が大事で何が大事でないかを見極めることができなければ、要約しようにもできませんから、その部分での「判断力」がまず必要だと思われ。

たとえばこの引用例で言うなら、「課題ができているか否か」が「キー」になることに気づけなければなりませんが、そこまでも含めた上で「要約力」と齋藤先生は言われているようです。

一方、「要約力」を極めると、上記ポイントの2番目にあるように「定義」にまで落ち着くとのこと。

ちなみに、この「○○は××と見つけたり」というフレーズは、『葉隠』の

「武士道と云ふは、死ぬ事と見付けたり」

からのものです。

ものごとの本質をつかむには、何度も言っているように、「ギュッと縮めてシンプルに言ったら、どういう言葉になるだろう」と、つね日頃から考える習慣をつけるのが一番です。

なるほど、日頃から意識しておきたいものですね。

◆さらには第3章から引用した、上記ポイントの3番目の「共通項」のお話も、テレビ出演慣れした齋藤先生らしいもの。

確かに他の人の発言や、それまでの流れをまとめると「この人分かってるな」という印象を与えやすいです。

……ただし直前の人にまとめられちゃうと、この手は使えませんがｗ

また、この章の終わりには、「要約して」と急に言われたり、短期間にまとめなければいけない場合の「裏技」が5つ挙げられていました。

「結論から先に言ってしまう」や「箇条書きにする」は、王道的ですが、思いつかなかったのが「問いで見出しをつくっていく」というもの。

「なぜ嗅覚がなくなるのか？」「重症化する人の特徴とは？」など、問いで見出しをつくっていくやり方は、相手の関心をひきたいときに重宝する方法です。
　私はこの問いの形式が好きです。教員志望の学生たちに、「問いをつくって授業をしてほしい」といつも言っているくらいです。

このスタイルも覚えておくと役に立つかもしれません。

◆続く第4章は「『要約力』トレーニング」と題して、その名の通りさまざまなトレーニング方法が列挙されています。

その数なんと「12」！

四コママンガの要約から、意外なところでは英語の長文で「骨格」を見つける練習（詳細は本書を）等々、なるほど理にかなった方法がこんなにあるのかと、少々驚きました。

なるほど、自分のプロフィールも、ある意味"自分の要約"ですよね……。

逆に役に立たないのが、上記ポイントの4番目にあるようにSNSで、X（旧Twitter）も字数制限はあるものの、緊張感とは程遠いかも。

ちなみに「規制」という話の絡みで、齋藤先生は週刊誌のDVDの紹介を、「五七五」でやりきったことがあるのだそうです。

「国移り誰か故郷を思わざる。認知症どちらがリアル夢現。霞む脳クッキリ見える別の道。夢想するアナザー人生それも生。目の前にいても違う時を生き。瞬間に意識交わり愛成就。」

選ばなかったみち [DVD]

ここまで来ると、職人芸ですな。

◆なお、上記ポイントの5番目は、第5章の「さらに高い『要約力』」からのもの。

ここでは高度な「要約力」の例として、各版元の内容紹介がいくつも紹介されています。

同じ作品でも、複数の版元から出ていると、違いがあって興味深いな、と。

かといってストーリー的には違いはありませんから、特徴を出すべく、リード文に工夫を凝らすパターンもあります。

ポイントの5番目と同じ『人間失格』でも、岩波文庫の場合は引用文を使ったもの。