【ビジネスモデル?】『なぜコンビニでお金をおろさない人はお金持ちになれないのか？』平野薫:マインドマップ的読書感想文

2023年12月19日

【ビジネスモデル?】『なぜコンビニでお金をおろさない人はお金持ちになれないのか？』平野薫

【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも人気が高かった1冊。

タイトルを見たときは、自己啓発系の作品だと思っていましたが、実はさまざまな数字やビジネスモデルのお話が詰まった、非常に興味深い内容でした。

アマゾンの内容紹介から。

「なぜ駅前の古びた靴店はお客さんが来ないのに経営を続けるのか」「なぜ新幹線の駅は片側だけ発展しているのか」「なぜコンビニでお金をおろさない人はお金持ちになれないのか」「なぜイタリアの銀行はチーズ倉庫を持っているのか」など身近な疑問が数字でわかれば、経済センスが身につき社会・経済の仕組みがわかる

版元がダイヤモンド社さんですから、Kindle版は「10％OFF」にてお求めいただけます！

注：今回は本書の作りがクイズ形式に準ずるものであるため、ネタバレ自重しております。

Big Flats beer / MattHurst

【ポイント】

■1.なぜノンアルコールビールはプレミアムビールに負けないほど儲かるのか？

　ノンアルコールビールの店頭価格を見ると他のビール系飲料と比べて安いため、メーカーとしてもノンアルコールビールへのシフトは大変だなと思われるかもしれません。しかし、実はそうでもないのです。どういうことかというと、実はノンアルコールビールはプレミアムビールに負けないほど儲かる商品なのです。
　店頭での販売価格が安いのになぜ儲かるの？　と不思議に思われるかもしれません。原材料費にそこまで差があるかというとそうでもありません。コスト全体に占める原材料費は実はそれほど大きくなく、プレミアムビールとノンアルコールビールのコスト差は数円というところでしょう。それではなぜノンアルコールビールは店頭価格が安いのに儲かるのか？

■2.なぜ新幹線の駅は片側だけ発展しているのか？

　私は出張先で早朝にウォーキングをするように心掛けています。朝の1時間だけでも意識して歩くと、史跡や寺社仏閣、市場、夜明けの繁華街などからいろんなことを学べます。以前、駅の周辺、特に地方の新幹線の駅の周辺を散策すると、あることに気づきました。それは〝駅の片側は発展しているが、もう一方の側は寂しいことが多い〟ということです。
　東北新幹線の沿線の駅を見るとその傾向が特に顕著です。宇都宮駅は東口にLRTの駅が新設され小洒落た場所になっていますが、かつては怪しげな飲み屋街が多いイメージで、西口周辺と比べてパッとしていませんでした。仙台駅も西口が賑わっており、最近でこそ東口の開発が進みましたが、私が小さい頃は予備校くらいしかありませんでした。郡山駅は現在でも店舗は西口に集中しています。逆に盛岡駅は東口が賑わっていますが、西口は駐車場のイメージしかありません。
〝なぜ新幹線の駅は片側だけ発展しているのか？〟

■3.なぜ唐揚げ店が急増しているのか？

　一世を風靡したタピオカミルクティー屋。小さなスペースで開業でき、設備投資も少ないため初期投資も抑えられ、原価率も低いので高い収益性を見込めます。また調理ノウハウもあまり必要なく、ちょっとした店舗なら一人で十分オペレーションできます。そういった手軽さから一時は雨後のタケノコのように大量出店していました。当時は脱サラしてタピオカミルクティー屋を始めたという人も少なくないと思います。しかし10年前に流行し店舗が増えた〝白いたい焼き〟と同じで、ブームは沈静化してきており、閉店する店も増えてきています。そのタピオカミルクティー屋の跡地に増えてきたのが〝唐揚げ店〟です。(中略)
　日本唐揚協会の発表によると2023年3月時点の唐揚げ専門店の店舗数は推定で4388店舗。2012年の450店舗から10年余りで約10倍となったそうです。ここ1年はブームが沈静化し閉店する店もチラホラ出てきたものの、依然として増加しているようです。ちなみに数字で物事を考える際には、その数字の規模感を把握するために似たような他の数字と比較することが大事です。この場合には、同じ外食のマクドナルドは約3000店舗、吉野家が約1200店舗と聞けば唐揚げ店の多さを実感できるかと思います。

■4.なぜつけ麺は大盛無料でも儲かるのか？

　私が初めてつけ麺を食べたのは2007年。当時、転職のために引っ越した家の近所にあったラーメン店でのことです。メニューを見ていると、あるキーワードに惹かれました。
「つけ麺大盛無料」
　一般的にラーメン店で大盛を注文すれば追加料金が発生します。それなのに、大盛が無料だなんて何という太っ腹な店主なんだと思い、20代で糖質のことなど気にしていなかった当時の私はそのお店に足繁く通っていました。しかしその後、つけ麺ブームに乗って多くのラーメン店がつけ麺を扱うようになり、他の多くの店でもつけ麺は大盛が無料であることが分かりました。私が通っていた店だけ特別気前が良かったわけではなかったようです。それではなぜ、つけ麺は多くの店で大盛が無料なのでしょうか？
　それはラーメンの原価構成に秘密があります。

■5.なぜ少子化なのに塾が増えているのか？

　前述の通り2022年の出生数は統計を取り始めた1899年以降初めて80万人を割り込みました。団塊の世代のピークで約269万人（1949年）、第二次ベビーブームのピークで約209万人（1973年）だったことを考えると本当に少子化が進んでいることが分かります。(中略)
　しかしそれだけ少子化が進んでいるにもかかわらず、帰省時に感じるのは以前と比べて街全体は寂しくなってきている中で塾が増えたということです。思えば出張でいろんな場所に行っていますが、コンビニさえろくに無いような場所でも意外と塾を見かけます。
　矢野経済研究所の調査によると、教育産業全体の市場規模はコロナで一時的に落ち込んだものの、その後は堅調に拡大しており今後も堅調に推移していくことが予想されています。
　少子化が進み、これだけ子供の数が激減しているにもかかわらず、なぜ教育産業の市場規模は拡大しているのでしょうか？

【感想】

◆ネタバレ自重してしまうと、「なんのこっちゃ」となりかねませんが、以前ちょっとネタバレし過ぎて指摘を受けたことがあったので、一応「答え」となる部分は割愛させてもらいました。

ただし本書は、下記の関連記事で挙げているような完全なクイズ形式ではなく、単に小見出しが全部疑問文であるに過ぎません。

アマゾンには目次がないので、全小見出しが掲載されている、本書の版元のページをご紹介しておきますが。

なぜコンビニでお金をおろさない人はお金持ちになれないのか？ | 書籍 | ダイヤモンド社

確かに、かつての大ヒット作である『さおだけ屋はなぜ潰れないのか？』を初めとして、疑問文のタイトル（や小見出し）はフックがありますよね。

ただ、『さおだけ屋～』がさおだけ屋以外の話がほとんどなのと同様、本書も「コンビニでお金をおろす」話は単なる小見出しの1つに過ぎません。

こういうのは、書籍における1つのお約束なのですが、勘違いされぬよう『さおだけ屋～』の場合はサブタイトルで、「～身近な疑問からはじめる会計学～」とテーマをうたっています。

一方本書は、表紙の真ん中あたりに「身近な疑問を数字で解決！」「仕事に効く分析力が身につく」とやや小さな字で載せていますから、多分その辺は大丈夫でしょう。

◆というわけで本書も全7章ごとにテーマがあって、まず第1章では下記目次の章題以外に、「街中で気になることを数字で考える」というサブタイトルが。

その第1章から抜き出したのが、上記ポイントの1番目のノンアルコールビールのお話です。

これは私は職業柄分かりましたが、お酒を飲まれる方なら、コンビニや酒屋で買う際に意識してらっしゃるかもしれませんね。

そういえば、ちょっと前には「第三のビール」が主戦場だった時期もありましたっけ……みたいな話をすると「大ヒント」になるかもしれませんが。

また、テーマが「街中」というだけあって、お花屋さんの廃棄率のお話や、原油価格のお話がこの章では興味深かったです。

◆続く第2章のテーマは「観光ビジネスの謎」。

その第2章の章題にもなっているのが、上記ポイントの2番目の新幹線の駅のお話です。

これは普段、あまり新幹線に乗らない私にとっては結構目からウロコ。

新幹線の駅でちゃんと知ってるのが東京駅くらいなので、「うーん、丸の内口も八重洲口も開けてるけどなー」みたいにトンチンカンなことを考えていました。

これは答えを知ったら「なーんだ」になるかもしれませんが、そもそも「駅は片側だけ発展している」ことに気がついた、著者の平野さんが偉いと思います。

何でも平野さん、冒頭の「まえがき」によると「世の中の『違和感』にフォーカスし、数字で考えている」のだとか。

なるほど、その集大成が本書というわけですね。

◆1つ飛んだ第4章では「世の中の変化」がテーマに。

そして以前と変わったこととして挙げられていた中の1つが、上記ポイントの3番目の「唐揚げ店」です。

確かにここにあるように、「マクドナルドや吉野家よりも多い」と言われると、かなりのものかと。

本書ではその急伸の理由が列挙されているので、気になる方はご確認ください。

また、同じ食べ物屋でも、「会社の儲けの仕組み」にフォーカスしているのが第5章です。

そしてそこから抜き出したのが、上記ポイントの4番目の「つけ麺大盛無料」のお話。

お恥ずかしながら、つけ麺を外で食べたことがないので、大盛無料の店が多い、というのは知りませんでした。

こちらは、最後の行でヒントを書いているので、お分かりになる方も多そうな……？

◆最後のポイントの5番目は、第7章の章題である「なぜ少子化なのに塾が増えているのか？」をそのまま持ってきました。

私自身は数年前まで、ムスコの中学受験に奔走していたものの、塾が増えたという印象はなかったのですが、そういう情勢になっていたとは。

そもそも自分の子どもの頃と比較しようにも、それこそ半世紀弱前ですからねぇ（苦笑）。

実際、周りが皆、塾通いしていれば行かせるでしょうし、ムスコが保育園時代に公文通い出したのも、お友達が皆行くから、自分も行く、と言い出したからでした。

もちろん、塾に通うためには、それなりの費用もかかりますが、結局「教育産業全体の市場規模が拡大」というのは、それを踏まえても皆、ということなのでしょうね。

ただ、この第7章のように「社会の疑問」のお話よりも、身の回りの「違和感」を追った他の章の方が、本書の特徴が出ていて良かったと思います（個人の感想です）。

数字＆ビジネスモデル好きなら一読の価値アリ！

なぜコンビニでお金をおろさない人はお金持ちになれないのか？

第1章なぜ駅前の古びた靴屋さんはお客さんが来ないのに営業を続けられるのか？
第2章なぜ新幹線の駅は片側だけ発展しているのか？
第3章なぜ圧倒的な実力を持つ競走馬は勝てるレースがあっても、若くして引退させるのか？
第4章なぜビットコインが高騰すると地球温暖化が加速するのか？
第5章なぜつけ麺は大盛無料でも儲かるのか？
第6章なぜコンビニでお金をおろさない人はお金持ちになれないのか？
第7章なぜ少子化なのに塾が増えているのか？